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豊富なバリエーションが充実したFOMA 2006年夏モデル
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、PDAに至るまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindowsXP基本編完全版」「できるVAIO 基本編 2004年モデル対応」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。asahi.comでも連載執筆中


 NTTドコモは5月11日、今年の夏商戦向け端末として、FOMA 902iSシリーズ8機種、FOMA 702iシリーズの追加モデル2機種、HSDPA対応データ通信カード1機種の合計11機種を発表した。NTTドコモがこれだけ多くの機種を一挙に発表・公開するのは、過去にもあまり例がなく、今秋に控えている番号ポータビリティへ向けた同社の強い意気込みが感じられる。詳細については、発表会のレポートを参照していただきたいが、ここでは発表会で試用した各端末の印象などをレポートしよう。



方向性にバリエーションが見えてきたFOMA

 現在、NTTドコモのFOMAは、主力モデルの90xシリーズ、普及モデルの70xシリーズ、企画端末などの8xxシリーズというラインアップで構成されている。昨年のFOMAは、70xシリーズが登場したことにより、全体のラインアップが拡充される一方、70xシリーズと90xシリーズの差別化がわかりにくくなったという声が聞かれた。今年1月に発表された702iシリーズはその反省を踏まえ、各モデルの個性をハッキリさせたラインアップで構成されている。

 今回発表された902iSシリーズは、基本的に昨年秋に発表された902iシリーズの正常進化版という位置付けになるが、こちらも個性をハッキリと打ち出した端末や新コンセプトのモデルが加わっており、ラインアップとしてもかなりバリエーションが増えたという印象だ。なかでもNTTドコモは今回、着うたフルのサポートや音楽再生機能の搭載などにより、ケータイで音楽を楽しむことを積極的にアピールしている。今回は発表されたモデル数が多いため、各機種ごとの試用時間はあまり長くないが、発表会で試用した印象を紹介しよう。


D902iS

D902iS

D902iS
 D902iでスライド式ボディをひとつの完成形にまとめあげたDシリーズだが、今回のD902iSはほぼ同じボディ形状を継承しながら、新たに方向キーの部分に「スピードセレクター」を搭載しているのが大きな違いだ。スピードセレクターはSO506iCのフロントジョグにも似た回転式のデバイスで、周囲のリング部分を回転させると、メニューが動くというしくみだ。通常の上下左右の動作も可能で、中央には決定ボタンを備える。操作感は軽快だが、リング部分の質感や耐久性が少し気になるところだ。

 また、スライド式ボディに欠かせないロック機構が改良され、SO902iなどでも実現されている「どこでもロック」が可能になっている。従来のD902iは待受画面にしなければ、誤動作防止ロックを掛けられなかったが、D902iSではメール作成中やコンテンツ閲覧中にロックを掛け、ロックを解除して、同じ画面から再開するといった使い方ができる。従来と同サイズの2.8インチのワイドQVGA液晶はさらに高輝度かつ高コントラストのものが採用されているが、のぞき見防止のためにメールの背景色と文字のコントラストを一時的に変化させる「オンリービュー」という機能が用意されている。SH902iのベールビュー液晶とはまったく手法が異なるが、利用目的としてはほぼ同じものであり、意外に便利なアイデアと言えるかもしれない。ちなみに、コントラストが下げられるのは文字と絵文字で、デコメールの文字については変化しない仕様のようだ。

 902iSシリーズ全機種でサポートされたバイオ認証については、D902iSはボイス認証を採用している。ただ、声による認証は周囲の環境にも大きく影響されるため、声を入力後に暗証番号を入力する仕様となっている。使い勝手やセキュリティ的にはまだ不十分な印象は否めないが、今までにない新しいアプローチとして、今後に期待したい。


F902iS

F902iS

F902iS
 指紋センサーや充実したセキュリティ機能で高い評価を得てきたFシリーズだが、今回はWindows Media Audioに対応した音楽再生機能がセールスポイントになっている。Windows Media AudioはWindowsに標準で搭載されているWindows Media Playerで利用できるほか、同形式に対応した音楽配信サービスなども提供されている。F902iSではこれらのサービスで入手した音楽データなどもパソコンとシンクロさせることで、利用できるようにしている。ちなみに、パソコンとの接続については、通常の通信モードやマスストレージモードではなく、Windows Media対応機器などで利用されているMTP(Media Transfer Protocol)モードが採用されている。

