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NTTドコモ/NEC製「N902iS」、サイズ:51×104×23mm、114g。ピスタッシュグリーン(写真)、ラセットブラック、ジュエルピンク、アイスシルバーをラインアップ
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夏商戦向けモデルとして、ラインアップが出揃ったNTTドコモのFOMA new9シリーズ。なかでも独特のカラーとデザインで話題となっているのがNEC製端末「N902iS」だ。筆者も実機を購入したので、注目機能を中心にレポートをお送りしよう。
【この端末のチェックポイント】
1. スーパーデジタル手ブレ補正
2. Mogic Engineで日本語入力を大幅改善
3. 基本機能をチェック
4. こんなユーザーにおすすめ
■ 6軸方向で手ブレをガード
カメラ付きケータイは高画素化競争が一段落しつつあるが、その一方で、手軽にきれいな写真を撮れるようにするための機能競争は相変わらず激しい。そのひとつが手ブレ対策だ。
今回紹介するN902iSは従来のN902iで搭載されていた手ブレ補正をさらに強化し、「スーパーデジタル手ブレ補正」を謳うモデルとして、進化している。一見、従来モデルとの差がわかりにくいのだが、実はカメラ位置もボタン部背面側に移動するなど、全体的なレイアウトも変更されている。
N902iSのスーパーデジタル手ブレ補正を説明する前に、もう一度、手ブレと補正について、簡単におさらいしておこう。まず、一般的に写真の撮影をする際、きちんとカメラを固定しないと、シャッターが切れるときにカメラがわずかに動き、被写体がぶれて写ってしまうことがある。これがいわゆる「手ブレ」という現象になるわけだが、カメラ付きケータイやコンパクトなデジタルカメラはボディが軽いため、シャッターを押すときの反動で手ブレが起きやすいと言われている。撮影する場所が屋内だったり、夜景の撮影ともなれば、光量が不足するため、さらに手ブレが起きやすくなる。
こうした手ブレを軽減、もしくは抑制するため、最近のデジタルカメラでは手ブレ補正機能を搭載したモデルが増えている。カメラ付きケータイでも昨年あたりから手ブレ補正を搭載したモデルが登場しているが、デジタルカメラと若干、異なる手法で実現されている。デジタルカメラの手ブレ補正にはいくつかの手法があるが、基本的にはジャイロセンサーなどを搭載し、撮影時のブレに合わせて、レンズ(あるいはCCD)を動かすことにより、ブレのない写真撮影を可能にしている。
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N902iSの手ブレ補正機能は「オート」「OFF」の切り替えが可能。出荷時設定は「オート」
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カメラはボタン部の背面に移動。段差に触らないように持てば、カメラを指で遮らない
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これに対し、カメラ付きケータイの手ブレ補正は、通常よりも速いシャッタースピードで連写し、撮影された複数枚(N902iSは4枚)の画像を合成するしくみになっている。複数枚の画像の特徴的な部分がどれだけ移動したかによって、全体の手ブレ量を検出し、それを補正するように画像が合成される。つまり、同じ「手ブレ補正」という機能名ではあるものの、デジタルカメラとカメラ付きケータイでは、まったくしくみが異なるわけだ。
NECでは従来のN902iで、横方向と縦方向のブレを補正する2軸の手ブレ補正を搭載していた。今回のN902iSではこれに加え、奥行き方向のブレ、それぞれの軸を中心にした回転ブレの補正を加えることにより、6軸での手ブレ補正を実現している。手ブレ補正については、オート/OFFを切り替えることが可能だ。
カメラモジュールそのものは従来同様、有効200万画素、記録400万画素のスーパーCCDハニカムを採用しているが、カメラ位置が変更されたことにより、閉じたままでの撮影が簡単にできるようになっている。
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手ブレ補正を「オート」に設定し、片手持ちでビルの夜景を撮影。リンク先の画像は無加工
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手ブレ補正を「OFF」に設定し、片手持ちでビルの夜景を撮影。リンク先の画像は無加工
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4Mサイズ(2,304×1,728ドット)で撮影したサンプル画像。リンク先は無加工。(モデル:篠崎ゆき/スーパーウイング所属)
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■ Mogic Engineで日本語入力を大幅に改善
