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データタイプ「P2401」に見るFOMAのデータ通信能力
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UIMカードで共用できるデータ通信専用端末
10月1日の関東エリアに続き、東海、関西地方でもサービスが開始されたNTTドコモの次世代携帯電話サービス「FOMA」。すでに、スタンダードタイプ「N2001」、ビジュアルタイプ「P2101V」のレビューをお届けしたが、今回はデータタイプ「P2401」についてレポートをお送りしよう。
最大384kbpsの高速パケット通信サービスに対応

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NTTドコモ/松下通信工業『FOMA P2401』。サイズ:56(W)×13(H)×140(D)mm、50g。
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W-CDMA方式を採用した次世代携帯電話「FOMA」には、従来のPDCデジタル携帯電話と比べ、さまざまなアドバンテージがある。たとえば、通話時の音質などもそのひとつだが、やはり、最も注目度が高いのは最大384kbpsという高速通信が可能なパケット通信サービスだろう。384kbpsという通信速度は局所的に利用できるIEEE 802.11b準拠の無線LANアクセスを除けば、モバイル環境で最も高速なサービスとなっている。次世代携帯電話で実現が検討されているモバイルコンテンツサービスの多くは、この高速パケット通信がその技術的な裏付けとなっている。
今回紹介する松下通信工業製「FOMA P2401(以下P2401)」は、この高速パケット通信などに対応したデータ通信専用端末だ。従来のPDCデジタル携帯電話などでは回線契約ごとに端末が必要だったため、データ通信専用端末を利用したいときは、別途、契約をしなければならなかった。これに対し、FOMAはUIMカードの採用により、スタンダードタイプやビジュアルタイプの端末からUIMカードを差し替えるだけでP2401が利用できるというメリットを持つ。1つの回線で複数の端末が利用できるというFOMAならではのメリットを活かすことができる商品というわけだ。
ただ、データ通信カード一体型端末は、この連載で何度も取り上げているように、PHSが主戦場となっており、携帯電話のデータ通信カード一体型端末が一般ユーザー向けに成功した例はほとんどない。どちらかと言えば、企業向けの商品として販売されたものがほとんどであり、ラインアップ上、FOMAにデータ通信カード一体型端末が必要だったから、用意したというニュアンスは否めない。
しかし、P2401は前述のように、既存のFOMA端末からカードを差し替えるだけで利用できるなどもメリットもあり、今後の携帯電話によるデータ通信カード一体型端末の動向を探る意味でも興味深い商品だ。早速、その出来映えを見てみよう。
可倒式アンテナと外部アンテナインターフェイスを装備

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突出部分は約3.5cm。機種によっては装着が若干、固いように感じられた。
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製品の細かいスペックなどについては、NTTドコモや松下通信工業の製品情報ページ、ケータイ新製品SHOW CASEを参考にしていただくとして、ここでは筆者が購入した端末で得られた印象を中心に紹介しよう。
まず、本体はPCMCIA Type2準拠のPCカードタイプで、突出部分にLEDや可倒式アンテナを内蔵する。最近、このコラムで紹介したauのC315SKのようなスッキリとしたデザインではなく、どちらかと言えば、NTTドコモのデータ通信カード一体型PHS「Mobile C@rd P-in」の突出部分を少し大きくしたような印象だ。装着するノートPCのPCカードスロットの深さにもよるが、突出部分は約3.5cmとなっている。
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側面には外部接続端子を装備。外部アンテナを接続することが可能。カバーはゴム製。
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外部アンテナの台には吸盤が装着されており、机や窓などに貼り付けておくことができる。
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外部アンテナはより安定した通信をしたいときに装着するもので、本体ケースはと外部アンテナもいっしょに収納できるようになっている。意外に面白いのがアンテナを固定するための台で、机などに固定しやすくするため、底面に小さな吸盤が取り付けられている。マニュアルでは窓にも取り付けられるとしており、クルマや新幹線などでの移動時に役立ちそうだ。本体の底面にはUIMカード(FOMAカード)を装着するためのスロットが装備されている。カバーはすぐに開けることができ、着脱もカードを差し込むだけなので、N2001などに比べると扱いやすい。
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本体とアンテナを格納できるケースが付属。
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まとめた状態で持ち歩けるのはうれしい。
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続いて、スペックについて見てみよう。まず、P2401が対応するデータ通信モードと接続するアクセスポイントは次の通りだ。
