ケータイソリューション探訪

無線LANケータイを内線として使える「PASSAGE DUPLE」


 構内交換機を自社で保有し、無線LANを搭載したケータイを用いて、企業が構内交換機の機能によりカスタマイズできるNTTドコモの内線ソリューション「PASSAGE DUPLE」(パッセージ・デュプレ)。その導入メリットについて、同社法人事業部ソリューションビジネス部の安藤禎宣氏と秋山和則氏に聞いた。

――「PASSAGE DUPLE」とは、どういうソリューションなのでしょうか?

秋山氏
 1台のケータイを、社内では無線LAN端末として、社外ではFOMAとして使える内線システムです。社内では内線電話としての利用はもちろん、無線LAN経由でイントラネットに接続したり、業務アプリケーションと連携できることも利点です。もちろん、社外からもiモードを経由して社内のデータベースにアクセスできます。

NTTドコモ 法人事業部 ソリューションビジネス部 第三ソリューション統轄担当主査 秋山和則氏

――導入メリットについて詳しく教えてください。

秋山氏
 1台のケータイで社内と社外をシームレスに繋ぐことができます。また、自社の構内交換機を保有して、内線システムを自在に設計できることです。コスト面で言えば、内線電話機と携帯電話の2台を保有する必要がなく1台で済ませられるといったメリットがあります。

 また、従来の内線システムよりも人事異動等による多機能電話機の設置場所変更に伴う費用を圧縮できる等のメリットが期待されます。ケータイを内線電話として使えるので、社内の固定電話機を減らせて、机まわりをスッキリさせられることも利点です。

――業務アプリケーションは、実際にどのようなものが使われていますか?

秋山氏
 企業によってさまざまですが、ユニファイドコミュニケーションと連携したり、電話帳やスケジューラーと連携したり、独自の棚卸しシステムを開発されて、それをFOMAと連携させている事例もあります。端末に電話帳データなどを登録しないことでセキュリティを向上させている事例もあります。

――対応端末は?

秋山氏
 onefoneが最新機種で、前モデルのN900iL、N902iL、F1100を使っていただいているクライアントもいます。最近では、N-06Aという端末が小規模エリア向けに対応いたしました。

――御社には他にも無線LAN搭載端末がありますが、それらの端末では利用できないのですか?

秋山氏
 PASSAGE DUPLEに対応する無線LAN搭載端末は、内線での音声通話品質を確保するため構内交換機やアクセスポイント、コントローラーなど、きめ細かなチューニングと各種動作検証を行っております。その他の無線LAN搭載端末については音声品質について検証できておりません。

――業務アプリケーションと連携できる利点からすれば、スマートフォンを連携させたいというニーズもあると思いますが?

安藤氏
 今のところ具体的なアクションは起こしていませんし、コメントできることはありません。

秋山氏
 無線LANを用いて音声電話ができる端末は色々あると思いますが、弊社では各PBXメーカーの協力を得て、構内交換機~無線LANを含めたソリューションとして確立しました。今後もonefoneを主力的に売っていきたいと考えています。

――実際にどのような企業が導入されていますか?

秋山氏
 規模で言えば、小規模から大規模まで幅広くご利用いただいています。ドコモ中央だけの実績を見ると、1企業あたりの契約台数の平均は100台前後の契約になります。全国平均では50契約くらいだと思います。といっても、ばらつきがありますので、1000回線以上をご利用いただいている例もあれば、20~30回線程度の例もあります。

――導入企業の業種に傾向はありますか?

秋山氏
 全国的にみると、サービス業と製造業での導入が多い傾向があります。

――なぜ、そのような傾向になっているのでしょうか?

秋山氏
 その要因については、まだ把握しきれていませんが、サービス業や製造業は、机を離れて(場所を問わずに)仕事されることが多いのかも知れません。

――導入企業のニーズとしては、内線電話としてだけではなくネット連携を目的に導入される事例が多いのでしょうか?

