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KDDI株主総会、通信障害やエリア誤表記への対策を説明

 KDDIは、2013年6月19日午前10時から、東京・品川の品川プリンスホテルにおいて、第29期定時株主総会を開催した。会場には348人の株主が参加した。

冒頭、通信障害を謝罪

 議長を務めた田中孝司社長は開会宣言したあとに、通信障害およびエリア誤表記問題に関して謝罪。「通信障害では、復旧に長い時間を有し、株主、利用者に、ご心配およびご迷惑をおかけした。通信事業者として深く反省している。経営の最重要課題として取り組み、信頼回復に努める。誠に申し訳ありませんでした」と、株主に頭を下げた。

 また、監査役による監査報告でも、通信障害および誤表記問題について言及。「監査役会としても重く受け止めている。再発防止に向けたチェックを行っていく」と語った。

KDDI田中社長
冒頭、通信障害やエリア誤表記問題で謝罪した

2012年度の実績

 約15分間のビデオを通じて、2012年度の事業報告が行われ、同社が取り組んできた3M戦略の本格展開の成果のほか、「もっと身近に」、「もっといろんな価値を」、「もっとグローバルへ」という3つの事業ビジョンの実現に向けた取り組み、バリュー、パーソナル、ビジネス、グローバルという4つの事業セグメントにおける成果などについて説明した。

 auスマートバリューが2013年3月末にau契約数で386万、世帯数では212万となり、家族で利用する人が増加していることや、18カ月連続でMNPナンバーワンを達成し、転入超過数が業界史上最高になったことを示したのに加え、auスマートパスが574万契約に達し、顧客基盤の拡充とスマートフォンにおける付加価値サービスの利用増につながっているとした。

 同社が目指していたauにおけるお客様1人あたりの通信料収入の底打ち、反転という目標を達成したことも示された。

2013年度は「スマートリレーションズ」

 続けて、田中社長は、第30期(2013年度)の課題と取り組みについて説明した。

 第30期を、「今後3年間を見据えた、"新たなステージに向けて"のスタートの年になる」とし、本格的な利益拡大に向けて、通信料収入と付加価値売上の拡大を目指す「3M戦略の推進・深化」、国内事業に加えて新たな成長の柱とする「グローバル戦略の推進」に取り組む姿勢をみせた。

 3M戦略については、「auとブロードバンドの相乗効果による収益の最大化を目指す。auは1600万世帯、ブロードバンド契約は1200万世帯、auスマートバリューは212万世帯。まだ拡大の余地がある」と語ったほか、3M戦略では第1弾のスマートパスポート構想に続き、今年度は、第2弾としてスマートリレーションズ構想に取り組み、auスマートパスによるリアルな生活とのリレーション(関係)、auのお客様とのリレーションによるauスマートサポート、デバイスのリレーションを図るデバイスのリレーションによって、「持つ」から「使いこなす」へと展開。

auスマートパスの強化
auスマートサポートを提供

 使いこなすことにこだわったスマートフォンの投入や、スマートフォンとリアルな生活との連携、スマートフォンの利用を支援する専任チームによる使い方サポートデスクや訪問サポート、スマホお試しレンタルなどに取り組んでいくことを紹介した。「スマートフォンを楽しめるようにするため、24時間365日の体制でサポートする」と述べた。

 そのほか、グローバル戦略の推進、ケーブルテレビ事業においてはJ:COMとJCMの今年秋の統合について、中小企業事業の拡大などについても言及した。

 また、新たなステージにおける目標として、営業利益毎期二桁成長と、配当性向で30%超をあげ、持続的な利益成長に取り組む姿勢を強調してみせた。

夏モデルについて
グローバル展開について
CATV事業
中小企業向けビジネスの強化
営業利益の毎期二桁成長などを目指す
配当金など

LTEのサービスエリアの誤表記、通信障害対策

 一方、今回の株主総会では、au 4G LTEエリアの誤表記と、一連の通信障害の再発防止策について、約5分間の時間を割いて説明した。

 au 4G LTEエリアの誤表記は、au総合カタログおよびホームページにおいて、iPhoneで利用できるau 4G LTEエリアを、2012年度末までに96%に拡大するといった内容を表示したもので、総務省からの行政指導と、消費者庁からの措置命令を受けていた。

 田中社長は、「再発防止策として、広告チェック体制の強化、内部監査の実施、今年4月までに役員および従業員に周知徹底し、再発防止への教育、研修を実施している」などの対策を示した。

カタログなどでiPhone向けLTEのサービスエリアの表記が誤っていた
再発防止策

 また、一連の通信障害の再発防止策に関しては、「年末年始および4月中旬の3件は、設定不備や運用・復旧手順不備などが原因のため、その再発防止対策を実施済み」とし、「4月末と5月末に発生した3件はLTEの基地局制御装置のソフトウェアバグなどが原因であり、現在、暫定対処を実施している。8月末の完了に向けて、恒久対策を実施している」と説明した。

通信障害について

 田中社長は、「予期せぬことが発生しても対応できるような、スマートフォン/4G時代に見合った機能安全(フェールセーフ)の確立を基本方針とする。私を本部長とする全社横断的なLTE基盤強化対策本部を新設した。この本部の指揮のもと、機能安全を確立するために全社をあげて、抜本的改善を推進し、お客様に安心してご利用いただける通信ネットワークを提供していく」と語ったほか、「技術力が低下しているのではないかという指摘もあるが、私が本部長として徹底していく」などと語った。

