スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」
iPhoneでサーモグラフィー♪
(2016/5/30 11:51)
iPhoneでサーモグラフィー♪
いつ見ても「オモシロいな~」と思うのがサーモグラフィーによる画像です。サーモグラフィーとは、物体が放つ赤外線を分析・表示する「熱の分布を可視化する装置」ですな。青い部分は温度が低く、赤い部分は温度が高く、白い部分はもっと温度が高い、といったことを示すおなじみの画像が得られる装置です。
温度分布が可視化される様子は、いつ見ても興味深いです。見るたびに一瞬「やっぱりサーモグラフィーが欲しい!」と思うんですが、激安でも10万円オーバー、30万円40万円は当たり前、みたいな業務用ハードウェア。普通はそうそう仕事に役立つものでもありませんし、興味だけではなかなか買えません。
先日も、某電器メーカーへ取材に行ったときに、技術者がNECロゴのゴツいサーモグラフィーを使っているのを目撃しました。そのサーモグラフィーは、一式が専用ハードケースに入っていて、いかにもお高そうです。
その横に、別のサーモグラフィーを扱っている技術者がいました。見ると、iPhoneにサーモグラフィー映像らしきもが表示されています。さらに見ると、被写体の動きと画面の動きが連動していますので、明らかにiPhoneがサーモグラフィーとして機能しています。どうやって? 直接訊こうとしたところ、「じゃあサイトウさんコチラに立ってください~」と(サーモグラフィーの被写体として)呼ばれました。
結局、iPhoneのサーモグラフィーの件を訊くチャンスを逃して取材終了。帰宅後に調べてみたら、技術者が使っていたのは、どうやらFLIR(フリアー)の「FLIR ONE」という「iPhoneをサーモグラフィーとして使うためのユニット」だということがわかりました。同時にAmazonで3万4992円で売られていることもわかったので「安っ!」と思って光の速さでポチっと購入しました。
ちなみに今回購入した「FLIR ONE」。現時点で「最新世代のFLIR ONE」です。前の世代も製品名は同じですが、形状や対応機種が異なります。
早速使い始めてみましたが、何はともあれ「オモシロ~イ♪」ですっ!! iPhoneで写真を撮る感覚で、身の回りのほとんどのモノの表面温度分布を可視化できまくり♪ コレはどうなんだろう、じゃあアレはどうなんだろうと、興味の赴くままにナンでもかんでもサーモグラフィー映像にして観察できます。
てなわけで以降、「FLIR ONE」の機能や使用感について書いてみたいと思います。なお、「FLIR ONE」にはAndroid版とiOS版がありますが、この記事ではiOS版の「FLIR ONE」をiPhone 6s Plusに接続して使っています。詳細情報が掲載されている「FLIR ONE」のメーカー製品紹介ページはコチラです。
どんなモノ? どう使う? どう見える?
