【Mobile World Congress 2017】
MONOは成功? eSIMはどうする? ドコモ森氏が語るスマートフォンとその先
2017年2月28日 16:02
「Mobile World Congress 2017」のブースでの展示は5Gなどの技術が中心になっているNTTドコモだが、部署を問わず、幹部はMWCを訪れ、最新動向の情報収集や商談に力を入れている。同社 執行役員 プロダクト部長の森健一氏も、その1人だ。MWCで発表されたスマートフォンや通信技術のトレンドは、ドコモのラインナップにどのような影響を与えるのか。同社ブースで、森氏に話を聞いた。
――MWCが始まってまだ1日目(取材時)ですが、ここまでに発表されたもので、何か気になっているものはありますか。
森氏
去年との差分を語れればいいのですが、実は初めてなもので(笑)。ただ、LGさんもファーウェイさんも、ソニーさんも端末を発表していて、1つはスマートフォンのスピードが確実にギガビットに近づき、速くなっていることは言えると思います。
形状も、大画面でも横幅は大きくしないというのがトレンドで、新しい進化感が出てきました。あくまでファーストインプレッションですが、こんな印象はあります。
――そのトレンドを、どう取り込んでいきたいですか。
森氏
通信速度が上がっていくと、1つは映像(がより見やすくなる)があります。これは、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)を含めてですが、我々自身もコンテンツはやっています。そういうところまで合わせて提供するデバイスの準備も、整ってきていると思います。
――昨年を振り返ると、ドコモ初のオリジナルスマートフォン「MONO」を発売し、売れ行きもいいと伺っています。この成功をどう捉えていますか。
森氏
発表会以降、メディアの皆様に多数取り上げていただき、ユーザーからの前評判も高かったですね。店頭にいらっしゃった方も、「これでいい」と思っていただけたようです。かつ、あのプライスですから、非常に手ごたえがいい。初速がよかったせいで供給が追いつかず、ご迷惑おかけしてしまいましたが、3月ぐらいからまた数が入ってきます。
――供給が足りないほどになったということは、次も期待できそうですね。
森氏
端末全体としては、まずハイスペックのものをしっかりやる。ドコモの最先端を一緒にやっていただけるメーカーのものは、出していきたいと考えています。一方で、それほど最先端ではなくても、値段が手ごろで普通に使える端末が欲しいというニーズもあります。そこはそこで、しっかり出していきたい。
MONOはZTEさんと一緒にやっているものですが、基本はドコモのデザインを採用しています。企画の段階から、ドコモ側の要望も汲んでいただけました。成功と言うにはまだ早いですが、うまくいったとは思っていて、今後もこういう取り組みは続けていきたいと考えています。
――やはり、価格のインパクトは大きかったです。
森氏
今回、価格的にああいう形になっているので、(次も)お客様はそういうものを期待される。多分ですが、これで終わりということはありません。手ごろな価格でありながら、安かろう悪かろうではない。シンプルだけど使いやすくて上質。そういうところにはこだわっていきたいですね。
――MONOとは逆に、SIMフリー端末のようにドコモの関与が少ない端末を出していくことはありますか。iPhoneやNexusシリーズがそうだと思いますが、それを広げていくつもりはありますか。
森氏
将来的にどうするかは別にしても、今の段階では、サービスも合わせて、しっかりお使いいただきたいと考えています。我々の端末で、最先端のサービスをお客様にお届けしたいというのが、まずあります。
――とはいえ、ドコモのサービスはキャリアフリー化も進んでいます。実際、私もファーウェイの「Mate 9」で「dブック」を使っています。
森氏
そのくらいリテラシーの高いお客様が多いとうれしいのですが、まだまだです。まずはサービスを入れた形でお届けするのがいいと考えています。
――逆に、よりコンテンツと連動させる方向はありますか。AmazonのKindleのようなイメージですが。
森氏