種別 |
下り |
上り |
アクセスポイント |
パケット通信 |
384kbps |
64kbps |
FOMA専用 |
回線交換 |
64kbps |
64kbps |
ISDN 64kbps |

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シンプルなユーティリティ。電波状態が見られる他、機能設定や接続先の作成もできる。
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FOMA専用アクセスポイントはNTTドコモ自身が運営する「mopera」をはじめ、6社が設置している。auのPacketOneやDDIポケットのAirH"に比べると、極端に少ない。試験サービスを実施したにも関わらず、これだけしかないというのはかなり厳しい。これに対し、意外に実用性が高いのがISDN 64kbps対応アクセスポイントだ。ISDN 64kbpsアクセスポイントであれば、ほぼすべてのプロバイダが設置しており、少なくともFOMAが提供されているエリアであれば、まずアクセスポイントに困ることはないだろう。ただし、384kbpsパケット通信が転送量で課金されるのに対し、回線交換のISDN 64kbps接続は時間単位で課金されるので、その点は注意した方がいいだろう。
対応するOSはWindows 98/Me/2000となっており、Windowsの最新版であるWindows XPやPDAなどのモバイル機器で採用されているWindows CE系には対応していない。先日、NTTドコモからは「データカード系商品のWindowsXPにおける対応について」とのアナウンスがあったが、このリストにP2401は含まれておらず、『上記以外のデータカード系商品につきましては、サポートの対象外とさせていただきます。』とまで書かれている。まさか発売されたばかりのFOMAをWindows XP非対応にするとは考えにくいが、チグハグな印象は否めない。ちなみに、筆者が試したところ、P2401はWindows 2000用ドライバを利用することで、Windows XPに組み込むことができ、通信も行なうことができている。

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『W-TCP環境設定ソフト』はWindowsのTCP/IP環境をFOMAに最適化する。変更後は再起動が必要。
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また、付属CD-ROMには「W-TCP環境設定ソフト」が収録されている。W-TCP環境設定ソフトはWindowsのTCP/IP環境をFOMAのパケット通信に最適化するためのユーティリティで、パケット通信で接続する場合のみに利用する。W-TCP環境設定ソフトを利用しなくてもパケット通信はできるが、最大限にパフォーマンスを引き出したいときは利用した方がベターだろう。W-TCP環境設定ソフトは通常設定とFOMA用設定を切り替えるしくみになっており、切り替え時には再起動が必要になる。P2401でしか通信をしないのであれば、気にならないが、外出時はP2401、オフィスではLANといった利用形態では、接続環境が変わる度に切り替えをしなければならず、やや扱いが面倒だ。
さて、気になるパフォーマンスについてだが、今回は384kbpsパケット通信と64kbps回線交換の両方で、FTPによるファイル転送で計測を試みた。できるだけ影響が少ない早朝を選んで接続し、複数回の接続で平均値を割り出している。比較対照として、FOMA N2001とFOMA Mobile Card N2の組み合わせでも同様の接続テストを行なった。
まず、64kbps回線交換については、ほぼフルパフォーマンスが引き出せている。ISDN TAの64kbps接続と比べてもまったく遜色はなく、パフォーマンスだけならPIAFS 2.0/64kbpsよりも高速な通信が可能だ。複数回に渡って、転送を試みたが、バラツキも非常に少ない。
P2401 |
62.6kbps |
N2001 / Mobile Card N2 |
57.9kbps |
一方、パケット通信は下り方向のみを計測したが、こちらはかなり数値的にバラツキが見られた。最速値は約230kbpsを記録したが、約200kbpsを切ることもあり、このような結果になった。最大値である384kbpsにはまだ及ばないが、試験サービス時にほぼ同じ環境で計測したときに約100kbps前後であったことを考えると、かなりパフォーマンスが向上したようだ。
P2401 |
201.3kbps |
N2001 / Mobile Card N2 |
161.8kbps |
ちなみに、これらの数値は複数回、計測したときの平均値であり、絶対的な数値ではないことをお断りしておく。特に、FOMAは環境によって、電波状態が大きく左右されるため、パフォーマンスがこれに満たないこともあるだろう。
両方の通信モードで試してみてわかったことは、FOMAでは最大384kbpsのパケット通信がセールスポイントになっているが、実際に安定したパフォーマンスが得られるのは最大64kbpsの回線交換による接続であるということだ。特に、コスト面を見た場合、パケット通信は今ひとつ安定度に欠けるため、通信中に切れてしまい、ムダな通信費が発生してしまう可能性が高い。その点、回線交換による接続は時間単位の課金になるものの、通信は比較的、安定しており、ある程度は確実にデータが転送できる。
また、N2001とMobile Card N2との組み合わせとの比較では、パフォーマンスにハッキリと差が出てしまった。時間帯の多少のずれはあるが、P2401の方が高速な通信が可能であり、絶対的なパフォーマンスを重視するなら、P2401の方が望ましいということになる。
どうしてもケーブルがイヤなら「買い」?
