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[2000/12/26]

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[2000/11/07]

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第12回:ケータイ先進国、フィンランド携帯通信事情
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飼い主と一緒に日本へ来た、アメリカはシリコンバレー育ちのシャム猫。現在は横須賀、京浜急行の野比駅近くに住む。育った場所がら、モバイルにはちょっとうるさい“モバイル評論猫”。


フィンランドから来たモバイル猫、ミス・ヘリ

 オイラはジャパンのモバイルコミュニケーションのメッカであるYRP(横須賀リサーチパーク)の近くに住んでいることもあって、近所にアメリカや北欧(ヨーロッパにおける移動通信の中心はスウェーデンとフィンランド)から来た同胞が住んでいる。最近、フィンランドから来たメス猫のミス・ヘリとつきあっている。彼女はグリーンの目をしたシャム猫で少し気が強いが、すごい美猫だ。これまでにオイラの生まれ故郷のシリコンバレーにも住んでいたことがあったので、共通の話題が多く、すぐ仲良くなったってわけだ。

 彼女は日本に来たばかりで日本語が話せないので、英語で会話した。彼女の話では、フィンランドにはフィンランド語があり、フィンランド人同士ではフィンランド語を使うそうだが、ほとんどの人が英語を喋れるので、海外からお客様がくると全員が英語に切り替えるそうだ。そのようなこともあって、フィンランド猫も英語を喋れるそうだ。特に彼女はシリコンバレーにいたので、ネイティブと差がない。ただし、性格はアメリカ猫とかなり違って、謙虚ででしゃばらない。

 彼女のご主人様は、移動通信関係、それもモバイルマルチメディア関係の仕事をしているそうだが、どこの会社か言ってくれない。おそらく、世界最大の携帯電話メーカーのノキアか通信事業者のソネラに勤めているのではなかろうか? そのようなこともあって、ミス・ヘリもモバイルマルチメディアについて、少しは知っているようだ。オイラは、新聞や雑誌でファンランドではケータイでコカコーラが買えると言う記事をよく見かけたので、実態がどうか聞いてみた。





ミス・ヘリの話

 「フィンランドは、もともと自動販売機が少ないので、携帯電話で購入できる自動販売機は空港など一部に置いてあるだけよ。ほとんど、トライアルってな感じね。コカコーラもあるようだけど、私の知っているのはペプシコーラね。私は虫歯になるのが嫌だから買ったことないけれど、コーラの値段を購入の際にかかる通信料金程度安く設定していると聞いてるわ。キシリトール入りのコーラを販売してくれないかしら」オイラはコーラの自動販売機しか知らなかったが、ゴルフボールの自動販売機もあるそうだ。

 「日本に来て一番ビックリしたのが、ほとんどの人が駅で電車を待っているときなど、少しでも時間があると携帯電話を見ていることね。フィンランドでも、若い人たちは携帯電話でSMS(Short Message Service)というサービスを利用してメールのやりとりをしているけど、日本ほどじゃないわね」

 「日本の若者は携帯電話と呼ばず、ケータイと言ってるね。オイラはフィンランドの方がケータイ先進国だと聞いてたんだけどな」

 「そうね、携帯電話の普及率は70%を越えたわ。日本はまだ、50%に達していないでしょう。その意味では携帯最先進国ね。でも、iモードと言ったかしら、携帯電話でメールだけでなく、インターネットに接続して色々な情報を検索できるサービス、あれは日本がダントツね。フィンランドでは、WAPというサービスが提供されているけど、利用者数もコンテンツ数もまだまだね。でも、モバイルインターネット市場におけるマイクロソフトになろうと頑張っているベンチャー企業がたくさんあるか、すぐに日本に追いつくと思うわ」

 「やっぱり、日本が一番進んでいるのかな。ドコモは世界最大のインターネットサービスプロバイダーや携帯電話事業者のAT&Tと提携もしたしな」

「思い出したわ。先日、ご主人とタクシーにのった時、ご主人がクレジットカードを利用したんだけど、オンラインチェックをしていなかったわ。フィンランドのタクシーは、ほとんど全部、移動通信を利用したクレジットカードのオンラインチェックを利用しているのよ」

 ミス・ヘリから聞いた限りでは、モバイルインターネットでは日本が最先端を走っているようだが、移動通信全体ではフィンランドの方が進んでいるかもしれない。オイラは、携帯電話を財布やクレジットカードとして利用するモバイル・ペイメントが3G(次世代携帯電話)のキラーアプリケーションの1つになると見ている。この分野は、間違いなくフィンランドが先行しているようだ。ああ、それに引き替え、世界最強で最も先進的と言われているオイラの母国アメリカが、ことモバイルマルチメディアになると日本や北欧勢に遅れを取っていることは疑いの余地がない。これも、携帯電話のデジタル化が遅れたせいだ。ミス・ヘリの話だけでは、フィンランドの移動通信事業の詳細はわからないので、調べてみることにした。





挙国体制でモバイルインターネットベンチャーを育成

 フィンランドの人口は約500万人で、携帯電話の普及率は1999年6月で66%というデータがあった。その時点では、2位がアイスランドで62.1%、3位がノルウェーの61.7%だ。ちなみに日本は42.8%だった。現在はさらに増えて、ミス・ヘリが言っているようにフィンランドは70%を越えている可能性が大だ。携帯電話のシステムはGSMで、高速化され、伝送速度57.6kbpsのHSCSD(※)が導入されている。また、12月からは最高伝送速度115.2kbpsの無線パケット通信システムGPRS(General Packet Radio System、2.5Gシステム向けの汎用パケット無線システム)もサービス開始している。ドコモのDoPaのみならず、最大伝送速度64kbpsのKDDIのPacketOneをも凌いでいる。情報を集める中でGPRSについては、詳細がわかってきたので、次回にでも紹介しよう。

 フィンランドの企業については、多くの日本人と同じくオイラも、ノキアしか知らなかった。今回の調査で移動通信事業者としては、ソネラが50%以上のシェアを持っており、2位はスウェーデンのテリア社だということがわかった。ソネラは以前、フィンランドテレコムと言われた会社で、1998年に株式公開した。また、ベンチャー企業も多くあり、国を挙げて援助しているようだ。今ごろになって、国を挙げてITを推進しようと言っている国とは大違いだ。例えば、Spring Toyはモバイルインターネット対応のゲームアプリを開発している。また、DIGIAは、Windows CEやPalm OSと競合しているEPOC OS対応のソフト開発を手がけている。フィンランド企業の多くが海外展開を積極的に進めているが、これは人口が少なく、マーケットサイズが小さいため、事業拡大するためには国外展開するしかないためだろう。適度な大きさの市場を持つ日本のベンチャーとは、気持ちの持ちようが違う。

※HSCSD(High Speed Circuit Switched Data):高速回線交換データシステム。 最高14.4kbpsだったGSMを改良したシステム。最大伝送速度は57.6kbps。



(Felix Mobile)
2000/12/26 00:00

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