損しないためのケータイ料金再入門
第11回:担当者に聞くソフトバンクの料金プラン
持ち前のスピード経営を反映し、矢継ぎ早に新料金を打ち出すソフトバンクモバイル。同社の代表取締役兼CEO、孫正義氏がTwitter上でつぶやき、新プランが即決される様子も、話題を集めている。では、同社の料金プランはどのように決まっているのか。料金担当者に、裏舞台をうかがった。各プランの特徴や、そこに込められた狙いも、合わせてご覧いただきたい。
■Twitter「やりましょう」発言の効果
ソフトバンクモバイル マーケティング統括 料金サービス統括部 料金企画部 料金企画2課 瀬古晋一氏 |
ソフトバンクモバイル マーケティング統括 料金サービス統括部 料金企画部 料金企画2課 西原麻美氏 |
――Twitterで、社長自らが「やりましょう」と即決している様子が話題になっています。料金プランの決定にはさまざまな要素が絡み、時間がかかるのが一般的ですが、どのように実現しているのでしょうか。
西原氏
以前から意思決定が速い会社でしたが、最近はより一層そのスピードが上がってますね(笑)。当然、私たちも、画期的でお客さまに喜んでいただけるプランなり、サービスなりを、常に部内で議論しています。
――とすると、「やりましょう」は、ある程度想定の範囲内ということですか。
瀬古氏
過去に検討していてお蔵入りになったプランなどもたくさんあるので、そこから引っ張り出すことはありますね。社長がつぶやく前に「どうなの?」と確認があり、検討するものもあります。料金は収益にも関わるので、上場企業として社長の一存ではなく、それなりの社内手続きは踏んでいます。
――スピード感といえば、以前は他社の料金プランに対して、24時間以内に追随していました。今は、ケースバイケースで対応しているようですが、何を基準にしているのでしょうか。
西原氏
基本はお客さまのニーズです。リサーチをした上で、広く喜んでもらえるものがあれば、追随します。
瀬古氏
当社のホワイトプランが著しく見劣りしている場合は追随しますが、そうでなければ、逆にサービスが複雑になってしまいますから、対抗する必要はないと思います。
――なぜ、あそこまで素早く対抗できるのでしょうか。プランを出すには、それなりの計算が必要だと思いますが……。
瀬古氏
検討する期間は短いですが、実施可能な目処を立てた上で、「やる」と対外的な発表をします。あとは、我々が一生懸命……。
■料金プラン
2007年1月の発表会で提示された「ホワイトプラン」の概要 |
――細かい条件をシミュレーションするということですね(笑)。では、改めて基本に立ち返ります。現状の主力プランを改めて解説していただけますか。
西原
当社の主力は、ホワイトプランです。そこにお客さまのニーズに合わせて、各種割引を組み合わせるという形を採用しています。
ホワイトプランに関しては、月額980円を支払っていただければ、ソフトバンク同士の通話は1時から21時まで、メールは24時間無料です。これだけでも十分魅力的だと思いますが、もっと他社への通話がしたいという場合は、プラス980円で通話料が半額になるWホワイトもありますし、家族間の通話が24時間無料になる「ホワイト家族24」もあります。また、「ホワイトコール24」では、自宅の電話がBBフォンであれば、そことの通話も24時間無料です。
Webやメールを使いたい方は、それぞれ、パケット定額サービスを組み合わせます。利用量がある程度明確になっていて、毎月たくさん使われる方は、4410円で一律の「パケット定額フラット」に入っていただければいいですし、使う月と使わない月の差がある方は、1029円~4410円の「パケットし放題」に入っていただければと思います。スマートフォンに関しては、上限が5985円の「パケットし放題 for スマートフォン」を用意しています。
ほかにも、オレンジプランやブループランがあります。こちらは、他社のように無料通信がほしい方や、他社のプランに慣れているという方に向けています。
瀬古氏
基本はホワイトプランに加入していただきたいのですが、やはり周りにソフトバンクユーザーがいるかどうか分からないという方もいるので、オレンジプランやブループランも引き続き継続しています。
■各料金プランの利用状況
――各プランの比率はどの程度になっているのでしょうか。
西原氏
ほとんどがホワイトプランですね。2000万弱がホワイトプランに加入しています。
