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海外でのお役立ち機能を充実させた「A1303SA」
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、PDAに至るまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindowsXP基本編完全版」「できるVAIO 基本編 2003年モデル対応」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。(impress TV)も配信中。


CDMA2000 1x初のGLOBAL PASSPORT対応端末

 auの国際ローミングサービス「GLOBAL PASSPORT」は2000年4月にサービスを開始し、現在では日本人が渡航する約6割のエリアをカバーするに至っている。CDMA2000 1x初のGLOBAL PASSPORT対応端末として、新たに「A1303SA」が発売された。実機を試用することができたので、レポートをお送りしよう。


本格的な競争が始まる国際ローミング

au/三洋テレコミュニケーションズ『A1303SA』サイズ:47(W)×92(H)×23(D)mm(折りたたみ時)、101g。ジュエルレッド(写真)、ティアラシルバー、レジェンドネイビーをラインアップ
 私たちにとって、今やケータイは片時も手放せないアイテムになりつつある。オフィスや学校といった日常生活はもちろん、週末のお出かけや旅行といったときにも欠かせないアイテムだ。しかし、これまで国内のケータイはPDC方式という日本独自の通信規格を採用していたため、海外に持って行っても利用することができなかった。

 そんな状況を打破したのが2000年4月にau(当時のDDI-セルラーとIDO)が開始したcdmaOne端末による国際ローミングサービス「GLOBAL PASSPORT」だ。当時のDDI-セルラーとIDOは、cdmaOneを開始するときから国際ローミングを公約(今どきの言葉なら「マニフェスト」)として掲げており、2002年に日韓で行なわれたサッカーのワールドカップでは日本と韓国の間での国際ローミングも実現するとしていた。読者のみなさんもご存知の通り、この公約は見事に果たされ、GLOBAL PASSPORTは手軽な国際ローミングサービスとして、一定の支持を得ている。

 これに対し、NTTドコモやJ-フォンも国際ローミングサービスを開始し、国内のケータイ市場も国際ローミングの本格的な競争が始まろうとしている。NTTドコモはPDC向けに端末を交換する形で提供する「WORLD WALKER」を提供しているが(一部、デュアルモード端末も提供)、2003年6月1日からFOMA向けにFOMAカード(USIMカード)による国際ローミングサービス「WORLD WING」を開始している。J-フォンはVodafoneグループ傘下に加わったことにより、急速に国際サービスが強化されており、「Vodafone Global Standard」では世界で最も普及しているGSM携帯電話による国際ローミングも実現している。法務省の統計によれば、日本人の出国は1年間に1,652万人(2002年現在)に達しており、国際ローミングのニーズはビジネスマンだけでなく、一般ユーザーにも今後、高まってくる可能性が高い。

 今回紹介する三洋テレコミュニケーションズ製端末「A1303SA」は、CDMA2000 1x初のGLOBAL PASSPORT対応端末だ。GLOBAL PASSPORT対応端末としては、同じ三洋テレコミュニケーションズ製「C1001SA」「C412SA」「C111SA」に続くモデルとなる。GLOBAL PASSPORTは冒頭でも触れたように、すでに日本人が渡航する約6割のエリアをカバーしており、国内契約のまま、海外に出かけてもすぐに使えるというメリットを持つ。海外で利用できるのは音声通話のみだが、国内では通常のA1300シリーズと同じように使うことができる。

 また、A1303SAは31万画素のCCDカメラも内蔵しており、カメラ付きケータイとしても標準的なスペックを持つ。残念ながら海外で撮影した画像を日本にメールで送信するというところまでいかないが、海外旅行や出張のお供としても十分に活躍できる。実機を見ながら、その出来をチェックしてみよう。


ユニークなミラーディスプレイを採用

最近の折りたたみデザインのケータイの中でもかなりコンパクトな部類に入る
 製品のスペックや細かい仕様については、au三洋テレコミュニケーションズの製品情報ページ、近日掲載予定のケータイ新製品SHOW CASEを参考にしていただくとして、ここでは筆者が試用した端末で得られた印象を中心に紹介しよう。

