本日の一品

さらなる活用方法を手探り中、「Chromecast Audio」

 2015年9月に海外で発売され、年が明けて2月にようやく日本国内でも入手できるようになった「Chromecast Audio」。ネットワーク対応していないコンポやアクティブスピーカーでも、オーディオケーブルで接続すれば、スマートフォンなどから操作してワイヤレスで音楽を流せるようになるデバイスだ。発表時の注目度は高かったアイテムだが、発売後の今は、盛り上がり感にやや欠けている気がする。

「Chromecast Audio」

 その盛り上がりの少なさの原因は、なんとなく理解できなくもない。スマートフォンやネットワーク上の映像・音声をテレビなどの大画面に映し出せるのが従来からあるChromecastであり、そのオーディオオンリー版がChromecast Audioなのだとすれば、それは「スマートフォンやネットワーク上の音楽をWi-Fi経由でスピーカー再生するデバイス」というだけのもの、と言える。しかも映像を扱えない分、用途も狭まるわけで。

3.5mmステレオミニの音声出力を備える。アナログと光デジタルの兼用

 細かく見ていけば、定額音楽配信のストリーミングコンテンツやクラウド上の音楽をスマートフォンからの指示でダイレクトに通信して再生でき、その間スマートフォンでは他のアプリも使える仕組みであること、96kHz/24ビットまでのハイレゾ音源に対応していること、Wi-Fiは2.4GHz帯だけでなく5GHz帯にも対応し安定した再生ができること、同時に2台以上を組み合わせることで違う部屋でも同じ音楽を聞けること、といった特徴を挙げることはできる。が、一番の問題は何を聞くか。

 3月末時点でChromecast Audioに対応したAndroidアプリの数は200個弱。そのうち定額音楽配信のAWA、Google Play Music、KKBOX、ネットラジオのTuneIn Radioあたりが日本のユーザーになじみのあるアプリかと思う。これらを頻繁に使っているユーザーにとっては、オーディオコンポなどで快適に聞けるところに価値を見い出せるかもしれない。けれど、それ以外のほとんどの対応アプリは使いどころが難しそうなものばかりだ。というか、もっと正直に言えば使い道がよくわからない。これらの中からChromecast Audioで便利に楽しく使える、自分好みのアプリを見つけるのは骨が折れそうだ。

5GHz帯のWi-Fiに対応しているため、データ容量の大きいものも安定して通信しやすい
対応アプリ一覧。Google Playには200個弱あるが、なじみのありそうなアプリは少ない

 筆者の場合、勢いで購入したとはいえ一応は「自宅のオーディオでできるだけ簡単にradikoを聞けるようにする」という目的があったので、Google Castの機能でスマートフォンの音声全体をキャストするか、パソコン上のChromeブラウザからキャストする方法で、radiko.jpのストリーミング放送を自宅のオーディオからそれなりに手軽に聞けるようにした(radiko.jpアプリはChromecast Audio非対応)。

自宅のアンプに別途購入したRCA変換ケーブルで接続
「画面をキャスト」して(実際には音声のみがキャストされる)、主にradikoを聞いている

 Chromecast Audioは4980円。radiko.jp対応のAVアンプなどを購入するよりはずっと安上がりなので、これだけでもコストパフォーマンスの面では満足。何よりラジオのない我が家で、これまでパソコンの貧相なスピーカーを使ってradiko.jpを再生していた妻からさんざん口酸っぱく言われていた「もっと簡単に、いい音でラジオを聞きたい」という要望に応えられたので、とりあえずひと安心ではある。

 では他の使い方としては何が考えられるだろう。まず試してみたのは動画視聴だ。Chromecast AudioはYouTubeやNetflixのような動画アプリには対応していない。けれど、Google CastでChromecast Audioにスマートフォンの音声全てを出力させた状態であれば、それらの動画アプリの音声もChromecast Audio経由で聞けるようになる。映像は高解像度ディスプレイのスマートフォンで視聴し、音声はChromecast Audioを細かくボリューム調整できるアンプに接続して高音質で聞く、ということができるのではないか。

 ところが実際に試してみると、1、2秒ほどの音声遅延が発生してしまって実用にならなかった。サウンド自体は端末のヘッドフォン端子を直接利用するよりずっと高音質で、Netflixで見る映画やドラマなんかは臨場感が5割増しくらいに感じたのだが、リップシンクがどうとかいうレベルですらなかったので、とにかく残念である。

Netflixを再生してみたが、「……声が……遅れて……きこえるよ」

 もう1つ試してみたのは、Chromecast Audioがハイレゾ対応であることを活かし、ハイレゾ出力に非対応のスマートフォンでモバイルハイレゾ環境を作れるかどうか。電源はモバイルバッテリーから取り、「BubbleUPnP」などのChromecast Audio対応のメディアプレーヤーアプリでハイレゾ音源を再生すれば、Chromecast Audioをちょっとしたポータブルアンプ的に使って、外出中でも気軽にハイレゾを楽しめるかもしれない。

 これについては、Wi-Fiルーターのある環境、つまり自宅内などであれば「ハイレゾ非対応のスマートフォンでもハイレゾで聞ける」という、Chromecast Audioを使ううえでは当たり前のことが当たり前にはできる。しかし、外出中にいつでも使えるかというと微妙だ。というのも、スマートフォンとChromecast Audioは直接Wi-Fi接続する形では利用できず、必ずWi-Fiルーターなどのアクセスポイントに接続しなければならないから。モバイルルーターを使うとか、公衆無線LANを使うとか、方法はないことはないが、モバイルという意味で実用的に使えるかというと、やはり難しい。

ハイレゾ非対応端末でもハイレゾ再生できる。が、モバイルで、というのは、これらを携帯することを考えると装備面から見てもつらいかも

 結局のところ、自宅オーディオでradiko.jpを簡単に聞けるようになった、ということ以外には活用方法を見い出せていないわけだけれど、きっと何かしらうまい使い方があるに違いない、と毎日頭を悩ませている。もう1台のChromecast Audioを組み合わせて工夫すれば、何か未知の世界が広がるかもしれない、とも思い始めているが果たして……。

製品名販売元購入価格
Chromecast Audioグーグル4980円

日沼諭史