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Mogic Engine搭載により、先読み予測変換が可能になった
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ケータイの機能として、もっとも重要なもののひとつが「日本語入力」だ。ケータイの日本語入力については、当時のソニー(現在のソニー・エリクソン)が予測変換が可能な「POBox」を採用した頃から大きく進化を遂げ、現在では各社ともさまざまな工夫を凝らした日本語入力機能を搭載している。
ただ、NEC製端末については、正直なところ、日本語入力の進化に出遅れた感は否めなかった。少ないボタン押下で入力が可能なT9の日本語版を採用したものの、一般的なマルチタップ入力を超えるほどの快適さは得られず、市場での評価も今ひとつ芳しくないものだった。特に、予測変換の部分については、他社があらかじめ推測した候補を表示するのに対し、NEC製端末では過去に入力した単語があれば、候補として表示される学習予測変換だったため、かなり使い込まなければ、入力の快適さが得られなかった。同様の不満はFOMA端末の開発で協業しているパナソニック製端末でも同じだったが、昨年のP902iからはAdvanced Wnnに切り替えている。
N902iSはこうした日本語入力の遅れを取り戻すため、新たに「Mogic Engine」と呼ばれる日本語入力機能が搭載されている。まず、入力した文字から推測される単語の候補を先読み表示する「先読み予測」、続く単語を予測して候補を表示する「つながり予測」がサポートされ、ワード予測の候補には絵文字や顔文字も表示される。また、入力モードの切り替えをすることなく、英数字に変換できる「モードレス入力」では2~4桁の入力で、日付や時刻への変換もできる。
この他にもワンプッシュで絵文字の入力パレットが表示される「簡単絵文字入力」、英語版T9の機能を搭載した「英語T9入力」など、今までのNシリーズの日本語入力で不満とされていた部分がほぼ改善されている。マルチタップ入力での逆トグルが側面の[ホーム]キーに割り当てられていることなど、まだまだ操作性に不自然かつ不親切な部分が残されているが、少なくとも基本的な部分については従来モデルに比べ、長足の進歩を遂げ、他機種と張り合えるレベルに達したと言って差し支えないだろう。
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ボタンのデザインや大きさはN902iから変更され、押しやすくなった印象
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マルチタップ入力の逆トグルが割り当てられている側面の[ホーム]ボタン。操作性がいいとは思えないが……
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■ 基本機能をチェック
続いて、基本機能もチェックしてみよう。よく知られているように、NシリーズはFOMAにおいて、PシリーズとともにOSにLinuxを採用している。そのため、基本的に両シリーズはユーザーインターフェイスが似通っているが、902iシリーズから少しずつ個々の特色を生かしたユーザーインターフェイスに変更されつつある。
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MAIN MENU画面は9分割のアイコン表示を採用。ピスタッシュグリーンの端末は出荷時設定の背景の象をデザイ
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リスト形式のランチャメニューも選択が可能。先の項目も見えているので、意外にわかりやすい。こちらをメインで使うことも可能
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ユーザーがよく使う機能を登録するオリジナルメニュー。筆者は「セルフモード」をよく使うので、追加登録している
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まず、メニュー画面は9分割のアイコン形式が基本だが、左上ソフトキーを押すことでリスト形式のランチャメニューに切り替え、再びアイコン形式に戻すことができる。ランチャメニューはリスト形式ながら、次の階層の内容が表示されているうえ、文字サイズも比較的大きめのため、意外にわかりやすい。ちなみに、アイコン形式のメニュー画面を選択している場合に限り、[MENU]ボタンをもう一度、押すことで、ユーザーが自由に登録できる「オリジナルメニュー」も利用することが可能だ。待受画面やサブディスプレイ、メニュー画面、ニューロポインターのアイコンなどを一括で変更できる「スタイルモード」という機能も用意されている。
