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「夏のイベントに移動基地局車」前年から半減~ドコモ関西のネットワーク対策
2016年7月21日 18:45
花火大会や夏フェスなどで移動基地局車が出動する機会は、前年から20件減った――そう語るのは、NTTドコモ関西支社ネットワーク部災害対策室長の田村勝久氏だ。
ドコモ関西支社が21日に開催した記者説明会で明らかにされたそのエピソードは、NTTドコモが新たな周波数やLTE-Advanced方式を導入したことで、トラフィック(通信量)をより多くさばけるようになったという背景がある。
田村氏によれば、この夏(7月~8月)、NTTドコモ関西支社が移動基地局車を出動させるイベントは、約67万人が集まるなにわ淀川花火大会など17件。この基地局車出動回数、前年の2015年度には37件あった。つまりこの1年で半分以上減ったことになる。
こうしたイベントでは前年の実績などから、今年の需要予測をはじき出す。たとえば野外フェスの「京都大作戦」では、イベント当日の通信量が通常の30倍にも膨れあがる。こうした場合、通信速度が同社内の基準を下回るようであれば、基地局車を出動させる。
前年から20件も出動回数が減った、ということは、新周波数帯、新通信技術の導入で、多くの人が足を運ぶイベントであっても、普段の設備で対応できるということ。日頃のドコモのネットワークがいかに高いレベルにあるか、示唆するものと言えそうだ。
熊本地震で中ゾーン基地局
NTTドコモ関西支社では、ドコモにおける西日本全域のネットワークを監視するセンター「西日本オペレーションセンター」が運営されている。
東日本のネットワークは、ドコモが東京都内で運営するネットワークオペレーションセンターで監視されており、ネットワークのトラブルがないか、常にチェックしている。もし大規模な天災などで、東京のオペレーションセンターがダウンすれば大阪のほうで全国のネットワークを引き受ける形になる。余談だが、かつて本誌が東京にあるネットワークオペレーションセンターを取材した際、東西双方で全国のネットワークを見守るシステムの名前が「ORTEGA(オルテガ)」であることが明らかにされている。
台風や地震など、天災に見舞われやすい環境であること、そして2011年の東日本大震災を踏まえ、これまでドコモではさまざまな対策を進めてきた。ひとつは花火大会などで利用される移動基地局車で、それも最近では下り最大375Mbpsの「PREMIUM 4G」に対応する基地局車も増加中。ちなみにそうした基地局車をコアネットワークに繋ぐ伝送路として、光回線が利用できない場合は、無線マイクロ波を利用する。Eバンドと呼ばれる帯域を利用し、伝送路の距離が1km程度であれば3Gbpsという速度を実現できる装置も備える。
また関西の沿岸部にある基地局は、南海トラフ地震によって襲来する津波によってほぼ全てが被災する見通しだが、そのうち一部の基地局は、停電時の燃料電池、光回線に加えてマイクロ波を使った伝送路などで稼働し続けられるようにする。周辺の基地局がほとんどダウンしても、そうした対策済基地局のサービスエリアをリモート操作で拡げることで、スピーディに沿岸部のエリアを復旧させる。こうした基地局は「中ゾーン基地局」と呼ばれ、実際に今春、熊本で発生した平成28年熊本地震でも稼働した。
田村氏によれば、熊本地震の影響を受けてサービスを中断した基地局は84カ所。これを受けて中ゾーン基地局を14カ所で動かしたのほか、移動基地局車などを展開することで4月14日の地震発生から約1週間後の20日には、サービスエリアが全て復旧した。