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ゼロハリーバートンなハンドヘルドPC「シグマリオン」
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、メール端末、PDAまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindows XP基本編」「できるADSL フレッツ・ADSL対応」「できるZaurus」「できるVAIO Windows XP版」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。iモード用EZweb用J-スカイ用、H"LINK用(//www.hourin.com/H/index.txt)を提供。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。


その気にさせるハンドヘルドPC

 NTTドコモからWindows CEが動作するハンドヘルドPC「シグマリオン」が発売された。今までも様々なメーカーからハンドヘルドPCが販売されているが、シグマリオンはそれらを上回るスペックを実現しながら、他の製品とは違った付加価値を持たせている。価格的にもかなりお買得感が高く、モバイルに興味のあるユーザーなら、「買ってみようかな」という気にさせてくれる製品だ。実機を入手することができたので、速報レポートをお送りしよう。


所有欲をそそるモノ

 NTTドコモ『シグマリオン』。サイズ:189(W)×107(D)×27(H)mm、約485g。Windows CE Handheld PC Professional Edition Ver.3.0搭載。5万9800円。
 Windows CEが動作するハンドヘルドPCは、元々、PCと連携して利用するものとして生まれてきたものだ。それが昨年あたりからハンドヘルドPC単独、つまりスタンドアローンで利用するユーザーが増えてきたことにより、大きく市場性が変化している。Windows 98/95と似た操作性を持ちながら、ノートPCよりも安価で、電源を入れれば、すぐに使える。携帯電話やPHSとも組み合わせやすく、ホームページ閲覧やメールなどのひと通りの作業はできる。こうした要因がエントリーユーザーに支持され、一定の大きさの市場を形成したというわけだ。最近でこそ、Palm系PDAやザウルス系PDAに押されているが、昨年後半から今春あたりまでのハンドヘルドPCの売れ行きはかなり健闘していたと言えるだろう。

 こうしたエントリーユーザーのためのハンドヘルドPCに対し、ある程度、PCに慣れ親しみ、割り切ったモバイルコンピューティングを実践しているユーザーにウケがいいハンドヘルドPCも存在する。その代表格が日本HPの「Jornada690」だ。筆者も旧モデルの「Jornada680」から愛用しているが、携帯性に優れた本体に、データ通信カード一体型PHSを装着して利用するスタイルは、現時点での最もバランスのいいモバイル環境ではないかと考えている。

 今回発売されたNTTドコモの「シグマリオン」は、このJornada690と真っ向から激突するハンドヘルドPCと言っても過言ではない。携帯性に優れ、携帯電話などが接続でき、Type2のコンパクトフラッシュ・スロットも備えるなど、スペック的にも見劣りしない。価格的は実売価格で5万円前後と手頃であり、ボディもあのゼロハリバートンのデザインコンセプトを受け継ぐなど、かなり意欲的な製品として仕上げられている。

 今までのハンドヘルドPCは、どちらかと言えば、企業ユースをメインに考えられたモノと前述のビギナーユーザー向けの製品が主流で、実用的ではあるものの、今ひとつ『持つうれしさ』が感じられないモノが多かったが、シグマリオンははじめて『所有欲をそそる』製品として仕上げられたという印象だ。


P-in Comp@ctに最適なCF Type2スロットを装備

 液晶ディスプレイは6.2インチのSTNカラー液晶を採用。640×240ドット/65536色表示が可能。反応速度、発色ともに良好だ。
 関東甲信越エリアなどでは9月20日発売されたシグマリオンだが、今回は発売直後ということもあり、基本的な機能構成などをチェックしてみよう。

 まず、ボディサイズだが、ハンドヘルドPCとしては最もコンパクトな部類に入る。ライバルとなるJornada690ということになるが、それよりもひと回り小さいボディだ。重量も485gとJornada690の510gよりも軽い。NTTドコモのラインアップで言えば、昨年発売された「ブラウザボード」よりもひと回り大きい程度の印象だ。

