本日の一品

シンプルだからこそ使いやすい文章入力専用デバイス「ポメラ」

ポメラ DM200

 筆者は取材において手書きメモをほとんどとらない。手書きよりキーボードやフリックの方がはるかに高速でメモをとれるし、Evernoteにでも保存しておけば管理も簡単だ。

 しかし、メモのためだけにノートパソコンを持ち歩くことはあまりない。ノートパソコンは重たいし、高価だから手荒く扱えないし、バッテリーの持ちもよくない。ノートパソコンよりも軽くて安くて気軽に扱えるメモ入力環境はいくらでもある。

 ポメラもそんな、ノートパソコンより気軽に使えるメモ専用デバイスだ。初代は2008年に発売し、モデルチェンジをしつつ数機種が発売されているという、スマホ並みの歴史を持ったデバイスでもある。今回は発売されたばかりの最新モデル「DM200」を、職業ライターのツールとしての観点でレビューしてみよう。

 まずDM200の本体デザインは、画面とキーボードの2ピース構成で、ノートパソコンと同様に折りたたみ構造になっている。かなり横長な形状で、往年のモバイルギアシグマリオンを思い出す。

 タッチパッドのようなポインティングデバイスはない。ディスプレイもタッチパネルではなく、すべてキーボードで操作する。キーボードのキーピッチは標準に比べるとやや狭めだが、慣れるとタッチタイピングも問題ない。キーの配列も素直だ。

Macのキーボード(下)に比べるとややキーピッチが狭い

 ブラウザやメーラーといったアプリは搭載せず、機能はほぼ文章書きに特化している。立ち上げればすぐにテキストファイルの選択かテキストエディタの画面が表示され、ホーム画面やアプリ切り替えといった概念はない。非常にシンプルな作りだ。このシンプルさがポメラの最大のポイントと言えるだろう。

テキスト入力画面

 たとえばこの原稿、ポメラで下書きを執筆しているのだが、仕事場のデスクで作業を中断してポメラを閉じ、ジャケットのポケットに放り込んで銀行に行き(筆者のジャケットはかなりポケットが大きめだ)、手続き待ちのあいだにポメラを取り出して開き、膝の上に置いて下書きの続きを執筆した。

 これがノートパソコンだと、ジャケットのポケットに入れて気軽に持ち運ぶのはかなり難しい。スマホ+Bluetoothキーボードの組み合わせでは、持ち運びは手軽になるが、スマホとキーボードを膝上に並べるのは若干面倒だ。キーボードが折りたたみだとなお面倒である。

 かな漢字変換はジャストシステムのATOKを搭載している。パソコン向けのフルバージョンとは異なり、送り仮名などの細かい設定はできないが、変換精度は高い。変換ミスで困ることは少なく、タッチタイピングに慣れてしまえば、キーボードどころか画面を見ることもなく文章を入力できる。資料やプレゼンテーションなどを見ながら入力できるだけの信頼性の高さは、非常に重要なポイントだ。

フォントサイズを変えたり縦書きに変更したりも可能

 画面サイズは7.0インチで解像度は1024×600ドット。本体幅に対して画面幅はやや小さいが、テキスト書きにおいては画面の横幅はそれほど必要ないので問題はないだろう。画面解像度はここまで必要ないかも知れないが、アウトラインフォントが美しく表示されるのはステキなポイントだ。

 文章をツリー状に表示するアウトライン表示機能も搭載されている。半角ピリオドから始まる行がアウトライン見出しとして認識され、見出しウィンドウに表示される。複雑な構造を持つ長文を扱う際には便利な機能だ。横長の画面との相性も良い。

 ツールとしては、電子辞書が搭載されている。収録辞書は「角川類語新辞典.S」、大修館の「明鏡国語辞典MX」、「ジーニアス英和辞典MX」、「ジーニアス和英辞典MX」と、スマホアプリで買うと全部で1万円以上にもなる充実の電子辞書群だ。ALTキー+F7~F10で辞書を起動できるので実用性も高い。

アウトライン表示
電子辞書画面

 DM200で書いたテキストは、SDカードやパソコンとの有線接続に加え、Wi-Fiを使ってGmail上のフォルダにメモとして保存したり、メールに添付して送信することができる。

 Gmail上に保存する方法は、iOSやmacOSの「メモ」アプリと同じ仕組みなので、設定をしておくと、ポメラで保存したメモはiPhoneからも見られたりする。しかし同期には毎回やや時間がかかるので、頻繁な同期はできない。スマホであればEvernoteなりiPhoneの「メモ」なりがスムーズに同期してくれるので、それに比べるとパソコンとの連携にやや劣るという印象だ。

ノートパソコンに比べると小さいが、スマホよりはかなりデカい

 筆者の場合、モバイル環境で書いたテキストはEvernoteなりでメインの作業環境と同期し、それをパソコン上で清書したり見ながら原稿を書いたりする必要がある。このような用途であれば、スマホとBluetoothキーボードを使うべきだ。ポメラはBluetoothキーボードとしても使えて、開いた状態だとスマホスタンド風に使えたりもするが、それでもBluetoothキーボード単体に比べると高いし重たいしかなり大きい。

 しかし、パソコンなどほかの機器と連携しないのならば、ポメラの使い勝手の良いシンプルさとATOKの信頼性の高さは魅力だ。いつでも素早く文章を書きたいけど、スマホほど高度な機能は要らないというのであれば、ポメラも選択肢に入れておこう。

製品名販売元販売価格
ポメラ DM200キングジム4万101円