インタビュー

法林、石川、石野が斬る

法林、石川、石野が斬る

2014年夏の富士通製端末

 本誌でもおなじみのジャーナリストである法林岳之氏、石川温氏、石野純也氏を迎え、先日発表のあったドコモ夏モデルの富士通製端末について、率直な意見を語ってもらう座談会を開いた。「ARROWS NX F-05F」「らくらくスマートフォン3 F-06F」「F-07F」について3氏はどう見ているのか。過去、現在、そして将来の富士通についてどう感じているのか。その会話を(可能な限り)すべて明かします。

石川温氏(左)、石野純也氏(中央)、法林岳之氏(右)

富士通が日本語入力を強化、Super ATOK ULTIASは何が違う?

――今日はお忙しいなか集まっていただきありがとうございます。いつも本誌で執筆している皆様に「今夏の富士通について」語っていただきたいと思います。とくに今夏モデルのARROWS NX F-05Fをどう思ったか、自由に語ってください。とりわけ最大のウリは「Super ATOK ULTIAS」だと思うのですが。

石野氏
 最新の用語が入ってくるのが便利ですよね。「VoLTE」とか「カケホーダイ」とかが予測変換に出てくるので僕達にはいい(笑)。仕事のメールを返信するときに今までなら「VoLTE」はQWERTYキーに変えて「Vは大文字、oが小文字、LTEは大文字の……」と複雑だったので、それが一発で変換できるようになったのは便利ですよね。

石川氏
 あとは使うかどうかは別として、分からない言葉をすぐに調べられるのは非常に面白いというか、いい暇つぶしになる。

法林氏
 もう少し使い込まないと分からないところはあるんですが、携帯電話もパソコンも、文字入力は僕たちに職業病みたいなところがあるので……。「誤字脱字はしないように書きたいな」というのがある。そうなると石野くんが言ったように「細かく入力したい」というのがあって、それがちゃんとできるのは良い。新しい用語が入っているのも嬉しいし。ただ使う言葉の評価は難しくて、Twitterなどで間違った単語を書いてはダメなのか? というと決してそうではない。だけど僕らみたいな商売をやっている人間が、誤字脱字のメールを出してしまうと恥ずかしい気もする。そう考えると「Super ATOK ULTIAS」はいいよね。

石川氏
 スマートフォンが普及したことで、多少の誤字脱字は仕方がないかな、という風潮が出てきているのですが、富士通はようやく正面から日本語入力に向き合ってくれたな、と思いますね。ただ遅すぎた感があって、日本メーカーならもっと早く強化しても良かったな、というのが正直な感想かな。

――日本語強化はどれだけユーザーに影響があるんでしょう?

石野氏
 僕はXperiaにもATOKを入れているくらい、ATOKの痒いところに手が届く感が好きなので、それが無料で最初から入っていて、他のATOKよりも機能が上というのはちょっといいな、と思う。とは言いつつも、文字入力だけでスマートフォンを選ぶというのは、まだ一般ユーザーでは無い気がします。富士通はこれからもっと日本語入力を強化したことを訴えるというか、伝えていくべき。

石川氏
 「文字入力が良いから買おう」という動機にはならない。だけど、使ってみるとその良さが分かってくるので、地味だけどこういった取り組みをしっかりやっていくべきだし、ATOKを大切に扱っていくべきとは思いますね。

――機能として見ると派手さは無いけど、使ってみると良いということですよね。

石川氏
 うん、それでいうとスマートフォン自体、スペックでの違いが無くなってきて、派手さというのが無くなってきていますよね。とくにここ1~2年は。そのなかでいかに痒いところに手が届くか、という勝負になってきているのは事実。名前にSが付く3社は皆カメラに振っているわけじゃないですか。

一同
 (笑)

石川氏
 もちろん富士通もカメラを頑張っているけど、文字入力のほうにシフトしているのは間違っていないと思う。「日本語を強化しています」と言えるのは日本メーカーだけだと思うし、海外メーカーが「日本語を強化しています」と言ってもいいけど、誰からも半信半疑というのが当然あるので。

