【ワイヤレスジャパン2013/WTP2013】

周波数利用効率がLTEの3倍、KDDIの「Advanced MIMO」

 KDDIのブースでは、2018年頃の商用展開を目指す「Advanced MIMO」のデモが行われていた。

 「Advanced MIMO」は、KDDI研究所において技術開発されたもので、標準化に向けて取り組んでいるという。MIMOは、送信アンテナと受信端末側で複数のアンテナを組み合わせて高速化する技術。現在のMIMOでは、たとえば基地局側が8本の電波を送る能力があり、受信するスマートフォン側が2本分の電波を受けられる場合、残りの6本の電波が無駄になる。「Advanced MIMO」では、2本分の電波を4人に同時に送信可能となるため、周波数の無駄使いが少ないという。

 説明員によると周波数の利用効率は、「bps/Hz」という値で示すことが可能で、現在のLTEは7.5bps/Hz程度になるという。今回、デモしていたシミュレーターでは、「Advanced MIMO」の利用効率は3倍弱の20.5bps/Hz程度と示されていた。仮に、割り当てられた周波数の帯域幅は100MHzとすると、基地局装置のスループットは2Gbpsになるという。なお、KDDI研究所では、「Advanced MIMO」を実現するため、受信端末側から基地局設備側に送信されるフィードバック情報を圧縮する技術を開発している。

 このほか、総務省からの委託研究として、災害時のネットワークのあり方を考える地域ネットワークの連携構想なども展示されていた。

 東日本大震災では、多くのユーザーがネットに繋がらなくなった。KDDI研究所では、災害時に公衆無線LANや地域WiMAX網などが解放され、端末側が自動的に繋がりやすいネットワークを選んで接続、通信を確保するという災害に強い通信インフラを構想している。

 複数の無線通信システムを搭載した、Wi-Fiルーターのようなものを想定しており、災害時にメインのネットワークが混雑して利用しにくくなると、端末側でネットワークの状況をセンターに伝え、契約してないネットワークでも一時的に利用できるようになるという。また、自治体や店舗などへの導入を想定したデジタルサイネージ型の電波情報測定装置などお展示されていた。

重層的通信端末
無線情報測定装置

津田 啓夢