インタビュー

Grand S2の投入、ZTEストアに意欲

Grand S2の投入、ZTEストアに意欲

ZTEの2014年日本での戦略

 ZTEは16日、アジア各国のメディア関係者向けのイベントを開催し、2014年の各国市場への取り組みを説明した。日本市場向けには今年どのような戦略で製品を投入していくのか。同社端末戦略事業部ヘッドのLv Qian Hao氏、バイスプレジデント兼東アジア地域プレジデントのZHANG Linfeng氏に日本市場への取り組みを伺った。

日本市場は重要なマーケット

――CES2014ではフラッグシップモデルとなる「Grand S2」などが発表されました。これらの製品は日本にも投入されるのでしょうか?

Grand S2を手に日本市場での展開を話すLv Qian Hao氏

Lv Qian Hao氏

 その話の前に、まずはZTEが2013年末に行った組織改革から説明させていただきます。弊社は購入部門、営業部門、研究開発部門とそれぞれの部門が独立していた社内事業を2013年末に統合しました。弊社のこれまでの歴史から、これまで端末事業の主な顧客は通信事業者であったのですが、これからはエンドユーザーを直接見ていかなくてはならないという意識の変革から、思い切った組織改革を行ったのです。

 メーカーとしてエンドユーザーのニーズに応える製品を開発するのはもちろんのことですが、ユーザーからのフィードバックを速やかに取り入れ、そしてユーザー体験を高める製品を提供していくためには、これまでの縦割り型の組織では対応できないと考えたのです。ましてや、これからは異なる文化を持つ、さまざまな国へ製品を早く展開していく必要があります。これまでは製品のコストダウンや新しい技術の開発といったところに目を向けていた各部門の専門職の社員が、これからは各国のエンドユーザーを直接見ていくことでその国ごとに求められる製品を迅速に開発できるようになると期待しています。

――日本向けに特化した製品も期待できるわけですね。

Lv Qian Hao氏
 その通りです。組織変更により各国・地域ごとの専門チームを作成しています。もちろん日本市場も同様で、これまで以上に日本の消費者ニーズを汲んだ製品開発を行う予定にしています。日本市場はZTEにとっても重要な戦略マーケットの1つなので、2014年に販売される製品には期待していただきたいと思います。

――2014年、日本市場へはどのように取り組んでいくのでしょうか?

Lv Qian Hao氏
 私自身、日本の市場には3つの特異性があると感じています。1つは高品質な製品でなくては受け入れられないという、ユーザーの高い要求。2つめは急激な変化は受け入れてくれないこと。そして3つめは通信事業者を通して端末を購入する市場構造が根付いていることです。まず、1つ目をクリアするためには高品質な製品を投入しなくてはなりません。

 また、2つ目と3つ目に関しては、海外のように自社ブランドのSIMロックのない端末を売り出すという、オープンマーケットを利用しての端末販売は難しく、今までのように通信事業者と手を組むことで製品展開を図りブランド力も高めていこうと考えています。

 最近は通信事業者との協業により、年配者にもやさしいフィーチャーフォンやみまもりシリーズなどを開発してきました。2014年は、日本市場でも4G(LTE)対応スマートフォンを出したいと思っています。ただし弊社が独自で製品を開発するのではなく、日本のユーザーニーズを見ながら、通信事業者と協業した製品を出したいと考えています。

――フラッグシップスマートフォン「Grand S2」の特徴を教えてください。

Lv Qian Hao氏
 「Grand S2」は弊社のフラッグシップ製品ですが、個々の機能が高いだけではなく使いやすさにも注力しています。特に音声認識技術は、内蔵マイクの数を増やすことなどにより認識性能を高めました。これまでも各社のスマートフォンに音声認識機能は搭載されていますが、たとえば騒音の多い環境ではうまく動作しないものもあります。また音声認識はスマートフォンの操作だけではなくロック解除といったセキュリティにも使えます。指紋認証を採用しているメーカーもありますが、スマートフォンに向かって話しかけるという操作はとても自然なため、子供でも簡単に使うことができるでしょう。