 指紋センサーについては、F902iやF702iDまでのようなテンキー部の下ではなく、背面側に装備されており、端末を閉じた状態でも操作できるようにしている。関係者によれば、F702iDのときも背面側に指紋センサーの搭載を検討していたが、モジュールの大きさの関係もあり、今回のF902iSで実現ということになったそうだ。F902iSでは指紋センサー部が外部にむき出しになるため、従来のものよりも耐久性などを考慮した別バージョンにモジュールが搭載されているという。

 また、F902iやF702iD以前は、ロックを解除するときなどに、指紋センサーによる認証か、暗証番号の入力を選択する仕様になっていたが、F902iSでは指紋センサーによる認証のみという設定もできるようにしている。ただし、この場合は複数の指紋情報を登録する必要がある。もし、解除できなくなったときは、通常の端末暗証番号を忘れたときと同じように、販売店で解除を依頼する必要がある。


N902iS

N902iS

N902iS
 スタンダードなFOMA端末という路線を堅持するNシリーズだが、今回も基本的な路線はあまり大きく変わっていない。ただ、カメラモジュールをボタン部背面側に移動したり、ボディをスリム化するなど、少しずつ変化を見せている。機構的には6軸対応のデジタル手ブレ補正が目新しいところだが、今回のように限られた環境での撮影ではその効果を十分に体験することができなかった。機能面では「カメラでケンサク! ERサーチ」がなかなか面白い。音楽CDのジャケットやワインのラベル、カタログなどを撮影することで、その商品に該当する情報サイトやショッピングサイトへ簡単にアクセスできるというものだ。実際の製品で、どのような情報サイトがガイドされるのかにもよるが、QRコードなどとはまた違った形で、カメラが活用できるサービスに発展する可能性もありそうだ。

 操作性は基本的にN902iと同じだが、メニュー画面はFlashによるアイコンがプリセットされている。ただ、このFlashのアニメーションがゆっくり動くため、一段と操作のレスポンスを悪く感じさせてしまっているのが気になった。このあたりは演出の領域でもあるのだろうが、もう少し操作の快適性を考えて、演出をして欲しいところだ。従来モデルから不評だった日本語入力は、ようやく予測変換に対応した。SD-Audio対応の音楽再生、3Gエリアでの国際ローミング対応など、機能的にも充実したが、今ひとつインパクトに欠ける感が残るモデルだ。


「カメラでケンサク!ERサーチ」
「カメラでケンサク!ERサーチ」 文字入力では次に入力されるであろう単語を予測する機能が新たに搭載される

P902iS

P902iS

P902iS
 カスタムジャケット、ワンプッシュオープンという特徴を持つPシリーズだが、今回のP902iSはP902iで搭載された音楽再生プロファイルをサポートしたBluetoothを継承するなど、基本的にはP902iの進化バージョンという位置付けだ。カスタムジャケットの形状は再び変更されたが、P901iSで好評を得た「ドットエリア」とP902iの「ヒカリ×カスタムジャケット」のコンセプトを融合させ、今まで以上に目立つ楽しいカスタムジャケットに仕上げられている。意外に面白いところでは、本体周囲(側面)の木目のような凹凸のある処理をすることにより、サイドキーやカバー類を目立たなくしている。手に持ったときの触感も今までのものと少し変わっているのも面白い。

 音楽再生については、従来のSD-Audioに加え、新たに着うたフルのダウンロードにも対応する。着うたフルについてはコンテンツプロバイダ次第のところもあるので、何とも言えないが、音楽再生の環境が一段と充実したことは魅力のひとつだろう。Bluetoothワイヤレスヘッドホンが同梱された「ミュージックエディション」も台数限定で提供されるが、パソコンと接続するUSBケーブルが同梱されないなど、今ひとつ不親切な印象も残る。

