ケータイ Watch
連載バックナンバー
第12回:ケータイ先進国、フィンランド携帯通信事情
[2000/12/26]

第11回:FelixMobileの移動通信講座(2)? iモードとWAP、どこが違う? ?
[2000/11/07]

第10回:モバイル・インターネットは本当にインターネット?
[2000/09/29]

第9回:Felix Mobileの移動通信講座(2)IMT-2000って何?
[2000/08/31]

第8回:Felix Mobileの移動通信講座(1)
[2000/06/19]

第7回:iモード成功の理由
[2000/05/19]


モバイルセントラル
モバイルセントラル一覧へ
FelixMobileタイトルGIF
第11回:FelixMobileの移動通信講座(2)? iモードとWAP、どこが違う? ?
Felix Mobile Felix Mobile
飼い主と一緒に日本へ来た、アメリカはシリコンバレー育ちのシャム猫。現在は横須賀、京浜急行の野比駅近くに住む。育った場所がら、モバイルにはちょっとうるさい“モバイル評論猫”。


モバイルインターネット覇権争い

 編集者から、ケータイWatchの読者は技術関係の話題が好きだと聞いた。Boss電 Part 2ではないが、今回は「移動通信講座?Part 2?」を開講することにした。

 断っておくが、オイラはオリジナリティーを尊重するので、受け狙いで“Part 2もの”を書くのはオイラの主義に反する。その一方で、オイラがアメリカを離れた時のアメリカの若者と同じく日本の若者の技術離れが進んでいる中で、技術に興味を持っている読者の要望に応えるのは、オイラの責務だとも考えている。また、扱う対象が異なっているので、オイラのポリシーに反しないと判断し、「移動通信講座?Part 2?」を開くことにした。

 さて、テーマであるが、移動通信業界でホットな話題といえば、前々回取り上げた「IMT-2000」に次いで「モバイルインターネット覇権争い」だろう。わかりやすく言えば、ドコモのiモードとauグループのEZwebが採用しているWAPの勢力争いが今後どうなるかだ。なお、厳密に言えば、EZwebが採用しているのは、WAPではなく、そのベースになったPhone.comのHDMLだ。

 いつもだと、藤原紀香がどうのこうの、浜崎あゆみはどうした、というのだが、早速、技術論に入ろう。


システムの構成

 まず、システムの構成から見ていこう。基本構成はどれも同じだ。携帯端末/移動無線ネットワーク/プロキシサーバー/Internet/コンテンツから成り立っている。

 移動無線ネットワークは、iモードが無線パケットシステムPDC-P、EZwebが同じく無線パケットシステムPacketOne、J-フォンは回線交換システムであるPDCだ。前社2システムはパケットシステムなので当然情報量課金だが、J-Phoneは回線交換システムを採用しながら情報量課金を実現している。これは、一定時間データの送受信がなかった場合、物理セッションを切断することによって実現しているようだ。この場合、論理セッションはもう少し長く継続していると考えられる。推論で書いているのは、明確に書かれた資料が見つからなくて、使ってみた感じから判断したためだ。実を言うと、J-フォンだけでなく、PacketOne、そしてIMT-2000も必要時のみ回線を捕捉するタイプだ。パケット多重を実現しているのは、PDC-Packetだけかもしれない。いずれにしても情報量課金システムなので、接続時間は気にする必要がない。

 さて、次は通信ブロトコルだ。これについては精通している方も多いだろうが、簡単に説明しておこう。コンピュータ通信のプロトコルは、ネットワークによって若干異なるが、基本的に7つの階層に分かれる。モバイルインターネットも同じだ。各層の役割は、おおよそ以下の表のようになっている。

階層階層名役割
第7層アプリケーション層5~7層:コンピュータ上の通信系アプリケーションで利用するプロトコル
第6層プレゼンテーション層
第5層セッション層
第4層トランスポート層発信元と受信先の間でデータを確実に送受信するための仕組みだ。インターネットでは、TCPが主に利用されている。
第3層ネットワーク層データを発信元から受信先まで届けるための仕組みだ。インターネットではIPを利用しているが、モバイルインターネットの無線ネットワーク内では必ずしもIPではない。
第2層データリンク層隣接するコンピュータ間でデータを確実に伝送するための仕組みだ。
第1層物理層電気的な信号の変換方法を規定する層で、より具体的にはLANケーブルなどの物理的な回線を指すと思ってよいだろう。モバイルインターネットの場合、携帯端末とプロキシサーバーを結ぶ移動無線ネットワークのことだ。