一同
 (笑いつつうなずく)

石川氏
 日本市場を分かっている富士通と、日本語入力をずっとやってきたジャストシステムが組んだのは大きな意味があると思う。日本メーカー復活という意味でも注目したほうがいい。

「ARROWS NX F-05F」と「Super ATOK ULTIAS」

――前からARROWSではヒューマンセントリックエンジンを続けていますが、エンジンとタッチパネル、Super ATOK ULTIASの“組み合わせ”をARROWS NXではアピールしていますよね。使い勝手を試したときに、ソフトだけではない部分を感じることはありましたか?

石野氏
 めちゃめちゃありますよ。XperiaにATOKを入れているとたまにバイブが暴走することがある(笑)。連打していると思わぬ大きな反応が出るとか。だけどARROWS NXはハードキーを押したような心地いい反応が返ってくる。そこはプリインストールだからだと思う。

法林氏
 タッチパネルをチューニングしているそうで、他の機種にATOKを入れているのと比べても、触った感じで明確にそれが分かる。スマートフォンはアプリの追加で日本語入力を足せるけど、パソコンと比べて無理に日本語環境を足した感じがあった。石野くんが言ったみたいにね。だからARROWS NXは最初からSuper ATOK ULTIASが入っている安心感がある。とくに僕が試してよく感じたのが「あ」行の左側。

――「い」ですね。

法林氏
 そう。「い」の入力は右手でスマホを持った時に、指を左側にフリックするので入力しづらい。ボディ幅に押しやすさがすごい左右される。だけどARROWS NXは確実に速く入力ができる。もう少し使って学習されないといけないんだろうけど、今の段階でレスポンスは非常に良いと感じますね。

石野氏
 僕はキーボードをテンキー入力で右寄せ、QWERTYキーは全画面にしないと押しづらい。だから切り替えるんですけど、ARROWS NXは切り替えが簡単なんですよ。キーボードごとに幅を記憶している。標準のATOKもそう。他のIMEはキーボードの切り替えの時に同じ幅のまま切り替えてしまう。昔からATOKをプリインストールしてきた富士通は正解だったと思う。

――パソコンを買うときはキーボードやタイピングの押しやすさを大事にして、試しますよね。意外とスマートフォンではそのあたりが気にされていない。アプリの追加で補うものという意識があるみたいで。それをちゃんとハード側でもチューニングしてやるというのは良いことですよね。

一同
 (うなずく)

法林氏
 たとえば「Super ATOK ULTIAS」をアプリとして、他のメーカーのスマートフォンに入れたとしても、だからといってARROWS NXと同等になるか? というと、どうもそうではない。それは少し触っただけでも感じる。だからARROWS NXのチューニングは重要だよね。

ライバル風キーボードとフリック入力学習モード

――「Super ATOK ULTIAS」はiPhone風とかXperia風とキーボードのデザインを変えられるのも、アグレッシブで面白いと思うのですが。

法林氏
 かつてフィーチャーフォンでも、他社のボタン配列にするというのは流行ったけど、それが便利だったか? については議論があると思うんですよね。ただスマートフォンの機種変更も2周め、3周めという人が増えてきたので、そういう人たちにとっては安心感が大きい。

石川氏
 富士通が他社ユーザーを取りにいく、という意気込みが感じられて私は非常に好きですね(笑)。

石野氏
 だけどこの「Super ATOK ULTIAS」のXperia風キーボードは僕のXperia+ATOKとは違う(笑)。

――アップデートして標準ATOKに対応してほしいですか?