最後に、P2401の「買い」の診断をしてみよう。過去のFOMAのレビューのときにも紹介したように、FOMA端末は現時点でエリア、サービス内容、価格などの面から見て、とても一般ユーザーにおすすめできるレベルにない。ここでは「FOMAを買う」と覚悟を決めたユーザーだけを対象に「買い」の診断をしたものであることをお断りしておく。
まず、素直にデータ通信のための端末として見た場合だが、残念ながら「買い」と言える要素はほとんど見当たらない。ごく一般的なユーザーがノートPCやPDAに装着して利用するのであれば、PHSの方が明らかにコストが安く、選択肢も豊富だ。特に、P2401はPCMCIA Type2準拠であるため、装着できるPDAは極端に少ない。また、携帯電話のデータ通信カードとして見た場合は、先日、コラムで紹介したauのC315SKの方が実用的だろう。P2401はC315SKよりも高速な通信が可能だが、エリアが極めて限定されており、料金も十分に安いとは言えない。接続できるプロバイダも限定されている。ただし、データ転送量が多いのであれば、P2401の64kbps回線交換方式を利用することで、C315SKよりも割安に通信ができる可能性はある。
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底面にはUIMカード(FOMAカード)用スロットを装備。
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スライド式のカバーは力を入れると外れてしまうので注意が必要。
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また、P2401の場合、すでにN2001/N2002/P2101Vなどを所有するユーザーがデータ通信用として購入するケースが考えられる。P2101Vについてはデータ通信カードがないため、データ通信をするにはP2401が必須になるが、N2001/N2002であれば、Mobile Card N2を利用することで、高速パケット通信も64kbps回線交換方式による通信もできる。Mobile Card N2は1万5000円前後であるのに対し、P2401は2~3万円と割高だ。パフォーマンス的にはP2401が優れているが、UIMカード(FOMAカード)の抜き差しの手間やノートPCの電力消費を考慮すれば、N2001/N2002ユーザーはMobile Card N2を選択する方が賢明だろう。
これらのことを総合すると、P2401を「買い」と言えるのは企業ユーザーなどの非常に限定された範囲であり、一般ユーザーが購入を検討する必要は当分ないと言えそうだ。ただ、端末からUIMカードを抜いて、データ通信カードに挿して利用するというスタイルは、これからのモバイルの方向性を示すものであり、そういう意味ではP2401も注目すべき存在と言えそうだ。
・ FOMAサービスニュースリリース(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/01/whatnew0925.html
・ FOMA P2401製品情報(NTTドコモ)
http://foma.nttdocomo.co.jp/catalog/term/p2401.html
・ FOMA N2001製品情報(松下通信工業)
http://www.mci.panasonic.co.jp/pcd/foma/p2401/
・ FOMA P2401
・ ドコモ、FOMA端末3機種を10月1日に発売
・ Act.3 トゥモロー・ネバー・BUY?
(法林岳之)
2001/12/04 12:01
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