 セキュリティ周りでは顔認証のフェイスリーダーが新しくなり、設定によって、認証時にまばたきを求める(写真では認証できなくなる)ようにするなど、新しい工夫も盛り込まれている。メールやメニュー画面などの操作性については、基本的にP902iと同等で、レスポンスなどもほぼ変わらない。


フェイスリーダー(顔認証)では写真でのなりすましを防ぐ機能も 「ミュージックエディション」も用意される
側面部には、凹凸のある処理 フェイスリーダー(顔認証)では写真でのなりすましを防ぐ機能も 「ミュージックエディション」も用意される

SH902iS

SH902iS
 902iシリーズでは好調な売れ行きのSHシリーズだが、今回のSH902iSはSH901iSのときのようなアルミ素材を採用したデザインでまとめている。SH901iC、SH901iS、SH902iと3モデルで継続してきた二軸回転式ボディはやめ、今回は通常の折りたたみデザインを採用している。二軸回転式ボディをやめた理由としては、背面ディスプレイの要望が多かったこと、音楽再生時のディスプレイ表示が必要だったことなどが関係しているそうだ。いずれせよ、従来モデルからの買い換えユーザーは間違って、ディスプレイ部を無理やり回さないように注意したい(笑)。

 SH902iSで特徴的なのは、最長22時間の連続再生が可能な音楽再生機能だ。残念ながら、詳細は明らかにされなかったが、音楽データをデコードするための専用チップが搭載されており、ベースバンドチップのみでデコードしている他機種よりも長時間の音楽再生が可能になっているようだ。

 カメラについてはSH902iと同じ320万画素CCDを採用しているが、SH902iSではAFがコンティニュアスAFになり、動画、静止画ともに常にピントの合った映像を撮影できるようにしている。撮影した画像などの転送に便利なものとして、新たに最大4Mbpsでの高速通信が可能な赤外線通信「IrSimple」に対応した。今回は富士フイルムのキヨスク端末(プリント端末)に転送するデモを見たが、3.2メガピクセルカメラで撮影した約700KBの画像をほんの1~2秒で転送してしまった。今後、対応機器がどれだけ登場するのかにもよるが、ぜひ多くの機種に搭載して欲しい便利な機能と言えるだろう。


アルミ素材の折りたたみ型ボディ 「IrSimple」対応で、約700KBの画像もすぐ転送できた
アルミ素材の折りたたみ型ボディ 「IrSimple」対応で、約700KBの画像もすぐ転送できた

DOLCE SL

DOLCE SL

DOLCE SL
 昨年秋に発売され、オトナのケータイとして、話題を集めたDOLCE。その後継モデルに位置付けられるのが今回の「DOLCE SL」だ。モデルネームは「DOLCE SL」となっているが、型番としては「SH902iSL」となっており、基本的なベースはSH902i及びSH902iSとなっている。

 従来のDOLCEはらくらくホンなどと一線を画したデザインや質感で高い評価を得たが、iアプリ非対応や赤外線通信非搭載など、今ひとつ機能的に物足りなさが感じられる面もあった。これに対し、DOLCE SLはカメラなどのごく一部を除けば、SH902iSとほぼ同等のスペックを実現しており、事実上、SH902iSのバリエーションモデル的な存在となっている。おサイフケータイ、iチャネル、プッシュトークなどのサービスにも対応する。とは言え、DOLCE SLがターゲットとするユーザー層のこともきちんと考慮されており、プライバシーを簡単にガードできる「まとめて簡単ロック」、文字サイズのワンタッチ切替など、使い勝手をよく考えた機能が搭載されている。

 レザーの質感が印象的なボディは、従来に比べ、薄くなり、背広のポケットにもかさばらないサイズにまとめられている。全体的に見て、従来のDOLCEよりも幅広い年代層に受け入れられそうな印象だ。


SO902iWP+

SO902iWP+

SO902iWP+
 902iシリーズから本格的にFOMA端末を投入したSOシリーズは、SO902iをベースにした防水モデル「SO902iWP+」をリリースした。auでは昨年、耐水・耐衝撃性を確保したG'zOneが復活して、話題になったが、NTTドコモのラインアップにはmovaにR692iがあるのみで、FOMAには防水モデルがなかった。

