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テレビ用電波のホワイトスペースをLTEに――NICTが新システム

 情報通信研究機構(NICT)は、テレビ放送用に割り当てられている電波のうち、ホワイトスペースと呼ばれる空き帯域を、スマートフォンなどのモバイル通信でも利用できるようにする新たなシステムを開発した。高速無線通信技術のLTEに対応したもの。

 ホワイトスペースは、テレビ用の電波(470~710MHz)のうち、チャンネル同士の干渉を避けるためなど、これまで利用されていなかった周波数帯のこと。この周波数帯は、通常の携帯電話用の周波数帯(800MHz帯や1.5GHz帯、2GHz帯)よりも低い周波数で、地形や建造物の影響を受けにくく、回り込んで電波が届く、とされている。テレビ放送へ影響を与えない形で、ホワイトスペースの利活用が国内外で検討されており、NICTでは今回、スマートフォンなどで利用される通信技術であるLTE方式をホワイトスペースでも利用できるようにするシステムを開発した。

 このシステムは一般の携帯電話と同じように、基地局と端末で構成されている。大きな特徴としては、ホワイトスペースの周波数(470~710MHz)と、一般のLTE用周波数である2GHz帯に対応すること、そして干渉を避けるため、NICTが用意した「ホワイトスペースデータ」に基地局が接続することが挙げられる。テレビ放送は地域によってチャンネル、つまり利用している周波数が異なる。ホワイトスペースデータベースを参照することで、基地局は、その場所でモバイル通信用に利用できる周波数がわかる、という仕組み。

 このほか、FDDおよびTDDのLTEをサポートする。帯域幅は5/10/20MHz幅の3つをサポート。ちなみにテレビ1チャンネル用の周波数幅は6MHz幅とのことで、ホワイトスペースがチャンネル1つ分空いているような場合でも運用できる。ホワイトスペース対応基地局は、通常の基地局と同じく、携帯電話事業者のコアネットワーク(EPC、Evolved Packet Core)に接続するとのことで、端末側は通常のLTEと、ホワイトスペース用のLTEとの間で途切れず通信できる。端末はUSB経由でパソコンと接続して利用する。

 今後、NICTでは実験試験局免許を取得して評価試験を実施する方針。ホワイトスペースを実際にモバイル通信でも利用するためには課題が多いとのことで、伝播特性や通信性能を測定して、技術的な基準の策定、あるいは将来、ホワイトスペースをモバイル通信でも利用できるよう、正式な制度にするための情報として提供する考え。

関口 聖