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【熊本地震】ドコモ加藤社長、中ゾーン基地局の稼働など復旧状況を報告

全市町村役場でサービス中断は発生せず

 NTTドコモは、2015年度の決算会見の冒頭で、熊本地震への対応などを解説した。同社からはニュースリリースの形でこれまでの対応状況も報告されている。解説はNTTドコモ 代表取締役社長の加藤薫氏が行った。

NTTドコモ 代表取締役社長の加藤薫氏

 平成28年熊本地震は、4月14日が前震、16日未明を本震として、余震を含めて大きな被害をもたらした。ドコモは4月27日にエリアが回復したことを発表。この27日をもって、他キャリアを含めて被災地域の携帯電話のサービスエリアは回復した形になっている。

 他のキャリアを含め、大きな被害を受けたのは16日見未明の本震以降で、ドコモではサービス中断になった基地局が84局に上った。4月20日時点では、立ち入り禁止になっていた地域にある4局がカバーするエリアを除いて、応急復旧でエリアが回復し、その後、許可を得て作業を行ったことで、27日にはすべてのエリアが回復した。

 「東日本大震災の教訓で、市町村役場は通信エリアとして途絶えてはならないという方針だった。今回はずっと維持できたと、自負している。避難所も一部がエリア外になったが、18日にはすべての避難所をエリア化した」(加藤氏)と、エリアの回復過程でも大震災の教訓を活かした対応がとられた様子を語っている。ドコモでは、熊本県と大分県のすべての市町村役場において、地震によるサービス中断が発生しなかったとしている。

3キャリアの停波基地局数の推移

中ゾーン基地局が稼働

 東日本大震災の教訓を得て本格的に構築されたものとして、中ゾーン基地局、大ゾーン基地局という基地局も整備されている。熊本県に約1600局あるドコモの基地局のうち、9局が中ゾーン基地局を兼ねた設備という。

 中ゾーン基地局とは、24時間化した電源の強化や、伝送路の経路の分散、アンテナの遠隔制御といった基盤強化を施した基地局。配下にあたる基地局が停波した際に、遠隔制御でアンテナを制御し代わりにエリアをカバーするといった働きができる。今回の熊本地震でも一部が中ゾーン基地局として稼働することによりエリアの回復が行われている。中ゾーン基地局自体は、全国で550局が設置されており、今後は1200局にまで増やす計画とした。

 一方、大ゾーン基地局は災害時専用の設備。普段は稼働せず、耐震性の高いビルなどに設置され、電源などもさらに強化されている。ひとつで7kmのエリアをカバーでき、全国に106局が設置されている。仮に大ゾーン基地局がすべて稼働したとすると、人口カバー率の3分の1に相当するエリアになるという。もっとも、想定する災害のレベルは非常に大規模なもので、「発動させる機会はないほうがいい」(加藤氏)とのこと。今回は稼働しなかったほか、整備が始まってからこれまでにも稼働した実績はない。

 熊本地震では、衛星移動基地局車は8カ所に配置されたほか、アンテナの遠隔制御を行う中ゾーン基地局やアンテナの遠隔制御などは41局が対応。移動電源車と発動発電機は31局で稼働した。

加藤社長が現地を視察

 加藤社長からは、これまでに発表されているさまざまな被災者支援策が紹介されたほか、ドコモショップの状況にも触れられた。地震発生後、熊本県内のドコモショップ38店舗のうち、33店舗が休業したとのことだが、現在の休業は6店舗にまで減少しているという。

 加藤社長は24日に被災地を視察したとのこと。ドコモの熊本支店の激励のほか、ドコモショップのスタッフにも会ったといい、「車の中で宿泊しながら頑張っていた」と奮闘ぶりを称えた。

太田 亮三