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メールはフォルダによる管理に対応。NEC製端末ではおなじみのゴミ箱フォルダも健在
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振り分けはメールアドレスや題名、返信不可などで振り分けることが可能
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メールは上下に分割しての表示が可能。少し粗い感もあるが、本文の表示フォントも太くて見やすい
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新たにフォルダを追加すると、その直後に振り分け条件を追加するかどうかがたずねられる
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メールはフォルダによる管理、メールアドレスや題名、返信不可などによる自動振り分けが可能だが、送受信ボックスで振り分けのためにフォルダを追加する際、追加直後に振り分け条件を設定するかどうかを問い合わせる画面が表示され、すぐに条件設定ができるなど、N902iよりも細かい部分で改良が加えられている。ちなみに、振り分け条件を入力するときのメールアドレスは、電話帳だけでなく、送受信アドレス、グループ、メールメンバーを参照できるようにしている。条件設定後の再振り分けはできないが、メール検索が利用できるので、メールアドレスなどが合致するメールだけを選んで、フォルダに移動できる。Nシリーズの端末ではおなじみの「ゴミ箱フォルダ」なども継承されている。
実際に使っていて、メール周りで好印象だったのがメールの表示フォントだ。Nシリーズは従来からLCフォントを採用し、メール表示の文字サイズも3段階(N902iの場合)で設定できたのだが、今回のN902iSでは表示フォントが少し太くなり、文字サイズも4段階から選べるようにしている。Nシリーズとして、見慣れない新鮮さもあるだろうが、太くなったことで、視認性は良くなった印象だ。
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顔認証の画像は3枚、登録して利用する。画像名編集には顔認証を失敗したときに入力する文字列を登録しておく
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ICカードロックを解除するときは、顔認証に成功後、さらに暗証番号を入力する
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FOMA new9シリーズではおサイフケータイ対応の全機種が生体認証に対応し、セキュリティ面が強化されており、NECでは新たに「顔認証機能」を採用している。顔認証についてはすでにPシリーズやSHシリーズが採用しているが、Nシリーズの顔認証機能は他製品とまったくの別物だ。NECでは企業向けシステムに「NeoFace」という顔認証システムのソリューションを提供しているが、N902iSにはこれを携帯電話向けにアレンジした「NeoFace Mobile」が搭載されている。ちなみに、NeoFaceは空港の入退室管理システムなどにも採用されているという。顔認証を利用するには目線を合わせた顔写真を3枚、撮影しておき、ロックを解除するときは顔認証と暗証番号の二段階で認証することになる。
顔認証は撮影した認証用の写真の背景や明るさなどに影響されやすいが、N902iSの顔認証は登録用画像をきちんと撮影しておけば、少し暗めのところでも認識しやすく、認識もほんの一瞬で、かなり速いという印象が得られた。もっとも認識のレスポンスが良いシチュエーションなら、コンビニエンスストアで支払いをするとき、端末を開いて顔認証、続いて暗証番号入力という流れで、スムーズにICカードロックを解除できそうだ。使いやすさでは指紋センサーに一歩譲るが、過去に試した顔認証機能ではもっとも使いやすかったという印象だ。ちなみに、ICカードロックはダイヤルボタンの[3]の長押しでON/OFFができるが、解除後に自動的にロック状態に戻る機能はないので、解除後は忘れずにロック状態に戻すようにしたい。
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待受画面でニューロポインターを使い、日時やアイコンをクリックして、各機能を呼び出すことも可能
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また、セキュリティ面では従来から搭載されているシークレットフォルダ、PIMロックなどがサポートされている。シークレットフォルダは画像や送受信メールなどのデータを他人に見られないフォルダに保管しておく機能だ。PIMロックはメールやスケジュール、電話帳などの利用をロックする機能だが、メール、iモード、iアプリ、スケジュール、電話帳、テキストメモ、マイピクチャなどを個別にロックの設定ができる。これらに加え、NTTドコモがFOMA new9シリーズから提供している「おまかせロック」「電話帳お預かりサービス」にも対応している。