石野氏
 そうですね、キーボードは増やしてほしいですね。ELUGA風キーボードをフォローしているのに、標準のATOKが無い(苦笑)。

石川氏
 あとは「フリック入力学習モード」も良かったです。スマートフォンのユーザーインターフェイスって、ユーザーに合わせてもっと学習してほしい。自分の理想としては、ユーザーの経験値に応じて機能が増えていくような、そんなスマートフォンができないのかな、って思っていた。フリックを学べるようにアシストしてくれるのはいい。電車の中でフィーチャーフォンと同じようにスマホで連打している人を見て、「フリック入力を教えてあげようかな」っていう気になるので(笑)。その人もスマートフォンでフリック入力をやれることは分かっているけど、「自分としてはこちらのほうが入力しやすい」と思っているんだろうけどね。せっかくスマートフォンを買ったんだから、フリック入力くらい使えるようなってほしいし、だから学習モードがあるのは良いと思いますね。

――フリック入力をしない人は、フリック入力を知らないんですかね?

法林氏
 フリック入力は覚えようとして練習しないと無理だから、そこまでいけるか、いけないか。

――壁を超えると途端にラクになるはずですよね。

石川氏
 うん。昔、初めてフィーチャーフォンを手に入れたときを考えれば、皆ケータイで文字入力ができるようになったんだから、フリック入力だってできるようになると思う。

――ARROWS NXはポケベル打ちは……。

石野氏
 あ、2タッチ入力がありますね。

法林氏
 いけるな。

石川氏
 いける、それだったら。

石野氏
 スマートフォンは物理キーじゃないので、フィーチャーフォンのように連打すると指がずれて違う文字が入力される。だからフリック入力ができない人は、2タッチ入力のほうが正確に打てたりする。

――文字入力関係で他に気づいたところはありますか?

石川氏
 最新ワードをダウンロードするのに、ユーザー登録が必要なのが面倒くさいですね。

石野氏
 「なんでユーザー登録があるんだろう?」って思いますよね。富士通のスマートフォンにプリインストールするんだったら富士通のアカウントにしてほしかったかな。

石川氏
 今までパソコンのATOKで使っていた辞書とか引き継げるの? それならいいけど。

法林氏
 できるできる。

――パソコン版ATOKとはできるみたいですね。

法林氏
 「Super ATOK ULTIAS」はケータイ的な日本語入力というのが残っていて、ケータイとパソコンの中間くらいという位置付け。今までのスマートフォンより明らかに賢いですね。パソコンと同等とは言えないけど、ほどよい感じにできている気はします。

「通好みのF」はユーザーに伝わるか?

――では、日本語入力以外の部分はいかがでしょうか。

石野氏
 細かいところですが、痒いところに手が届く感が増したのは、ロック解除時のフワッとアイコンがアニメーションしながら並ぶところ。あとはスクロール時の演出とか。富士通の端末では今までこういう工夫を感じなかったので、そこだけでも「おおっ!」と思いました。昨年のARROWS NXから操作が速くなりましたけど、ビュンビュン動くだけと感じていて、操作時の視覚的な気持ち良さが感じにくかった。新しいARROWS NXはそんなところにも気が回っていて、今度は良いな、と思う。

――昨年夏のARROWS NXから、従来のARROWSよりだいぶ印象が変わってきたと思います。ここ1年くらいの富士通のスマホで違いを感じますか?

石川氏
 良い意味でも悪い意味でも“まとも”という感じがする。それまではスペックは良いけど、すごくぶん回しているというか。発熱や安定性に欠ける部分があって、その反省も踏まえてARROWS NXは安定していますよね。ただ、まともだけど、地味という面もあるから。

――富士通の端末は指紋センサーなどのセンサー系は早くから充実していて、だけどそれが広まる前に他の端末に持って行かれたという面もあると思うのですが。

石川氏
 そう、指紋センサーや、Wi-FiとLTEを同時に通信する技術とか。方向性は間違っていないんだけど……。

石野氏
 方向性は合っている。ARROWS NXの指紋センサーも他社と比べれば使いやすいし、背面に載せているのは良い。先駆けている部分が多々あるのにユーザーに伝わっていないのは残念ですね。ヒューマンセントリックエンジンも、手に持っているときは画面が点灯するとか、他社でもやっていますけど、ARROWS NXのセンサーを活用した技術は精度が高い。「ヒューマンセントリックエンジン」にまとめられていて、分かりにくいけど。

石川氏
 もっと分かりやすい説明をしてもいいよね。「ヒューマンセントリックエンジン」もそうだけど、説明会のプレゼン資料や、電車に貼られている広告も、文字ばかりのときがある。

石野氏
 だけど営業の人たちは分かりやすい。5秒で伝わる、そんなルールで分かりやすい資料を作っているんです。過去のARROWSでもすごく分かりやすい説明がありましたよね。

――法林さんはどう思われますか?

