キーパーソン・インタビュー

今矢氏に聞くシャープの中国戦略


 中国でソーラーパネルやメモリ液晶を搭載した携帯電話を発売すると発表したシャープ。同社が中国という市場をどうとらえ、どう攻略していこうとしているのか、パーソナルソリューション事業推進本部 本部長の今矢明彦氏に伺った。

シャープ パーソナルソリューション事業推進本部 本部長の今矢明彦氏

――中国市場の特徴をどう分析されていますか?

 中国には急速な経済成長を背景にした所得格差があります。そのため、1000元というラインを境にしたハイエンドとローエンドの2つの全く異なる市場がある、と言えるでしょう。1000元未満で購入できる携帯電話というと、それこそ通話できれば十分、といったような内容で、さまざまなコピー商品も存在しています。一方で、1000元以上になると、機能はもちろんですが、デザインが非常に重視されるようになります。前者は道具でしかありませんが、後者は日本で言う“個電”として、ブランド価値も求められてきます。

 沿岸部に住む富裕層の中でも若い世代の皆さんは、ちょうど日本の若い女性が欧米の有名ブランドのバッグなどを好んで購入するように、日本の携帯電話のことを本当によくご存じなんですよ。

――そう言えば、御社の中国向け端末は日本のものと同じフォルムをしていますね。

 そうですね。あえて同じ形の物を出しています。全く違うデザインになってしまうと、それこそ「ニセモノじゃないか?」と言われかねません(笑)。皆さん、それくらい日本の携帯電話のことをよく見ているんです。端末の外観や傷などについては、日本以上に厳しい目で見られているかもしれません。

 中国向けの1号機はSH9010Cというサイクロイド型のAQUOSケータイでした。日本でAQUOSケータイというとワンセグのイメージですが、中国にはないサービスで、当然テレビは見られないわけです。しかし、サイクロイドというスタイルは他社には決してまねができないものですし、感度が高い人たちというのはインターネットもよく利用されていますから、横長の画面でWebサイトを利用できるサイクロイドは、中国においてもシャープのブランド価値を高める上で強力な武器になりました。

中国で2月に発売される3モデル。ソーラーパネル搭載モデルとメモリ液晶搭載モデルがラインナップに加わった

――今回はソーラーパネルとメモリ液晶というデバイスを中国市場に持ち込みました。御社は12メガのCCDなどの武器もお持ちですが、それらも順次中国に投入していくことになるのでしょうか?

 そうなると思います。「日本と同じものが欲しい」「あの機能は載っていないの?」とよく言われますからね。

――きせかえなどのコンテンツも中国に持って行こうとお考えですか?

 そこは著作権に対する考え方の違いもあり、非常に慎重に検討しています。昨年末に電子コミックの配信を開始したわけですが、まだ様子見の段階で、実はダウンロード型ではなく、ストリーミング型で提供しています。

――反対に中国から日本にフィードバックできそうなものもありそうですか?

 まず人口が多く、所得格差があり、さらに国土も広いんです。そうなると、日本とは別次元での“本当のマーケティング”が必要になってきます。この部分のノウハウが一番大きいかもしれません。

――中国ならではのご苦労もあったかと思いますが。

 流通面もそうですが、技術面を含め、法的な手続きがとにかく大変でした。物事を動かすプロセスが日本とは大きく異なるんです。そこを理解するのに時間がかかり、さらに実際に手続きを行うのに時間がかかり、という具合です。3Gもそうですが、この先の通信方式やIT周辺の法体系がどうなって行くのか、我々にはなかなか予想できないところもあり、今でも手探りなところはありますね。

 その一方で、まだまだ努力が足りていないだろうというところもあります。例えば、ユーザーインターフェイスや文字変換のスピードなどは、改善したい部分です。現地のユーザーさんのお声に耳を傾けて、端末そのものの作り込みをもっとしっかりやって行かないといけません。

――本日はお忙しい中、ありがとうございました。




(湯野 康隆)

2010/1/29 11:17