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日本でキャリアモデルも準備中、世界シェア3位を目指すレノボ・モトローラの戦略

 モトローラ・モビリティ 会長兼社長のアイマール・ド・ランクザン氏が来日し、出荷数シェアで世界3位を目指すという同社の戦略や日本市場での取り組みの拡大について語った。プレゼンテーションは同社の概要の説明にとどまり、多くの時間を割いて報道陣からの質問に答えた。

モトローラ・モビリティ 会長兼社長のアイマール・ド・ランクザン氏

 ランクザン氏は、モトローラ・モビリティの会長兼社長のほかに、レノボグループ シニアバイスプレジデント、レノボ モバイルビジネスグループ 共同社長も務め、モバイルビジネス全体を統括している。以下でも事業規模などについてはモトローラを包含するレノボの取り組みとして語られている。

 「SIMフリー市場は規模はまだ小さいものの、大きく成長しており、機運をうまく掴んでいきたい」と日本市場について語り出したランクザン氏は、世界のスマートフォンの出荷数シェアで3位を狙うという目標や、レノボとモトローラの統合によりサプライチェーンが強化され、ユーザーにとって“意味のあるテクノロジー”が提供できるようになっていると、現在の状況を説明する。

 日本でも発売され注目を集めているモトローラの「Moto Z/Z Play」と拡張ドッキングパーツの「Moto Mods」にも言及した同氏は、「ユーザーは電話としての端末に一切妥協することなく、いろいろな仕様にできる」とMoto Modsの革新性を語り、「過去数年でカメラやバッテリーも改善されてきたが、目をみはるようなイノベーションではない。我々のイノベーションでガラリと変えていきたい」と自信を見せる。

 市場での目標については、上記にもあるようにレノボとして世界市場で出荷数シェア3位を、3~4年後に目指すとする。

 「年間7000万台以上を出荷しても、3位ではない。我々はチャレンジャー。3位になるためには、謙虚に挑戦しなければならない」(ランクザン氏)。

 以下は質疑応答の様子としてお伝えする。

日本市場について

――日本での事業をどのように進めていくのか。

 すべてのセグメントで展開し、SIMフリー端末以外も提供していきたい。日本向けとしてはMoto G、Moto X、Moto Zになる。(低価格モデルの)Moto Eは日本での需要は高くないだろう。

――日本市場に特化した製品は考えているのか。

 Moto Modsを活用すれば、端末よりもスピーディに開発できる。例えば決済用Modなども提供できるだろう。端末そのものも、需要があれば日本向けとして開発し提供していく。

――日本市場でキャリアを通じて提供することは考えているのか。

 もう間もなく、その計画が発表される予定だ。

――モトローラとしての端末の数や発売サイクルについて、基本的な考え方を教えてほしい。

 プロダクト・ポートフォリオはコンパクト。Moto G/X/Zで合計5つのプロダクトラインがあり、年間で10~12個の製品だろう。このうち日本に投入するのは、ハイエンド寄りのものになる。開発サイクルは、概ね1年強で刷新していくことになるだろう。

Moto Modsを続々投入

――モトローラのアクセサリーについて、日本市場での戦略は。

 大きく2つあり、ひとつはMoto Mods、もうひとつは(Moto 360などの)ウォッチ。Moto Modsは四半期(3カ月)ごとに4~5つを投入していく。かなり広範なラインナップだ。ウォッチについても順次導入していく。

――Moto Modsは端子だけでなく形状も決まっている。今後の端末を開発する上で足かせになる可能性があるのでは。

 Moto Zは5.5インチで、ちょうどいいサイズだ。6インチでは少し大きい。(いつでも付け外しできる)ホットスワップも重要なポイントだが、端子による伝送速度はBluetoothなどよりもパワフルだ。

 Moto Modsは2世代先(の端末)までは互換性を確保する。

Moto ZとMoto Mods用の端子を指すランクザン氏

――将来的にすべての端末がMoto Modsをサポートするのか。

 現在はMoto Z/Z Playのみだが、拡大していきたい。より経験を積めば、ふさわしい方向性が見えてくるだろう。

 Moto Zは成功している。(Moto Modsなどを)市場は最初、理解していないので、啓蒙から始めないといけないが、啓蒙の結果は良い。受注は増えており、供給を早めていかなければならないほど人気が高い。ハッセルブラッドのカメラなどを是非試してみてほしい。私も使っている。

――Moto Modsは規格をオープンにしてサードパーティの開発を促進していくのか。

 すでにやっている。APIも開放し、開発キットを提供している。ぜひサードパーティに開発してもらいたい。100万ドルの賞金を用意したコンテストも発表している。

 ハッセルブラッドのカメラを搭載したModは共同開発の例で、Moto Modsを100%我々で作るわけではない。

――Moto Modsの販売を拡大するのに何が重要だと考えているか。

 アタッチレート(端末購入者がMoto Modsも買っている割合)は予想よりも高く、非常にいい。50%強になっている。

Moto Mods

――Moto Zはユニークな製品だが、現在の日本のSIMフリーの売れ筋からすると、高額だ。下取りなど、買い替えを促す施策をモトローラが実施することは検討しているのか。

