スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

9.7インチiPad Proを1カ月少々使ってみて 本体編

9.7インチiPad Proを1カ月少々使ってみて 本体編

 2016年3月31日に発売となったアップルの「9.7インチ iPad Pro」。純正デジタルペンのApple Pencilに対応したiOSタブレットですが、2015年11月発売の「12.9インチ iPad Pro」を使っていて「あ~Apple Pencilスゲくいい~♪」と痛感していたので、9.7インチのほーも予約購入しました。

購入したのは「9.7インチiPad Pro Wi-Fi + Cellular 128GB - ローズゴールド」です。MVNOのSIMを入れて運用中。

 買ったのはWi-Fi + Cellularの128GBモデル。税別10万800円でした。これを1カ月少々使ってきましたので、その使用感などをレポートしたいと思います。今回は9.7インチ iPad Pro本体および「Apple Pencil」の使用感を中心にお伝えします。で、次回は9.7インチiPad Proに対応している各種アクセサリについて書きたいと思います。

 なお、メーカーの製品紹介ページはコチラ。去年発売の12.9インチ iPad Proについてのレポートはコチラです。

 さて、まず購入理由ですが、前述のとおり「Apple Pencilを使いたいがため」です。12.9 インチ iPad ProでApple Pencilを使えているわけですが、12.9インチはやはり持ち歩くには大きく重いです。必要とあらば頑張って持ち出していましたが、必要もなく常時携帯するのはチト苦しい。

 でも、9.7インチ iPad Proなら「とりあえず」的に常時携帯するのも現実的なサイズと質量です。ちなみに9.7インチ iPad Proのサイズは長辺240×短辺169.5×厚さ6.1mmで、iPad Air 2と同じ。質量も444g(Wi-Fi + Cellularモデル)で、これもiPad Air 2と同じです。

 で、9.7インチ iPad Proの使用感的結論を言いますと、常時携帯するタブレット端末としてヒッジョーにイイ感じです。Apple Pencilが使えて便利ということもありますが、細々した部分もシッカリと刷新されていて、ワタクシにとっては「最も使いやすくバランスの良いiOSタブレット」となりました。ともあれ以降、9.7インチ iPad Proについて見ていきましょう。

ペンの使い心地は?

 まずApple Pencilと組み合わせての使用感ですが、12.9インチ iPad Proのときと同様、かな~りサイコーです。ワタクシの場合、具体的には手書き文字入力と手書きメモ、それから写真のレタッチなどに役立っています。最近では写真をトレースしてのイラスト作成も練習中です。ほか、iOSアプリの操作全般にもApple Pencilを多用しています。

右はiOS版「Google」アプリを使っている様子。Google検索アプリですな。毎日多用しますがApple Pencilと手書き入力アプリ(キーボード)「mazec」と併用すると効率良く入力できます。左はiOS端末標準アプリの「メモ」を使っている様子。Apple Pencilで描いたり、mazecで手書き文字入力したり。Macのメモアプリと同期しますので、取材などのメモ書きに利用しています。乱筆失礼って感じの手書きですが、ソフトウェアキーボードなどよりずっと効率良く使えると感じております。
左は「Photoshop Fix」アプリを使い、取り込んだ写真をレタッチしている様子。Apple Pencilで操作すると、ピンポイントのレタッチを指で隠すことなく見やすい状態で行えて快適です。左は「Procreate」アプリを使い、写真をトレースしている様子。Apple Pencilを使うと指先よりずっと正確な線を引けます。

 Apple Pencilが使えるからこそデキることや、Apple Pencil自体の使用感は、まあ、12.9インチ iPad Proと組み合わせたときとほぼ同じです。が、9.7インチ iPad Proは、よりコンパクト。なので、携帯していつでもどこでも使えるという利便がまずあります。