 液晶ディスプレイは6.2インチのSTN型ハーフVGA液晶を採用しており、発色や反応速度とも問題はない。SVGA以上のノートパソコンに比べれば狭いが、メールの送受信とたまにホームページを見る程度であれば、不満を感じることはないだろう。


 キーピッチは14.1mmを確保。一部の記号キーなどが左上でファンクションキー横に移動している。タイピングはしやすい。
 ボディがコンパクトになっているわりに、しっかりしているのがキーボードだ。キーピッチは14.1mmを確保しており、Jornada690の13.2mmよりも広い。キータッチも非常に良好で、タイピングしやすい。このあたりは製造元のNECが「モバイルギアII」シリーズで培ったノウハウが活かされているのだろう。ただ、一部の記号キーなどの位置がファンクションキーのところに移動しているため、少し慣れが必要だ。

 CPUは現行のNEC製「モバイルギアII MC/R530」と同じMIPS系のVR4121/168MHzを搭載し、メモリは32MBがフル実装されている。バッテリーはリチウムイオンを採用し、非通信時で4.5~10時間、通信時で3~5時間の連続利用を可能にしている。

 インターフェイスは本体左側面にシリアルポートと赤外線通信ポートを備えており、すぐ隣りには携帯電話・PHSインターフェイスも備えている。この携帯電話・PHSインターフェイスは、PDCデジタル携帯電話の回線交換9.6kbps、DoPa9.6/28.8kbps、PHSのPIAFS2.0 64kbpsに対応しており、それぞれに接続するためのケーブルは別売となっている。

 また、本体右側面にはCF Type2スロットも備えている。このCF Type2スロットにはNTTドコモの「P-in Comp@ct」を装着できるが、ストレージ用のCFカードを装着してもかまわない。


 CF Type2スロットに「P-in Comp@ct」を装着すれば、これ1台でモバイルできる。シグマリオンにベストマッチングだ。  PCと接続するためのシリアルポート、携帯電話・PHSインターフェイスは本体左側面のパネル内に装備。

 アプリケーションソフトでは「ATOK Pocket」が標準で搭載されているのが目を引く。ATOK Pocketはジャストシステムからも販売されているが、本体に標準搭載ということは、システム部分がROM化されているため、本体メモリを圧迫しないというメリットもある。32MBの限られたメモリ領域を有効に活用できる点はうれしい。


ゼロハリバートンってなに?

 シグマリオンの上面パネルには「Designed by ZERO HALLIBURTON」のロゴが光る。
 さて、シグマリオンのもうひとつの特長となっているが、ゼロハリバートンによってデザインされたボディだ。ここでゼロハリバートンについて少し触れておこう。

 ゼロハリバートンは米ZERO HALLIBURTON社によって製造されるアルミ合金製のアタッシュケース、旅行ケースのことで、堅牢性や耐久性、気密性などに優れているのが特長だ。

 ゼロハリバートンは1937年に技術者だったEarl P. Halliburton氏が友人の航空技術者の協力を得て、私的な利用目的のためにバッグを製作したことに始まる。その後、1952年にEarl Halliburton社を創業し、1968年にキャビネットや軍事用堅牢ケースなどを販売するZERO社と合併したことにより、現在のZERO HALLIBURTONというブランドネームが確立されている。

 ゼロハリバートンにはその堅牢性や耐久性について、さまざまなエピソードが残されているが、アポロ11号の月面着陸の際に利用され、月の石を持ち帰った話はあまりにも有名だ。また、ジョン・F・ケネディ大統領が愛用していたことや、爆破された飛行機に積まれていた荷物の中で、ゼロハリバートンのケースが爆発に耐え、中身ともども無事に回収されたといった逸話もある。

