富士通、ハイスペック&国産モデム搭載スマホで年間800万台目指す


EXILE

 富士通は、NTTドコモ向けに提供している2012年冬モデルの商品発表会を開催した。

 富士通の代表取締役副社長の佐相秀幸氏は、国内メーカー別シェアで17.7%を獲得し、海外メーカーを除けば1位であり、総合でも2位の位置にあるとした。同氏は「海外メーカーの勢いが増しているが、下期を勝ち抜き年間目標の800万台を目指して総力をあげて取り組んでいきたい」と話した。

 富士通は冬モデルにおいて、クアッドコアモデルを投入するなどハイスペックなモデルを訴求していく。佐相氏は「スーパーコンピューターを開発している富士通、最強のARROWSと自負している」と語った。


写真右から富士通の髙田氏、佐相氏、EXILEの4人。写真一番左がANTの坂田氏

2012年冬モデル

 富士通は今冬、スマートフォンとして「ARROWS V F-04E」「ARROWS Kiss F-03E」の2モデル、タブレット端末として「ARROWS Tab F-05E」、フィーチャーフォンとして「F-01E」を投入する。


ARROWS V F-04EARROWS Kiss F-03E
ARROWS Tab F-05EF-01E

 「ARROWS V F-04E」は、1.5GHzのクアッドコアCPUに64GBのストレージ、2420mAhの大容量バッテリーを搭載したモデル。富士通が訴求するハイスペックな仕様を体現したもので、モバイル向け放送サービス「NOTTV」であれば64GBのストレージで約55時間の録画ができるという。

 女性向けの「ARROWS Kiss F-03E」も以前のモデルよりスペックが向上、1.5GHzのデュアルコアCPUを搭載する。中でも、ファッションやコスメブランドとして人気のJILL STUART(ジルスチュアート)とのコラボモデルは特別なパッケージとなっている。イヤホンジャックに装着する“スマホピアス”や、マカロンのようなかわいらしいデザインのイヤホン、ジルのロゴ入りのコンテンツなど、ジルスチュアートの世界観を楽しめる。また、カメラにはネイルアートが撮影できるようハンドモードが用意されている。


JILL STUARTモデル

 「ARROWS Tab F-05E」は、10.1型のAndroidタブレット。10080mAhの大容バッテリーを搭載し、急速充電機能が用意されている。タブレット端末が指紋センサーを搭載しており、ビジネス利用者の需要に応えた機能なども用意されている。

 富士通のモバイルフォン事業本部長である髙田克美氏は、富士通の独自技術について説明した。ヒューマンセントリックエンジンという名前がつけられた独自技術は、見やすさや操作のしやすさ、通話性能、省電力機能、セキュリティなど多岐にわたっている。

 今回は、年齢に合わせて画面の色味を補正する「あわせるビュー」機能や、意図に合わせたタッチできる「おまかせタッチ」機能などが紹介された。

国産通信モデムを採用

 富士通は今夏、NTTドコモとNEC、富士通セミコンダクターとともに、ジョイントベンチャーを立ち上げた。設立されたアクセスネットワークテクノロジ(ANT)では、通信プラットフォーム製品のを開発および販売を行う。今回のプレゼンテーションでは、代表取締役社長の坂田稔氏がロードマップなどについて説明した。

 携帯電話やスマートフォン、タブレット端末などの通信機器には、通信処理を行うモデムチップ(ベースバンドチップ)と、アプリの実行や画像処理などを担当するアプリケーションプロセッサが搭載されており、これに無線送受信の回路のなどを加えて、通信プラットフォームとして提供されている。

 スマートフォンの通信プラットフォームは、クアルコムが最大手のベンダーで、同社が展開するSnapdragonシリーズはこの通信プラットフォームにあたる。スマートフォンが世界的に急速に普及拡大しており、とくにこのモデムチップの需要が急騰、2012年の夏モデルでは、チップの供給不足によってスマートフォンの出荷が遅れたり、発売が延期される事態を引き起こした。

 富士通とNTTドコモ、NEC、パナソニックでは、共同でLTEのモデムチップを開発しており、今冬のドコモ向けの富士通製スマートフォンでは、「SAKURA」(さくら)と呼ばれるこのチップが採用されている。ANTでは、LTEのチップ開発を進めながら、チップ不足を補い安定供給していく方針だ。

 坂田氏は、「ARROWS Tab F-05E」で新搭載された「COSMOS」と呼ばれるモデムチップを紹介し、1チップで2Gと3G、LTEをサポートしているとアピールした。これまでのSAKURAチップは、2Gと3G用に別途UBB4と呼ばれるチップを載せる必要があったためだ。

 「COSMOS」は、富士通研究所のDSPコアを使ったソフト無線技術を採用した低消費電力技術を搭載し、アプリケーションプロセッサと柔軟な組み合わせが可能なものとなっている。「ARROWS Tab F-05E」では、NVIDIA製のTegra 3と組み合わせる形で提供されている。富士通では今後、ドコモ向けのモデルにおいて順次COSMOSを採用していく見込みだ。



質疑応答、囲み取材

富士通の大谷氏

 後半、富士通の執行役員常務で、富士通モバイルコミュニケーションズの代表取締役社長である大谷信雄氏が登壇し、質疑に答えた。大谷氏は、日本メーカーがスマートフォンに出遅れたことに触れて「当初は出遅れたがスマホの技術についてはもうキャッチアップしたと思っている。日本のメーカーにはもともと、10年のフィーチャーフォンのノウハウがある。こうした日本らしい技術は明らかに日本メーカーの強みになる。少なくとも国内では、アピールすればシェアは挽回できる、負けないと思っている」と話した。

 また、夏モデルで発熱が見られるとの質問については高田氏が回答し、「いろいろな形で改善の要望は得ており、熱についても認識している。冬モデルでは熱拡散を助ける特殊な材料をクアッドコア搭載モデルに入れている」などと語った。

 発熱などの不満については、説明会後の囲み取材において、大谷氏も言及した。同氏は、「先陣を切ってクアッドコアを採用したため、エンジンが大きい分だけ熱が出る。パソコンにはファンがあるが、スマホにはない。熱を抑える必要がある。どんどん改良していく」と話した。

 さらに同氏は、ショップ店頭の評判がよくないとの指摘を受けて、「背伸びしたこともある」と語った。先進的な技術の搭載を急ぐあまり、不具合などによって店頭対応が増え、ショップでのウケが悪いという構造だ。

 また、前述のCOSMOSだけでなく、クアルコム製のチップセットもバランスよく使っていく考えを示した。富士通はauやソフトバンクにも端末を供給しており、そちらはCOSMOSを採用するわけにはいかないようだ。

 ハイスペックなモデルをラインナップする富士通。しかし、大谷氏は「これからはスペックだけではダメだろう」と話し、スペックが各社横並びになりつつあり、差別化要因にはなりにくいとの見方を示した。

EXILE登場

 このほか、発表会には新テレビCMに登場するEXILEが登場した。



 




(津田 啓夢)

2012/11/20 16:27