本日の一品

映像配信に便利、ステレオマイクのUSB変換アダプター

「マイクロホン用USB変換アダプター AT9990」

 Ustreamやニコニコ生放送など、個人がライブで映像を配信できるサービスが広がったことで、個人が行う生放送も随分と身近なものになっている。スマートフォン1台で配信を始めることもできるが、少し映像にこだわったり、複数人のトークを配信したりということになると、手持ちのノートパソコンなどを導入してちょっと本格的にやろうか、となるのではないだろうか。

 そうした時、問題になることが多く、また後回しにされがちなのが音声(マイク)だ。個人的な(大失敗を含む)経験からも、映像よりもまず音声をしっかりとした品質にしたほうが、結果的に印象が良いと感じている。映像が綺麗でも、音が割れていたり聞き取りにくかったりすると、「ショボイ配信だった」という印象が拭えないのだ。視聴者の“ながら見”を助けるという意味でも、音声品質を上げることは地味に効果的だと思う。もっとも、映像の世界というのはテレビ放送などプロの品質が当たり前だったので、映像や音声を多少がんばったところで「そういやUstにしては綺麗だったね」ぐらいにしか思ってもらえないのだが……。

 マイクに話を戻すと、ビデオカメラやパソコン、Webカメラに内蔵のマイクでは、出演者との距離が遠いということもあり、“まともな音声”というレベルに達するのは難しい。人の声を配信する場合は特に音声に意識が向きやすいので、音声品質には気を使いたいところだ。

 そしてマイクを探そうとお店に出かけると、ICレコーダーなどにステレオミニプラグで接続するマイクが比較的たくさん売られていることに気がつくが、ではもう少し本格的なマイクはと探すと、とたんに業務用や音楽制作の現場で使う数万円クラスの製品ばかりになり、中間の製品群がなかなか見つからない。

 ICレコーダーや家庭用ビデオカメラ向けのステレオマイクは1万円以下でさまざまな商品があるので、ひとまずはこれで問題なさそうだと考える。そうすると、次に問題になるのは接続である。コンシューマー向けのマイクは3.5mmのミニプラグで、その多くはマイクへの電源供給を行うプラグインパワー方式を採用している(つまり電源供給が必要)ので、マイクジャック側もプラグインパワーに対応している必要がある。家庭用ビデオカメラで3.5mmの外部マイク用のジャックがあるモデルは、同時にプラグインパワーにほぼ対応しマイクの接続に問題はないが、カメラの下位モデルになると3.5mmの外部マイク用ジャック自体が省かれている場合がある。

 では配信を行うパソコンに直接マイクを接続するか、となるのだが、これまた昨今の超薄型モデルの流れに沿って、外部マイクの端子が省かれたり、ヘッドセットとしてヘッドホンジャックと共用になっており、モニターのためのヘッドホンでふさがり、実質的に使えなかったりするケースは少なくないのである。

 別途オーディオインターフェイスを導入するのであれば、3.5mmのマイクジャックを搭載しているモデルが一部メーカーからラインナップされているが、オーディオインターフェイスまで導入するなら、いろいろ諦めて潔く、オーディオインターフェイスの本来の使い方であるプロ用のマイクを買って接続すばいいのでは……となってしまう。

 そこで登場するのが、オーディオテクニカのマイクのUSB変換アダプター「AT9990」である。これは、オーディオテクニカが「AT99シリーズ」としてラインナップしているICレコーダーなどに向けたマイクを、USBでパソコンに接続できるようにするというもの。当然ながらプラグインパワー方式のマイクを接続でき、本体のボタンでマイクのオン・オフも操作できる。ボリューム操作などは本体で操作できず、ドライバの設定や配信ソフトウェアで調節することになるので、あくまで本機はUSBに変換するのみだが、カメラとは別系統でパソコンに入力できるので、機材(主にカメラ)の自由度が高まるというメリットはある。

 オーディオテクニカのマイク、AT99シリーズはコンシューマー向けの製品群で、ピンマイクからガンマイクまで、さまざまな種類がラインナップされている。これらはICレコーダーやパソコンでの利用を想定しているということもあり、多くはステレオマイクとなっているのも、モノラルが基本の業務用マイクとは異なる点だ。指向性が広いマイクを選べば、複数人のトークを1台のマイクで手軽に収録できる。ステレオマイクなら左右の位置関係も映像と連動するので、(ステレオで配信すれば)臨場感を出せる。

 もちろん、1台のマイクで済ませるということは、各人の声の大きさの違いを補正できないので、配信の品質という意味ではやや不利になるが、それでも、出演者の集まるテーブルの上にこうしたステレオマイクを置くだけで、ビデオカメラ内蔵マイクで収録するよりはるかに聞きやすい音声になる。筆者はバウンダリーマイクと呼ばれる床・テーブル用のお椀状のマイク「AT9920」を利用しているが、映像にマイクが映り込んでも目立たず、また出演者にマイクを意識させにくいというポイントもあって、雑談のような自然な会話を収録するのに重宝している(出演者が飲み食いする場合にも便利だ)。飛び入りのゲストが登場するなどして出演者が入れ替わっても、ピンマイクのように個別に対応したり人数分用意したりしなくてもいいので、個人の配信によるライブ感という意味でも向いていると感じている。

裏側にUSBケーブルを収納できるが、ケーブルへの負荷が高そうで普段は使っていない。ちなみにオーディオデータの編集ソフト「Audio Creator LE」がパッケージに同梱されている
マイクジャックの無いパソコンでもUSBで接続できるようになる。OSの標準のドライバで利用可能。「TALK」ボタンですぐにマイクミュートが可能だ。写真ではテーブルを囲んだ会話の収録に便利なバウンダリーマイク「AT9920」(実売7000円弱)を接続している

 オーディオインターフェイスや、関連して必要になる本格的な機材を導入するほど気合は入っていない、という場合、まずはマイクをグレードアップすれば配信の品質に対する印象は良くなると思う。今回紹介したようなマイクのUSB変換アダプターは映像配信に必須ではないが、カメラ・パソコン側のマイクジャックの有無、プラグインパワーの有無といったことを考えなくて済み、マイク環境を固定できるので、カメラをいろいろと変えるといった映像の試行錯誤はしやすくなった。

製品名製造元購入価格
マイクロホン用USB変換アダプター AT9990オーディオテクニカ4320円

太田 亮三