法林氏
 富士通はフィーチャーフォン時代にカラー液晶にいち早く対応したんだけど。

石川氏
 iモード初号機もそうですよね。

法林氏
 そう、その頃から最初に新機能や技術に手をつける会社で、その尖がっている感が良いところでもあった。僕がよく富士通端末にキャッチコピーで付けていたのが「通好みのF」。

一同
 (うなずく)

法林氏
 そういう意識を持っていたので、フィーチャーフォンのときは、通好み、堅いところを取っていればよかった。だけどスマートフォンになるとあまりにも通好み過ぎて、それが悪い方向に行くと、Tegraを搭載していたときみたいになる。今は信頼されてきたけど、手堅い方向へ行くと地味になる。足りない機能を拡張していると成長してきたな、と思えるけど、今は一度バーンと広げたものを整理している感があるから……。ただ端末の方向性としては間違っていないし、他の端末と比べてもライバルに勝てる要素を持っていると思う。

実は高性能なARROWSのカメラ、スマホで一番綺麗に撮れる!?

――カメラ周りはどうですか?

石野氏
 以前のARROWS NXでも思っていたんですけど、綺麗なんですよ。もともと富士通の画像処理エンジンはシェアがすごい。

――そうですね、デジカメにも入っていますからね。

石野氏
 そうなんですよ。チューニングとか上手い。ただそのままだと設定があまりにもシンプル過ぎないか、と。デフォルトだとシャッターを切るくらいしかやることがない(笑)。メニューは出てくるんだけど、以前からあえて設定を削っている。

法林氏
 そうそう、それこそ「分かりやすく信頼あげるために」って富士通が言っているもんね。

石野氏
 だけど痛し痒しというか、iPhoneより設定少ないんじゃないか、と思うことも……。いや、iPhoneよりは設定少なくないけど(笑)。とはいえホワイトバランスの変更項目も無いし、オートモードを解除する設定が欲しい。

石川氏
 でも一般のユーザーはそこまでいらないんじゃない?

石野氏
 だけどこれだけ性能の良いカメラを搭載しているんだから。デフォルトはオートでもいい。Xperiaでも「プレミアムおまかせオート」を解除すればデジカメみたいな細かい設定ができる。だから石川さんがさっき言っていた学習モードではないけど、詳しい人が使うときは、オートの設定を解除できると嬉しいな、とは思いますね。

――センサーはソニーと同じモノを搭載しているので、あとは処理、味付けの仕方次第ですよね。

石野氏
 ARROWS NXのセンサーって2070万画素のXperiaと同じですよね。サイズも1/2.3型の。ソニー以外のスマートフォンでは初めてじゃないかなあ。

法林氏
 カメラは手堅くやらざるをえないから、シンプルなUIなんだろうな。普通のユーザーにとっては不足を感じない。だけどそろそろ富士通らしい、カメラを活かしたお遊びが欲しいかな、という気はするね。

石野氏
 「富士通の画像処理エンジン」と「ソニーのセンサー」で、綺麗に撮ることだけを考えたら、何気に他のスマホよりもARROWSのほうがいいんじゃないか、という気持ちも(笑)。

石川氏
 ブランドに若干甘えているメーカーもあるから。

一同
 (笑)

法林氏
 たとえばiPhoneのカメラが凄いのは、どう撮ってもそこそこ綺麗に撮れる。

石川氏
 あの“そこそこ感”は凄いですよね。

石野氏
 ARROWSもそういう意味では良いですよ(話しながら実際にARROWS NXで撮影している)。

――何も考えずに綺麗に撮れる、と。

石野氏
 うん。

法林氏
 カメラの方向性っていろいろあるから、Xperiaのように「ARエフェクト」みたいなアプリを追加して拡張していくのもあるし、ご飯や家族、友達が綺麗に撮れればいいとか、自分撮りが綺麗にとか。だけど撮ることに特化するとARROWS NXなのかな、という気はする。

