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NTTドコモ/NEC『N901iC』。サイズ:48×102×26mm(折りたたみ時)、119g。シェルピンク(写真)、ビターチョコ、パウダースノー、スパイクブルーをラインアップ
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901iシリーズで各開発メーカーがデザイン的に新機軸を打ち出す中、900iシリーズを継承するデザインを採用したNEC製端末「N901iC」。手堅いデザインを採用する一方、スペック的にはより大画面のQVGA+液晶やiモード FeliCaを搭載するなど、一段とパワーアップしている。筆者も実機を購入したので、レポートをお送りしよう。
【この端末のチェックポイント】
- デュアルトーン採用の端末デザイン
- テレビ電話&ビジュアル機能
- 基本機能
- こんなユーザーにおすすめ
■ デュアルトーン採用の端末デザイン
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デュアルトーンデザインのボディはスッキリまとめられている。ヒンジ側には着信LEDが装備されている
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ケータイのデザインには、開発メーカーごとに方向性やカラー、キャラクターがあると言われる。そうし個性がユーザーのハートをつかみ、「○シリーズでなければ……」といった選択を生んでいる。
今回紹介するNTTドコモのNEC製端末「N901iC」は、開発元であるNECの個性を改めて強く印象づけた端末だ。NECはiモードの登場以降、ディスプレイの背面側にアンテナを装備した(背負った)折りたたみデザインで、定番の地位を獲得した。FOMAではN2001、N2051と少しずつデザインに変更を加えてきたが、N900i以降は一貫して、統一感のあるデザインを踏襲し、今回のN901iCにも継承している。
ボディはアンテナレスのスマートなデザインで、基本的なレイアウトはN900iやN900iSと変わらず、側面のアークラインと名付けられた曲線も健在だ。しかし、サブディスプレイ側のパネルを「デュアルトーン」と呼ばれるデザインを施すことで、全体的なイメージを変えている。デュアルトーンは質感や風合い、手触りなどが異なる2つのテクスチャをレイアウトすることで、縦方向のツートンボディを実現している。4色が用意されたボディカラーの内、シェルピンクとパウダースノーは格子状のテクスチャ、スパイクブルーはややマットなブルーのテクスチャ、ビターチョコはレザー調のテクスチャが貼り付けられ、それぞれに個性を主張している。
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側面のアークラインはN900iやN900iSから継承。サイドキーは左側面のみに装備される
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N900i(左)のデザインを継承したが、差別化が今ひとつ足りないという声も多い
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カメラ周りの処理も若干変更されたが、先端部にマクロ撮影用の切り替えスイッチが装備されている点は、N900iSと共通だ。サブディスプレイ横には赤外線通信ポートやカメラ用ライトが内蔵され、一体感のあるデザインに仕上げられている。全体的に見て、非常にスッキリときれいにまとめ上げられたデザインで、N900iやN900iSよりも一段とスタイリッシュに仕上げられたイメージだ。
ただ、他のFOMA 901iシリーズと比較した場合、デザイン的に気になる部分もある。というのも他のFOMA 901iシリーズは、従来モデルとデザイン的に差別化を図っている。これに対し、N901iSは基本デザインを踏襲しているため、ケータイに詳しくない人から見れば、今ひとつ目新しさを感じない。人によっては「NのFOMAの新色かな?」「ちょっとお色直しをした?」といった程度の印象しか持たれないことも考えられる。
それを裏付けるように、販売の現場からは昨年発表のN900iやN900iSの在庫が残っており、価格的にもN901iCを売りにくいという声も聞こえてくる。この点はNシリーズがどうこうというより、NTTドコモの販売戦略に関わる部分でもあるため、端末の魅力に直接、関係ないかもしれないが、ユーザーとしても昨年、周囲の人が購入したN900iやN900iSとあまり見栄えが変わらないというのは、今ひとつ積極的に選択しにくい面もあるだろう。
■ テレビ電話&ビジュアル機能
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QVGA+の液晶ディスプレイを活かし、サイト接続中に辞典(英和・和英・国語辞典)を参照できる。下段には時刻も表示される
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デザイン的には従来モデルとの差別化が今ひとつなN901iだが、機能的にはどうだろうか。N900iとN900iSでは、実質的にデコメールのテンプレートの有無程度しか差がなかったが、N901iCは世代が異なることもあり、スペックや機能面での向上が見られる。
