【Mobile World Congress 2013】

Tizenの可能性を語るドコモ永田氏

 既報のとおり、Tizen(タイゼン) Associationは26日(現地時間)にイベントを開催した。NTTドコモやOrangeといった国内外の通信事業者が端末のおおまかな投入時期を予告したほか、サムスン電子も端末の開発を行うことを表明している。同イベントでは、Tizen Associationのチェアマンで、ドコモの取締役永田清人氏のラウンドテーブルも行われた。ここでは、報道陣との一問一答を掲載する。

――Tizenはどのような位置づけになっていくのか。

記者からの質問に答えるTizen Associationのチェアマンで、ドコモの取締役、永田清人氏

永田氏

 今勝負しているAndroidのハイエンドはやるが、こういった取り組みを通じてHTML5をドライブしたい。エコシステム自体はあるパーセンテージまでいかないと死んでしまうので、世界的には15~20%までいくようにしないと全体的に回らなくなると思っている。

 そういう意味でも、ファーウェイのリチャード・ユーが登壇してくれたことは心強い。ファーウェイとサムスンは競合なので、どうやって一緒にやっていくか難しい。そういった話を昨日して、納得してもらい「それならやれる」となったので急遽ここに来てもらった。

――ファーウェイは元々Tizen Associationのメンバーだったが。

永田氏

 ただ、オープンソースそのものや、サムスンがリードしているのではないかという不安もあったと思う。今回、TSG(Technical Steering Group)というTizenの技術的な仕様をリードしているグループに入ったので、これで戦えると理解はしてもらえた。

 本当にものが出てくるという意味では、サムスンが入っているのは大きい。しかも、いいものが出せる。そこに加えてグローバルで大きな存在のファーウェイが入った。日本での知名度はまだまだだが、方向性については疑いがなくなった。

 自分も以前はLinux Foundationについてよく理解できていなかったが、オープンであることでイノベーションが起きることが分かってきた。たくさんの人が入ることで、スピードが上がり、可能性も高くなる。

――今年の後半に出るのは何機種か。

永田氏

 1機種だろう。エコシステムをこれからやっていかなければいけないので。

――dマーケットなどはどうか。

永田氏

 マーケットについては我々のキーになる。どんなOSでも、dマーケットは我々の主戦場。dメニューはエコシステムのプラットフォームなので、どう見せるかはこれから検討する。UI(ユーザーインターフェイス)は新しいイメージで、簡単に使えると思えるものをやっていく。今日はまだアイコンが並んでいるものなので、そこは我々自身が変えていくし、そういったフレキシビリティもある。

――ワンセグやおサイフケータイは。

永田氏

 当然やっていく。そういったことがやりやすいのも、オープンソースのメリットだ。

――コンテンツプロバイダーがTizenに取り組むメリットは。

永田氏

 ローカルのところで、コンテンツプロバイダーが集まる条件を用意しないといけない。この1~2カ月の間にコンテンツプロバイダーにも説明していく。今、条件を整えているところ。Tizenは、テクノロジーは高いが、ビジネスのフレキシビリティもあるという仕組みにした。

――Firefox OSの登場は追い風か。

永田氏

 はい。やっていることは間違いないということが分かった。TizenはHTML5に賭けて、一番のパフォーマンスが出る。その点で考えると、ほかで動くHTML5のアプリは当然Tizenでも動く。

――Tizenをやることで、Anroid、Googleに対して何か気兼ねすることはあるか。

永田氏

 私自身も昔からLiMo Foundation(Tizenの前身の1つ)のチェアマンもやっていた。Androidも元々オープンソースのもので、世の中の流れ。スタイルは違うが、(Googleから)何かリアクションがあるとは思っていない。

――LiMoの反省は活きているのか。

永田氏

 テクノロジーの話をオペレーターが話すのは、素人が議論しているようなものだった。それが1つ目の反省。クリエイションしない人が何かを言うのは、イノベーションを妨げているだけ。なので、TizenはLinux Foundationに組織を切り出した。LiMoはテクノロジー中心に集まったことがあって、Linux中心ならみんなが集まったほうがいいと考えてできたが、ビジネスやエコシステムまで頭が回っていなかったし、当時はそのような話もあまりなかった。

 その後、iPhoneなりAndroidなりが出てきて、そういったことが意識されるようになった。そういう部分では、我々自身も変わった。もちろん、Tizen Associationから要望は出すが、イノベーションに関わる実際にコードを書く部分はお任せし、我々がどう利用するのかにシフトした構造になっている。オペレーター自身もよく考えないといけない。

Tizenの開発者向けリファレンス端末。商用機は、UIなども大きく変わる可能性があるという
イベントにはTizenのボードメンバー集まり、HTML5の将来性が語られた

――ユーザーがあえてTizenを選ぶ理由は何か。

永田氏

 何が違うかというと、簡単ではないが、商品の味付けを変えていくしかない。ただ、HTML5のパーセンテージを今からどんどん増やすようにしないといけない。我々の将来投資をするためのひとつのプラットフォームであり材料。お客様に見えるかどうかは別だが、マルチプラットフォームになった時、どのプラットフォームでも同じサービスをすぐ出せる。そういうものを用意している。

――SprintもTizen Associationに入っているが、その親会社になろうとしているソフトバンクはどうか。

永田氏

 拒否はしていないし、ウェルカム。こういうものは数、仲間が増えたほうがいいので、ご興味があればぜひ入ってほしい。HTML5についてどういう考えなのか、あまり見えてこないが……。KDDIは、Firefox OSでHTML5に対しての考えが分かったので、話をしていかないといけないと思っている。

――Tizen Associationとしてのゴールは。

永田氏

 エコシステムが回ること。今はまだベイビーなので、それを一人歩きさせることが当面のゴール。

――Tizenはオープンだが、ドコモサービスがオープンになっていない。

永田氏

 dゲームはすでにマルチに対応しているが、基本的にはあの方向になっていく。ドコモユーザーなら支払いにキャリア決済は使えるメリットがあるが、そうでなくても使えるようにする。ドコモはサービスプロバイダーになっていくことを表明しているので、オープンを目指していく。

――らくらくホンのように、Orangeなどと共同で端末を調達することはあるのか。

永田氏

 Tizenがどうということでなく、Androidも含めてやっている。

石野 純也