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富士通、全てがメイドインジャパンのスマホ工場で親子向け見学会

1.5メートルの落下試験など、耐久性能を測る検証設備やリサイクルセンターも公開

 子供たちの夏休みまっただ中の8月8日、兵庫県加東市にある富士通周辺機で、親子向けの工場見学会「夢きらめく☆シゴト発見プロジェクト~2017夏休み親子で工場見学~」が開催された。同社は富士通製スマートフォンの生産を一手に引き受ける工場をもつ企業。NTTドコモのarrows NX F-01Jやらくらくスマートフォン4 F-04J、MVNOで取り扱っているSIMフリー端末のarrows M04など、多数の機種を複数の生産ラインで組み立て、出荷している。

 あらかじめ募集した兵庫県加東市在住・在学の小学5年生~中学3年生とその保護者を招待し、見学会当日は18組、合計28人の子供たちが参加。最新のスマートフォンが地元で作られていることを理解すると同時に、ロボットや人による的確な作業でスマートフォンが組み立てられていく様子を観察した。

富士通周辺機の親子向け工場見学会に登場した加東市のマスコットキャラ「加東伝の助」
兵庫県加東市にある富士通周辺機本社工場
兵庫県内には富士通周辺機のもう1つの拠点である明石事業所もある

製造から処分に至る「ゆりかごから墓場まで」カバーする工場

 1984年に設立された富士通周辺機は、当初はコンピューター用モニターやシステムプリンターの製造をメインに行ってきたが、2007年から加東市の本社工場で携帯端末の製造を開始。同年に不要品を分解、処分するリサイクルセンターを本社工場に移転し、翌年には近隣の明石事業所に携帯端末の修理施設となるリペアセンターを開設した。さらに2016年には、それまで那須にあった修理工場も集約して、現在は製品の開発・製造、リペア、リサイクルという一連の製品サイクルを担う「ゆりかごから墓場まで」対応する工場となっている。

同工場で生産している製品。富士通製スマートフォンはすべてこの工場から生まれている

 本社工場では、arrows NX F-01J、arrows Be F-05J、らくらくスマートフォン4 F-04J、arrows M04など、富士通コネクテッドテクノロジーズ製のスマートフォン全機種を生産している。年間の生産可能台数500万台というキャパシティをもち、スマートフォン以外にウェアラブルデバイス、液晶ディスプレイといったコンシューマー機器、業務用機器の生産も手がける。

 製造設備である自動組立機械も自前で製造しており、正確で効率の良い量産を実現している。たとえばスマートフォンの機種ごとに異なる組み立て作業や手順が必要になる場合でも、その機種に適した設備構成や動作内容にすばやくカスタマイズできる。異なる機種を製造するため生産ラインに変更が生じても、さほど時間をかけずに最適な形で対応できるのが特徴だ。

工場見学に集まった18組の親子
富士通印の緑茶が配布。環境保全活動に力を入れていることもアピールした

高い品質を維持するためのさまざまな取り組み

 当日は実際に工場内部を見学する前に、富士通周辺機 代表取締役社長の長原氏が「工場では製品を設計している人、どういう風にものを作るべきか考える人、リサイクル作業をしている人など、大勢の人がいろんなことをして1つの物ができあがっている。ものづくりの楽しさをぜひ感じ取って、自分ならこんなことをやってみたい、という気付きを得てもらえれば」と挨拶。

「ものづくりの楽しさを感じ取って」と挨拶した富士通周辺機株式会社 代表取締役社長の長原 明氏

 今回の工場見学会では、平日ということもあってほとんどフル稼働しているスマートフォンの生産ラインを間近で観察できた。最近のarrowsシリーズがもつ高い耐久性能を量産段階で測る検査設備に加え、外部から集められた精密機器の分解処分を行うリサイクルセンターの内部も見学した。

見学用の服装に着替えて工場内部へ

 生産ラインにおいては、作業員の手元をカメラで撮影し続ける映像ログの記録のほか、バーコードなどを用いた個体製造ログの記録、ロボットによる自動品質検査、最終的な梱包時の重量チェックのように、何重にも張り巡らされたエラーチェック機構によって、安全でミスなく、品質の高い製品を生み出す工夫が施されていることがわかる。