 ボディデザインはSO902iにもう少し丸みを持たせたような印象で、ダイヤルボタン部分はpremini-IIのバータイプを彷彿させる。防水についてはIPX7等級としており、G'zOne TYPE-RのJIS保護等級7相当とほぼ同じと考えていいようだ。底面のキャップの内側には、外部接続端子部とメモリースティックDuo用スロットを備える。防水モデルでありながら、メモリカードスロットを装備したのは、おそらく国内のケータイでは初だろう。ただ、耐衝撃性を考慮したボディになっているわけではないので、その点は注意が必要だ。

 パッケージにはボディを覆うように装着できる「アクティブホルダ」が付属しており、ベルトやカバンなどに付けて、持ちやすくしている。カメラのスペックなどは、SO902iに譲るが、防水という機能は他機種にないアドバンテージであり、夏へ向けて、注目度の高い端末と言えるだろう。


発表会では水に浸けるデモも カードスロットは底部
発表会では水に浸けるデモも カードスロットは底部

SA702i

SA702i

SA702i
 昨年発売されたFOMA初のGPSケータイ「SA700iS」の後継モデル。スペック的にはあまり大きな変更はないが、新たにiチャネルに対応し、電子コンパス、FMラジオが搭載された。90xシリーズに比べると、地味な印象もあるが、SA700iSやキッズケータイのSA800iと同じように、操作のレスポンスは非常に良い。おそらく、現行で販売されているFOMAの中でもトップクラスの快適さと言って、差し支えないだろう。


SO702i

SO702i

SO702i
 ソニー・エリクソン製端末としては、初のFOMA 70xシリーズ。基本的なソフトウェアはSO902iとほぼ同等だが、ボディが折りたたみになり、カメラが130万画素CMOS(パンフォーカス)、液晶ディスプレイが2.2インチQVGAサイズになっている点などが異なる。サービス対応としては、iアプリの容量なども異なる。70xシリーズでは最小の75ccサイズで、丸みを帯びたボディは非常に持ちやすい。

 特徴的なのはディスプレイ部背面と電池カバーの両方を交換可能にした「デュアルスタイル」と呼ばれる着せ替えパネルだ。電池カバー側は通常のものと変わらないが、液晶ディスプレイ部背面側のパネルは先端にある着信LEDが着脱ボタンの役割を兼ねており、押下することで、パネルを取り外すことができる。オプションで販売されるパネルも単色のシンプルなものではなく、グラフィカルなものが多いため、個性を主張したいユーザーは要チェックだろう。パネルの価格は明らかにされてなかったが、他の多くの着せ替えパネルが1枚であるのに対し、デュアルスタイルは2枚組あることを考えれば、2,000円弱程度になるのではないだろうか。


着せ替えパネル「デュアルスタイル」をサポート オプションのパネルはさまざまなデザインが用意される
着せ替えパネル「デュアルスタイル」をサポート オプションのパネルはさまざまなデザインが用意される

N902iX HIGH-SPEED

N902iX HIGH-SPEED

N902iX HIGH-SPEED
 FOMA初のHSDPA対応モデルだ。今回はモックアップの展示のみで、実際に動作するデモなどは行なわれていない。デザインは背面ディスプレイ側のステレオスピーカーが強調されているため、少しゴテゴテしたような印象もあるが、サイズ的にはN902iなどとほぼ変わらない。関係者によれば、「今回発表されたモデルの内、おそらくもっとも遅くに発売されることになりそう」とのことだ。HSDPAのパフォーマンスチェックなども含め、別の機会に試用できることを期待したい。


バラツキのある90xシリーズの共通仕様

 今回発表された機種の内、FOMA 90xシリーズに位置付けられるのは全8機種だ。過去のNTTドコモの主力モデルでは、一定の共通仕様があり、その他に機種ごとに特徴的な機能が搭載されるというイメージだった。しかし、今回の90xシリーズは仕様にかなりバラツキがあり、それらを十分に見極めたうえで、モデルを選ぶ必要がありそうだ。

