ソフトバンク、四半期ベースで最高の営業利益に


ソフトバンク孫氏

 ソフトバンクは、2009年度第1四半期連結決算を発表した。グループ全体の売上高は前年同期比2.9%増の6663億円、営業利益は27.3%増の1082億円、経常利益は45.2%増の787億円、当期純利益は41.4%増の273億円となった。

 孫 正義社長は、「しっかりと両足で地面を踏みしめ、歩いているという経営体質ができ上がったことを感じてもらえる決算内容になっている。NTTドコモが減収減益、KDDIが減収増益であるのに対して、当社は増収増益。営業利益では四半期ベースでは初の1000億円を突破し、フリーキャッシュフローも大幅に改善している。とくに、移動体通信事業が増収増益を牽引しており、売上高で前年同期比9%増、営業利益で36%増となり、全社の成長率を上回っている」と総括した。

決算ハイライト連結決算のサマリー

 

携帯事業の業績、オペレーションデータ

 移動体通信事業は、売上高が前年同期比9.3%増の4073億円、営業利益は36.1%増の602億円。第1四半期の純増数は32万3300件となり、26カ月連続で首位を維持。累計契約数は6月末で2095万6200件、そのうち第3世代携帯電話は1945万5000件となった。累計シェアは19.3%となっている。解約率は1.05%。3G携帯電話では0.87%となった。

 第1四半期の総合ARPUは4030円となり、前年同期比150円の減少。データARPUは230円増の1880円、音声ARPUは380円減少の2150円。また、端末割賦請求分、あんしん保証パックを加えた1人あたりの月額支払総額は5890円となり、前年同期から40円増加している。

1契約あたりの収入が増加

 孫氏は「1契約あたりの現金収入は、ほぼ一定に推移している。これに対して、契約数が増加していることが、移動体通信事業の収益を高めており、キャッシュフローの増加につながっている」と説明した。

 新スーパーボーナス加入者向けの月月割において、基本使用料を割引対象外にするテストケースを行っていることについては、「これを全国展開するのかどうかは検討しているところである。月々8円しか支払っていない人もいる。トランシーバー状態で使っている人と一般の人が、ネットワークを一緒に同じように使うのはアンアェアであると考えている」とした。

 「パケットし放題」などパケット通信料定額サービスの加入者は、3G携帯電話加入者の約半分を占めている。そのうち上限まで利用しているユーザーは、昨年同期には36%だったが、第1四半期には44%に増加。一方で、下限のユーザーは約30%とした。

 「かんたん動画やS1バトル、かんたんミュージックなどの利用者が増加しており、200数10万ユーザーにまで増え、月300万ダウンロードにまで達している。またフォトビジョン(通信対応デジタルフォトフレーム端末「PhotoVision HW001」のこと)も、世界で一番簡単に使えるフォトフレームを目指している。こうしたところでの収益拡大を目指しており、これを社内では別腹プロジェクトと呼んでいる。携帯電話メーカーは世界市場を目指すことで収益を拡大し、通信事業者は別腹事業で収益を増やしていく」とした。

 

「全てのケータイがiPhone化する」

 また、iPhone 3Gの売れ行きについても言及。「昨年、iPhoneを発売したときの売れ筋上位7機種のうち、今ではほとんどが100位以下になっているが、iPhoneだけが1年以上に渡って1位か、2位を続けている。iPhone 3GSは、モノが足りない状況が続いており、モノがあれば純増数をもっと増やすことができたかもしれない」などとした。

 さらに、「法人顧客によるiPhoneの導入が進展しており、導入した企業では残業代が1人あたり月3万円減ったという話も出ている。3万円の残業代が削減できるのであれば、iPhoneを導入するメリットがある。ただし、iPhoneがすべてではない。これからは他の携帯電話もiPhone化していくことになる」とした。

「iPhone for everybodyキャンペーン」などの影響もあってか、過去1年、iPhoneの売れ行きは好調だったというiPhone導入により残業代を圧縮できた企業もあるという