石川氏
 うんうん。

法林氏
 ただそろそろ次のステージというか、カメラを使ったお遊びが欲しいな。水中に入れて撮ると面白いものが撮れるとか。

石野氏
 (実際に撮った写真を見ながら)クオリティはすごく高い。画質は良い。だけど撮った直後になぜギャラリーから画像を見られないんだろう(苦笑)。やっぱり機能を削り過ぎているんですよ。シンプルなのはいいんだけど。

ARROWSがあればウェアラブルは不要!?

――富士通といえばヒューマンセントリックエンジンですけど、派手さが無くて、魅力を訴求しにくいと思うのですが。

石川氏
 いろんなものを総称するんでフワッとした名前になるんだろうけど、もう少し何か分かりやすくアピールしたいね。

――スーパーはっきりボイスとか、富士通はらくらくホンをやっているので、「らくらくホン機能」とか言えば……。

石川氏
 そうそう、むしろそっちですよ。

石野氏
 うんうん。

――頑張っているのに伝わらないのはもったいない。

石野氏
 そこですよねえ。ARROWS NXの細かい機能が本当に好きなので。「持っている間ON」とか、画面の明るさ変えたりとか。

法林氏
 実際に使うと、通話系の機能は他社と比べても一日の長があるので、そのへんが「通好み」という部分なんだよね。通話して使ってみると手放せなくなるんだけど、それを知らない人や、他の機種との差が明確に分からない人には伝わらない。

――使ってみて分かるということは、「使わないと分からない」ってことですからね。

法林氏
 そうそう。

石川氏
 だから一番最初にユーザーが手に取れる端末になれば、ARROWS NXの良さに気付くきっかけになる。今のARROWSは店頭で弱いじゃないですか。お客さんは他のオススメされている端末とか、聞いたことのある端末をまず手にとってしまう。だから富士通、ARROWSはもったいない。

――VoLTEや通話定額も始まり、これだけ音声通話を頑張っているARROWSなら、うまく訴求できそうですよね。

法林氏
 そういう意味では良いタイミング。今まではスマートフォンの通話なんて音質が悪くて「IP電話でもいい」としていたけど、VoLTEが始まって音質が良ければ「それなら通話機能にこだわったARROWSに」ってなる。通話中心のコミュニケーションに変わっていく可能性があるので。そういうときは富士通が培ってきた技術が活きてくる。

石川氏
 ドコモに聞いても、VoLTEで通話品質が上がるとはいえ、スマートフォンのマイクとスピーカーに依存する部分もある、その差によるメーカーの違いも出てくるのでは? という話をしていた。VoLTEのタイミングでどう頑張れるか、各メーカー次第だし、今こそ富士通の頑張りどき。

法林氏
 あとはベーシックな歩数計とかのアプリにも注目したい。世の中「ウェアラブルだ」って言っているけど、もうウェアしてんじゃんスマホで、っていうね(笑)。

石川氏
 ウェアラブル機器で歩数測れるとか言うけど、それって本当に必要なのか、と。

法林氏
 そうそう、昔からARROWSとかのスマートフォン、あるいはフィーチャーフォンの時代から測りつづけているじゃない。

石川氏
 うん、スマホでできるというね。富士通には「ウェアラブルなんていらない」くらい言い切ってほしいね。

法林氏
 最近あるウェアラブル機器で歩数とか測っていたけど、まあ結局スマートフォンで測っているから、どこに行っても必ず測っているんだよね。歩数に関してはそれで事足りる。

石川氏
 そう。

法林氏
 ウェアラブルで何を必要とするのか、ということもあるので、歩数だけではないけど。それと今回はプライバシーモードも強化されたね。

――お使いになってみましたか?

