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ツインカメラで楽しく遊べる「P504iS」
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、メール端末、PDAまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindows XP基本編」「できるADSL フレッツ・ADSL対応」「できるZaurus」「できるVAIO Windows XP版」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。iモード用EZweb用J-スカイ用、H"LINK用(//www.hourin.com/H/index.txt)を提供。(impress TV)も配信中。


50Xiシリーズ初のiショット対応端末

 NTTドコモは今年6月から画像を送信できるiショットサービスを提供している。その対応端末としてはすでに251iシリーズが提供されているが、主力である50Xiシリーズもiショットに対応し、その第1弾として「P504iS」が発売された。筆者も機種変更で購入したので、レポートをお送りしよう。


いよいよ主力モデルに展開

P504iS

 NTTドコモ/松下通信工業『P504iS』。サイズ:50×100×18.8mm、110g。ブラックソリッド(写真)、クールシルバー、カジュアルピンクをラインアップ
 J-フォンの写メールによって切り開かれたカメラ付きケータイの市場は、2002年に急速に拡大した。2002年はじめはJ-フォンとツーカーの一部の機種しかカメラが搭載されていなかったが、この秋から冬はほとんど新機種がカメラ付きケータイになっている。おそらく年末にはカメラ付きケータイが累計で1,300~1,400万台程度が達する見込みだ。

 この急速なカメラ付きケータイの市場に乗り遅れまいと、NTTドコモも今年6月からiショットサービスを開始し、対応端末として251iシリーズを投入した。iショットサービスは発信者番号通知が必須であること、自分のメールアドレスで送信できないこと、他事業者の携帯電話から画像が保存されているiショットサーバーが参照できないなど、さまざまな問題が指摘されたが、それでも順調に売り上げを伸ばし、10月には300万台を突破するほどの勢いとなっている。

 そして、いよいよ主力である50Xiシリーズにもiショット対応端末が登場することになった。それが今回紹介する松下通信工業製「P504iS」だ。P504iSは50Xiシリーズ初のiショット端末ということになるが、その後、N504iSも発表、発売されており、今後は50Xiシリーズでもiショット対応が標準になると予想されている。松下通信工業はJ-フォン向けにカメラを搭載した「J-P51」などを供給しているものの、NTTドコモの251iシリーズはリリースしておらず、同社としても初のiショット端末ということになる。

 また、NTTドコモのPシリーズは、昨年、一時的に人気に陰りが見られたが、今年6月に発売した「P504i」はスリムボディが評価され、高い人気を得ている。今回のP504iSはカメラを内蔵しながら、同じスリムボディの路線を踏襲しており、前モデル同様、ユーザーの支持を得られそうな印象だ。さらに、前後2つのカメラが装備されている点も気になるところだろう。これらのことを踏まえながら、P504iSの完成度をチェックしてみよう。


ツインカメラ内蔵ながら18.8mmのスリムボディを実現

P504iとの比較

 カメラを2つ内蔵しながら、ボディの厚さはP504i(右)に比べ、わずか2mmしか増えていない

前面スピーカー

 前面のスピーカー部はP504iよりも大きくなっている
 製品のスペックや細かい仕様については、NTTドコモや松下通信工業の製品情報ページ、「ケータイ新製品SHOW CASE」を参考にしていただくとして、ここでは筆者が購入した端末で得られた印象を中心に紹介しよう。

 まず、P504iで高い評価を得たスリムボディだが、P504iSにも継承されている。後述する2つのカメラを内蔵しながら、P504iの16.8mmよりもわずかに2mm厚い「18.8mm」に抑えている。背面側の液晶がモノクロからカラーに変更されていることも考慮すると、これは見事としか言いようがない。また、P504iで採用されていたワンプッシュオープン機構もそのまま継承されており、ボディ左側面のヒンジ部にあるボタンを操作すれば、すぐにボディを開くことができる。余談だが、人間の慣れとは恐ろしいもので、筆者の知人には他社の端末を触ってもボディを開くために、つい左側面のボタンを探してしまうという人もいる。

 ボディ全体のイメージは、P504iが丸みを活かしたデザインであったのに対し、P504iSはやや直線を強調したデザインに変更されている。液晶ディスプレイ背面側の処理もラメの入った塗装から格子状(ハニカム調)のパネルにクリアパネルを組み合わせたデザインになり、全体的にメカっぽさが強調された印象だ。背面液晶側には後述する内蔵カメラと背面液晶ディスプレイ、スピーカー、赤外線通信ポート、着信LEDなどを備える。

