ケータイソリューション探訪

携帯で内線を発着信~「KDDI ビジネスコールダイレクト」


 KDDIが2009年4月から開始した法人向け内線ソリューション「KDDI ビジネスコールダイレクト」が好調に契約件数を伸ばしている。また、「MM総研大賞2009」においてFMCサービス分野最優秀賞を受賞するなど、FMCの成功事例として業界内での注目度も高い。この「KDDI ビジネスコールダイレクト」の特徴と成功した理由について、同社・ソリューション商品企画本部の原野哲司氏と吉川元規氏に聞いた。

――まず「KDDI ビジネスコールダイレクト」のサービス概要にについて教えてください。

KDDI ソリューション商品企画本部 テレフォニー商品企画部 商品企画2グループ 課長補佐 吉川元規氏

吉川氏
 社内の内線電話とauのケータイを結んで、全国どこにいても内線通話ができるサービスです。もともと「IPセントレックス」など拠点間を結ぶ内線電話サービスは提供していましたが、そこにケータイを結びつけることで、より利便性を向上させたサービスです。固定回線には「KDDI 光ダイレクト」、「KDDI メタルプラス」、または「KDDI-IPフォン」のいずれかをお選びいただけますが、内線通話が定額になるだけでなく、外線の通話料も安くなることも利点です。

――外出先からケータイで内線に電話をかけたり、内線番号にかかってきた電話を受けられたりするわけですね。

吉川氏
 ケータイに内線番号が正しく表示されて、正しく折り返せる仕組みを構築しました。ケータイから内線番号をダイヤルするだけで発信できますし、着信側にも内線番号が表示され、内線番号をアドレス帳に登録しておけば発信者の名前も表示されます。

――導入が容易であることも好評と伺っていますが。

吉川氏
 既存設備を活かして導入できるため、イニシャルコストを低く抑えられます。従来、内線電話サービスは専用の設備が必要だったり、工事に時間を要したりという導入障壁がありました。KDDI ビジネスコールダイレクトでは、そうした障壁を無くしたことが販売の順調な伸びに繋がっていると思います。仕組みとしては、弊社からレンタル提供するEGW(イー・ゲートウェイ)というVoIP変換装置を介していただくことで、現在使っているPBXや固定の電話機をそのまま利用いただけます。ケータイはauのラインナップの中からお好きな機種を選んでいただけます。

――他社でも同様のサービスを提供していますが、このサービスの優位性はどこにあるのでしょうか?

吉川氏
 決定的に違うのはKDDIの固定回線を利用いただくことにあります。他のモバイルキャリアさんのサービスでは専用線を導入する必要がありますが、弊社のKDDI ビジネスコールダイレクトは、「KDDI 光ダイレクト」「KDDI メタルプラス」など電話専用の回線を引いていただいて、そこに内線を載せる仕組みなので、その回線だけで外線電話もできます。他社の方式に比べるとコストメリットがあります。

 また、専用線方式では、本社など1拠点に専用線を引き込み、PBXをハブにして他の拠点と連携する「タンデム構成」と呼ばれる仕組みが用いられるのですが、本社のPBXが落ちたら拠点間の通話ができなくなったり、本社のトラフィックが2倍になるなどのデメリットがあります。弊社のサービスでは、拠点間との内線電話やケータイとの内線電話が、本社のPBXを経由せずにKDDIのIP電話網で繋がります。

――実際にはどのような企業が導入していますか?

吉川氏
 基本的にはPBXを使う内線環境がある企業向けですが、大企業だけではなく社員数が100人以下の企業にも導入いただいています。業種もさまざまです。

KDDI ソリューション商品企画本部 テレフォニー商品企画部 商品企画2グループリーダー 課長 原野哲司氏

原野氏
 大企業でもいきなり全社的に導入するわけではなく、まず一部の部署で導入いただいて、効果を見てから広げていただくというケースもあります。また、事務所が1つだけの会社でもケータイを使った社員間の内線通話が多い場合には、導入メリットが十分あります。

――着信した内線は転送できますか?