エンターテインメント機能では、SD-Audio対応の音楽再生機能、ワインラベルや音楽CDのジャケット写真、カタログなどをカメラで撮影して、商品情報が得られる「カメラでケンサク!ERサーチ」などが新たに搭載されている。SD-Audioはすでに他機種でもサポートされているが、パッケージには音楽管理ソフト「SD-Jukebox」のCDが同梱されており、FOMA USB接続ケーブルとminiSDメモリーカードを購入すれば、すぐに音楽再生機能を楽しむことができる。
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「カメラでケンサク!ERサーチ」は音楽CDジャケットやカタログなどを撮影して、商品情報を見たり、購入できる。今後が期待されるサービスのひとつだ
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「カメラでケンサク!ERサーチ」については、カメラを利用した新しい取り組みとして注目されるが、端末の発売以来、一部の機能が利用できないなど、準備中のようだったが、7月第2週にようやくプリインストールされているiアプリの情報が更新され、音楽CDジャケットの検索を含めた全サービスが開始されたようだ(と言ってもまだワーナーミュージックだけなのだが……)。通販カタログについてはディノス、ニッセン、千趣会(ベルメゾン)の最新号が対応している。サービス開始の立ち遅れは気になるが、NTTドコモ全体として取り組む方向であれば、今後に期待ができそうなサービスだ。
この他にもプッシュトークが閉じたままで利用できるようになったり、W-CDMA方式でサービスが提供されている3Gエリアでの国際ローミング対応など、細かい部分の改良点も多く、N902iSは従来モデルよりも確実に完成度を高めたという印象だ。
■ Nの進化を求めるユーザーは「買い」
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最近のケータイにはない独特のボディプリントを採用。個性的だが、なかなか面白いデザインだ
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さて、最後にN902iSの買いのポイントについて考えてみよう。Pシリーズと並んで、常にFOMA端末の定番に位置付けられるNシリーズ。FOMA端末ではかなり手堅い路線の端末が展開されてきたが、最近は少しずつ変化の兆しが見えている。
今回のN902iSはスーパーデジタル手ブレ補正というセールスポイントもあるが、実は象の柄をボディにあしらったピスタッシュグリーン、サブディスプレイ周囲にラメのような枠をはめこんだジュエルピンクなど、斬新なボディカラーとデザインもアピールできるポイントだ。ボディもボタン部と液晶ディスプレイ部の側面がきれいにつながったように見えるLink Face Designも美しく、デザイン的なこだわりも見られる。使い勝手の面ではMogic Engineによる日本語入力、NeoFace Mobileによる顔認証など、旧モデルよりも確実な進歩がうかがえる。
これらのことを総合すると、N902iSを「買い」と言えるのは、従来のNシリーズのユーザーで、確実に進化したNシリーズが欲しいというユーザーということになる。現在、NTTドコモの端末は旧機種と併売されているが、N902iとの比較で言えば、確実にN902iSの方がおすすめと言えるだろう。それは単に新しい機種だからではなく、メールやおサイフケータイを利用するとき、MogicEngineや顔認証機能は明確なアドバンテージになると言えるからだ。ただ、他のnew9シリーズとの比較においては、「この部分はN902iSがベスト」と言い切れる部分があまりなく、積極的な指名買いをするかどうかは少し疑問が残る。注目のスーパーデジタル手ブレ補正については、利用シーンによって、効果の有無が左右されるので、自分の利用シーンを把握したうえで、検討することをおすすめしたい。
■ URL
ニュースリリース(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/page/20060511a.html
ニュースリリース(NEC)
http://www.nec.co.jp/press/ja/0606/0503.html
製品情報(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/product/foma/902i/n902is/
製品情報(NEC)
http://www.n-keitai.com/n902is/
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(法林岳之)
2006/07/10 14:12
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