今だと「dtab」がお求めやすい形になっていて、普及層の皆様に向けています。そういうときにdマガジンは、タブレットの入門用コンテンツとしてうまくいっています。今後は、店頭でもっと訴求しやすいように、商品そのものを作り込むことにトライしたいですね。たとえば、シニア層ならシニア層向けのコンテンツを入れるなどはあると思います。
eSIMのねらい
――先週、コンシューマー向けのeSIMプラットフォームが発表されました。これで何ができるようになるのかを改めて教えてください。
森氏
対応した製品を企画しているところで、2017年度中には出していきたいですね。ただし、これはスマートフォンではなく、ウェアラブルやタブレットなど、主契約に付随するセカンド端末から入れていきたいと考えています。
――ファーウェイがeSIM対応の「HUAWEI WATCH 2」を発表するなど、eSIMはMWCでも注目されています。
森氏
ちょうどGSMAでeSIMが標準化された流れもありますからね。我々の部のなかでも標準化をやっていたことがあり、仕様がまとまったタイミングで、ドコモでもぜひ出そうとなりました。
――eSIMになると、ユーザーの視点で、通常のSIMと何が違うのか。基本的な部分を教えてください。
森氏
通常だとお客様がドコモショップに行き、SIMカードを入れて端末を使いますが、eSIMはSIMがそのまま刺さっている状態で、オンラインでそのまま開通することができます。そういう意味では、オペレーションも含め、より便利に、簡便に使えるようになると思います。
――このeSIMプラットフォームは、MVNOにも開放されるのでしょうか。
森氏
まだそこまでは検討されていません。まずはドコモのセカンドデバイスからというのが、大きな方針です。
――店頭のオペレーションコストを減らすことにもつながりますか。
森氏
(店頭での開通作業などが不要になり)待ち時間が減るというのはあると思います。極端に言えば、端末は吊るしで買ってきて、自分で開通できる利便性がありますからね。コスト面でいうと、店頭でSIMカードを書く(契約者情報の書き込み)のはそこまで大きくありません。どちらかというと、時間の短縮や、お客様の利便性が向上する形でメリットが出ると思います。
――ドコモ以外のキャリアを書き込むということはできるのでしょうか。たとえば、海外渡航時にドコモ以外を使うということはいかがですか。
森氏
GSMAで議論されているのは、いろいろな端末がいろいろなキャリアで使える世界です。今後はそういった方向性もありますが、まずは我々のネットワークでと考えています。
タブレット、新たなデバイスについて
――セカンドデバイスという点でいうと、MWCの発表を見ても、大型のタブレットはWindowsが増えている印象もあります。ここをラインナップに取り込むお考えはありますか。
森氏
我々もWindowsは法人向けに提供しており、企画の段階で個人向けも考えることはありますが、数の上ではまだAndroidがたくさん出ている状況があります。ドコモに限った話だと、Androidのスマートフォン向けサービスが、そのままより大きな画面になり、価値を高めて提供できるというメリットもあります。ただ、グローバルレベルで見ると、確かにAndroidタブレットが昔ほど伸びなくなってきているのも事実です。
――スマートフォン、タブレット以外で、注目していたり、集中して取り組んでいきたいジャンルはありますか。
森氏
自分たちでやるかどうかは別にしても、家の中のデバイスは有望だと思っています。AmazonはEchoを、GoogleのGoogle Homeを作っていて、これは今後トレンドになると思っています。本格的なIoTで社会基盤になるようなサービスはドコモでも別の部隊で検討していますが、私の立場だと、こういった家の中をどうするかはウォッチしていく必要があると考えています。
――最後に、読者に向けて一言お願いします。
森氏
MWCの参加は初めてですが、グローバルなベンダーを含め、勢いを感じています。デバイスの立場からは、そういったメーカーの生きのいい端末をお客様にお届けしたい。それはデバイスもそうですし、いろいろなソリューションもあります。ぜひご期待ください。
――本日はありがとうございました。