原野氏
 応対した電話を保留して転送することもできますし、あらかじめ社内の他の電話に転送する設定もできます。

――多くの企業は代表番号を設けています。代表番号に着信するとケータイでも応対できますか?

吉川氏
 代表に着信した電話をお客様のPBXでケータイに転送することで、対応が可能です。

――内線番号を変更する場合は?

吉川氏
 お客様ご自身でWebのツールで変更できます。もしくは、その業務をアウトソーシングいただくかです。しかし、実際に導入いただいたお客様の状況を見ておりますと、ケータイに内線番号を割り当てるにあたって、社員番号を用いるなど、新たな方法で割り当てるケースが9割くらいを占めています。部署が変わってもケータイの内線番号を持って異動するようにすることで、変換業務などが発生せずに済みます。

――導入によって、どれくらいのコストダウンを見込めますか?

吉川氏
 お客様によって千差万別なのですが、社員間の内線通話が定額となることで、その部分のコスト削減が見込めます。他社から乗り越えていただいた場合は、基本料金も安くなります。また、ケータイの料金プランは個々の端末ごとに選べますので、内線電話が多い社員は基本料金が安い「プランSS」にするなどして節約を図ることもできます。一概には言えませんが、150名規模の会社で、内線通話料が7割くらい下がっている事例もあると聞いています。

――導入までに、どれくらいの期間を要しますか?

吉川氏
 固定回線を新設していただく場合は、ご契約までに約2~3カ月、回線を敷設してPBX設定、接続試験を経て、お引き渡しまでは約2~3カ月です。大企業が全社的に番号計画を構築して導入したいという場合は半年くらいかかることもありますが、一部の部署だけで試しに導入してみたいという場合は1~2週間でも可能です。最も日数を要するのは固定回線の導入ですから、すでにKDDIの固定回線をご利用いただいている場合は、5営業日くらいで導入できるケースもあります。

――KDDI ビジネスコールダイレクトは法人向けソリューションとしてはヒット商品と聞いていますが、実際に利用されている企業からはどのような反響がありますか?

吉川氏
 社外から社内に電話をかける場合、従来はダイヤルイン番号を押さなくてはならなかったのが内線番号だけで繋がるので「利便性がいい」と言ってくださる方が多くいらっしゃいます。また、ケータイから無料で内線通話ができるので、コストを気にせずにケータイを使えるようになり「社内のコミュニケーションが活性化された」という声もよく聞かれます。

――お客さんから「こんな機能を追加して欲しい」といった要望は?

原野氏
 色々な声を頂いていますが、今後も継続してご利用頂けるように具体的な改善や拡張の検討を進めたいと思っております。

――今後サービスの拡張を考えておられますか?

原野氏
 現段階では具体的に申し上げられることはございません。ただ、社内コミュニケーションの手段は音声だけではありませんので、例えばグループウェアとの連携ですとか、コミュニケーション系のサービスとして検討していきたいと思います。

――他社では1台で複数の番号を持てるサービスもありますが。

吉川氏
 1台のケータイで法人名義と個人名義の2つの番号を持つサービスは現段階ではセキュリティ等の課題もあり、難しい面があるのではないかと思っています。KDDI ビジネスコールダイレクトは1台で外線用と内線用の2つの番号を持てるサービスでもあり、法人のお客様としては、こちらの方がご利用しやすいのではないかと思います。

――KDDI ビジネスコールダイレクトで培ったものを、今後コンシューマー向けのFMCサービスに応用していることは検討されていますか?

吉川氏
 法人向けとコンシューマー向けとでは同じように判断できない部分がありますが、成功事例として役立てていけたらとは思います。

――KDDI ビジネスコールダイレクトの契約件数目標は?

原野氏
 具体的な数値は申し上げられませんが、社員間のコミュニケーションとして、より多くのお客様にご利用頂き、導入メリットを感じていただければと思います。

――ありがとうございました。

(村元正剛)

2010/2/3 06:00