筐体への部品組み付けを行ういくつかのエリアでは、1人の作業員が加工前と加工後の部品をチェックする作業を兼務。コンベヤーに流し、ロボットによる組み付け後、反対側から再びコンベヤーで自動で戻るという、効率化の進んだ作業になっていた
スマートフォンが部品単位で正常に稼働するかどうかを機械でチェック
こちらでは人の手により1台ずつ画面操作を行い、正常に動作することを確認している
作業員が立つマット(すのこの上にラバー状のマットが貼り付けられているものと思われる)。作業員によって体格は異なるが、作業台自体は高さを変えられないため、こういったマットを重ねることで身長差があっても快適に作業できるようにしていた
らくらくスマートフォン4の精密部品が自動で組み付けられていく機械を食い入るように見つめる子供たち

 検証設備では、正しく、確実に試験を実行するための機械が複数設置されている。この工場内の検証設備は、スマートフォンの耐久性能が設計時の性能を満たしているか検証するためのもので、気密性を検証することによる防水性能の確認、1.5メートルの高さから26方向で落下した際に画面が割れたりしないことの確認、端末全体を一定の力でねじった時に壊れないことの確認などが可能となっている。

エアリーク試験。端末に空気圧をかけることで、一定以上の気密性が保たれている場合は端末自体が変形する。その変形量を計測することで、防水性能を正しく有しているかを確認する
タッチパネルに対する自動圧迫試験。タッチパネル全体を100箇所前後、先端直径10mmの機材で10kgの荷重を加え、耐えることを確認する
コネクタ耐久試験。USBケーブルを接続した状態で、コネクタの根元に上下および左右方向から2kgの力を5000回ずつ加え、問題ないことを確認する
1.5メートル、26方向からコンクリートに落下させる試験。正確に26方向から衝突させるため、最後まで正確にその方向を維持する吸盤を用いた試験機材を新たに開発した
こちらは従来型の試験機。スマートフォンを載せた天板を開いて自由落下させるものだが、落下中に方向が変わってしまうため、狙った角度で落下させるのには不向きだった
捩り試験。端末の上下で把持し、5kgの力で1万回ねじりを繰り返す。このデモでは筐体の変形がわかりやすいようにより強い力でねじられていたが、それでも端末に問題は発生していなかった
電源キー押下試験。通常使用で考えられる3年間相当11万回の電源オン・オフをひたすら繰り返し、問題ないことを確認する
荷重試験。端末中央部に30kgの荷重を加え、問題ないことを確認する。ズボンのお尻ポケットにスマートフォンを入れて、そのままイスに座ったときのことを想定したもの
折りたたみ型携帯電話の開閉を11万回繰り返す、ヒンジの耐久試験を行う機材もある

 また、最後に案内されたリサイクルセンターは、富士通のグループ会社で業務に使用して老朽化・故障したIT機器や、一般のユーザーから送られてきた不要機器などが集められる場所。スマートフォンやタブレット、PC、プリンター、大型汎用機など、すべて1台ずつ人の手によって分解し、再利用可能な金属・貴金属や埋め立て処分する不燃ゴミなどに分類している。見覚えのある多数のパーツが種類ごとに山となっている様は、圧巻の一言だ。

本社工場の一角にあるリサイクルセンター。ここではロボットは使わず、人の手によって1台ずつ分解される
持ち込まれた携帯電話の充電台が無数に
PCから取り外された光学ドライブも大量に山積みされている
こちらはハードディスク
ノートPC用のキーボードも処分
そのほかにもさまざまな部品が細かく分類されている

子供たちが将来つく仕事の1つの選択肢に

 今回の工場見学会は加東市の商工観光課が主催して行われたもの。日本国内生産のスマートフォンが生まれる場所、日本のものづくりの現場が見られるイベントとして、海外製スマートフォンが増えた今となっては大変貴重な機会だと言える。

工場の社員に積極的に質問する子供や、説明を聞いて熱心にメモを取る子供の姿も

 主催した加東市役所の担当者は、「今日見学したことを大人になっても覚えておいてもらって、またこういうところで働きたいなと思ってもらえたら」と子供たちに語りかけていた。工場内部の生産ラインでは身を乗り出して食い入るように部品が組み上がっていく様子を観察していた子供たちが大勢見受けられ、その一方で「リサイクルセンターが面白かった」と話す子供もいた。将来の就職まで視野に入ったかどうかはともかく、「ものづくりに興味をもってもらう」という意味では狙い通りだったようだ。