ニュース

生鮮品や薬品の輸送に、KDDIなどが温湿度を管理できるGPS端末

 KDDI、UPR(ユーピーアール)は、温湿度を管理できる機能を備えた位置情報端末「なんつい」を共同開発した。物流業界向けに12月中旬より提供する。レンタルで提供され、利用料は月額4500円(税抜)。

なんつい

 「なんつい」は、リアルタイムで荷物などの温湿度を収集、管理できる端末。GPS対応で、auのネットワークに対応した3G通信モジュールを搭載する。7500mAhのバッテリーにより30日間駆動(10分間隔で測位)することから、長期間の輸送も含めて管理できる。収集したデータはセンターで一括管理でき、異常があればメールで通知する。両社では、血液や薬剤、細胞培養、生鮮品などの輸送における品質管理、事故防止に役立つとアピールする。

 大きさは約74×35×80mm、重さは約248g。製品名は「なんでも追跡システム」の略だという。

PHSからauの3Gへ

 UPRでは、これまで13年にわたり、PHSモジュールを使った位置情報端末を提供してきた。しかし、PHSでは山間部、郊外では基地局がなかったり少なかったりして、位置情報を取得できない。あわせて温度に加えて湿度を管理したいというニーズも寄せられたことで、他キャリアと比較した上で、捕捉率が高かったauのネットワークをチョイス。KDDIとともに製品の開発を進めた。

 auのスマートフォンでは3G非対応で、LTEのみ対応する機種も出てきているが、「なんつい」は3G通信を利用する。これは消費電力がまだまだ3Gのほうに分があるため。PHSと比べれば、3Gも消費電力は大きいが、位置情報が利用できるエリアの広さが違うことから採用を決定。通信をしていない状態では3Gの機能をオフにするなど工夫をすることで、30日間、稼働できるようにした。通信用のアンテナは基板と一体化することで、コンパクト化に寄与している。また「なんつい」本体には、位置測位でGPSをオフにするモードも用意されている。これにより、測位の精度は劣るものの、さらに長期間、管理できるようにもなっている。

 「なんつい」をまず最初に採用するのは、三菱倉庫グループのDPネットワーク。医薬品の輸送に特化した企業で、運搬中に温度が急激に上がると医薬品の品質に影響することから採用を決めた。これまでも輸送時に温度管理を行っており、運転席にもモニターはあるが、運転中、常にモニターを見るわけにはいかない。真夏にはトラック内が50度を超えることもあり、空調で温度をコントロールすることになるが、何か異常があった場合、「なんつい」ではリアルタイムに確認できることが最も大きなメリットという。欧米発で、今後日本でも導入されるという医薬品の運送基準(GDP、Good Distribution Practice)に向けても役立つソリューションであり、さらに位置情報も記録できることから、運搬中に温度が上がった場所を突き止めるなど、状況の分析がさらに進むという。

 UPRによれば、既存モデルのレンタル稼働数が5000台~1万台程度。新型の「なんつい」も初期ロットとして5000台用意され、今後、1万台の稼働を目指す。

関口 聖