 ソフトバンクの社員4000人がiPhoneを所有していることも明らかにしたほか、ソフトバンクホークスの選手がiPhoneを所有し、自らのバッティングシーンの映像をiPhoneで随時確認できるようにしており、「ホークスは、交流戦2連覇を達成しており、絶好調である」などとして、iPhoneによる効果が出ていることも示した。

 また、孫社長は、決算会見に出席した記者・アナリストに対して、iPhone 3GSを所有しているかどうか挙手を求めたが、あまりにも少ない結果を見て、「みなさん人生観を変えた方がいい。PC人間だった私が、PCを使う頻度が10分の1になり、インターネットに接続する頻度は10倍以上になった。iPhoneなしでよく生きてきたなと思っている。PCやインターネットに出会った時に匹敵する感動があった。みなさんがホワイトカラーだと思うのならば、一度iPhoneを使ってみてほしい。その上で、iPhoneの批判ができるのであれば、頭がどうかしていると思う。iPhoneを見て感じるのは、織田信長は鉄砲を見て『鉄砲の時代がくる』と感じたこと。しかし、刀を持っている人のなかには、それにこだわり続けた人もいた。モノの見方の次元が違うということであり、鉄砲を知る立場から見れば、それは可哀想なことだ」などとした。

 

ブランド戦略について

8月1日夕刻からSMAPがソフトバンクのCMに出演する

 ブランディング戦略についても言及。CM好感度ランキングにおいて、ソフトバンクのCMが多くのジャンルで1位を維持し続けているとともに、SMAPを新たにキャラクターに採用することについても触れ、「2008年度のCMタレント好感度ランキングでは、1位の白戸家のお父さんの犬を筆頭に、SMAPのメンバーを含めて8位までがソフトバンクタレントになる」とした。

 なお、SMAPが登場するCMは、8月1日18時59分から、ほぼ全国の放送局において、1分間のCMとして放送される予定になっているという。

 「ステージで70mという、日本のCM史上最大のセットを作って撮影したもの。SMAPの5人が揃ったCMは最近では珍しい」などとした。

 

固定事業の業績、今後の展開について

 移動体通信事業以外のセグメント別の業績は、次の通り。

 ブロードバンド・インフラ事業の売上高は前年同期比10.5%減の538億円、営業利益は32.7%増の139億円。固定通信事業は、売上高が前年同期比1.9%減の867億円、営業利益は337.6%増の34億円。インターネット・カルチャー事業の売上高は前年同期比4.5%増の651億円、営業利益は3.8%増の317億円。イーコマース事業は、売上高が前年同期比13.2%減の542億円、営業利益が6.9%減の9億円。その他事業の売上高は5.3%減の206億円、営業損失は8億円の赤字となった。

 「固定電話事業は過去最高の営業利益となった。NTT東西やKDDIは、右肩下がりに対して、当社は右肩上がりとなっている。健全な事業に発展してきた。またヤフーは、増収増益を継続している」とした。

 そのほか、孫社長は、ソフトバンクの目標として、「モバイルインターネットナンバーワン」、「アジアナンバーワンインターネットカンパニー」を掲げていることに触れ、「アジアナンバーワンインターネットカンパニーは現実的なものになってきた。中国は、2010年にはいよいよ日本のGDPを抜くなどのますます市場が成長している。そのなかで、中国で圧倒的ナンバーワンのBtoBイーコマースであるAlibaba.comが4000万人を突破。Taobaoも中国のオンラインショッピングでナンバーワンとなり、数年後には日本の百貨店の売上高を上回った可能性もある。ソフトバンクは大きな投資を今後しないとしたが、それは守りに入ったのではない。中国をはじめとして、アジアナンバーワンインターネットカンパニーとモバイルインターネットナンバーワンの分野で攻めている」とした。

 一方、今後3年間で1兆円前後のフリーキャッシュフローを創出し、2011年度には純有利子負債を半減、2014年度にはこれをゼロとして、実質無借金経営とする方針を、改めて強調した。

 



(大河原 克行)

2009/7/30 19:50