 たとえば、今回のFOMA 90xシリーズで全8機種の共通仕様となっているのは、NTTドコモのクレジットサービス「DCMX」のiアプリ、リモート予約に対応した「Gガイド番組表リモコン」のiアプリのみ。今回の発表会でもっとも力が入っていた音楽再生については、全8機種がサポートしているものの、機種によって方式が違ううえ、着うたフルについても2機種がサポートするのみ。ポッドキャスティングのような予約配信型サービスの「ミュージックチャネル」を利用できるのもHSDPA対応のN902iX HIGH-SPEEDのみだ。

 また、おサイフケータイによるクレジットサービスが開始され、今まで以上にセキュリティ機能が注目されているが、こちらも対応に差があり、バイオ認証(生体認証)をサポートしているのが5機種、NTTドコモのオペレーター経由でICカード機能や電話帳をロックできる「おまかせロック」対応が7機種といった具合いだ。新サービスなどの対応としては、音声通話の発信時に文字メッセージを伝えられる「着もじ」が7機種、新たに事業者免許を受けた1.7GHz帯への対応が5機種、W-CDMA方式による国際ローミング対応が2機種となっている。

 こうなってくると、機種ごとに○×で表でも作りたくなるところだが、各機能やサービスの対応を見る限り、やはり、本来の90xシリーズの主力に位置付けられるのは「iS」が付けられた5機種のみで、その他の3機種はバリエーションモデル的な存在のようだ。こうした機種ごとの個性を際立たせたラインアップは、9,000万契約超という現在の市場を考えれば、ひとつの方向性としては正しいのかもしれないが、もう少しユーザーにとって、わかりやすく選びやすいラインアップにならないものだろうか。ユーザーが事前にじっくりと確認をしなければ、新端末を買ったのはいいが、使いたかったサービスに非対応だったり、機能が搭載されていないという事態になってしまう。


気になる旧機種との差別化

 機種別で細かく見ると、N902iS、P902iS、D902iSは従来モデルとの共通点が多く、マイナーチェンジの印象が強く残る。逆に、F902iSは新たにWMAに対応し、セールスポイントの指紋センサーの位置も背面に移動するなど、大きく変わった感がある。SH902iSも二軸回転式ボディをスタンダードな折りたたみボディに変更し、最大22時間の音楽連続再生を可能にするなど、ハッキリと新しい方向性を打ち出している。決して、マイナーチェンジ的なアプローチが悪いわけではないが、現在、店頭ではひとつ前のFOMA端末が割安な価格で併売されており、従来モデルとの差が少ない機種では、旧機種が好調に売れるという現象が起きている。そのため、マイナーチェンジ的に見られてしまう3機種については、新機種として扱われる間、厳しい販売競争を強いられることになるかもしれない。

 また、高速版FOMAとして期待されているHSDPAも実際の端末を利用したデモンストレーションがなく、対応機種もモックアップのみの展示で、やや肩すかしの感が残った。HSDPAのサービス開始を機に、N901iSへの搭載以降、順次、搭載端末が増えてきたフルブラウザでパケ・ホーダイが適用されるのではないか(現在はパケ・ホーダイの対象外)など、新しい発表への期待もあったが、そういった料金体系に関わる発表はなく、ミュージックチャネルのサービス開始が発表されたのみだ。HSDPAは今後、数年を掛けて、FOMAの主力に位置付けられていく通信方式と言われているだけに、もう少し具体的な展開などをアナウンスして欲しかったところだ。

 今回発表されたFOMAの新機種及び新サービスは、全体的に見て、やや統一感に欠ける印象も残ったが、個々の機種は熟成度を高めており、ラインアップは確実に充実している。これらのラインアップから自分のニーズにマッチした端末を選ぶことができれば、高い満足感を得られそうだというのが筆者の第一印象だ。実際に端末が店頭に並ぶまでは、もう少し時間があるだろうが、実機が発売された段階で本誌の新製品SHOW CASEやレビューなどをじっくりと読んで、自分にとっての「当たり」の機種を選んで欲しい。



URL
  NTTドコモ 新機種紹介ページ
  http://www.nttdocomo.co.jp/product/902new/

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(法林岳之)
2006/05/15 15:19

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