――ホワイトプランが始まる前に出されたゴールドプランはいかがでしょうか。
瀬古氏
まだ受付はしていますので、ゼロではありません。ゴールドプランだと、ソフトバンク同士の通話に使える無料通信があるので、有料時間帯に通話することが多い方にはオススメできます。
――ホワイトプランの21時から翌1時までは、無料にするのは難しいのでしょうか。
西原氏
この時間帯は、やはり通話が集中します。そのような要望はたくさんいただきますが、無料にすると一気にアクセスが増え、毎日が大晦日状態になりかねません。そうすると、お客さまに迷惑をかけてしまいますからね。「電波改善宣言」を出し、ネットワークを改善する努力はしていますが、今の段階ではこの料金で、という形にしています。
――ホワイトプランの無料通話は、トラフィックを考えると、限界もあるのではないでしょうか。実際、以前、孫社長は会見で「永久に受付を続けるとは限らない」とおっしゃっていました。今のところ、受付を終了するといった議論にはなっていないのでしょうか。
瀬古氏
今のところ、まだやめようという議論にはなっていません。すでに2000万弱のお客さまが加入しているので、ある日突然やめることは絶対にありません。
■ホワイトプランの“2年縛り”
――先日の料金改定で、ホワイトプランに2年縛りが付くようになりました。この契約方式の狙いを教えてください。
瀬古氏
ホワイトプランには、長期利用に対するメリットがないと言われていました。そこで、2年契約をすれば、契約更新後の2カ月間、基本使用料を無料になるというように、ユーザーへの還元を行うことにしました。我々としては、長期利用ユーザーのためへの改善だと考えています。
――パケット定額サービスが改定され、加入プランによって「バリュープログラム」で受けられる月月割の額が変動するようになりました。ここには、どのような意図があるのでしょうか。
西原氏
パケットし放題フラットに入る方は、やはりヘビーユーザーです。たくさん使う方に対しては、月月割で還元しようという考えがあります。
――確かに、パケットし放題フラットを選ぶと以前より若干端末代は下がりますが、パケットし放題だと、逆に値上げになるケースもあります。
瀬古氏
月月割や端末の価格は毎月見直しているので、そことの兼ね合いもあります。
――パケット定額サービスは、どれが一番多いのでしょうか。
瀬古氏
割合までは公表していませんが、以前からあったこともありパケットし放題は多いですね。
――パケットし放題フラットは、iPhoneやXシリーズのスマートフォンでも4410円で、他社よりも上限が大幅に安いのが特徴です。やはり、スマートフォンへの乗り換えを促す意図があるのでしょうか。
瀬古氏
iPhoneは特に象徴的ですが、使ってみるとやはり便利で、これを持つことでできることも一気に増えます。そんなiPhoneやスマートフォンを検討していただく一つのきっかけとして、パケット定額の価格に興味を持っていただければと考えています。
■データ通信の料金プラン
――データ通信のプランに関してはいかがでしょう。現状、イー・モバイルの回線をMVNOとして提供していますが、仕組みを改めて教えてください。
西原氏
データ定額として、「データ定額ボーナスパック」を用意しています。データ端末にはSIMが2つ付き、AのSIMカードだと700円から4679円で定額、BのSIMカードだと300円から始まり1パケット0.084円で従量になります。AのSIMカードを単体で契約することもできますが、パッケージにした方が、最低使用料金が安くなる仕組みです。
ただ、AのSIMは海外で使うことができません。国際ローミングで利用する場合は、BのSIMを挿せるようになっています。
瀬古氏
イー・モバイルさんのエリアならAのSIMで定額になりますが、どうしてもエリア外で通信したいということもあります。その際には、BのSIMに挿し替えていただければと思います。
――他社の場合、一般的なケータイをPCに挿して通信すると、割高ですが定額になります。青天井での課金は、少々危険だと思いますがいかがでしょうか。
瀬古氏
確かにパケットの高額請求は社会問題にもなっているので、色々と対策を検討しています。テザリングに特化した形での料金を出すことがその対策となるのかどうかといった点や、少数のお客さまのトラフィックが増大することによる影響などを踏まえつつ、ベストなプランを考えていきたいですね。
2010/7/23 11:00