まず、「FLIR ONE」の概要をザッと見てみましょう。サイズは横72×縦26×厚さ18mmで質量は78g。内蔵バッテリー(容量350mAh)で動作し、USB充電して使います。試してみたところ、USB充電中も使用できるようです。バッテリー持続時間は公称されていませんが、実際に使ってみると1時間弱使えるという感じ。サーモグラフィー・タイムラプス撮影など本格的な連続使用には、別途モバイルバッテリーなどが必要かもしれません。
サーモグラフィーとしては、撮影温度範囲は-20~+120°Cで、この範囲の表面温度を可視化できます。最小で0.1℃の温度差を検知できるそうです。得られる映像の解像度はVGA(640×480ピクセル)。このサイズの静止画や動画、タイムラプス動画のサーモグラフィ画像を撮影できるほか、パノラマのサーモグラフィー静止画も撮影できます。
使い方はカンタンで、専用アプリをインストールしたiPhoneに、充電した「FLIR ONE」を接続。「FLIR ONE」の電源を入れてアプリを起動すれば、画面にサーモグラフィー映像が現れます。
ちなみに、アプリは「FLIR ONE」アプリと「FLIR Tools」アプリを使っています。「FLIR ONE」アプリはサーモグラフィー映像のライブビュー表示~撮影~後の加工(温度表示の有無や表示色の変更など)が行える、わりとシンプルなアプリです。「FLIR Tools」アプリも同様にライブビュー表示や撮影、加工に対応しますが、複数箇所の温度表示やグラフ表示など、より高度な表示~加工ができるアプリです。なお、「FLIR Tools」アプリではサーモグラフィー静止画のインポートにも対応しており、「FLIR ONE」アプリで撮った静止画を処理することもできます。ほかにもいくつか純正アプリがあり、「FLIR ONE」向けのサードパーティ製アプリも存在するようです。
で、あとはこれらアプリを使って思うままにサーモグラフィー映像を観察していきます。とりあえずライブビュー映像だけで「へえぇ~っ!」などと感心できちゃう楽しさがあります。もちろん、撮影して記録・考察・研究することも可能です。
う~んオモシロい! 何を見ても愉快だし興味深いです。ちなみに、「FLIR ONE」のサーモグラフィー映像は一般的なそれよりもクッキリして見えます。これは2つのカメラのうち、可視光線カメラで撮影・抽出したモノの輪郭と赤外線映像を合成(MSXブレンディング)しているからだそうです。
なお、「FLIR ONE」は約30m先までの人物の温度を検知できるそうです。暗い環境では上記の「抽出したモノの輪郭を合成」することができなくなりますが、暗闇で動く生物を見つけたり、夜間に熱源を探ったり、サーモグラフィーならではの活用もできそうです。
どんな発見があるのか?
サーモグラフィー映像を見ていると、頻繁に「あっ!」と気づくことがあります。たとえば機器の待機電力。僅かに流れる電流による熱から、待機電力が消費されていることを改めて知ることができます。
また、「FLIR ONE」アプリでのサーモグラフィー映像は、必要に応じて表示色を9パターンから選ぶことができます。最高温部分や最低温部分のみを色づけ表示するパターンもありますので、「熱さや冷たさから何かを探る」という使い方もできます。アプローチ次第で、熱分布からさまざまなことを発見できるというわけです。
ちなみに、「FLIR ONE」アプリでは熱分布の色分けは相対表示です。たとえばレインボーの表示パターンにした場合、赤や白の部分が必ずしも「触れると熱いと感じられる」わけではありません。青の部分が非常に冷たく、赤の部分が少し冷たい、という場合もあるわけです。
なお、「FLIR ONE」アプリでは、中央のマーカー中心のピンポイントでの温度表示が可能です。マーカーは非表示にもできます。「FLIR Tools」アプリではマーカーを8点まで表示させることができます。
さて、サーモグラフィー映像を見て、具体的にどんな発見があったのか? 主には「あ~コレも確かにコンセントにつなぎっぱなしだから、待機電力を消費していたのか~」的なコトですが、実際のサーモグラフィー映像とともに、いくつか見てみましょう。なお、以下の各写真は見やすくするため、1枚の写真の中の左から可視光線映像、サーモグラフィー映像×2枚(異なる位置の温度)を合成してあります。
普段は見えないし気にもならない「熱」。これを片っ端から可視化してくれるサーモグラフィーは、やはりオモシロく、そしていろいろな発見をもたらしてくれます。3万5000円弱で購入した「FLIR ONE」ですが、ワタクシ的にはかな~り満足♪ 仕事に役立てればすぐにモトが取れるあたりも含め、優れたコストパフォーマンスを感じております。もちろん、こういうハードウェアなどまったく必要でないし興味もないという方もあると思います。一方で、「サーモグラフィー、興味津々!」という人にとっては「イロイロと刺さるハードウェア」だと思いますので、ぜひジックリとチェックしてみてください。