NECエレとルネサスが合併、新会社設立へ


NECエレクトロニクス 代表取締役社長の山口純史氏(左)とルネサス 代表取締役社長の赤尾泰氏(右)
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 NECエレクトロニクスとルネサステクノロジは、2010年4月1日(予定)に事業統合する合併契約を締結したと発表した。

 両社は2009年4月より事業統合に向けた検討を進めており、9月には事業統合に向けて基本合意していた。今回の発表で正式に両社の合併期日が決まり、今後、株主総会の承認と関係先の認可を受けた上で新会社となる。両社の合併は、独占禁止法に抵触する恐れがあり、現在、米国、EU、ブラジルの各市場ではこれをクリアしており、日本や中国、韓国などで審議中となっている。

 事業統合の存続会社はNECエレクトロニクス。合併比率はNECエレクトロニクス1に対してルネサステクノロジは20.5、ルネサスの普通株式1株に対して、NECエレクトロニクスの普通株式20.5株を割当交付する。

 事業統合にあたって、ルネサスは日立製作所と三菱電機を割当先とした約717億円の増資を行う。すでに550億円は実施済みで、2009年度末までに残りの約167億円の増資が完了する予定。

 さらに、合併後の新会社「ルネサス エレクトロニクス株式会社」は、NECと日立、三菱電機を割当先として、総額約1346億円の第三者割当増資を実施する方針。これにより増資完了後の株主比率は、NEC33.97%、日立30.62%、三菱電機25.05%、そのほか約10%という構成になる。

 新会社の経営陣は、代表取締役会長に山口純史氏(NECエレクトロニクス 代表取締役社長)、代表取締役社長に赤尾泰氏(ルネサス 代表取締役 取締役社長)が就任する予定で、常勤取締役には両社から2名ずつ選任される。なお、新会社は株式比率の関係からNECの連結対象会社から外れ、持分法適用会社となる。

 NECエレクトロニクスとルネサステクノロジは、携帯電話向けのマイコンやシステムLSIなどを供給する半導体専業メーカー。NECの半導体部門(汎用DRAM除く)から分社したたNECエレクトロニクスはマイコン、日立と三菱の半導体部門が合併して設立されたルネサスは、「SH-Mobile」などのシステムLSIなどに強みを持つ。

 両社は合併の理由を、半導体市場の世界的な競争激化や新興国の台頭などによる経営基盤の強化、および技術力の向上などを挙げている。個々の製品の競争力強化だけでなく、応用製品毎にマイコンやシステムLSI、個別半導体などをまとめて提供するソリューション提案型のビジネスの拡大にも注力するとしている。合併後の業績見通しについては決定次第公表するとしている。

最終的な株主比率スケジュール
経営体制事業方針と経営目標

「スピード経営」を目指すルネサス エレクトロニクス

事業の3本柱

 15日夕方に行われた記者会見において、NECエレクトロニクス 代表取締役社長の山口純史氏は、2010年1月に予定していた合併契約会見を約1カ月前倒ししたことを明かし、スピード経営を目指す両社の姿勢を見せた。

 ルネサス テクノロジ 代表取締役 取締役社長の赤尾泰氏は、事業方針について語り、事業統合のシナジー効果を早期に具体化し、統合初年度の営業黒字化を目指すとした。また、現在国内での売上げ半分以上を占めるが、海外での売上げ増に注力することで、海外での売上げを60%にする目標が語られた。

 事業の中核となるのが世界トップのマイコン事業で、これを軸にシステムLSI事業や個別半導体事業を活性化させていく。同時に開発リソースを効率化させるため、設計プラットフォームの共通化などにも取り組む。

 また、「スピード経営」を標榜するルネサス エレクトロニクスでは、専任チームを設置して、統合後100日間の最優先プロジェクトを決め、強化分野の「仕分け」に着手する。生産拠点の継続や統廃合などの決定もこのプロジェクトで担当し、固定費の削減と成長市場への事業拡大を進めていくとしている。NECの連結対象から外れることで、基本的には常勤役員6名でトップダウンによる事業展開が可能になるという。NECエレの山口氏は、早期に結果を出すことと、株主価値向上を念頭に経営すると語った。

 このほか、独占禁止法について現在審議中の日本、中国、韓国について、「おそくらくクリアできると考えている。独禁法がクリアできる前提で動いている」(山口氏)とされた。


新会社の売上高マイコンを軸にシナジー活用
海外市場に注力マイコン事業の強化方針
100日プロジェクトを実施統合会社の目標

 



(津田 啓夢)

2009/12/15 15:53