インタビュー

Galaxy S8/S8+の注目機能「DeX」担当者インタビュー

スマホをドックに置いてパソコンライクに

 サムスンが3月末に発表したフラッグシップモデルのAndroidスマートフォン「Galaxy S8」と「Galaxy S8+」は、側面がカーブしたGalaxy S6 edge、Galaxy S7 edgeからコンセプトを一新し、さまざまな挑戦により次世代のスマートフォンのあり方を模索した意欲的な端末だ。

 本誌では、韓国・水原市にある同社の開発拠点で開発陣にグループインタビューを行う機会を得た。今回は端末をドックに装着することでパソコンのように利用できる注目機能「DeX」を担当するサービスPMグループ Senior Professionalのキム・ミンチョル氏へのインタビューの模様をお伝えする。

サービスPMグループ Senior Professionalのキム・ミンチョル氏

「DeX」の魅力

DeXの利用イメージ。ソウル市内のショッピングモールに設置されたGalaxy S8/S8+のデモブースでは、DeXを興味深そうに試す来場者も多数見られた

 DeX機能は、Galaxy S8/S8+をDeX Stationに繋げることでパソコンのような体験ができるというもの。DeX Stationはさまざまなポートを装備しており、充電端子、HDMI端子、LAN端子、USB 2.0端子×2を持っている。開くとUSB Type-Cコネクターが出てくるので、そこに端末を装着するとDeXモードに切り替わる。

 起動すると、パソコンのようなデスクトップ画面が表示され、端末にインストールされているアプリが並ぶ。アプリを実行すると、通常のAndroid端末の場合は一つ一つのアプリが画面を占有する形で立ち上がるが、DeXの場合はパソコンのようにマルチウィンドウでアプリを立ち上げられ、ウィンドウを並べて同時に他の作業を行うこともできる。Microsoft Officeもパソコンのように動き、チャットをしながらゲームをプレイすることもできる。なお、アプリのウィンドウのサイズを変更できるのは、Android 7.0のマルチウィンドウ対応アプリとなる。

 もちろん、スマホに飛んできた通知も確認できる。テキストメッセージを受信すると、右下からポップアップが出て、その場で返信することが可能。電話がかかってくると、スピーカーフォンやヘッドセットで通話を開始することはもちろん、端末を取り外して通話することもできる。

DeXの画面。マルチウィンドウでパソコンライクに利用できる
SMS通知のポップアップ内から返信

 ブラウザやメール、Officeなどのアプリを利用する際には、アプリからアプリへコピー&ペーストしたい場面がよく出てくるが、DeXではパソコン同様のキーボードショートカットでこれを実現している。また、サムスンのブラウザであれば、5つまでウィンドウを同時に開くことが可能という。

 法人ユーザーの中にはWindowsのアプリケーションを使いたいというニーズが必ず出てくるが、その場合はVDI(Virtual Desktop Infrastructure)という機能が用意されており、これを実行することでWindows環境を利用できるようになる。今回の取材では、AmazonのWebサービスを利用して動いているバーチャルマシンの画面を表示するデモが披露された。フルスクリーンモードに切り替えると、Windows環境と見分けがつかなくなる。

アプリケーション間のテキストのコピー&ペーストも可能
VDI(Virtual Desktop Infrastructure)機能を利用すれば、Windows環境そのもの

質疑応答

――DeXはS8の新しいチップセットがあったから実現できた機能なのでしょうか?

キム・ミンチョル氏
 S8で10nmのチップセットを搭載しているので、それによって実現できた機能です。

――スマートフォンの場合、通知が頻繁に来る場合があると思うが、プレゼンテーション中にオフにすることは可能ですか?

キム・ミンチョル氏
 現在のバージョンではできないのですが、そうした要望が多くありましたので、次のソフトウェアアップデートのタイミングで実装しようと考えています。

――ファイルをデスクトップに置けないのはなぜなのでしょうか。

キム・ミンチョル氏
 ショートカットを置くことは可能ですが、Androidのホームアプリと同じなのでそうなります。

――DeXを利用するには専用のステーションが必要になるのでしょうか。

キム・ミンチョル氏
 今は技術的な制限によりDeX Staionが必要になります。その理由としては、さまざまなポートを利用しなければいけないという点と、DeX Stationにはクーリングファンがあり、端末を使いながら冷やす必要があるからです。VDIなどは、ネットワーク上でパケットをたくさん飛ばすので、LANポートも搭載しました。

――それなりの大きさになるが、出張に持っていくようなことはあまり考慮していないのでしょうか。

キム・ミンチョル氏
 クーリングファンなど、いろいろな機能を実装したので、それを実現できる最適なサイズがこの大きさです。デザインもいいですし。

――マウスやキーボードやケーブルなど、たくさんアイテムを持っていく必要があるのであれば、ノートパソコン1台でいいのではないかとも思えるのですが、作り手としてどういう利用シーンを想定されているのでしょうか。

キム・ミンチョル氏
 市場調査をした結果、多くの方が複数のデバイスを持ち歩いているということが分かりました。一人の人がパソコンだったり、スマートフォンだったり、タブレットだったり、さまざまな機器を持っているのですが、一つに集約できると考えました。

――大画面出力機能は、過去にモトローラがやっていたり、Windows 10 MobileのContinumがあったりしますが、かつて同じようなことにチャレンジして失敗しているように見えるが、何かそれを乗り越えるための工夫はありますか?

キム・ミンチョル氏
 こういうコンセプトを出すには、端末のCPUが優れていますし、Android 7.0からマルチウィンドウに対応していますし、非常にいいタイミングだと考えています。

――DeX Stationは今後別の形状のものも検討しているのでしょうか。例えばノートPC風などはいかがでしょうか。

キム・ミンチョル氏
 今、さまざまな拡張について検討しているところです。全ての可能性をもって検討しています。

――グローバルではどのような形でDeX Stationを販売しているのでしょうか。標準でついていると嬉しいですが。

キム・ミンチョル氏
 必要な方、不要な方がいらっしゃいますので、基本的には別売のアクセサリーとして販売しています。先週発売したばかりなので、詳細な販売台数は集計できていないのですが、韓国ではS8+の128GBモデルを予約いただいた方にプレゼントするキャンペーンを行っていました。日本で実施するかどうかは皆さんのお声次第です(笑)。

――ありがとうございました。