 それに加え、片手に9.7インチ iPad Proを持ちつつApple Pencilを使うことも容易。ちょうどB5サイズくらいのノートを持ち、そこに書き込むような感覚で使えます。12.9インチ iPad Proほど、何というか「本腰を入れ、構えて使う」という感じではなく、思い立ったときに気軽に使えるという点が好印象です。グラフィックを描くような、ある種プロ指向のデジタルペン活用をするなら12.9インチ iPad Pro + Apple Pencilが向くと思いますが、デジタルペンの利便を幅広く活かしつつタブレットを使うなら9.7インチ iPad Pro + Apple Pencilのほうがずっと実用的だと感じられたりもします。

Air 2と比べて「速い、見やすい!」

 現行機種の9.7インチのiPadは、9.7インチiPad ProとiPad Air 2です。というコトで、両者を軽く比べつつ、9.7インチiPad Proを見ていきたいと思います。

 両者の違いはアップルの製品スペック比較ページにあるとおりですが、まず9.7インチ iPad Proはサイズも質量もiPad Air 2と同じです。外見的にもだいたい同じ。ですが、9.7インチ iPad Proには第3世代A9Xチップが使われていて「速い」こと、それからディスプレイが従来モデルより彩度が最大25%高くて反射がより抑えられていること、True Tone対応で周囲の光の状況に応じて表示色と明るさが最適に調節されることなど、イロイロと良さそうな点があります。が、実際どうなのでしょう?

 まず処理速度ですが、結論から言いますと「明らかに体感できる速度差」があります。たとえば、9.7インチiPad ProとiPad Air 2を並べて、よーいドンでアプリを起動したりすると、「9.7インチiPad Proのほうがアプリがずっと速く起動する」という感じ。音楽制作(DAW)系アプリなんかだとなおさらです。

 ただ、そんなふうに並べて比べたりしなければ、9.7インチiPad ProもiPad Air 2も、どちらも「十分快適にアプリを使っていける」という処理速度があります。9.7インチiPad Proは処理速度が速くて気分がイイわけですが、現実的には「気分がイイ程度で、この処理速度により凄く大きなメリットがもたらされるようなコトは少ない」と感じる人が多いような気もします。もちろん、用途にもよるとは思いますが。

 次にディスプレイですが、9.7インチiPad ProとiPad Air 2を比べると、わりとハッキリと違いがわかります。たとえば、True Tone。これは環境光センサーを使って周囲の光に合わせディスプレイの色と明度を自動的に適応さる機能です。確かに状況に合った自然な色合いと明るさになり、具体的にはやや暗めの電球色照明下で電子書籍を読んだりすると、ディスプレイは光量を抑えめにして若干暖色寄りの表示となり、長時間読書をしても目が疲れにくいと感じられます。使ってみると「なかなか気が利いた機能」だと思います。

 それから、映り込みが少なく、発色などもより良くなったこと。9.7インチiPad ProとiPad Air 2を比べると「あっホントだ!」とすぐ気づけるレベルで、9.7インチiPad Proのほうが映り込みが少ないです。これに加え、True Toneにより表示の輝度などが抑えられることも加わり、室内で読み物をするのがかなり快適になったと感じます。

 色再現性も良くなったと思います。ラチチュードが広がった、という印象なんすけど、たとえば同じ写真を9.7インチiPad ProとiPad Air 2で見比べると、9.7インチiPad Proのほうがイイ感じ。ワタクシが感じたところは、暗部の階調がより豊になったことと、色の鮮やかさや明暗階調がより滑らかになったこと、あたり。まあ、9.7インチiPad ProとiPad Air 2のそれぞれのディスプレイで個体差もあるでしょうから、そのあたりはできれば実機で試してみてください。