石野氏
 僕はそんなの必要ないからなあ。清廉潔白な人間なんで(笑)。

石川氏
 うん、自分も基本的に1人しか愛さないので(笑)。

一同
 (笑)

――今回はドコモのメールアプリもサポートしました、というのが目玉ですね。

法林氏
 そのあたりは絶大な信頼がありますからね。プライバシー設定ができるようになったのは大きいんじゃないですか。

石川氏
 スマホだからこそ、そこが重要なんだろうな。

――インプレス社内では「スマートフォンのロック設定をしろ」と言われるので、指紋センサーがあるのと無いのとではだいぶ違います。解除がいかにラクにできるかは大事ですよ。

石川氏
 スマートフォンはいろんなところで使うので、ロックの解除のときに、人前でパスワード入力するじゃないですか? よく考えると危険なことだなって思う。だから指紋センサーはアリなんだなと。落としたときだけでなく、人前で何度もパスワードを入力して、それを見られるというのもね。

――解除の位置に指紋が付いたりとか。

石川氏
 そうそう。それでパスワードがバレたとかね。

石野氏
 欲を言うともっと指紋を使うシーンを増やしてほしいですよね。GALAXY S5はPayPal対応しているし、iPhone 5sはApp Storeで使える。なにかプラスαで指紋で使いやすくする機能がARROWSにも、もっとあるといいですね。

デザインのアイデンティティは?

――ところで、新しいARROWS NXですが持っていて、重さは気になりませんか?(ARROWS NX F-05Fのサイズはおよそ140×69×10.4mm/159g)

石川氏
 たしかに。

法林氏
 前(F-01F)より厚いんだよね。とはいえ前よりたった0.4mmだけど……触った感じちょっと厚いね(F-01Fを取り出して比較していた)。

石野氏
 そのぶんデザインが良くなっているのでいいと思う。200gとかでなければ(笑)。重さはそんなに気にならない。

石川氏
 カメラのところが少し盛り上がっているのがちょっと……。

法林氏
 だけどカメラのデザインは新旧どちらもアリかな。F-01Fはカメラっぽくないのでヤだという感じも。

石野氏
 カメラのセンサーが大きくなったから、物理的に大きくなるのは仕方ないですよ。

法林氏
 そうそう。きっとカバーを付けて使う人もいるだろうし、あまり気にしてもね。

石川氏
 まあね。

法林氏
 以前のARROWSはボディ周りにアクセントが無くて、豆腐か"ういろう"みたいな、スッキリし過ぎていたね。「これがARROWSだ」感があまりなかった。ただ今回のARROWS NXは側面の仕上げとか、上と下のデザインの切り方の違いがあって、「ARROWSはこう」というデザインを出したいのかな、とうかがえる。

石川氏
 昨年のARROWS NX F-06Eはサイドが強調されて角張っていて、その前になると丸まっていて、今回はその中間をとってきた感じがする。

法林氏
 そうそう。デザインのアイデンティティをどこに出すのか気になっていたけど、サイドとかキレイに仕上がってきた。

――表とか裏はデザインできる要素があまり出せないので、側面で出してきた?

石野氏
 そうですね。

石川氏
 あと地味にテレビのアンテナがあるのもいいかな。

石野氏
 無いとテレビ見なくなりますもんね。

石川氏
 ねえ。

石野氏
 外付けアンテナのスマートフォンだと、テレビを全然見なくなった。

法林氏
 いまどき外付けはあり得ないよね。アンテナがあるから外出先でも、先日のワールドカップの日本代表メンバーの発表を見られたわけですよ(5月12日のこと)。

石野氏
 アンテナなしの端末は、スペック表を埋めるためだけに対応した感がありますよね。今はワンセグ、フルセグが無いから売れないってこともないだろうけど。

法林氏
 うん。

――昨年は3キャリアから富士通はARROWSを出しましたけど、今回はいまのところドコモだけですね。

石川氏
 たしかに寂しいんだけど、ドコモではスマホに詳しくない人が安心して買える日本メーカーが減ってしまったので、むしろ富士通はドコモの中で「安心して買える日本メーカーのAndroidスマホ」という、立ち位置をガッチリ確保するのに大事な時期。

――じゃあ、そこでスプリントでも売るためにソフトバンクに近付いたりするよりは?

