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温泉ハッカソン「SPAJAM2016」表彰式を開催

「モバイルプロジェクト・アワード2016」表彰式も

 モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)は、ハッカソン形式のアプリ開発競技会「スマートフォンアプリジャム 2016」(SPAJAM2016)の表彰式を開催した。

 あわせて、モバイルビジネスに貢献したプロジェクトを表彰する「モバイルプロジェクト・アワード2016」(MPA2016)の表彰式も催された。

「スマートフォンアプリジャム 2016」受賞者
「モバイルプロジェクト・アワード2016」受賞者

SPAJAMで知り合って結成したチームが最優秀賞に

 「SPAJAM 2016」には、全国9地区11予選から選抜された12チームが参加。2日~3日にかけて温泉地に泊まりがけで実施された。当日発表された「音」というテーマにそってアプリを開発。プレゼンテーションでその成果を競った(本選の模様はレポートを参照)。

 最優秀賞に選ばれたチームは、予選の優秀賞枠から選抜された「ちゅらゴンズ」(東京B予選)。昨年開催された「SPAJAM 2015」で知り合ったメンバーらで結成したチームだという。

 友人に贈る短い動画を撮影して、VR空間で一度に楽しめるアプリ「おどROKU」を作成した。360度の空間で同時に再生するという「プロではなかなか思いつかない発想」(審査員も務めた司会進行役の吉田尚記氏)や、すでにGoogle Playストアで登録申請済みという完成度の高さが評価された。

 優秀賞には、「おおさき温泉同好会」(東京B予選)と「MATSU OK ROCK」(仙台会場)が選ばれた。「おおさき温泉同好会」は、骨伝導スピーカーを利用して、その場にいる人と声を出さないでコミュニケーションできるアプリ「音ん。(おとん)」を開発。開発時にはメンバーの1人が持ってきていた電動シェーバーを分解して骨伝導スピーカーを作成し、審査員を驚かせた。

 「MATSU OK ROCK」が開発した「スタカラ -StudyKaraoke-」は、カラオケの歌詞を覚えたい単語などに入れ替えて歌いながら覚えられるというアプリ。ヤフーが公開している日本語形態素解析APIを活用している。プレゼンテーションではメンバー実際に歌ってアプリの出来を披露した。

 審査員特別賞に選ばれた「Teamはぎー」は、一風変わったキャリーバッグ「きゃりーばぐばぐ」を開発。空港で手荷物を受け取る時にユーザーのバッグが近づくとバッグから音楽が流れるというもので、審査員を笑いに誘いつつもその可能性が評価された。

審査委員長の丸山氏が「注文」

「SPAJAM 2016」審査委員長の日本Androidの会 会長 丸山不二夫氏

 SPAJAM 2016の審査委員長を務めた日本Androidの会 会長の丸山不二夫氏が総括を行い、「最終的に4つのチームが選ばれたが、その差は接戦だった」と参加者を評価した。

 丸山氏は講評の中で、「注文をつけたい」と切り出し、本選のテーマとなった「音」について「音というのはとてもホットな領域だと感じてほしかった」と語った。

 続けて、「スマートフォン時代になって、ユーザーインターフェース(UI)は、キーボードからタッチパネルへと変化した。これから声によるコンピューターとの対話の方向へ、大きく変化していくだろう。この変化は急速に、世界規模の広がりをもって進んでいる。

 一方で、若い開発者はそのキャッチアップが弱かったのではないか。領域も広く変化も急速で、世界中の企業の方が先に対応を勧めている状況だ。この流れの中で、若い人には先を走ってほしい」とし、若い開発者に向けてエールを送った。

「モバイルプロジェクト・アワード2016」は4部門9プロジェクトが受賞

 モバイルプロジェクト・アワード2016」では4部門で9プロジェクトが表彰された。

部門受賞サービス/プロジェクト
モバイルハードウェア部門最優秀賞:Gear VR
優秀賞:RoBoHoN
モバイルプラットフォーム・ソリューション部門最優秀賞:SORACOM
優秀賞:dマガジン
MCF社会貢献賞小児救急支援アプリ研究開発プロジェクト
モバイルコンテンツ部門最優秀賞:AbemaTV
優秀賞:MERY、ドラゴンボールZドッカンバトル、NHKプロフェッショナル私の流儀

