スマホのタッチに触感を、immersionがハプティック技術を解説


デニス・シーハン氏

 immersion(イマージョン)は、特許申請中のものも含めると、ハプティック(触覚)技術に関するパテントを1200件以上も保有する米技術会社だ。モバイルの分野では、タッチパネルにタッチした瞬間、指先に触った感覚を与えるソリューションを展開しており、スマートフォンの普及拡大に伴ってその存在感を増している。1日、同社のマーケティング担当バイスプレジデントのデニス・シーハン(Dennis Sheehan)氏が来日し展望を語った。

 同社のハプティック技術は、携帯電話やゲーム、自動車、医療分野など多岐にわたって展開されている。日本の携帯電話メーカーでは、富士通がAndroid端末「F-12C」で採用するほか、サムスン電子の「GALAXY S II」などでも採用されている。グローバルではLGエレクトロニクスやノキア、パンテックなども顧客だ。ハプティック技術の専業企業として1990年代から活動しており、この分野の基本的な特許は全て押さえている状況という。

 immersionは、ハプティック技術の根幹をなす制御ソフトウェアを開発し、振動部分のアクチュエーター(動作部材)は部材メーカーから提供される。シーハン氏は、スマートフォンなどのタッチパネルディスプレイについて、「これまではガラスに触れているだけで、デジタルメディアと実体験を結びつけるような物理的なものはなかった」と話す。また、人間の脳が周囲の状況を把握する上で、手で触れるという行為が大きな役割を占めていると説明し、ハプティック技術によって触感を与えることで、ユーザーとデジタルメディアの距離がぐんと近くなることをアピールした。



 現在immersionが提供するハプティック技術は、画面をタッチした際にフィードバックを返すベーシックなものから、振動や波形、持続時間などを制御し、さまざまな触感が提供できるものまで用意している。さらに同社は、さまざまな触感効果が演出できる可能な次世代の「HDハプティクス」を展開する。採用製品は2012年上期にも登場するものと見られる。

 指先は0~300ないし400Hz程度の周波数までを感じられるという。HDハプティクスでは、応答速度が速くなり、周波数応答のレンジもピエゾタイプのアクチュエーターを利用して、50~300Hzまでに広くなる。タッチで位置を特定し、指定された触覚の効果を選択して指先にさまざまな演出を与えるというフィードバックが応答面でも触覚の効果の面でも向上する。

 immersionでは、導入したいメーカー向けにAndroid端末にハプティック技術を導入できる自動ツール「MOTIV Integrator」を提供している。富士通製の「F-12C」はこのソリューションを使ったものだ。また、アプリ開発者向けにはSDKも提供しており、Androidアプリが作りやすい環境整備を進めている。組込実績としてはSymbian OSやWindows系にも搭載された実績がある。

 シーハン氏は「ハプティック技術は、ディスプレイに映ったものと触感とのギャップを埋めてくれる。導入することでスマートフォンの差別化につながるだろう。ゲームアプリの開発者は、ゲームというファンタジーの世界に触感が加えられることで、よりゲームにユーザーを没頭させられる。2012年に登場するスマートフォンのうち、2/3はハプティック技術が採用されるだろう。immersionはハイエンドの触感技術パテントの100%をカバーしている」と話している。



 




(津田 啓夢)

2011/12/1 15:59