本日の一品

たまには、長く使いたい真面目で伝統的な腕時計を

高価でメカニカル、ガジェットライクな腕時計や、チープだがデザイン&ホビーコンシャスな腕時計のいずれにも傾かず、SPQRデイデイトは伝統的な“これぞ腕時計”というコンセプトの自信ある押し出しが実に素晴らしい

 21世紀以降、携帯電話やスマートフォンの進化や普及によって、「現在時刻だけを知る目的の腕時計」の活躍範囲はどんどん少なくなってきている。腕時計の使命は実用的な道具からアクセサリー的なアイテムに変化し、市場の多くの腕時計も自らの生き残りをかけて奇抜な外観デザインや、機能のアーティスティックな表現形態にその重点は移動しつつあるようだ。

 現代の腕時計市場を気難しいオジサン風の表現方法を借りるならば、「真面目な腕時計」と「不真面目な腕時計」という表現に行き着くのかもしれない。前者は伝統的で保守的、視認性や耐久性、品質に重点を置き、後者は、デザインの先進性、目立ち度、機能の意外性、などに重点をおいて企画開発されることが多い様だ。

 そんな岐路に立つ腕時計の中できわめて真面目な腕時計を、信州諏訪の八ヶ岳山麓から小ロット生産で提供し続けている企業がある。今回、本日の一品としてご紹介する「SPQR」(スポール)と名付けられた純国産ブランド腕時計がそれだ。

不真面目な腕時計(右半分)と真面目な腕時計(左半分)の対比が面白い
腕時計そのモノもパッケージも保守的で真面目な商品のSPQRデイデイト

 オーソドックスで保守的な中にも、腕時計の基本である視認性、操作性、装着性にウェイトをおいて開発された「SPQRデイデイトモデル」。曜日と日付が1つの窓に横並びで表示され、ボタン電池を使わないクリーンエネルギーの自動巻き腕時計だ。なので常に腕に装着しておくことで、永遠に時を刻んでくれる。

 しかし、昨今の電子的腕時計ではないので、もちろん大の月や小の月の制御は出来ない。小の月の月末になると、リューズを一段引いて行う日付の調整は定例行事。ほぼ同時に行う曜日の調整はリューズを何度もクルクルと回さなくても、リューズのすぐ上のクイックチェンジ・ボタンをプシュすることで容易に曜日送りをしてくれる。

 なにより、このSPQRデイデイトの素晴らしいのは最近ではほとんど見かけなくなった曜日の「日本語表記」のオプション採用だ。ユーザーは英語表記のMon・Tue・Wed・Thu・Fri・Sat・Sunか、月火水木金土日かのいずれかの表記を選択可能。おまけに日曜日は日本語、英語とも表示文字色が赤色となる。

12・6・9が数字で他の時刻も視認性の良い白のブロックで描かれ、針もすべて白、アクセントとして秒針の先端だけが赤。余分なカラーを使わず腕時計の模範的デザインだ
リューズの横の小さなプッシュボタンはクイックに曜日の変更を行うボタンだ

 SPQRは装着性を左右するベルトに関しても素晴らしい革素材を採用している。北海道にある著名な馬具工房”SOMES"で作られた革厚4mmもある“SOMESブライドルレザー”を縫いこんだ頑丈なベルトは、はじめは硬いが、使い込むほどに柔らかく味のある風合いに変化する素材だ。SPQRデイデイトには金属ブレスレットのモデルもあるが、間違いなくSOMESブライドルレザーを使用したモデルが良いだろう。

 筆者は、ブラック文字盤とキャメル色のSOMESブライドルレザーのベルトを採用したモデルを都内にある唯一の販売店で購入した。国内外の多くの腕時計メーカーが奇をてらった短命な表層デザインの腕時計に向かう中、「SPQRデイデイト」は、いつまでも飽きの来ない機能デザインの本格的腕時計の逸品だ。

SOMES製の落ち着いたキャメルカラーのベルトはオーソドックスな他の製品とのマッチングは抜群だ
分厚くて頑丈な革と確実な縫込みがSOMES社の特長だ
質実剛健で信頼感あるSOMESのブライドルレザーとピッタリマッチするドイツ製のステンレス尾錠
完全な日本ブランドを誇れる腕時計は少なくなってきたがSPQRデイデイトは数少ない日本が誇れる腕時計だ
製品名販売場所価格
SPQRデイデイト(ブラック)SOMESバンド(キャメル)東急ハンズ東京店4万6200円

ゼロ・ハリ