 液晶ディスプレイはメイン側が132×176ドット/65,536色表示が可能な約2.1インチのTFTカラー液晶ディスプレイ、背面のサブ側が96×64ドット/65,536色表示が可能な約1.1インチのTFTカラー液晶ディスプレイを採用している。折りたたみデザインの端末はサブディスプレイが標準的なものだが、カラー液晶でなおかつクオリティの高いTFTカラー液晶を採用してきたのはなかなか豪華な装備と言えそうだ。ちなみに、プリインストールされているiアプリの一部は、サブディスプレイ表示にも対応しており、ボディを折りたたんだ状態でも待受iアプリを楽しむことができる。


メイン液晶 サブ液晶
 液晶ディスプレイはP504iと同じ132×176ドット/65,536色表示のTFTカラー液晶を採用  背面のサブディスプレイは96×64ドット/65,536色表示が可能なTFTカラー液晶を採用。一部のiアプリの表示も可能だ

 ボタン類は基本的にP504iを継承しており、レイアウトもほとんど変わらない。違いがあるとすれば、中央のコマンドナビゲーションボタンがメタル調でなくなったことくらいだ。ちなみに、右側面にはシャッターとしても利用できる[メモ]ボタンが備えられている。

 また、端末本体ではないが、折りたたみボディを立てて置くことができる卓上ホルダ(充電台)も従来モデルから継承されている。多くの折りたたみデザインの端末はボディを平らに置く卓上ホルダを採用しているが、机の上のスペースなどを考えると、やはり、Pシリーズで採用されている縦置きとも言えるスタイルの方が使いやすい。欲を言えば、ACアダプタからのコネクタがあまり出っ張らないようにして欲しいところだが、立てて置くスタイルは他メーカーにも一考してもらいたい点だ。


ボタン サイドキー
 ボタン類のレイアウトはP504iと同じだが、カメラ周りの機能が割り当てられている  右側面にはシャッターとしても使える[メモ]ボタンを装備

使い勝手を考えたツインカメラを搭載

アウトカメラ

 アウトカメラはヒンジ側に装備。隣にある小さな丸は「着信・充電ランプ」

インカメラ

 インカメラはスピーカー部の左下に装備。広角レンズなので、幅広い写真が撮影可能
 P504iSは前述のように、50Xiシリーズ初のカメラ付きモデルだ。iショットに対応し、撮影した画像をiショットサーバー経由で送ることができる。iショットのシステムについては過去にも問題点を指摘してきたが、ようやく2003年2月に自分のメールアドレスで発信できるようになるため、従来よりは使いやすくなりそうだ。

 P504iSには、メインディスプレイ側と背面側それぞれカメラを搭載した「ツインカメラ」となっている。ともに、11万画素のCCDを採用しているが、ただ単に2つのカメラを搭載したというのではなく、ユーザーの利用シーンを踏まえた構成になっており、使い勝手も非常によく考えられている。

 まず、他機種でも搭載されることが多い背面側のカメラは「アウトカメラ」と呼ばれ、標準レンズで主に他人や風景を撮ることが想定されている。これに対し、メインディスプレイ側のカメラは「インカメラ」と呼ばれ、広角レンズを採用することで、自分撮りや友だちといっしょに撮影しやすくしている。従来のように、背面側にしかカメラがない端末で自分撮りや友だちとの撮影をするときは、小さく画質が今ひとつのサブディスプレイを見ながら、位置を調整する必要があったが、P504iSなら、大きなメインディスプレイに自分たちを写しながら撮影ができるわけだ。しかもレンズが背面側よりも約1.4倍の広角になっているため、人物が並んだ写真も撮りやすくなっている。

 アウトカメラとインカメラの切り替えは、コマンドナビゲーションボタン左下の[メール]ボタンでできるが、P504iSはこうしたカメラ周りの多くの設定をワンタッチで切り替えられるようにしている。たとえば、撮影サイズは「iショット(S)」(120×120ドット)、「iショット(L)」(288×352ドット)、「スクリーン」(132×176ドット)、「サブスクリーン」(96×64ドット)という4つから選ぶことができるが、コマンドナビゲーションボタン右下の[改行・問い合わせ]ボタンをくり返し押すことで、順番に選択することが可能だ。しかも選択したサイズに合わせて、プレビュー画面に黒い枠が表示されるため、ユーザーが撮影サイズを意識しやすくなっている。


