サムスン、AndroidでiPhoneと真っ向勝負


サムスンテレコムジャパンのオウ氏
GALAXY S

 サムスン電子は、海外および国内のスマートフォン端末を紹介する説明会を開催した。

 日本における携帯電話・通信部門は、サムスンテレコムジャパンが担当している。プレゼンテーションを行った同社端末営業部部長のオウ チャンミン(CHANGMIN OH)氏は、グローバル市場においてサムスンが年間2億2700万台を出荷したことを説明。四半期ベースでみると、2005年の頃までは四半期毎の差に変化が見られないものの、最近では第4四半期の販売数が顕著であるとした。

 昨年オウ氏は、グローバル市場におけるメーカー市場シェアについて、ノキアとそれ以外といった状況を打破したいと語っていた。オウ氏は2009年の販売シェアにおいてノキアが38.1%と引き続き高いものの、サムスン電子が20.1%と成長し、「ノキアとサムスンと、それ以外」という状況になりつつあると述べた。ブランド価値に関する調査でも、サムスンのブランド力は世界で19位と成長したという。

 サムスン電子では、「Smartphone for Every Lifestyle」をスローガンに、グローバルで端末を展開しており、オウ氏は「サムスンはユーザーからも、通信事業者からも喜んでもらえる製品をオープンに提供する」と話した。そのひとつとして、海外向けの高機能スマートフォンに搭載される「スーパー有機ELディスプレイ」(SUPER AMOLED)などを紹介した。

 オウ氏は、サムスンが開発した独自のスマートフォン向け端末プラットフォーム「bada」についても紹介し、「Windows MobileやSymbianにはそれぞれ優れたところもあるが、機能が制限され使いにくい面もある。badaはOSで制限されることを極力減らしていきたいと開発したもの」などと説明した。なおbadaプラットフォームは、現状で日本語には対応していない。badaを採用したスマートフォン「Wave」は、5月頃にも欧米で投入される予定だ。

 このほか説明会では、1GHzのCPU「C110」や、bada向けのアプリ配信マーケットなども紹介された。

シリーズ展開

 サムスン電子はグローバル市場において、CTIA WIRELESS 2010で発表されたAndroid 2.1搭載のスマートフォン「GALAXY S(GT-I9000)」など、GalaxyシリーズがAndroid向け、WAVEシリーズがbada向け、OMNIAシリーズがWindows Mobile向けと、スマートフォンの各端末プラットフォーム毎にシリーズ分けして展開している。ちなみに、国内のOMNIAシリーズについては、タッチディスプレイ端末のシリーズとなっている。

 サムスン電子が世界の携帯電話事業者に認められた背景として、さまざまな端末プラットフォームで端末を開発しているため、事業者が戦略に合わせて端末を選びやすい状況があるという。オウ氏はAndroidを採用したフラッグシップのスマートフォン「GALAXY S」をグローバル市場に投入することで、「iPhoneを提供するアップルと真っ向勝負する」と語った。

 なお、現時点で国内で「GALAXY S」の投入は予定されていないが、オウ氏は「個人的には日本のユーザーにも提供したいと思っている」と話していた。

 サムスンテレコムジャパンの端末営業部 次長の阿部崇氏は、国内のスマートフォン市場について説明した。同氏は、携帯電話市場全体は停滞ムードだが、スマートフォンについては今後も拡大傾向にあるとした。サムスン電子では現在、NTTドコモ向けに「SC-01B」、ソフトバンクモバイル向けに「X01SC」を投入している。タッチ対応の「SC-01B」に対して、タッチ非対応の「X01SC」は手頃な価格で法人向けに需要があるとした。

bada端末の国内展開

BEAMに搭載されたプロジェクターを紹介するオウ氏

 今回の説明会において、オウ氏はbadaプラットフォームを採用した端末の日本への提供について、「日本については自信がない」と話し、当面はその考えがないことを明らかにした。同氏は「badaは端末に慣れやすい市場に提供する」と述べたのだが、その真意には、国内におけるサムスン電子のブランドイメージが関係していることがわかった。

 オウ氏は、国内のサムスンブランドについて、パナソニックやソニー、東芝といった国内メーカーのレベルには達していないと話し、欧米と比較してサムスンブランドが認知されていないとの見解を示した。「サムスンは欧米において、製品の品質やアフターサービスも含め、トップレベルで認められている」と語り、そういった状況にない日本ではまず製品を使ってもらえるチャンスが少ないとした。

 こうした理由とともに、国内の携帯電話の販売方法も影響しているという。国内では携帯電話事業者から端末が提供されるため、事業者の端末提供スケジュールにあわせてバランスを調整した上で端末が発売される。言い換えると、メーカー毎に製品が競合しないように調整して発売されていることになる。オウ氏は、海外の事業者は端末のバリエーションを見せるため、メーカー同士が競合するかは関係ないと語った。

 では、サムスンのブランド力向上に何が必要なのか。オウ氏はこの点について、一度使って欲しいと話す。「サムスンには何万人もの開発者がおり、生産、開発、品質・検証を含めて、日本のメーカーと同じように死ぬほど頑張っている。我々がグローバルの市場でどのように見られているか是非知って欲しい。まず使ってもらう、そのために努力したい」と話した。

日本の携帯電話

 オウ氏は、日本の携帯電話についても言及し、「日本のメーカーの携帯電話は、世界レベルでみると日常的に使っているものが非常にハイレベル。オープンではないものの、海外のようにスマートフォンが必要なのかと思うほど日本の携帯電話は優れている」と話した。同氏は、こうした状況を変えたのがiPhoneだとし、スマートフォンという切り口ではなく、エンターテイメントという切り口が成功したと述べた。この成功によって、Xperiaも人気を呼び、国内でもスマートフォン全体が注目される状況が生まれたとした。

 さらに、かつてノキアが展開していたように、サムスンが日本においてメーカーブランドとして展開する可能性について、オウ氏は「それはありえない」と語った。

 「サムスンは東洋系の考え方をする。だから日本で生き残っている。ノキアやモトローラはグローバルで非常に力はあるが、東洋系の考え方が不足していたのではないか。東洋系の会社は、製品に対して事業者やメーカー、パートナーが全員責任を持つ。メーカーが独自にものを売るのは我々の哲学に反している」と述べた。

 中国市場においてメーカーブランドで展開している点についても、「事業者であるチャイナモバイルと共同で検討しており、それをサムスンが販売している。日本でもそれは同じで、共同で検討しそれを事業者が中心となって販売している」と語った。

GALAXY S

    
毎朝使う機能がまとめられたウィジェットSNSの友達の発言を確認 待受画面
ソフトウェアキーをなぞって操作するSwipe機能。写真は「LOVE」と入力「LOVE」と「LIVE」は1字違いで、しかも「O」と「I」は隣り合わせ、精度は高いが候補が表示される場合もあった「good」や「happy」など同じアルファベットが続く場合も入力できる 
  電子書籍電子コミック
静電容量、マルチタッチに対応   
HD動画の録画、再生に対応。ディスプレイは非常に精細な印象   
  サムスンのスマートフォンは最小で1500mAhとなるOSは日本語が選択可能だった
    

WAVE

    
  ボディはアルミ製 
    
 バッテリーカバーもアルミ、バッテリー容量は1500mAhストラップホールが用意されている

BEAM


韓国内で販売されているBEAM。投影可能時間は2~3時間   
    
  

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(津田 啓夢)

2010/4/23 20:58