 また、田中社長は、「通信障害などに伴う、今期の業績への影響は軽微であると判断している」と述べた。

通信障害の原因
再発防止策

iPhone向けエリア誤表記問題、株主からも問う声

KDDIの両角氏

 株主総会では、会場からの質問を受け付ける前に、書面による質問に対する一括回答として、7つの設問およびひとつの提言に関して、両角寛文代表取締役執行役員副社長が回答した。

 iPhone 5の75Mbpsの人口カバー率の誤表記に関して、「誇大表示と誤解されやすい表示にしてまで、iPhone 5をしなければならない販売条件だったのか」といった質問に対し、「実人口カバー率96%に関して、『iPhone 5を除く』と記載すべきところを『含む』と記載し、それを見過ごしてしまった。社内関連部門が十分に情報共有や相互確認が出来ていなかったことに加えて、書面による承認フローが徹底されていなかったことによるもので、誇大表示の意図はなかった。また、アップルに限らず、取引先との個別の条件は非開示にしている」とした。

機種によって利用する周波数帯が異なる
4G LTEの実人口カバー率

 また、現在のiPhone 5の人口カバー率についても説明。75Mbpsでは現時点では20%となっていること、今年度末については10MHzで提供できるエリアを精査中であること、また、37.5bpsの人口カバー率は71%であり、今年度末には80%に拡大することを示した。

 「少しでも早く高速データ通信サービスを活用してもらえるように積極的なエリア拡大に取り組むとした」と答えた。

 消費者には速さの違いがわからないという安易な考えはなかったかという質問に対しては、「安易な考えはない。人口カバー率やつながりやすさなどの指標について、各社ごとの基準で算出、開示しているのが実状。一層、わかりやすい表示を検討していく」と語った。

 さらに、4G LTEの通信障害は、ネットワークの垂直立ち上げに無理はなかったか、との質問に対しては、「当初予定を前倒しし、LTEサービスを開始した。競争上極めて重要な課題であり、全社をあげて取り組んだが、結果として障害を発生させた。LTE基盤対策本部により対応していく。一連の通信障害への対策として、計画外ではあったが約300億円の改善投資を決定している。ソフトウェア、ハードウェアの品質向上、収容設備の分散、運用品質の向上に努める。今後も、トラフイックのモデルの変化に迅速に対応すべく、計画外であっても必要な投資を実施していく」と回答した。

設備投資について
社内の情報伝達についても改善を図る

 現場から経営中枢へ情報があがる速度の改善が必要であるとの指摘に対しては、「毎年、『KDDI解体新書』としてKDDI社員の意識調査を実施しており、KDDIの持つ力を最大限に発揮できる職場環境を作っている。フロントラインからの情報伝達や共有のスピードアップについては、年々改善しているという結果が出ている。年々向上させ企業力の向上につなげる」とした。

 2010年に東京・新宿の国際電話センターを廃止したことについては、「国際オペレーター通話数の減少傾向が顕著であり、1987年度の1180万呼から、2009年度は約6000呼と、1/1970となっている。コール数の回復が見込めず、合理的に業務運営の観点から、関連会社であるKDDIエボルバの沖縄にある設備に移転したものであり、国際電話センター自体をなくしたわけではない」と回答した。

災害時の対策など

 午前10時55分過ぎから、参加した株主からの質問を受け付けた。

 通信障害の再発の可能性や災害時の通信確保についての質問に対しては、嶋谷吉治取締役執行役員専務が回答。「現在、暫定策として再発防止策を講じ、8月までに恒久策を施す。二度と起こさないことを心に決めて、取り組んでいる。災害時においては、様々な策を講じるだけでなく、自治体との連携、社内で日々訓練をして対応していく」としたほか、「東南海地震への対策も各種考えている」とした。

シニア向けスマホとして「URBANO」

 高齢者向けスマートフォンの投入については、石川雄三取締役執行役員専務が回答。「シニア向けスマートフォンとして、今週、URBANO(アルバーノ)を発売する。ボタンが3つだけというわけではないが、使いやすいユーザーインターフェースを採用しており、音声でアプリを起動したり、騒がしいところでも聞きやすいといった機能を搭載している。シニアは重要なお客様と認識しており、これに留まらず機能改善を加えていく」と語った。

スマートパイプを目指す

 中長期の経営戦略については、「KDDIは、ネットワークだけを提供する事業ではなく、アッパーレイヤーを含めたスマートパイプ事業者を目指す。なかでも、M2Mは今後伸張する領域だと判断している。こうしたことはすでに着手しているが、まだ規模は大きくない。引き続き、拡大を目指していく」と語った。

 また、ECへの取り組みや、ベンチャー企業の支援、パートナー連携に関しては、高橋誠代表取締役執行役員専務が回答。「auショッピングモールでは、DeNAと一緒に展開し、auブランドガーデンも展開している。今後も成長分野としてECに取り組んでいく。また、スマートパスを通じて、O2Oの取り組みを積極的に展開していく。さらに、auイノベーションファンドを通じて、ベンチャー企業に対して積極的に投資を行っていくといったことを進めている」などとした。

 なお、第1号議案の剰余金の処分の件、第2号議案の定款一部変更の件、第3号議案の取締役12名選任の件についてはすべて可決され、12時00分ちょうどに終了した。

大河原 克行