 モバイルハードウェア部門には、最優秀賞にサムスンの「Gear VR」、シャープの「RoBoHoN」(ロボホン)が選ばれた。

 「Gear VR」は、VR元年とも言われる2016年のモバイル市場を象徴する製品として、使用感の改善やコンテンツを拡充する姿勢、スマートフォンに付加価値を提供した点が評価された。「RoBoHoN」は、電話ができるロボットという従来に無かったデバイスで、愛着が湧く携帯電話の新しい形を作ったことが評価された。

審査委員長で、東京理科大学 教授の東邦仁虎氏
モバイルハードウェア部門の講評はITmedia Mobile 田中聡編集長
Gear VRを被って登壇したサムスンの笠洋志氏(右)
シャープの景井美帆氏はロボホンとともに受賞コメントを行った
モバイルプラットフォーム・ソリューション部門の講評は本誌の湯野編集長

 モバイルプラットフォーム・ソリューション部門の最優秀賞には、IoT向け通信サービス「SORACOM」(ソラコム)が選出された。優秀賞はNTTドコモの「dマガジン」。

 ソラコムは、「格安スマホ」と呼ばれるようなMVNOが注目される中で、MVNOという制度を活用してこれまでにないサービスを提供したことが評価された。dマガジンは、出版不況の中でもユーザーと出版社双方にメリットがあるコンテンツを揃え、支持を得たことが受賞につながった。

ソラコム 代表取締役社長の玉川憲氏
dマガジンを統括するNTTドコモの伊藤元基氏

 社会に貢献しているモバイル関連プロジェクトに贈られるMCF社会貢献賞は、大阪大学や大阪市消防局などが取り組む「小児救急支援アプリ研究開発プロジェクト」が選ばれた。

 同プロジェクトでは子どもを持つ親向けに、病気や怪我などの際に、アプリ上で症状を選ぶことで、緊急性を判断するアプリを開発。4月より全国向けに実証実験を行っている。子どもを持つ親に新たな判断材料を提供したことや、深刻化する救急車不足の問題を改善できることが受賞のポイントとなった。

大阪大学医学部附属病院 高度救命救急センターの片山祐介氏
講評はモバイル研究家の木暮祐一氏
モバイルコンテンツ部門の講評は、MCF専務理事の岸原氏

 モバイルコンテンツ部門では、最優秀賞にサイバーエージェントの「AbemaTV」が選ばれた。優秀賞にはペロリの「Mery」、バンダイナムコの「ドラゴンボールZ ドッカンバトル」、NHKの「NHKプロフェッショナル 私の流儀」の3プロジェクトが選出されている。

 「AbemaTV」(アベマティーヴィー)は、サイバーエージェントとテレビ朝日が4月に開始した動画配信サービス。20チャンネルを揃え、24時間無料配信という仕組みや、誰でも使いやすいUIなどが評価された。

AbemaTVの担当者
ペロリの河合信吾氏
バンダイナムコの手塚晃司氏
NHKの井上勝弘氏

【お詫びと訂正 2016/07/05 12:42】
 記事初出時、「AbemaTV」の受賞者の方のお名前で誤りがありました。お詫びして訂正いたします。

 優秀賞に選ばれた「Mery」は、女性向けのキュレーションプラットフォーム。ターゲットを絞り込んで支持を得たことや、インターネット上のサービスから雑誌へ展開して成功したことで受賞につながった。

 バンダイナムコの「ドラゴンボールZ ドッカンバトル」は、鳥山明のマンガ「ドラゴンボールZ」の世界観で展開されるスマートフォン向けゲーム。日本発のスマートフォンゲームが海外で苦戦するなか、中国市場でヒットしたことから受賞となった。

 NHKの「NHKプロフェッショナル 私の流儀」は、NHKの人気テレビ番組を元にしたパロディ動画を作成できるアプリ。その印象的な構成からもともとパロディが多く、「これだけパロディされているなら公式にパクってもらえるアプリを作れば受けるんじゃないかと思い提供した」(井上氏)というアプリは、その完成度が評価された。