 なお、1~3層までは、それぞれの無線通信ネットワークにより異なる。これは、この項のはじめに触れた通りだ。

 4層は、WAPがTCPを採用しているのに対し、iモードはTLなどという独自のプロトコルを利用している。TLの実体は公開されていないので、よくわからない。オイラの知識では、TCPは、伝送遅延時間が常に変化しているようなネットワークとは相性が悪かったはずだ。無線ネットワークは、回線の品質によって伝送遅延が変化するので、iモードがTCPを採用しなかったのは、そのあたりの理由だろう。

 さて、上位層にあたるiモードのC-HTMLとWAPのWMLについてみていこう。C-HTMLは、“C-”がついているが、WWWの標準であるHTMLのサブセット版だ。フレームが利用できないなど、若干の制約がある一方で、電話番号をクリックするだけで電話をかけられる機能(Phone to機能)が追加されている。制御用のプロトコルはHTTPそのままだ。これは、iモードではインターネット上のホームページに直接アクセスして見られることを意味しており、既存のホームページを作れる知識があれば、即iモード用のコンテンツを作製できることを意味する。

 一方、WAPではブラウザの制御用としてHTTPに近い独自のプロトコルWSPとWTPを採用している。また、スクリプトWMLもXMLベースだが、独自だ。c-HTMLでは携帯端末に対してテキストデータが送られるが、WMLではプリエンコードされたバイナリーデータが圧縮されて送られる。そのため、端末での処理はc-HTMLに比べて軽くなるし、伝送するデータ量も少なくなると考えられる。また、デッキという概念が取り入れている。これは、1つのページをカードと見立てて、それを束ねたものだ。最近、子供たちの間で流行っているトレーディングカードでもカードを束ねたものをデッキと呼んでいるデッキ内では、カード間の移動は自由なので、軽やかに動くはずだ。

 と言うことで、スペック的にはWAPの方がc-HTMLを採用したiモードより優れているはずだが、ビジネス的にはiモードが圧倒的に強い。その理由の1つが、WMLを勉強しないとWAPコンテンツ製作ができないことだ。サービス開始時に大量のコンテンツを確保するには、HTML系のiモードの方が有利であったわけだ。


オープン化に期待

 さて、これまではきれい事で話をしてきたが、ここからはもっと生めかしい話題に入っていこう。とは言っても、アダルト系サイトの比較をしようと言うのではない。ビジネスの話だ。

 WAPはWAPフォーラムで標準化されているので、携帯端末とプロキシサーバーのメーカーが違っても接続できるはずだが、互換性に問題があるという話だ。早い話、NOKIAの端末は、ERICSSONのプロキシサーバーに接続できないし、逆も同様だとの噂がある。ただし、これは海外で展開されているWAPサービスのことであって、auのEZwebサービスのことではない。

 また、WAPフォーラムで標準化されているのであれば、フォーラムメンバーには仕様だけでなく、プロキシサーバーのプログラムを含めソースリストが公開され、若干の変更が認められてもいいはずだ。ところが、なんともならないとの話を聞いたことがある。

 例えば、iモード成功理由のひとつと言われる料金回収代行については、サイトにアクセスする端末の認証データを契約サイトに渡す必要があるが、WAPではプロキシサーバーは端末の認証データが送出できないし、改造もできないと聞いたことがある。そうだとすれば、コンソーシアムを作って標準化を進めているが、標準化と言う皮をかぶった一部企業による市場コントロールだ。WAP 2.0は、各種反省とiモードの良い点を取り入れているという話なので、オイラも期待している。ぜひオープン化して、いろいろなアプリケーションの登場を促して欲しいものだ。



(Felix Mobile)
2000/11/07 00:00

ケータイ Watchホームページ

ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
Copyright (c) 2000 Impress Corporation  All rights reserved.