 ただ、True Toneをオンにしていると、9.7インチiPad Proに備わったハズの彩度の高さや階調などの豊かさが、しっかり享受できないと思います。True Toneをオンにしていると、見やすく自然だと感じられる明るさや色調とはなります。が、写真等を精査する場合、True Toneがオンだと、たとえば「この白、正しい白じゃない……よね」とか「なんか全体的にコントラストが低くてネムいかも」的な違和感が多々生まれます。発色など色の再現性を重視するときはTrue Toneをオフに、それ以外のときはオンに、と使い分ける必要がありそうです。

 とまあ、9.7インチiPad ProとiPad Air 2比べると、けっこー違う両者の表示。ですが、どちらかの端末だけ見た場合は、やはり不満のないレベルでキレイだと思います。「表示は、まあどっちもキレイじゃん」的な。ただ、より処理速度が高く、発色などもより好ましいという点で、映像を扱う方は9.7インチiPad Proを吟味するのがよろしいかと思います。

Air 2と比べて「細かい部分も良くなってる!」

 9.7インチiPad ProとiPad Air 2を比べると、細かい部分もアレコレ刷新されています。たとえば内蔵カメラが高画素化していること。

 具体的には、iSightカメラ(アウトカメラ)が800万画素から1200万画素となり、オートフォーカス機能も加わっています。ナニゲにLive Photosにも対応していて、もちろん写真を長押しすると動画が再生されます。さらに4K動画撮影にも対応しました。

 FaceTime HDカメラ(インカメラ)は、120万画素から500万画素に高画素化。写真撮影時には画面が一度白くなってフラッシュ代わりとなるRetina Flashにも対応しています。より高画質にてFaceTimeを使えるようにもなったわけですな。

 個人的には、iPadのカメラ機能は画質がイマイチなので画像メモなどはiPhone 6s Plusで行っていました。が、画質的にiPhone 6s Plusとだいたい同等となった9.7インチiPad Proのカメラ機能、しっかりツカエルようになったという印象です。

左が9.7インチiPad Proのカメラ部。12メガピクセルになり、True Toneフラッシュも使えるようになりました。左はiPad Air 2のカメラ部ですが、これと比べるとiPad Proのカメラ部は高性能化したものの、物理的にちょっと出っぱってしまいました。

 それから、9.7インチiPad Proは端末の2つの短辺端にスピーカーが2つずつ内蔵されました。ので、端末単体でもけっこーステレオ感のあるサウンドを出せます。また、この4つのスピーカー、9.7インチiPad Proをどの向きにしても「ステレオ再生しつつ、上部スピーカーから高音が、下部スピーカーから低音が出るように鳴る」という機能を備えます。いつでも自然なステレオサウンドを出してくれるので、軽くBGMを聴いたり、ちょっとした動画を観たりするとき、サウンド面で大きな差が生まれます。

9.7インチiPad Proの各短辺端に2個ずつ、合計4個のスピーカーが内蔵されています。意外なほどイイ音で、音量も十分出ます。12.9インチ iPad Proにも同様のスピーカーが内蔵されていますな。

 てな感じで、細かい部分もしっかり刷新されたという印象です。iPad Air 2からの進化という観点で捉えると、9.7インチiPad Proは見れば見るほど大きくブラッシュアップされたという印象です。

 前述のとおり、現行の9.7インチiPadは、9.7インチiPad ProとiPad Air 2です。税別価格は、前者が6万6800円~11万8800円、後者が4万4800円~6万9800円。メモリ容量やプロセッサーなどハードウェアも異なりますので一概には言えませんが、9.7インチiPad Proは割高感があります。しかしApple Pencilが使えることと、前述のいろいろな快適さなどを考えると、できれば9.7インチiPad Proを選んだほうが後々後悔しない&より末永く活用できるように思います。

 てゅーか、現時点で「これから初めてiPad買うんだ~」てな人が羨ましいです。そう思っちゃうほど、9.7インチiPad Proは完成度の高いiOSタブレットだと思います。ともあれ、次回は9.7インチiPad Pro用アクセサリについてレポートしますので、引き続きチェックしていただければと思います。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。