たとえば、液晶ディスプレイは、QVGAサイズよりも縦に長い240×345ドット表示が可能な2.3インチのQVGA+液晶を採用している。auのカシオ製端末「W21CA」のワイド液晶には及ばないが、最大級の解像度である、メールやコンテンツ閲覧時などに効果を発揮する。iアプリ実行時などに起動中のタスクや時計が表示できるのも実用的なメリットだろう。
また、FOMAのセールスポイントのひとつであるテレビ電話の機能も充実しており、N901iC特有の機能として、「デコレーションテレビ電話」「プチメッセージ」「ビジュアルチェック」という3つの機能が搭載されている。
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テレビ電話の各機能は通話中に機能メニューから切り替える必要がある
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デコレーションテレビ電話はカメラ機能でおなじみのフレームやスタンプをテレビ電話に活かしたもので、テレビ電話の通話画面を装飾するものだ。フレームやスタンプは顔の動きにも追従するのだが、切り替え操作をテレビ電話通話中に[機能]メニューから操作しなければならず、やや煩雑な印象が残る。できれば、ショートカットキーなどでワンタッチで選択画面に移行できるようにして欲しいところだ。プチメッセージはテレビ電話の通話中に文字メッセージを送出できる機能で、チャット感覚で楽しめるが、相手のテレビ電話の画面によっては、文字が隠れてしまうこともある。
ビジュアルチェックはテレビ電話に出る前に、イン側のカメラで身だしなみをチェックできる機能だ。女性ユーザーには気になる機能だが、実際にはテレビ電話が掛かってきたとき、まずは通常の[開始]ボタンで応答して、相手に代替画像を送出。N901iC側で[機能]メニューからビジュアルチェックを起動し、身だしなみをチェックした後、[テレビ電話]ボタンでテレビ電話による通話に切り替えるという手順を踏まなければならない。最初の応答時にビジュアルチェックを選択できるようにすれば、使い勝手も良くなるだろうが、極端な話を言えば、イン側のカメラを何かでふさいだり、とりあえずはキャラ電で応答しておいて、身近にある鏡を使う方が現実的な解のような気もするのだが……。ただ、ニーズが十分にあるものなので、もう少し使い勝手の改善を期待したい。
■ 基本機能
FOMAではパナソニック製のPシリーズと基本ソフトウェアを共通化しているNシリーズだが、901i世代でもその共通プラットフォームは基本的に継承されている。
メニュー画面は9分割のアイコン式だが、もう一階層深い各メニュー内は一覧形式を採用している。MAIN MENU画面でもう一度、[Menu]ボタンを押すと、ユーザーが自由にカスタマイズできる「オリジナルメニュー」が表示されるが、一覧形式でしか利用できない。他の901iシリーズをはじめ、ユーザーがカスタマイズできるメニューを登録できる機種が増えているが、最近はアイコン形式で表現される機種が主流となっており、やや仕様的に古い印象は否めない。
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9分割式のアイコン表示のMAIN MANU画面。カーソル上のアイコンの内容が上段に表示される
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デスクトップに貼り付けたアイコンだけでなく、日付や時間を選ぶことで、スケジュールやめざまし時計を起動できる
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最近のFOMAのNシリーズでは、デスクトップにメールアドレスや電話番号、URL、機能などのアイコンを貼り付け、ニューロポインターを操作することで、すぐに機能などを呼び出せる「デスクトップアイコン」という機能が提供されている。N901iCではユーザーが貼り付けたアイコンだけでなく、待受画面に表示されている日付や時間、メールアイコン、マナーモードアイコンなどを選択することで、スケジュールやめざまし時計、メール、マナーモードの設定変更画面などを呼び出せるようにしている。メニュー画面から機能を探して呼び出す必要がなく、非常に便利に使うことができる。
メールはフォルダによる管理に対応し、メールアドレスや題名、返信不可/送信失敗、メールメンバー、電話帳グループなどの条件による自動振り分けも設定可能だ。ただし、題名についてはひとつのフォルダにひとつの題名しか条件として設定できない。Nシリーズでおなじみのゴミ箱フォルダも継承され、フォルダ単位でセキュリティを設定できるメールセキュリティ、フォルダの並び替えも利用できる。ちなみに、セキュリティ設定は送信BOX、受信BOX、保存BOXに対して設定でき、端末暗証番号を入力することで解除できる。フォルダの存在を隠すといった機能はない。
日本語入力は一般的なマルチタップ式や2タッチ入力に加え、NシリーズでおなじみのT9入力に対応する。T9入力はかな候補を選んでから漢字に変換する「T9かな変換モード」に加え、直接、漢字の変換候補が表示される「T9漢字変換モード」にも対応する。