 まず、ボディは最近、三洋テレコミュニケーションズが他事業者向けに提供しているものと同じように、折りたたみボディながらもコンパクトにまとめられている。伸縮式のアンテナはヒンジ側に装備され、背面にはディスプレイとフラッシュ/ポケットライト、着信LEDなどを備える。

 ディスプレイはメイン側が132×176ドット/26万色表示が可能な2.1インチTFTカラー液晶、背面側の「おしらせディスプレイ」が76×64ドット/26万色表示が可能な1.1インチTFTカラー液晶をそれぞれ採用する。これらのうち、メインディスプレイは待受時に右上のキーを押すと、画面がミラー表示になるというユニークな仕様を採用している。ちょっとしたお化粧直しや身だしなみのチェックなどには便利なもので、女性ユーザーにはうれしい機能のひとつだろう。


メインディスプレイは132×176ドット表示が可能。発色や明るさは十分 背面ディスプレイは76×64ドット表示の横長サイズ。時計や電波状態、着信状況などが表示できる

ボタン類はカーソルキーを中心にレイアウトしているが、配列はややクセのあるレイアウト
 ボタン類は方向キーと決定ボタンを中心に配し、左右上には場面によって機能が変わる[フレキシブル]キー、左下に[クリア]キー、右下に[SUB]キーをレイアウトする。発話時に使う[開始]キーと終話時に使う[終了]キーの間には、[メール]キーと[ez]キーを割り当てている。左側面にある[サイド]キーサブディスプレイのバックライト点灯や簡易留守メモの起動などに利用し、長押しでポケットライトを点灯させることもできる。中央の方向キーは上方向が着信履歴、下方向が発信履歴、左がアドレス帳、右がカレンダー表示となっている。発着信履歴は他機種でもよく採用されているが、左右キーにこれらの機能を割り当てる端末はあまり多くない。この他にもA1303SAはボタン類の配列が他社製端末とかなり違う印象で、若干の慣れが必要になる。右下の[SUB]キー、左下の[クリア]キーなどの使い方を覚えると、多少は慣れやすいだろう。


女性が利用することを考えた迷惑対策機能

メインのメニュー画面は6分割表示でわかりやすい

メールはフォルダ管理に対応。自動振り分けにはメールアドレスだけでなく、ドメイン名も設定可能
 次に、機能面を見てみよう。まず、メールについてはフォルダによる管理に対応しており、メインフォルダ以外に10個のフォルダが出荷時に設定されている。振り分けの条件はメールアドレスやアドレス帳のグループを登録することができるが、ドメイン名を指定することも可能だ。特定のドメインの人とメールをやり取りするユーザーには便利だろう。また、メールについてはパステルメールに対応する。パステルメールは背景色や文字色を24色から選択し、カラフルなメールを作成できる機能だ。パソコンのHTMLメールに近い印象のものと考えれば、わかりやすいだろう。ただし、パステルメールをやりとりできるのはA1303SAとA1302SAに限られている。

 また、女性ユーザーが利用することを考慮してか、迷惑電話への対策機能も充実しており、あらかじめ指定した時間内の着信(いわゆるワンギリ)を判別する「ワンコールカット機能」、特定の電話番号からの着信を拒否する「ゲキタイ機能」などが搭載されている。設定にやや手間が掛かる感もあるが、取扱説明書を見ながら設定すれば、初心者でも何とか設定できるだろう。余談だが、取扱説明書については索引なども含め、ややわかりにくい印象が残った。コストの問題もあるだろうが、もう少しユーザー層を意識した改良を期待したいところだ。

 カメラについては、前述のように、31万画素の高感度CCDを搭載し、静止画とムービーの撮影に対応する。撮影できる静止画サイズは640×480ドットの「PCモード」、120×160ドットの「ケータイモード」の2種類で、ムービーについては96×80ドットのSサイズムービーのみを撮影することが可能だ。ただし、ムービーの再生については、128×96ドットのMサイズムービーにも対応するため、他のauのムービーケータイから送られてきたムービーメールも再生することが可能だ。カメラは待受画面時に左上の[フレキシブル]キーを押すか、メインメニューから[カメラ]を選ぶことで起動できる。

