【Mobile World Congress 2015】

北米に続き欧州にも進出、京セラの海外戦略とは

 「Mobile World Congress 2015」では、タフネスモデルを中心に出展した京セラ。同社は、日本と北米に足場を持つ企業だが、今春からドイツ、フランスでも端末を発売する。MWCでは、Windows Phoneやソーラーパネル内蔵スマートフォンの試作機も出展した。同社のグループインタビューでは、こうした事業展開を、通信機器関連事業本部 営業統括部長の能原隆氏が語った。

京セラの能原氏

欧州展開を本格化、ロシアや中東からも引き合い

――欧州での反響はどうでしょう。

能原氏
 欧州で出しますというリリースをして以降、おかげさまで、多くのお客様から引き合いをいただいている状況です。今回のMWCでも、非常に多くの方々から、具体的なお話をいただきました。ビジネスとしてやる、いいきっかけになった展示会でした。

――販路はどのような形になるかを教えてください。

能原氏
 マーケット、販路については、お客様との連名で、今後リリースが出てきますので、そちらをご期待いただければと思います。コンシューマールートとビジネスルートの2つがあり、比重としては法人向けのB2Bビジネスが高くなります。

――「比重が高い」ということは、コンシューマー向けもあるということですか。

能原氏
 その販路が両方を扱っているところだと、必然的に両方に流れます。軸足はB2Bということです。

――そのほかの地域もあるのでしょうか。

能原氏
 いっぱいお声がけいただきました。我々がフォーカスしているのは、欧州でも5大国と呼ばれるドイツ、イギリス、スペイン、フランス、イタリアですが、それ以外からもよい話があって、具体的な商談が始まったところです。

 あとは、ロシアの方々も多かったですね。テレビ局の方も取材に来られていました。なぜかはまだ分かっていないのですが、寒くて手袋をするから(Torqueのようなモデルが必要)ではないでしょうか。今、カナダにも展開していますが、そこで受け入れられる理由は、年間1/3ぐらいは手袋をしているからと聞いています。ロシアでも、それは同じかもしれないですね。

――逆に、暑い国というのは考えられますか。

能原氏
 逆にありますね。欧州向けの端末として商品化はしましたが、中東の方々も来られました。彼らは、「砂」のことを言われます。砂が入ってすぐにダメになってしまうが、カバーをすると今度はタッチパネルの反応が悪くなるというわけです。コンシューマー向けの流行り廃りとは別に、潜在的なニーズがあることを実感しました。

タフネスを全面に押し出す京セラのブース

北米事業について

――先行している北米事業の状況はいかがでしょうか。

能原氏
 おかげさまで、ベライゾンとAT&Tに(Torqueベースの高耐久スマートフォンを)出し、計画通りの立ち上げになっています。ベライゾンの方は、コンシューマーとビジネスで、ほぼ半々ぐらい。高耐久でNECカシオ(現・NECモバイル)さんが出されていたモデルの、後継機という捉えられ方をしていて、デザインやスペックを気に入って買われる方もいるようです。

 AT&Tは、元々法人が中心です。火気厳禁の環境で、電気機器がきっかけで爆発しないようにする「防爆仕様」というものがあり、それもスマートフォンに入れています。

――ベライゾンの状況は、auのTorqueと似ていますね。北米ではフィーチャーフォンのニーズも高かったと思いますが、そちらの状況も教えてください。

能原氏
 全体的なデマンドは下がり気味ですが、DURAシリーズは堅調に推移しています。T-Mobileが料金攻勢をかけ、スマートフォンの価格が下がってきていることが影響しています。スマートフォンにすると今までなら料金が上がってしまうという方が、巻き取られています。

――プリペイドはいかがですか。

能原氏
 そちらは堅調です。ただ、マーケットの競争は激化しています。あちらではアップルとサムスンがフラッグシップの2強になっていますが、フィーチャーフォンからの巻き取りが増えたこともあり、フラッグシップを出されていたメーカーがプリペイドを出すことも増えました。

Windows Phoneを開発する理由

Windows Phoneの試作機を開発した

――Windows Phoneを出展した理由を教えてください。

能原氏
 今回出展したのは、企業システムとの連携があるからです。大きく分けて、iOSとGoogle Apps、マイクロソフトの3つがありますが、iOSはうちがやるわけにはいきません。お客さんのチョイスによって、AndoridもWindowsもあるということです。AndroidもWindowsも、ハードを変えずにできますからね。

――Windows Phoneは、マイクロソフト自身がLumiaを持っていますが、競合にならないでしょうか。

能原氏
 OSと、端末の競争は別の話です。また、逆を言えば我々には、どのプラットフォームを搭載するかの選択権もあります。

――試作品では、ソーラーパネル搭載のスマートフォンも出していました。

能原氏
 非常に期待しています。フロントにソーラーパネルを入れたのは、使っていくうちにちょっとずつバッテリーがたまり、長く使えるという要素を強くしたいからです。

ソーラーパネルを搭載したスマートフォンの試作機

国内展開について

――国内でも、今年はINFOBARやBASIO、miraieなど、京セラモデルが非常に多くなっています。その背景を教えてください。

能原氏
 最終的に商品を決定するのはお客様ですが、今期の流れとしては、MVNO向けを一部でやらせていただいています。北米のプリペイド向けに出している、普及価格帯モデルのプラットフォームを持っていて、国内にも投入しやすい流れがありました。たとえば、mineoやワイモバイルの端末は、海外モデルがベースです。この流れは作りやすかったですね。

――「AQUOS K」のような、スマートフォンOSを採用したフィーチャーフォンは、いかがでしょうか。

能原氏
 Androidを搭載したフィーチャーフォンは、構想としてはずっと持っていました。もちろん、我々以外もそうだと思います。ただ、今のフィーチャーフォンとどう価値が変わるのか、読みきれていませんでした。今は市場に(AQUOS Kが)出ていますし、そこにどう反応するのかを見ています。

 ただ、スマートフォンのよさを生かす、生かさないがあって、難しいですね。既存のフィーチャーフォンが流通している中で、何が違うのか。ここは端末メーカーのアイディアの出しどころだと思います。

――国内でMVNO向けにフィーチャーフォンを出すという選択肢はあるのでしょうか。

能原氏
 いわゆるSIMフリーのマーケットが、スマートフォンでなければならない理由はありません。当社もスマートフォンでなければならないと決めたわけではなく、お客様の選択肢に合わせたプランがあるべきだと思っています。

――ありがとうございました。

石野 純也