ニュース

LINEアプリで新聞社・ニュースサイトがダイジェストを配信

LINE、ニュース媒体向け配信プラットフォームを発表

 LINEは、コミュニケーションアプリ「LINE」で、新聞社や通信社などのメディア公式アカウントを開設した。メディアアカウントからは、ダイジェストニュースが定期的に配信される。購読は無料。

 購読は「LINE」アプリ内のその他メニューから「LINE NEWS」を開くと表示される、特設サイトから選んで登録できる。

 1日に配信を開始したメディアは、毎日新聞、時事通信、デイリースポーツ、BBC Newsなど24媒体。毎日2回程度、ニュースを新聞紙のようなダイジェスト形式で、LINEのメッセージとして配信する。配信されているニュースの見出しをタップすると、LINEアプリ内のブラウザで詳細な記事を読める。

 LINEでは今後、配信する地方紙や専門媒体など、参加するメディアを増やしていくべく交渉中としている。

LINE NEWSの枠組みを開放する「LINE アカウントメディア プラットフォーム」

 1日に実施された発表会では、LINEの出澤剛CEOが登壇し、LINEアプリ内で他社のニュースを配信する「LINE アカウントメディア プラットフォーム」の取り組みの意図を説明した。また、サービスの詳細は、LINEのコマース・メディア担当上級執行役員の島村武志氏より紹介された。

LINE CEO 出澤剛氏
LINE 上級執行役員 コマース・メディア担当 島村武志氏

 日本国内のLINEユーザーは5800万人に達し、アプリの利用時間調査でも長時間使われていることが示されているLINE。これまで、同社ではLINEアプリを核としたLINEのプラットフォーム化を進めてきた。

 最初の取り組みとして、「ツムツム」などのゲームアプリを展開、さらにニュースアプリ「LINE NEWS」を開始した。その結果、ニュースのようなコンテンツでは独立したアプリよりも「LINE」アプリ内のメッセージ機能を展開したほうがよいと判断。「LINE NEWS ダイジェスト」やそれを拡張した「LINE NEWS マガジン」として、LINEアプリのメッセージ機能を利用して独自のニュースの配信を行っている。

 今回の「LINE アカウントメディア プラットフォーム」は、この「LINE NEWS マガジン」の機能を、外部のニュースメディアが使える無料のプラットフォームとして整備したもの。ニュースサイト側の利用には、登録料や利用料が必要なく、ダイジェストを構成する編集の負担のみで利用できる。

 ニュース媒体の収益化については、LINEがダイジェスト内に配信できるネットワーク広告を用意。広告料率はLINE側50%、媒体側50%で、「他のニュースアプリよりメディアに優位な値」(島村氏)としている。

 また、ニュースの重み付けや詳細記事のの体裁は各メディアが決めることができ、自社の広告を挿入することも可能としている。重要なニュースがある場合は、プッシュ通知を利用した速報を配信することもできるという。

 「LINE アカウントメディア プラットフォーム」の取り組みについて、島村氏は「ニュース媒体のブランドを認知してもらった上で配信できるのが大きなメリット」とした。従来スマートフォンで記事を見る場合には、ポータルサイトやソーシャルメディアで流れてくる記事を読む形が多く、それぞれの記事を配信している媒体が認知されづらいと指摘。

 「LINE」の公式アカウントは「オウンドメディア(自社のニュースサイト)のように使ってほしい」と話し、集客面でのメリットをアピールした。

質疑応答

 質疑応答では出澤氏と島村氏が登壇、記者の質問に答えた。

――今までLINEの公式アカウントでメディア企業が参入したことはなかったのか。

島村氏
 広告として現在展開している公式アカウントではなかった。排除していたわけではないが、結果的に利用されていなかった。今回のメディアアカウントでは、メディアの方に使ってもらいたいというところから提案したという意図もある。

――第1弾として参加するメディアは大手ばかりだが、今後中小メディアやブロガーなどにも開放していく方針か。

島村氏
 地方紙や専門媒体についてはまさに検討中のところ。発行部数は少ないが地域性や専門性が高い情報は、ユーザーに直接届けられるLINEに適していると思う。

 ブロガーなど、個人への開放は、現時点では考えていない。まずはサービスを展開して成果を見極めつつ、できるところから順次拡大していきたい。ただし、LINE側で特定のメディアを排除したいなど、制約を加える意図はまったくない。

――自社で提供している「LINE NEWS」は今後縮小していく形になるのか。

島村氏
 むしろ今後拡大していく方向になると思う。「今までニュースに触れていなかったユーザーにやさしくわかりやすいニュースを届ける」というコンセプトを先鋭化させて続けていきたい。

――いわゆる「ステマ」が問題になったが、そういった信頼性の担保は誰が行うのか。

島村氏
 現状、各配信社が担保する形。LINEから個々の内容について担保することはできないが、ガイドラインを整備することで信頼性を確保していきたい。

――今後、海外展開を行う際にグーグルの「ニューススタンド」などと競合することになるが、LINEの強みはどこか。

島村氏
 ニュースは各国でどういった配信社があるか、どのような読み方がされているかがかなり異なっている。LINEの製品は基本的に現地の習慣にあわせたローカライズをほどこして提供している。各国で横展開しているアプリに対しても戦っていけるのではないか。

――LINEでは以前から「ユーザーのメッセージの解析は行わない」という方針を示していたが、ニュースに配信される広告では個人の属性情報の解析を行うのか。

島村氏
 現時点で明確なユーザーの属性データは保持していない。現時点でテスト配信されている広告は全ユーザー向けに配信されているもの。具体的な計画はないが、ターゲティング広告についてはユーザーの購読情報を得ることで最適化できると考えている。

石井 徹