石川氏
 うん、それより全然いいと思うなあ。「共同調達だ!」って言われて買い叩かれるよりも(笑)。

法林氏
 まあ、それは何のための共同調達かっていうのもあるし。

らくらくスマートフォン3は綺麗

――ちなみにARROWS NX F-05F以外で、らくらくスマートフォン3 F-06Fも発表されましたが。

石野氏
 デザイナーの原研哉さんを起用ということで。

法林氏
 凄いよね、これ。

石野氏
 UIと外観がマッチしていて綺麗だな、と。

石川氏
 むしろこっちを……。

石野氏
 ARROWSよりもですか?(笑)。

石川氏
 らくらくスマホと言わずにARROWSとして出してもいい(笑)。

石野氏
 綺麗にできてますもんね。

――これでらくらくスマートフォンのユーザーが操作できるのか、色はこれでいいのか、とか思う部分もあるんですけども。前はキートップの色にもこだわっていたはずですし。

石川氏
 たしかにね。本当に狙っている層が使いやすいのか? というのはある。

法林氏
 デザイン的に美しいUIと、使いやすいものの接点というのは難しいものがあるよね。

――UIは旧デザインにも変えられるんですけどね。

石野氏
 新しいのも文字を大きく表示したりとか、基本は押さえていますよ。旧デザインは「持ちたくない」というシニアもいたので。

法林氏
 前のらくらくスマートフォンと比べると、いかにも「シニア向けの電話機」というデザインではなくなった。

――このまま子供向けでもいけそうですよね。

法林氏
 うん、そう。

石川氏
 らくらくスマホという名前で逆にユーザーを狭めているタイミングにきているかも。

石野氏
 STYLISTIC(フランス版らくらくスマートフォン)の名前で売れば(笑)。ヨーロッパのスマートフォン売り場に並んでいても違和感の無い感じになってきた。

法林氏
 フランス版を逆輸入するのもアリだよね。3000台とか5000台限定で。

石川氏
 MVNO向けに?

法林氏
 そうそう。

「らくらくスマートフォン3 F-06F」

――最近MVNO絡み動きが活発なので、富士通もそういうことができるといいですよね。

石野氏
 ARROWSはなんだかんだ言って知名度ありますからね。EXILEのCM効果もあって。ただ今回はディスプレイが5インチ止まりだったり、もう少しスペック番長だった頃の振り切りっぷりを見てみたい。安定してきた今だからこそ。

――ラインナップも1種類しか無いのが残念ですよね。売れるゾーンなんでしょうけど。

石野氏
 うん。キャッシュバックが一部の端末に大量に付かなくなってARROWSも盛り返していますから、あとはもうひとつパンチが欲しい。REGZA Phoneのときって、批判もされましたけど僕は結構好きでしたし、他の機種が防水ではないときに防水をして。他がやれてないところを率先してやる、チャレンジ精神は嫌いじゃない。

――たしかに最近のARROWSはスペックを突き詰めている感じは無いですね。

法林氏
 キャリアの思惑もあるからね。リスクを負いたくないとかもあるだろうし。そういえばARROWS NXは、カーナビのBluetoothテザリングに対応している。

石川氏
 さすが富士通テン(グループ会社のカーエレクトロニクスメーカー)。

石野氏
 他のBluetoothテザリングじゃつながらないんですか?

