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キャッシュカード要らずの「スマホATM」、じぶん銀行×セブン銀行で3月27日開始

 キャッシュカードを使わず、スマートフォンだけでATMから現金を引き出せる新サービス「スマホATM」が3月27日10時に登場する。セブン銀行のATMで利用できるもので、第1弾としてじぶん銀行のユーザーであれば利用できる。

 セブン-イレブンや駅や空港、ショッピングモールなど全国にあるセブン銀行のATMで利用できる。スマートフォン側ではじぶん銀行アプリの新機能として提供される。

使い方

 じぶん銀行のアプリで、出金や入金、あるいはあらかじめ出金金額を設定しておける「クイック出金」を選ぶとカメラ機能が起動する。その上で、ATM側へ新たに追加された「スマートフォン出金・入金」というメニューを選ぶとQRコードが表示され、アプリで読み取る。そして企業番号(8333)や口座暗証番号を入力するとトレイが開く。利用にあたっては、ユーザーの手元にあるスマートフォンが本人のものであることを確認する「スマホ認証サービス」の登録を済ませる必要がある。

 「所要時間はだいたい40秒程度」(じぶん銀行IT戦略部長の中村力氏)とのこと。キャッシュカードは30秒程度で済むとのことだが、それに財布の出し入れを含むと、スマホATMもキャッシュカードと同程度の時間で利用できると見込む。

QRコードで誰もが使えるサービスに

 キャッシュカードレスのATM操作は、静脈を使ったものや、QRコードをスマートフォン側で生成するものなどがある。また、海外ではNFCを使うものがある。今回は、海外でも例があるという「ATM側でQRコードを表示して、それをスマートフォンアプリで読み取る」という流れになる。

 セブン銀行業務推進部事業の池田憲彦氏は、QRコードを読み取る方式を採用した背景について「誰でも使えるカメラを前提にサービスを開発することにした」と語る。その結果、ATM側のハードウェアに改修が不要となり、全国で一斉に導入でき、なおかつほとんど全てのスマートフォンで利用できるというメリットに繋がった。

QRコード、暗証番号、パスワードで本人確認

 一般的なATMはキャッシュカードを入れて、暗証番号を入力すれば現金を引き出せる。キャッシュカードを持っていること、暗証番号を知っていることで、本人確認代わりにしているわけだが、今回の「スマホATM」ではQRコードをATM上に表示し、それをスマホアプリで読み取り、暗証番号を入力する。

 ATMで表示されるQRコードには、ユーザーが利用しようとしているATMと時間帯を含む情報がある。利用時には、じぶん銀行のスマホアプリ側で、「いくら出金するのか」「入金するのか」という操作を行う。操作した結果(ユーザーがしたいこと)は通信経由でサーバーへ送られている。その上で、ATMのQRコードを読み取ることで、どこのATMで現金を出すべきか判断する、という仕組みだ。いわばアプリで出金/入金の予約をしておき、QRコードで実行するという形。もし他人に読み取られたとしても、QRコードに口座関連の情報はないため問題はない。

 スマートフォンが本人のものかどうかは、先述した通り、じぶん銀行のアプリにもともとある「スマホ認証サービス」で確認する。またアプリインストール時には、生年月日やオンラインバンキングのログイン用パスワード、口座に関連するユーザー固有の番号(お客さま番号)などを入力することで本人確認としている。インストール後もアプリ起動時には4桁の暗証番号入力が必要だ。アプリのインストールや起動時のパスワード、そしてATM利用時のQRコードと口座の暗証番号といった手続きでなりすましを防いでいる。

 仮にスマートフォンを紛失した場合でも、リモートでデータを消去し、新しいスマートフォンにアプリを入れ直せば、じぶん銀行へ届け出をせずにそのまま利用し続けられる。

 これらの仕組みは、スマートフォンとインターネットのセキュリティと、口座の暗証番号と組み合わせたものであり、QRコードの読み取りは、ATMの前にいる人と口座の利用者が同一人物であることも示す、という考え方になるという。なお、QRコードの表示、つまりATM側はセブン銀行、アプリはじぶん銀行が開発するという形だった。

ATMもスマホファーストに

 セブン銀行では、2001年の創業以来、「いつでもどこでも安心して利用できる」というコンセプトでATMネットワークの構築を推進。セブン-イレブンなどグループの店舗だけではなく、ショッピングモールやオフィスビルなど2万3000台を超えるATMが設置され、年間8億件、利用されるようになった。

左からじぶん銀行の中村氏、ゲストで決済分野を取材するジャーナリストの本田元氏、セブン銀行の二子石社長、じぶん銀行の鶴我社長、ゲストでタレントの池澤あやか、セブン銀行の池田氏

 一方、急激に普及し、生活必需品となったスマートフォンで、ATMを操作できるようにするアイデアを以前から暖めていたところ、じぶん銀行が同社ユーザーの半数がセブン銀行のATMを利用しており、利便性向上をはかるためサービス開発を打診。技術面で検討したところ、ハードルはあるもののクリアできるとの見通しが立ち、2016年6月には両行の提携が発表され、協力して開発が進められた。

 「いよいよATMもスマホの時代」と語るセブン銀行の二子石謙輔社長は、新しい金融サービスのプラットフォームというステージに入った、大きく背中を押してくれたじぶん銀行に感謝したいと語る。

 じぶん銀行の鶴我明憲社長は、モバイル専業という独特な立ち位置で開業し、「銀行サービスの概念を一変させたい」という考えを説明。膨らみがちな財布からカードが1枚減るという画期的なサービスと胸を張る。なお、今夏にはじぶん銀行のアプリをあらためてリニューアルし、アプリにAIを活用した為替変動予想ツールを搭載する。このツールでは、相場変動のタイミングなどをプッシュ通知してくれるものになる。

 セブン銀行では、第1弾のじぶん銀行に続き、今後LINE Payユーザー向けのスマホATMを提供する方針。他の金融機関にも採用されるよう働きかけていく。今回のスキームでは、他の金融機関で導入されるとしても、じぶん銀行にとっては収益にはならないとのことだが、2万3000台もあるセブン銀行のATMが利用されれば、スマホATMの機能が徐々に知られ、じぶん銀行のことも認知され、新規顧客の獲得効果も期待できるとしている。