 撮影時の機能としては最大4.5倍の「デジタルズーム」、周囲の光源を電球や蛍光灯などから選べる「ホワイトバランス」、9枚の連続写真が撮影できる「連写」、ナイトシーンとスポーツシーンが選べる「シーンセレクト」、セピアやモノクロなどの「特殊効果」、撮影した日付を写し込む「日付スタンプ」、「フレーム」などが用意されている。ライティングについては、全体を明るく照らす「ライト」とシャッターを押すときに光る「フラッシュ」を選んで光らせることが可能だ。また、本体を閉じ、サブディスプレイを見ながら撮影することも可能だ。各機能については、カメラ起動時の[サブメニュー]内にある[ガイド]で操作方法を参照することが可能だ。


カメラは31万画素の高感度CCDを採用。カメラ横には「高輝度プチフラッシュ」を備える カメラ起動時のサブメニュー。画面最上部のアイコンで「PCモード」「フラッシュ自動発光」に設定されていることがわかる

 撮影した画像については、「拡大/縮小」、「トリミング」、「フレーム枠」や「スタンプ」の貼り付け、「テキスト」の貼り付け、セピアやモノクロなどの「特殊効果」、「回転」などの機能を使い、編集することが可能だ。ちなみに、PCモードで撮影した画像はサイズが大きく、そのまま編集できないため、1/4サイズに縮小して編集する仕様になっている。ムービーについては「テロップ」の追加や「アフレコ」などの編集機能を利用することが可能だ。


VGAサイズのサンプル画像。空港までの移動中のバス内で撮影(リンク先の画像は無加工) 撮影した画像を切り抜くことも可能。拡大/縮小を合わせて利用すれば、かなり自由な画像編集ができる

GLOBAL PASSPORT端末らしい機能も搭載

メニュー画面左上の[グローバル機能]にGLOBAL PASSPORT関連機能がまとめられている
 さて、GLOBAL PASSPORT端末の機能はどうだろうか。さすがに、複数の利用可能エリアで試すことはできないため、先日、韓国に出かけた際に、実際に日本から電話をしてもらい、通話テストをしてみた。当然のことながら、通話は問題なくできたが、A1303SA側の受話音質が日本でCDMA2000 1x対応端末を利用しているときと変わらない音質だったのに対し、日本側では「国際電話らしい音質」だったという。ただ、こうした音質は電波状態や海外の携帯電話ネットワークの仕様などによっても変わるため、必ずしも同じ音質で通話できるとは限らないことを付け加えておく。

 ところで、GLOBAL PASSPORTは今のところ、海外では音声通話のみが利用できるが、物は試しとばかりに日本からCメールを送ってもらった。結果はもちろん、Cメールが国際ローミングに対応していないため、成田空港に戻るまで、その内容を見ることはできなかった。

 A1303SAを持ち、海外に出かけたときは、現地に到着した時点でまず接続する携帯電話ネットワークを切り替える必要がある。メインメニュー内の[グローバル機能]で[エリア設定]を選択し、到着したエリアをリストから選ぶ。リストにない地域はオリジナルで登録することが可能だ。国際ローミング中は写真のように、メインディスプレイにローミングのマークとローミング先のエリア名を表わすアイコンが表示される。今回は滞在期間が1カ所で、時間も短かったため、日本と韓国以外での表示を見ることができなかったが、正しくローミングができていることを確認する意味でもこうした表示は必須だろう。


滞在地に着いたら、[グローバル機能]のメニュー内で「エリア」を設定する 韓国でローミング中の画面。最上段の「Rm」がローミング中であること、「KR」はエリアが韓国であることを表わす

