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第10回:モバイル・インターネットは本当にインターネット?
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■ 注目を集めるモバイルマルチメディア
オイラは相変わらず家でゴロゴロしながらTVを見ることが多い。その中で気がついたのだが、いわゆる「ドットコム企業」のコマーシャルが異常に増えている。製造業や物流業の景気が悪いところに、国をあげてITを推進するというので、ろくに実体のないインターネット関連会社にも金が流れ込んでいるためだろう。マムのハズもハイテクベンチャー企業への投資で財を成したのだが、投資に当たっては緻密に業務内容を調べ、調査していた。時には、投資先の会社が提携しようと考えている会社とのブレックファースト・ミーティングに同席していた。また、投資先としては、クルマで2時間以内に駆け付けられるSilicon Valleyの企業に限っており、新興のニューヨークに本拠を置く企業は相手にしなかった。これは、何かあった時に即時対応するためだった。ハイテクベンチャーでアイデアが少し良ければ、どこにでも投資するようなバカな事は行なっていなかった。
オイラの専門分野である移動通信関係も、相変わらずコマーシャルを流している。IDOはauに変わった際にEZWebを抱き合わせたコマーシャルを流している。J-フォンは藤原紀香を前面に押し出してモバイル・インターネットの宣伝を行なっている。ドコモと言えば、いつのまにか広末を見かけなくなった。西村と鈴木京香の組合せによるPHS 64Kと具体的なキャラクターが存在しないiモードのコマーシャルが中心だ。全社とも単なる携帯電話からモバイルマルチメディアにコマーシャルの中心を移していると感じる。
■ 閉じた世界のモバイル・インターネット
さて、絶好調のiモードを始めとして、現在注目を集めているモバイル・インターネットに対して気になることがある。まずインターネットを名乗っているが、本当にインターネットかと言いたい。とは言っても、モバイル・インターネット端末がインターネットに繋がっていないということではない。ポリシーの問題だ。具体的には以下のような点が気になる。
・モバイル・インターネット端末はIPリーチャブルでない。
・通信プロトコルがIETFを経ていない独自プロトコルである上に、完全に公開されているわけではない。
・一番の問題は、前項のプロトコル非公開とも関連するが、インターネットとの接続ポイントが各移動通信事業者が提供しているところに限定されており、お世辞にもオープンとは言えないことだ。電話やISDNを対象としたISPはいくらでもあることと比較すると、モバイル・インターネットがいかに非公開かがわかる。
わかりやすく言えば、モバイル・インターネット端末はIPパケットを受信できず、公開を原則とするインターネットの世界で、モバイル・インターネットは閉じた世界だと言うことだ。iモードの成功で、モバイル・インターネットの市場は健全に成長しているように思えてしまうが、実は大きな問題を内在する。これまでの歴史をみても、オープンなシステムとクローズドなシステムを比較すると、スタート時点はクローズドな方が先行するが、徐々に形勢が逆転するケースがほとんどだ。Palmはザウルスを、LinuxはWindows NT/2000を急追している。
■ Felix考案版モバイル・インターネット
オイラがモバイル・インターネットのシステムを開発するのであれば、できる限りオープンに作る。具体的には、以下のような点だ。
- 移動通信網とゲートウェイ間の通信プロトコルをオープンにする。当然、回線設定のプロトコルだけでなく、認証や課金のプロトコルも契約付きでオープンにする。
- ゲートウェイの選択は電話番号で行なう。iモードで言えば、電話番号を入力して“iモード”ボタンを押すことにより、好きなゲートウェイに接続できるようにする。
- モバイル・インターネット端末のアプリケーションインターフェイスもオープンにし、ユーザーが開発したプログラムを搭載可能とする。また、データも保存可能とする。なお、当然Javaは必須だ。
- また、モバイル・インターネット端末の外部インターフェイス、端末のお尻等にあるコネクタも、USBなどの標準的なインターフェイスとしてオープンにする。
さて、これでどうなるかだ。
- まず、モバイル・インターネットのサービス事業者が非常に増える。@NiftyやBIGLOBEもモバイル・インターネットサービスを提供できる。しかも、認証や課金のプロトコルの開示を受ければ、現在、ドコモの公式ポータルである“iメニュー”に登録されなれば利用できなかった料金回収代行サービスや認証機能をBIGLOBEなども提供できるようになる。これにより、より多くのコンテンツプロバイダーが広告等に頼らなくても直接収入をあげることが可能になる。
- これまでであれば、会社等のLANへの接続はインターネット経由でしか接続できなかったが、モバイル・インターネットのゲートウェイからLANへ専用線で接続でき、法人利用が容易になる。
- 既存の全てのコンテンツはWebであったが、プログラムも利用できるようになり、アプリケーションの幅が広がる。例えば、自分のスケジュールを見ようとすると、わざわざネットに接続するか、端末メーカー押し着せのプログラムを利用しなければならなかったが、自分の好きなプログラムでスケジュール管理でき、データは端末内にあるのですぐ見ることができる。
- これまではアダプタ経由でパソコンやPDAを接続するだけであったが、USB経由でバーコードリーダなどを接続できる。
とまあ、ちょっと考えてもこれぐらいのことが可能になる。利用範囲も広がるし、ビジネスチャンスも大きく広がる。2001年にはサービス開始予定されている3G (3rd Generation=次世代携帯電話方式のこと。IMT-2000とほぼ同意語) でキラーアプリケーションが見つからないと通信事業者やメーカーは嘆いている。
彼らは自分達が最高で、自分達が必死に考えても見つからないのに、サードパーティがまったく新しいサービスなど思いつかないと考えているのだろうか。オイラに言わせれば、通信事業者やメーカーだからこそキラーアプリケーションを見つけられないのだ。かれらは毎日夜遅くまで働いているから、自分たちの世界しか知らない世間知らずのはずだ。キラーアプリケーションは、世の中の社会構造、そして人間をよく知っていなければ、見つけられるわけがない。ポケベルによる通信だって、通信事業者が率先して広めたわけではなかったし、iモードを広めたのは新しくドコモに入ったメンバーと言われている。だからこそ、通信事業者やメーカーは3Gシステムを、オイラが言うように、オープンに作るべきだ。そうすれば、3Gで一旗上げようとするサードパーティがいろいろトライし、それらの中のいくつかがキラーアプリケーションになっていくはずだ。オープン化は偉大なのだ。
2000/09/29 00:00
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