 そしてもちろん、Grand S2は本体サイズが薄くて軽く、バッテリーも長時間利用可能です。またソフト面では使いやすさを追求したUIを搭載していますし、自社開発のアプリや独自のアプリマーケットも搭載しています。さらには価格の強みも持っています。これだけのスペックを搭載しながらも、大手メーカーの製品よりもリーズナブルな価格に抑えているのです。

Grand S2、そしてZTEストアの日本展開

――Grand S2の日本投入は期待できそうですね。

Lv Qian Hao氏
 「Grand S2」のライバルは。サムスン電子のGALAXY Sシリーズなど各社のハイエンドモデルです。そのため日本のみなさんにも十分受け入れていただけるだけの機能は搭載していると自負しています。今後、日本の通信事業者への提案やディスカッションを進めたうえで、事業者経由で販売したいと思います。ちなみにGrand S2のディスプレイはシャープ、カメラはソニーなど、日本の優れた部材も積極的に採用しています。これら日本のトップ企業の力と弊社の実力を合わせ、日本市場を開拓していきたいですね。

――その一方で、ZTEというブランドがまだ日本では弱いと感じますが。

Lv Qian Hao氏
 弊社のスマートフォンもようやく大手メーカーに負けないだけの技術を搭載した製品を出せるレベルになってきたと自負しております。ただし、指摘の通り、ブランド力に関してはまだまだ力不足であるのは事実だと思います。2013年、ZTEはグローバル市場では端末販売数を増加させ、ブランド力も高まりました。またアップルやサムスン電子に対抗する製品を開発していく中で、欧米市場でのハイエンド市場での戦い方も身についてきました。

 日本市場ではまだまだスマートフォンメーカーとしてよりも、データ端末やみまもりシリーズのメーカー、という認識が高いと思います。2014年は4Gスマートフォンの投入でブランド力を高めていきたいと考えていますが、そのためには一歩一歩の努力を積み重ねることで日本のみなさんにZTEのことを理解していただきたいと考えています。

 中国では日本のソニー、東芝、パナソニックなど各社は品質が高く、信頼性のおけるメーカーとして認知されています。それは製品が良いだけではなく、各社が中国国内でブランドを認知させる努力を長年にわたり続けた結果でもあると思います。弊社もその姿勢は学ばなければならないと思っています。

――ブランド力アップのために具体的なアイディアは持たれていますか?

Lv Qian Hao氏
 日本市場では通信事業者各社との協業を続けながら、ブランド力を高める活動をしていきたいと思っています。そのため現在のパートナーである、ソフトバンクさんやKDDIさんの店舗に弊社専用のディスプレイコーナーを設置できるようにしたいですね。もちろんそのためにはそこに陳列できるだけの、品質が高く、日本のユーザーの方々に興味を持っていただける製品を開発しなくてはなりません。

 また今年は無理かもしれませんが、近い将来には弊社商品を扱う専門店、すなわち「ZTEストア」を日本でオープンしたいとも考えています。通信事業者さんを通じて弊社の製品の認知度が高まり、また弊社も日本市場をより理解し日本のみなさんにも愛されるような製品を開発できれば、銀座など日本でも有名な商業エリアに店舗を開くことも夢ではないと考えています。

世界シェアを拡大、ウェアラブルデバイスにも注力

――グローバル全体で、ZTEの目標をお聞かせください。

ZTE全体の方向性を語るZHANG Linfeng氏

ZHANG Linfeng氏
 端末部門としては、2016年にスマートフォン市場シェアで、世界3位に入ることを目指しています。端末の柱となるのは、事業者などを通して販売するGrandシリーズですが、これに加え、2013年後半に独自ブランドのNubiaシリーズを立ち上げました。Nubiaシリーズは中国やアメリカでは通信販売チャンネルで流通させるなど新しい販売モデルを模索しています。

――スマートフォンOSについては今後どのような戦略をとっていくのでしょうか?