 つまり、ゼロハリバートンはアタッシュケース最強のブランドのひとつと言えるわけだ。ゼロハリバートンによってデザインされたシグマリオンのボディは、やはり同社のアタッシュケースを彷彿させるものとなっている。材質は軽量化やコストのため、ゼロハリバートンおなじみのアルミ合金が採用されているわけではないが、デザインセンスの良さは従来のハンドヘルドPCにはなかったものだ。

 しかし、シグマリオンでもうひとつ注目したいのは、ゼロハリバートンの存在をデザインのみで終わらせなかった点だ。全国で3000個の限定品となるが、シグマリオンがぴったり収納できるゼロハリバートン製ケース付きのセットモデルが販売される。価格は地域によって異なるが、シグマリオン本体のみよりも約3~4万円高となっている。これを高いと見るか、安いと見るかは読者次第だが、ゼロハリバートンが特定のマシンのためにケースを製造するということは希であり、数もかなり限られていることからもわかるように、商品としての価値、レア度はかなり高いと言えそうだ。すでに、発売日となっているため、これからゲットできるかどうかはわからないが、もし、予算に余裕があるのであれば、ぜひとも押さえておきたいところだ。オメガ・スピードマスタープロフェッショナル(手巻きモデルね)と組み合わせ、「気分はアポロ11号」なんていうのも楽しいかもしれない。


 限定生産のケースはもちろん、アルミ合金製。ゼロハリバートンのロゴパネルもちゃんと装着されている。  ゼロハリバートン製限定ケースに収められたシグマリオン。P-in Comp@ctを装備した状態でも格納できるように、切り欠きが入っている。

デザインも中身もホンモノ指向

 シグマリオンと限定版ゼロハリバートン。オメガ・スピードマスタープロフェッショナルを組み合わせれば、気分はアポロ11号か!?
 モバイルのスタイルは、ユーザーの数だけあると言っても過言ではない。携帯電話のメールだけでいいという人もいれば、外出先でメモをしたり、プレゼンテーションにも使いたいというユーザーもいるだろう。従来のモバイル機器は、こうしたニーズのみが重視されて開発されてきた感が強い。

 これに対し、シグマリオンはモノとしての価値、持つ喜びという大きな付加価値がある。すでにデスクトップPCなどを持っていて、「外出時に手軽なモバイル端末が欲しいけど、簡易メール端末よりもう少し本格的な環境が欲しい」というユーザーなら、迷わず『買い』と言える商品だろう。特に、デザインセンスの良さは、スーツ姿のビジネスマンにも似合うレベルの仕上りだ。もちろん、女性が持ってもまったく違和感のないデザインであり、サイズ的にも持ち歩きやすいはずだ。

 シグマリオンで唯一、気になる点があるとすれば、拡張スロットがCF Type2のみとなっている点だ。CF Type2のスロットには、P-in Comp@ctを装着して利用するのが便利だが、この組み合わせにしてしまうと、ストレージエリアが本体のメモリエリアのみに限られてしまう。ハンドヘルドPCで大量のメールを受信したり、データをため込むタイプのユーザーは、CFカードなどが装着できなくなるわけだ。ただ、必要に応じて、CFカードとP-in Comp@ctを交換したり、データ通信に関しては携帯電話・PHSインターフェイスを利用するという方法も考えられる。ユーザーの工夫次第で、活用スタイルはいろいろ広がるはずだ。

 Palm系PDAやポケットPC、ザウルスなど、モバイル機器にはさまざまな製品群があるが、シグマリオンは機能や性能だけでなく、デザイン的にもホンモノ指向のモバイル機器として仕上げられており、ハンドヘルドPCの真打ちとも言える存在だ。ぜひ、店頭で実機を触ってみて、その仕上り具合いをチェックしてもらいたい。


■URL
・「シグマリオン」ニュースリリース(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/00/whatnew0911.html
・「シグマリオン」商品情報(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/mobile/lineup/sigmarion/



(法林岳之)
2000/09/21 00:00

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