【Mobile World Congress 2013】

キーノートスピーチで事業モデルの変化を語る、ドコモ加藤社長

 「Mobile World Congress 2013」のキーノートスピーチに、NTTドコモの代表取締役社長、加藤薫氏が登壇。モバイル業界の構造変化や、それに伴うドコモの戦略を解説した。

ドコモの代表取締役社長、加藤薫氏
社名の由来を解説し、「20年前には信じられなかったことが実現している」と語った

 加藤氏は、モバイル業界の構造が変わりつつあることに言及。モバイルを3つの段階に分けた図を示し、プラットフォーム、サービスが、重要性を増した第3段階に移りつつあることを指摘した。

スマートフォンやマルチデバイスの時代に移り変わり、エコシステムの中心が上位レイヤーに移ろうとしている。一方でドコモのようなキャリアにもサービスプロバイダーになる選択肢が生まれた

 iモードが中心だった「第2段階では大成功を収めた」(加藤氏)というドコモ。「第2段階に入り音声からの収入は落ちたが、拡大するデータがそれを上回った」(同)という。結果として、データ通信から得られる収益の比率は、世界でもっとも高くなった。

iモードの加入者増に伴い、データ収入の比率は世界一大きくなった

 一方で、スマートフォンが広がり、現在はより上位のレイヤーが重要となる第3段階にシフトしている。こうした潮流に従い、ドコモも「追加の収益を新しいビジネスから得る」(同)戦略を打ち出している。

ドコモはスマートライフの実現に向け、8つの新事業領域に挑戦している

 「プラットフォームを用意し、手数料をいただいていた」(同)というiモードの頃のビジネスモデルに加え、ドコモ自身が直接サービスやコンテンツを提供することも始めた。スマートフォン上で展開している「dマーケット」にはそのような狙いがあり、「キャリアが直接運営しているポータルで、慎重に選定した高いクオリティのコンテンツを提供している」(同)。

プラットフォームの運営だけでなく、直接サービスやコンテンツの提供も行う2つのビジネスモデルを同時に展開。自社が運営するポータルが、dマーケットなどになる

 また、「Mobile World Congress 2013」でのメインテーマになっているNFCについては、おサイフケータイやiDの実績を紹介。対応端末利用者は3700万人にのぼり、日本ではコンビニエンスストアにもリーダーライターが当たり前のように置かれているとした。

おサイフケータイの実績を紹介。対応端末利用者は現在3700万人にのぼる

 健康分野については、オムロンと提携。「春に新しいヘルスケアのプラットフォームを開始する」(同)という。こうしたサービスを支えるには、「ハイスピードのネットワークが欠かせない」という加藤氏。2年前に開始したLTE(Xi)は1000万契約を突破し、2015年には4100万契約を見込む。こうした取り組みを通じて、ドコモは1兆円の売上高を目指すという考えが示された。

この春、オムロンと健康分野のプラットフォーム事業を開始する
こうしたサービスの数々を支えるのが、足回りのLTEとなる
ドコモは新領域への挑戦を通じて、1兆円の売上高を目指している

石野 純也