ZHANG Linfeng氏
 弊社のスマートフォンOSの主力はAndroidですし、これからもAndroidが業界の主流となっていくと思います。ただしAndroidだけに特化していくとは考えていません。例えばFirefox OS搭載のスマートフォンについては、通信事業者やユーザーからの強い要望に応じて、昨年、グローバルで「ZTE Open」を投入しました。まだ具体的に提携するところは決まっていませんが、日本向けのFirefox OS製品も検討しています。

 一方、Windows Phoneについては過去に製品を出したことがあり、今後は企業向け製品として、先進国でニーズが高まると考えています。そのため市場が熟すれば製品を投入することは十分、可能性があるでしょう。

――CES2014では、ZTEにとって初めてのウェアラブル製品が出展されました。今後の展開を教えてください。

ZHANG Linfeng氏
 ウェアラブルデバイスは、今回のCES2014全体で大きなトレンドだったと思います。弊社が開発したのは、小型の腕時計型端末を作る技術力があっただけではなく、システムやクラウドといった事業部も持っていることから、ウェアラブルデバイスを、単体としてではなくアプリやサービスと連携した総合的なソリューションとして、提供できると考えたからです。

 ウェアラブルデバイスは今後、腕時計型だけではなく、いろいろな形のものが出てくるでしょう。弊社もそのあたりは検討しているところです。また各国での展開ですが、日本でももちろん製品を販売したいと考えています。日本ではすでに通信事業者さんがヘルスケアサービスに参入していますから、そちらとの協業も十分考えられるでしょう。

――アジアを中心に6インチ前後の大型画面を備えた「ファブレット」が流行していますが、日本市場への導入はお考えですか?

ZHANG Linfeng氏
 ZTEも5.7インチの「Grand Memo」をラインナップしています。日本でもファブレットは販売されていますが、現時点ではビジネス層やあえて大きな画面を好む層など特定のユーザーだけに受け入れられているという印象で、全体のトレンドとしては大きな画面は好まれていないように感じます。とはいえ、中国やアジアで当たり前に受けているファブレットが、今後日本で受け入れられるのかどうか、考えていきたいと思います。

――日本市場でこれからどのように製品を展開していくお考えですか?

ZHANG Linfeng氏

 日本は世界で一番進んでいるマーケットです。何といっても日本のメーカーの製品開発能力は素晴らしく、世界で戦えるトップメーカーが集まっています。ソニーや富士通、京セラなどと同じような端末を出すには、まだまだ頑張らなくてはならないのが事実です。弊社として日本のメーカーを学ばなくてはならないことは非常に多いと感じています。

 一方で、弊社には強みもあります。たとえばLTE時代となり、端末メーカーにとってチップセットベンダーとの関係はより重要となりました。弊社は長年の経験からチップセットベンダーとのいい協力関係を結んでいます。またネットワークへの理解度も重要となっていきます。弊社は、世界65事業者の商用LTEネットワークにインフラを提供しており、中国国内ではLTEベンダーとしてトップシェアを誇っています。この強みを新しいスマートフォン開発にも応用していきたいところです。

 ZTEは、スマートフォンだけではなくネットワークも理解している企業です。今後も技術開発を進めるだけではなく、コストパフォーマンスを高めた製品を日本に提供していきたいと考えています。弊社の技術が消費者の方々の協調的で平和な世界作りに貢献できれば幸いです。

山根康宏

 香港在住。中国をはじめ世界中のモバイル関連イベントを毎月のように取材し、海外の最新情報を各メディアで発信している。渡航先で買い集めた携帯電話は1000台以上、プリペイドSIMカードは500枚以上というコレクターでもある。