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ガン社長、「Y!mobile」のスマートフォン戦略を披露
三大キャリアと格安スマホの中間を狙う
(2014/7/17 18:59)
ワイモバイルは17日、都内で新サービス・新商品を披露する発表会を開催した。ワイモバイル 代表取締役社長兼CEOのエリック・ガン氏が登壇し、サービス・ブランド名を統一して再スタートを切る同社の戦略や意気込みが語られた。
ガン氏は「Y!mobile」のロゴがプリントされた真っ赤なTシャツにジーンズという、カジュアルな格好でステージに登場し、これまでとのイメージの違いを印象づけた。
そのガン氏はまず、日本のスマートフォンの普及率が約半数にとどまっていることをとりあげ、フィーチャーフォンを使い続けているといった、いわゆるレイトマジョリティと呼ばれる層に向けてアピールしていくのが同社の新サービス、新商品になると説明した。
「Y!mobile」の名称については、「Yahoo! JAPAN」との連携のほかにも、Happy、Enjoyなど“Y”にはさまざまな意味を込めたとし、「Yの魔法をかけたい」とした。そして、この日の発表の一つ目のキーワードが「エンジョイ」であるとした。
母体となったウィルコム、イー・アクセス(イー・モバイル)は、それぞれPHSやデータ通信が事業の中心で、ワイモバイルとして合計で約1000万ユーザーの規模になっている。一方、ワイモバイルでは新たな事業領域としてスマートフォンの分野をターゲットに設定。「新しくチャレンジしたいのはスマホで、3つ目の事業領域だ」とした。
前菜:PHSとモバイルWi-Fiルーター
ガン氏からは、PHSの新モデルとして、小型・軽量で1週間利用できるという「STOLA 301KC」、法人向けの「BISINESTA 301JR」が簡単に紹介され、PHSは合計で4機種を新たに投入することを発表。モバイルWi-Fiルーターについても、テレビチューナーを搭載した「Pocket WiFi 303HW」を披露した。
メイン料理(魚):スマートフォン2機種
続けて、新たに挑戦するスマートフォン分野については、注力する新モデル「STREAM S 302HW」「DIGNO T 302KC」の2機種が披露された。
「STREAM S 302HW」については、「STREAM X」が好評だったことを受けて、スリム、スタイリッシュ、スマートというキーワードでさらに進化した様子を解説した。タフネス仕様の「DIGNO T 302KC」は、「ちょっと落としても問題ない」とのことで、ヤフーと連携するランニングアプリが搭載されることも明らかにされた。
メイン料理(肉):新料金プラン「スマホプラン」
スマートフォン向けに設定する新料金プラン「スマホプラン」は、スマートフォンの新モデルと双璧をなすものと位置付ける。ガン氏は、スマートフォンの普及率が約半数にとどまり、諸外国より遅れているとする背景として、大手キャリアの料金プランの分かりづらさを指摘する。「基本料に、Web接続料、通話、データに1GBはなく2GBからだが、ユーザーは自分が何GB必要か分からない。3キャリアの価格もほぼ一緒」と、大手キャリアのプランの問題点を挙げ、ここで、この日の発表会の2つ目のキーワードが「イージー」であるとした上で、ワイモバイルのは「スマホプラン」では、Web接続料などを含めて月額2980円などの安さ、分かりやすさを追求したことをアピール。
ガン氏はまた、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの新料金プランについて、「どんなに計算しても最低6500円からで、3キャリアとも同じになる」と指摘。「ワイモバイルはソフトバンクのグループだと言われるが、3キャリアが同じグループなのではないか」と3キャリアの横並びプランを批判する一幕も見られた。
デザート:「Yahoo! JAPAN」連携サービス
ガン氏はこの日、新サービスの発表内容をフランス料理のコースに例えて紹介してきたが、最後の“デザート”として紹介されたのが、ヤフーとの連携サービス。メール、ID連携、Yahoo! ボックスといった無料で利用できる連携サービスのほか、使えば使うほど通信容量が増えるなどとして「パケットマイレージ」も紹介した。
発表された内容を振り返り、「エンジョイ」「イージー」という2つのキーワードを改めて示したガン氏は、「楽しく、分かりやすい。たくさん利用してください」とプレゼンテーションを締めくくった。
「三大キャリアと格安スマホの中間を狙う」
質疑応答および囲み取材の時間には、ワイモバイル 代表取締役社長兼CEOのエリック・ガン氏、取締役兼COOの寺尾洋幸氏が登壇した。
サービス内容がヘビーユーザー向けか?という問いに、寺尾氏は、「ヘビーユーザーは自分で選んでいく。レイトマジョリティの層に、使ってもらう仕組みを提案した」として、パケットマイレージなどの仕組みもレイトマジョリティ層に向けた取り組みであるとした。
料金についても寺尾氏は、ウィルコムやイー・モバイルで手がけてきたプランを総合して検討したものとし、「レイトマジョリティ層が使うにあたって必要十分な料金プランを作った。一番使いやすい料金を狙った」と解説。MVNOがSIMカードのみで提供するサービスについても、設定などの面でレイトマジョリティには「難しい商品」と指摘。ワイモバイルの新料金プランが、高すぎたり、安すぎて不足があったりしない、絶妙なものになっているという自信を見せた。
こうしたことから、三大キャリアと格安スマホといったサービスの中間を狙うのがワイモバイルのサービスであるとされた。ガン氏からは、スマホプランSの2980円という価格が、フィーチャーフォンのユーザーをターゲットにした面もあると説明されている。
寺尾氏はまた、ウィルコムやイー・モバイルの時代には、ヤフーなどのOTTなどと呼ばれる上位レイヤーのサービスやコンテンツを所有したり連携したりできなかったと振り返った上で、ヤフーは逆に通信サービスなど下位レイヤーのインフラサービスが手薄だったとし、レイトマジョリティの獲得に向けて、この2つが連携できることが強みであるとした。
実際の端末の仕上がりや、ヤフーとの連携サービスについては、寺尾氏は現実的な判断も下しており、「道半ば」と表現。レイトマジョリティに向けて、ソフトウェア面でも使い勝手を向上させていく取り組みを継続するほか、ヤフーとの連携もさらに種類を拡大させていく方針を示している。
SIMロックフリーへの施策については、新モデルでは「STREAM S 302HW」がSIMロックフリーで販売される一方、「DIGNO T 302KC」はSIMロックが施されていることが明らかにされた。ガン氏は「できればSIMロックフリーの方向は継続したい気持ち」としている。
周波数の割り当てなどに関連した取り組みでは、総務省で“グループ”の概念を再定義する動きが出ているとされたが、ガン氏はまず、1.7GHz帯の追加割り当てを強く希望していく意向を示している。
サポート体制については、イー・モバイルで好評だったという有料の「ワイドサポート」をスマートフォンにも適用する意向で、店舗も含めて対応を拡充していく方針。
ワイモバイルという会社をめぐっては、ヤフーによる買収の発表と撤回という慌ただしい展開も見られた。ヤフーによる買収中止の影響について、ガン氏は、社員への説明や細かな調整で奔走した様子を語る一方で、財務的な影響は無かったとした。寺尾氏は、スマートフォンを利用していない日本の残り半数のユーザーについて、なんとかしたいという考えであり、「資本をどうするかというより、サービスをどうするか」と、ヤフーのメンバーと協力してきた様子を語っている。