カメラは外側に有効画素数100万画素(記録画素数200万画素)のCCDカメラ、有効画素数11万画素のCCDカメラを採用する。カタログなどには表記されていないが、外側カメラは従来同様、富士写真フイルム製のCCDハニカムが採用されているようだ。カメラ周りの新機能としては、肌色や明るさ、ホワイトバランスなどを自動的に補正する「ピクトマジック」が搭載されている。ピクトマジックはNECが開発した独自の画像処理技術で、N901iCだけでなく、N253iやN700iなどの最新のNEC製端末、ビジネス向けソリューションなどにも採用されている。
また、動画撮影ではN900iでも好評を得た「チャンスキャプチャ」が継承されている。チャンスキャプチャはムービーの撮影を開始し、撮影を終了した時点から設定した時間分(出荷時は約45秒)までさかのぼって保存できる動画撮影機能だ。カメラをムービーモードで起動し、通常のムービー撮影からチャンスキャプチャに切り替える必要はあるが、決定的な瞬間を逃したくない撮影には非常に便利な機能だ。
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最大サイズで撮影した画像も「iモードメール作成」を選べば、QVGAサイズなどに変換して、すぐに送信することが可能
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サムネイル表示は本体メモリーとminiSDカードに保存したときで表示が異なる。画面はminiSDカード内
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撮影した画像はサムネイル及び一覧形式で閲覧できるが、サムネイル形式は本体メモリーに保存したときが9分割、miniSDカードに保存したときが4分割表示される。N900iでは編集機能を使い、撮影した画像を適切なサイズに変換しなければ、メールに添付することができなかったが、N901iCでは最大サイズ(1616×1212ドット)で撮影した静止画を「そのまま添付」「QVGA縮小添付」「QVGA切り出し添付」から選んで、すぐにメールを作成できるようにしている。
さらに、N901iCは型番からもわかるように、iモード FeliCaに対応する。残念ながら、F901iCなどのようなICカードロック機能は用意されておらず、901iシリーズの標準仕様である遠隔オールロックなどでセキュリティを確保するしかない。
■ アークライン&デュアルトーンが好きなら「買い」
最後に、N901iCの買いのポイントについて考えてみよう。901iシリーズの中でも従来モデルの端末デザインを継承しながら、新しいデザインに仕上げたN901iC。デュアルトーンや抗菌対応など、女性ユーザーを強く意識した端末という印象だが、QVGA+液晶やカメラなどのスペック面も充実している。機能的にはスケジュールなどをすぐに起動できるように進化したデスクトップ、テレビ電話を楽しく演出するデコレーションテレビ電話やプチメッセージなど、実用性と使い勝手も考慮されている。二軸回転式ボディやスライド式ボディ、ワンプッシュオープンといった派手さはないものの、スタンダードなモデルを目指して、手堅くまとめられた印象だ。
これらのことを考えると、N901iCを買いと言えるのは、アークラインやデュアルトーンといった端末デザインを評価するユーザー、デコレーションテレビ電話などでテレビ電話を積極的に楽しみたいユーザーということになる。端末デザインはユーザーによって、好みが分かれるだろうが、確かにN901iCのアークラインは通話時のスタイル(顔に端末を当てた状態)がきれいで、自分が端末を使っている姿を意識する女性ユーザーにはなかなかウケがいい。
ただ、判断を迷わせるのは、前述の旧機種、そして700iシリーズの存在だ。写真を見てもわかるように、N901iCは昨年発売されたN900iやN900iSと基本的なデザインコンセプトが共通化されているため、最新機種を買ったとしても今ひとつ目新しさが感じられない可能性がある。ほぼ同じ時期に購入したのに、価格差は1万円、見た目の差はわずか、機能差もわずかというレベルでは、大枚をはたいてN901iCを買ったユーザーは納得できなさそうだ。デザイン的には異なるが、同様に機能差の少ない700iシリーズも選択に加えるとなると、ユーザーとしてはかなり迷ってしまうだろう。「これ!」という決定打がないスタンダードな端末だけに、N901iCは選択が難しい端末と言えそうだ。最終的には、ボディカラーを含めた外見で判断するしかないかもしれない。
■ URL
ニュースリリース(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/05/whatnew0125a.html
ニュースリリース(NEC)
http://www.nec.co.jp/press/ja/0501/2503.html
製品情報(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/p_s/products/foma/901i/n901ic/
製品情報(NEC)
http://www.n-keitai.com/n901ic/
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(法林岳之)
2005/04/28 12:05
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