 また、A1303SAにはGLOBAL PASSPORT対応端末らしい機能もいくつか搭載されている。たとえば、メインメニュー内の[グローバル機能]には[外国語フレーズ]というメニューが用意されており、海外で日常的に役立つ単語やフレーズなどが画面に表示してくれる。収録されている言語は英語、中国語(北京語)、韓国語で、選択したフレーズについて発音させることも可能だ。よく海外に出かけるときに電子辞書などを携行する人がいるが、A1303SAにはそれに近いレベルのモノが搭載されているわけだ。この他にも航空機に乗っているとき、不用意に電源が入らないようにする(スケジュール機能でも電源が入らない)「航空機モード」、円と外貨の換算にも対応した「外貨換算対応電卓」、あらかじめ設定したチップ率で計算する「チップ計算」など、海外旅行時にあると便利な機能が搭載されている。細かいところでは付属のACアダプタが100~240Vに対応しているため、変換アダプタさえ用意してしまえば、海外旅行中も付属のACアダプタだけでA1303SAを利用することが可能だ。


フレーズ機能はこのように表示される。中央の決定ボタンを押せば、このフレーズを実際に発音してくれる GLOBAL PASSPORTの各エリアの基本情報も収録されている

頻繁に海外に出かける人は要チェック

 さて、最後にA1303SAの「買い」について診断してみよう。CDMA2000 1x初のGLOBAL PASSPORT対応端末として発売されたA1303SAは、auの普及モデルのラインアップに位置付けられるムービーケータイだ。カメラは31万画素と今年の普及クラスのスペックを満たしており、画像編集機能なども含め、必要十分なレベルに達している。GLOBAL PASSPORTサービスについてはGSM方式が使われるヨーロッパなどで使えないものの、韓国や中国、タイ、香港、グアム、サイパン、ハワイ、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ、カナダなどで利用することが可能だ。

 これらのことを総合すると、A1303SAを「買い」と言えるのは、GLOBAL PASSPORTの利用可能エリアに頻繁に出かけるユーザー向けということになる。国内での利用については通常のA1300シリーズと同等のスペックであり、特に大きな不満を感じることもない。敢えて言うなら、ボタン類の配置が独特であることだが、この辺りは使い込むことで、ある程度、慣れてくるだろう。

 ただ、注意しなければならないのは、GLOBAL PASSPORTのサービスとしての損得勘定だ。海外での携帯電話利用については、旅行会社などが提供する「レンタル携帯電話」、海外のイベントレポートの番外編でも紹介した現地の「プリペイド携帯電話」などの手段もあるからだ。レンタル携帯電話については国内の携帯電話事業者が国際ローミングサービスを提供したためか、以前よりも料金が安くなってきている。各業者が所有する端末を一時的に借りることになるが、基本的には出発前に電話番号を知ることもできるので、必要な人に教えることも可能だ。

 頻繁に海外に出かけるのであれば、その国のプリペイド携帯電話を買ってしまった方が通話料などが安いケースも考えられる。ただ、海外でのプリペイド携帯電話の購入はそれなりの情報収集と好奇心が必要であり、誰もが容易にチャレンジできることではない。もし、こうした好奇心もなく、情報収集なども面倒なのであれば、GLOBAL PASSPORTは有効な選択肢のひとつだろう。特に、海外のプリペイド携帯電話の場合、基本的には現地に行かなければ購入することができず、出発前に必要な人に電話番号などを教えられないが、GLOBAL PASSPORTであれば、いつもの電話番号に掛けてもらえば、そのまま、つながるからだ。ただし、海外にいる場合は着信にも料金が掛かるので、あまり頻繁に長電話を掛けられるのも困りものなのだが……。

 また、GLOBAL PASSPORTは音声通話の国際ローミングを実現しているが、海外とは時差があることを考慮すれば、メールなどの文字メッセージサービスの方が実用的だ。auではデータ通信についても国際ローミングを検討しているそうだが、ぜひとも文字メッセージサービスの国際ローミングも実現して欲しいところだ。



URL
  ニュースリリース(au)
  http://www.kddi.com/corporate/news_release/2003/0514/
  製品情報(au)
  http://www.au.kddi.com/seihin/kinobetsu/seihin/a1303sa/
  製品情報(三洋テレコミュニケーションズ)
  http://www.stel-web.com/line_up/a1303sa/index2.html
  GLOBAL PASSPORT(au)
  http://www.au.kddi.com/kaigai/

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(法林岳之)
2003/09/09 11:12

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