秋山氏
 PASSAGE DUPLEはデータ通信系を訴求点にしているソリューションですので、そこに期待して導入いただくことが多いです。また、まずは通話用として導入し、その後データ系の展開とステップ的に推進するような慎重なクライアントもいらっしゃいます。

NTTドコモ 法人事業部 ソリューションビジネス部 第三ソリューション統轄担当部長 安藤禎宣氏

安藤氏
 新しい社屋を建てたのを機に新しいシステムを導入したい、社内のインフラを作り変えたい、そうした企業がPCの無線LANも使えて、モバイル化が進むことにメリットを感じていただいているようです。

――ネット連携をさせたい場合、導入企業側が本気にならないと十分にメリットを享受できないとも言えますか?

秋山氏
 そうですね。初めから明確な目的があって導入したお客様は成功しているように見受けられます。

――業務アプリケーションの開発をドコモがサポートすることもありますか?

秋山氏
 もちろん、あります。ドコモが行う場合も、他社が行う場合もあります。

――導入費用の目安を教えてください。

秋山氏
 企業の規模、職場環境、電波環境など、さまざまな要素によって違ってきますので、回答できません。

――機器をレンタルすることはできますか?

秋山氏
 こちらから「レンタルできます」とは言っていませんが、レンタルにしていただくことも可能です。お客様により、レンタルされるケースもあります。

――音声通話の利用方法について伺います。社内から社外に出ているonefoneに電話をかけるときは内線番号ではなくFOMAの番号に発信するのですか?

秋山氏
 社外ではFOMAでの着信(090/080)となります。ただし構内交換機の転送機能を利用することで、社外にいる時はFOMAへ自動転送されるため、社内からonefoneに電話を掛ける際は、常に内線番号の利用が可能となります。

――代表番号にかかってきた電話をケータイで着信できますか?

秋山氏
 ご導入の構内交換機の機能でピックアップ機能が利用可能であれば、かかってきた電話をケータイで受けることが可能です。

――FOMAには個人用の電話番号も追加できますか?

秋山氏
 N-06A及びonefoneは2in1に対応していますので、仕事用と個人用の電話を使い分けることができます。

――無線IP電話は、通信品質の面で不安を感じる人もいると思いますが?

安藤氏
 それについては自信を持っております。検討いただく段階にショールームで試していただいて、納得いただいてから導入していただいていますが、実際に導入されてからも好評をいただいております。

秋山氏
 とくに最新機種のonefoneは、これまでの経験に基づき、細かい部分まで改善しています。構内交換機と無線LANとの組み合わせの試験を行い、改善しています。IEEE802.11b/gだけでなくIEEE802.11aにも対応していますし、無線LAN端末としては最高峰であると自負しています。無線LANのセキュリティについても、現状で最も厳しいセキュリティ方式を採用して、安心してご利用いただけます。

――導入企業からはどのような反響がありますか?

秋山氏
 使い勝手に関してはご満足いただいているようですが、ドコモとしては構内交換機メーカーさんと連携し、より経済的なシステムをご提供できるよう努力していきたいと思っております。

――セキュリティの観点からカメラなしの端末を希望する企業があるかと思いますが?

秋山氏
 カメラなしのニーズはありますが、現在のところ対応しておりません。

――オプションのプレゼンス&インスタントメッセージ機能とは、どのようなものですか?

秋山氏
 プレゼンスは「会議中」「在席中」「外出中」など、連絡を取りたい相手の状況がリアルタイムでわかる機能です。相手が会議中であれば電話をかけずにインスタントメッセージを送る、といった使い方ができます。ただし、プレゼンスは利用者が能動的に登録しないと活用できません。現状では、なかなか導入が進んでおらず、自動的にプレゼンスがアップされる仕組みを構築するなど、使い勝手を改善する必要性を感じています。

――今後、新機能の追加など、サービスの拡張は検討されていますか?

安藤氏
 今のところ、予定していることはありません。

秋山氏
 PASSAGE DUPLEはお客様自身が自在にカスタマイズしていくことで業務効率の向上や通信コスト削減につながるソリューションです。お客様個々に必要とするアプリケーションは異なるのでしょうが、そのベースとなるOSのようなものがあってもいいのではないか、そういうディスカッションは続けています。

――ありがとうございました。

(村元正剛)

2010/2/9 06:00