 価格というのは……(内容をみて高い/安いと判断する)相対的なものだ。

 我々の製品はプレミアムなプロダクト。Moto Zの極薄のボディはコストとして価格に反映されている。Moto Z Playは少し下の価格帯で、価格のバリエーションには対応している。

 具体的に下取りをするかどうかは、ローカルのチーム(≒モトローラ・モビリティ・ジャパン)が考えることになる。だが、要求があるなら、応えなければならないだろう。先手を打つことが重要であり、(仮に)下取りが重要ということなら、ローカルの人達にぜひ対応していただきたい。

――モトローラとレノボで開発体制は分かれているのか。例えば今後、Moto Modsがレノボの端末で使えるようにはならないのか。

 まず、ワンカンパニーであるという点を強調したい。モバイルはワンチームで開発している。ひとつのロードマップを共有している。国によりレノボになることもあれば、モトローラになることもある。2つのブランドの間に壁はない。

 (PCのYoga Bookの開発体制などのように)違いはなくなり、(社内では)ひとつとして扱うことになるだろう。

スマホメーカーの統廃合が進むと指摘、マラソンのような持久力が必要

――事業をする上では、知名度、ブランド力、サポート体制、課題に手を打つなど、さまざま側面がある。モトローラは日本で戦える体制が整ったということか。

 そうだ。準備万端だ。

 我々はハードウェアの業界で30年以上仕事をしてきた。どのセグメントでも競争に勝つ努力をしてきた。レノボのPC事業は、IBMのPCの事業を買収し、勝てないと思われていた市場ですでの3年連続勝ち続けている。

 しかし、(スマートフォンでも1位になれるというような)妄想を言うつもりはない。世界の出荷数シェアの1位と2位のメーカー(Appleとサムスン電子)は巨人のような存在だ。

 我々にチャンスがないわけではない。毎朝起きて市場シェアを確認するが、(レノボは)世界で5%しかない。これはチャンスが95%も残っているということだ。ブラジルではシェア2位で、南米、インド、東ヨーロッパではシェアは高い。4年後には(世界シェア)ナンバー3になれると考えている。

 こうした事業はやる気と忍耐力が必要。流通、パートナー企業を含めて、打って出る準備はしている。

 日本でのシェア目標はまだ決めておらず、今は足場固めの時期。目標が決まれば明確にお伝えするだろう。

世界でシェア3位が目標と語る

――世界の市場での3位のポジションは、そのシェアの割合から、流動的だ。3位として、具体的にどのくらいの割合を目指すのか。

 その通りで、出荷数シェアの1位と2位は固定されており、3位以下は“その他諸々”という状況だ。3位以下はすべてシェアが一桁台の3~6%で、そこに8社がいる。2位にはなりにくい状況だ。

 競争は激化しており、どんぐりの背比べの中でも、3位に浮上したいと考えている。裾野を広げ、展開している国ではシェアを拡大していく。我々はIP(知財)を持っており、世界各国でマーケティングも行える。

――中国市場ではOPPOなどの急成長しているブランドも多い。対抗策は。

 中国ではさまざまなブランドがある。我々も中国のメーカーだが(笑)、ある意味でこれは勝機だ。我々の事業は短距離走ではなく、マラソンだ。短期で伸びるブランドはあるだろうが、それを長期に渡って維持できるか、ということ。すでに落ち込んでいるブランドもある。

 常に戦略を鋭く研ぎ澄ましていくことが重要だ。長期に渡る投資の余力も必要。世界中で販売することも大事で、1~2カ国で勝つだけではダメだ。(各国市場で)一貫して市場平均を上回ることが重要で、それが我が社の戦略ということになる。

――3位を目指すとのことだが、(3位の)ファーウェイは2位や1位を目指すと言い始めている。最終的な目標は?

 歴史から学ぶことができるだろう。スマートフォンの世界にはさまざまなブランドがあり、急に消えてしまったものもある。これはPCでも同じだった。最後には統廃合で終わる。

 限られたメーカーしか繁栄はできない。(スマートフォンでも)統廃合が進むと思う。0.5%や1%といったシェアでは存続できない。自国だけで展開するローカルブランドなどのことだ。これらは時間が経つにつれて消えていくか、統廃合される。

 トップ集団の5社に着けていくことが重要で、5位以内なら消えることはない。我々はもっと果敢に、チャレンジャーとして、3位になる権利を手にする。

 徐々に進めていく。一人のユーザーを獲得することから、広がっていく。価値提案とブランドが一致しているような立ち位置を目指している。

――3位は買収が前提なのか。自力で目指すのか。

 レノボのモトローラの買収は大掛かりなものだったが、IP(知財)、エンジニアが合わさり、市場でのポジションやプラットフォームを構築できた。

 まだ買収の計画は無いが、大きな企業なので、これはやらない、とは言えない。先のことは分からない、としか言えない。

――日本市場ではリアルの店舗やサポート拠点も重視される傾向にある。モトローラがこうした拠点を展開する予定は。

ダニー・アダモポーロス氏(モトローラ・モビリティ・ジャパン代表取締役社長)
 モトローラのブランドが付いた店舗ではないが、モトローラは長い間、日本でサポート体制を築いて運用しており、日本語のコールセンターも持っている。

ダニー・アダモポーロス氏(左)