法林氏
 つながらないんですよ。

石野氏
 そうか、ダイヤルアップ(DUN)とパーソナルエリアネットワーク(PAN)があるからね(カーナビとのBluetoothテザリングでは「DUN」の対応が必要)。あとはもっとドコモとのコラボ感というか、isaiみたいな取り組みがほしい。それがらくらくスマートフォンなんでしょうけど。

法林氏
 たしかにほしい。ドコモから見た富士通との“エクスクルーシブ(Exclusive=特定の付き合い)”というか、ドコモで「富士通のスマホだけコレができます」的な。富士通だけにお願いしています、というか。

石野氏
 ちょっと欲しいですよね。もう一歩踏み込んでほしい。XperiaやGALAXYはメーカーとドコモのアプリをどちらか選べるし、メーカーのホームUIだとドコモのアプリはほぼ無くなってしまう、ARROWSはそうではないので、その分、もっとドコモと組んでやればいいのにと思う。

石川氏
 これだけ他のメーカーのマルチキャリア化が進んでいるのだから、ドコモとしては、富士通との関係は活かすべき。

石野氏
 そういう意味では富士通はドコモにとって良いメーカーですからね。

フィーチャーフォンと富士通製スマホについてまとめ

法林氏
 (ずっとARROWS NXをいじっていて、突然)……ほとんど電池が減って無いよ。

――WhiteMagicも新しくなりましたからね。動画でも省電力と言っていますし。

石川氏
 そういえば……今年の夏モデルをどれ買おうかと考えたときに、以前は富士通の端末って、真っ先に発売していたな、と思い出した。だからまず富士通の端末を買うっていうのがあった。それで存在感もあったよね。今回も「VoLTE一番最初に対応します!」と言ってくれたらなあ。

石野氏
 そう、結局早く売ったほうが売れるっていうこともあるじゃないですか、トータル的に見ると。

法林氏
 ただそれで痛い目を見た他のメーカーもあるしなあ。

――あとはフィーチャーフォンのF-07Fですが、珍しいですよね、このタイミングで無線LAN対応しているとか、FMトランスミッター入れているとか。

法林氏
 全部入りだ。

石川氏
 これでVoLTE対応してくれたら最高なんだけどなあ。

法林氏
 その前にフィーチャーフォンのLTEは難しいでしょ。

石川氏
 基本Wi-Fiルーターとして使うんですけどね。

石野氏
 LTEフィーチャーフォン欲しいですよね。

――他のフィーチャーフォンが機能を削っている方向なのに、1300万画素のカメラとか。

石野氏
 昔から変わっていない(笑)。スペックを落としていないですよね。

――フィーチャーフォンもカケホーダイ対応ですからね。

石野氏
 カケホーダイはVoLTEでなくてもいいからね。ただ最近ドコモの3Gの通話品質が落ちている気がする。そのタイミングでVoLTEが始まるんだからフィーチャーフォンでVoLTE対応してほしいなあ。

法林氏
 いや、だけどそれはまずLTE対応から始めないと、相当難しいよ。

石野氏
 ええそうなんですけど(苦笑)。

――最後に今季の富士通製端末について皆さんのまとめを。まずは石川さんから。

石川氏
 繰り返しになるけど、日本人が使いやすいスマートフォンを日本メーカーがつくったほうが良い気がする。だから富士通には頑張ってほしい。なんだかんだ言って、皆“外車”に乗るのが疲れてきている気がするので、乗りやすい日本車があってもいいと思います。

――石野さんはいかがですか?

石野氏
 紆余曲折を経てARROWS NXとして昨年生まれ変わったんですけど、そこから毎回新機種できちんと評判をとっていくのが信頼回復につながると思う。頑張ってほしいですね。ただもう少し、かつてのARROWSの“やんちゃっぷり”が懐かしくなるので、品質を保ちながらは前提ですが、もっとチャレンジもしてほしい。

――法林さんは?

法林氏
 富士通のスマートフォンはフィーチャーフォンからの「通好みの良さ」というのが、ARROWS NXでもできるようになってきた。とくに今回は「Super ATOK ULTIAS」に関しては非常によくできていると思うし、タッチパネルのチューニングも含めて総合力が高い。初めてスマートフォンを使う人にも良いだろうし、他の機種からの乗り換えの人にも良い選択肢だと思う。“おかず”がもう一品欲しい感じはあるけど、正しい日本語入力をしたい人はぜひ。ちゃんとした日本語を入力すれば自分の信頼性も上がる。

――TwitterもARROWS NXを使って正しい日本語で。

法林氏
 そう!

――本日はありがとうございました。

小林 誠