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スマホのコミュニケーションに臨場感や存在感与える触感技術

スマホのコミュニケーションに臨場感や存在感与える触感技術

 タッチ操作にさまざまな触感を表現するハプティクス(触覚・触感)技術を開発するImmersion(イマージョン)は、新たな触感効果ソリューションを発表した。14日、都内で会見が行われた。

 イマージョンは、199年代からハプティクス技術をの研究開発を行うソフトウェア企業。スマートフォンやタブレット端末を操作すると、振動が伝わりタッチした感覚やボタンの押下感を再現するソフトウェアソリューションを提供しており、近年のソリューションでは、振動によってより多彩な表現を実現している。

 国内では、NECや富士通、パナソニックのハイエンドクラスのスマートフォンおよびタブレットに採用されており、海外メーカーではサムスンやLG電子なども導入している。ハプティクス技術で長い歴史のあるイマージョンは、Xboxやプレイステーションなどのゲームコンソールのほか、自動車の車内モニターや医療分野でも採用実績がある。

視覚と音に触角を加え、よりリアルな表現が可能に

 今回新たに発表されたソリューションは、「統合テーマモジュール」と「触感プレゼンスソリューション」の2つ。2月にスペインで開催されたイベント「Mobile World Congress 2013」でも披露されていたものだ。

 「統合テーマモジュール」は、端末メーカーの差別化要因として、視覚や聴覚に加えて触覚を盛り込み、デバイス全体で感覚を増幅させるような効果を持たせるソリューションだ。Android端末へのOEM供給を想定したもの。

 スマートフォンのロック画面やホーム画面などに、視覚と音による効果に加えて触覚効果が気軽に加えられるようになる。デモンストレーションでは、竹林のホーム画面を左右になぞると、しなやかに揺れる竹のイメージとともに竹林のささめく音、指先には竹林にふれているかのような感触が伝わる。

 また、別のデモンストレーションでは、水がはられた金だらいに小石を落とすイメージで、水面の波紋や金属のたらいに共鳴する振動などが視覚と聴覚、触覚で表現されていた。端末メーカーは、こうした人の記憶を呼び覚ますような感覚をデザインできるようになる。

シーハン氏

 プレゼンテーションを行ったイマージョンのマーケティング担当シニアバイスプレジデントのデニス・シーハン氏は、ハプティクス技術については「ボタンを押すとこういう感覚がする、はずだ。レースゲームならこう感じる、はずだ。といったように既に経験しているメンタルモデルを呼び覚ます。これまでよりずっとたくさんのことができるようになり、ボタンはボタンらしく、より現実味があり本物と錯覚するようなものが提供できる」とアピールした。

 この統合テーマモジュールは、組込ソフトウェア「TouchSense 3000」および「TouchSense 5000」向けのツールとして提供される。ロック画面やホーム画面のほか通知トレイやアラート機能などに触感が盛り込める。端末メーカーは独自素材を利用してカスタマイズできる。

 製品は2013年第2四半期にも提供される予定。搭載されるモバイル機器は今年後半から来年にかけて登場する見込み。

触感を送りあえる新たなコミュニケーション

 もう1つの発表が「触感プレゼンスソリューション」だ。このソリューションは、対応する2台のモバイル端末の間で触感を相互に送りあえるというものだ。

 たとえばテレビ電話機能や音声チャットなどを利用しながら、画面をなぞった感触が相手側に伝えられる。孫と遠隔地にいる祖父母とのテレビ電話によるコミュニケーションに、触覚効果も加えられるようになる。前述のシーハン氏は、「相手の気配が感じられ、本当に繋がっているかのような感覚」と語っていた。

 モバイル通信アプリのAPIとして提供され、コミュニケーション型のアプリに組み込める。また、メッセンジャーアプリのエモーティコン(エモーショナルアイコン、絵文字やスタンプのようなもの)を送ると、アイコンとともに振動でも感情を伝えられる。

 シーハン氏によれば、触覚データは非常に小さなデータ量だという。このため、ビデオチャットなどでも触角データの同期については大きな問題はないようだ。ただし、通信速度との兼ね合いもあり、解決できるが技術上の課題だと語っていた。会場のデモWi-Fi環境で行われていたが、試用する限りにおいては目立つ遅延などは発生しなかった。「触感プレゼンスソリューション」は「TouchSense 5000」に対応する端末で利用でき、2013年後半にはOEM先に供給される予定。

津田 啓夢