サンプル

 iショット(L)のサンプル画像。やや歪みが残るが、夜間でもこれくらい撮れれば、なかなか楽しい
 また、カメラ起動時はテンキーの[1]で被写体をハッキリ写す「くっきりモード」のON/OFF、[2]でカメラの感度を上げて撮影する「ナイトショットモード」のON/OFFができ、白いものを写して[3]を押せば、ホワイトバランスを固定することも可能だ。コマンドナビゲーションボタンの上下で最大21段階の2倍ズーム、左右で5段階の明暗調整もでき、いずれもプレビュー画面の最上段に状態がアイコン表示されるようになっている。

 カメラ付きケータイは画素数や撮影枚数などが注目されがちだが、実用面を考慮した場合、こうした使い勝手に対する配慮は非常にうれしい点だ。この他にも1秒おきに撮影できる4連写機能、他の写真と組み合わせて合成写真的な撮影が可能な「マルチショット」、10種類のスタンプ、セピアやモザイクなどの画像編集などの機能も搭載されており、カメラ周りの機能の完成度は他を一歩リードしている印象だ。

 ただ、撮影する部分が非常に優れているのに対し、撮影後の機能はやや不満が残る。たとえば、撮影した画像をサムネイル表示ができなかったり、iショット送信時の発信者番号通知を事前に設定しておかなければならない点などだ。251iシリーズよりも後発だからこそ、こうした部分もしっかり実装して欲しかったところだ。

 カメラ以外の機能としては、基本的にP504iを継承しており、メニューアイコンのカスタマイズやダウンロード辞書などのカスタマイズ機能も充実している。ただ、メニューアイコンの登録についてはP504i同様、ひとつずつ登録しなければならず、何通りものメニューアイコンの組み合わせを用意しておいて、切り替えるというところまでは対応していない。面白い機能だけに、ぜひ次期モデルでは改良してもらいたい点だ。


画像リスト 育てていぬとも
 撮影画像はサムネイル表示ができない  P504iで好評を得た「育てていぬとも」は新バージョンに変更。この他にも「パロディウスだ!」や「TETRIS」などを標準で搭載

カメラの使いやすさと楽しさならコレ

 さて、最後にP504iSの「買い」について考えてみよう。まず、50Xiシリーズとしてはじめてiショットに対応したP504iSは、P504iのスリムなボディを継承しながら、アウトカメラとインカメラという2つのカメラを搭載している。カメラ部は11万画素のCCDであり、すでにハイエンドモデルで30万画素クラスが登場していることを考えると、スペックとしては見劣りがしてしまうが、実際に使ってみると、それを補って余りある「使いやすさ」が光る。特に、カメラの切り替えや設定の変更などは、今までのカメラ付きケータイで最も優れたユーザーインターフェイスであり、他製品を確実に一歩リードしている。

 また、iショット端末の場合、送信できる画像サイズがiショット(S)とiショット(L)に限定されているため、画素数で判断しにくい面があるのも事実だ。仮に、30万画素クラスのカメラを搭載し、VGAサイズの画像が撮影できたとしても赤外線でしか送信できないようでは、宝の持ち腐れにしかならない。むしろ、「使いやすさ」や「楽しさ」を含めた端末としての総合力で判断する方が「iショット端末らしい選択」と言えないだろうか。

 これらのことを考えると、P504iSをおすすめできるのは、カメラ付きケータイで友だちとの撮影などを重視したいユーザーということになりそうだ。確かに、画質は30万画素クラスのカメラを搭載した端末に譲るが、iショットを通じて送り合う携帯電話上のビジュアルコミュニケーションであれば、11万画素で十分という見方もできる。その上、P504iSには画素数の差を補って余りある「撮る楽しさ」や「使い勝手の良さ」が備えられている。スリムなボディで持ちやすいことやプリインストールされているiアプリが充実していることも評価できるポイントだろう。P504iSは目先の派手さよりも実用性とカメラの楽しさを重視するユーザーにおすすめできる端末だ。


・ ニュースリリース(NTTドコモ)
  http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/02/whatnew1108b.html
・ 製品情報(NTTドコモ)
  http://www.nttdocomo.co.jp/p_s/products/keitai/504i/p504is/p504is.html
・ ニュースリリース(松下通信工業)
  http://www.matsushita.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn021108-1/jn021108-1.html
・ 製品情報(松下通信工業)
  http://fan.p-keitai.net/p504is/

P504iS(ブラックグリッド)
ドコモ、カメラを2つ搭載した薄さ18.8mmの「P504iS」
薄さを極めたスーパースリム「P504i」


(法林岳之)
2002/12/25 11:01

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