iPhoneやiPadにSD/SDHCカードスロットが!? zoomMediaPlus社「zoomIt」

スタパ齋藤
1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコ ンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称 衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。


iPhoneやiPadにSD/SDHCカードスロットが!?

 今回のネタはzoomMediaPlus社のzoomIt。2011年3月11日に日本国内でサンワサプライから発売された「けっこー凄いアイテム」なんだが、発売日に東日本大震災が起きたこともあり、いまひとつ話題にならなかったようだ。

zoomMediaPlus社のzoomIt。iPhone/iPad/iPod touchに対応したSD/SDHCカードリーダー/ライター。メーカー直販価格がUS59.95ドルiPhone 4で使用している様子。このようにzoomItがSD/SDHCカードのアダプタとなる。iPhone 4上ではzoomItアプリ(無料)を使用zoomItを使うためにはzoomIt本体に充電する必要がある。専用の充電用USBケーブルが付属する。ACアダプタなどは付属しない

 zoomItのどのへんが「けっこー凄いアイテム」なのかを大雑把に言うと、コレがiPhone/iPad/iPod touch対応のSD/SDHCカードリーダー/ライターであること。つまりはzoomItにより、iPhone/iPad/iPod touchにSD/SDHCカードスロットが増設される……てのは言い過ぎだが、SD/SDHCカード上の各種ファイルをiPhone/iPad/iPod touchで使えるようになる。また、iPhone/iPad/iPod touch上のファイルをzoomIt経由でSD/SDHCカードに書き出すこともできる。

 たとえば、一般のデジカメで撮った写真を、SD/SDHCカード&zoomIt経由でiPhoneなどにコピーすることができる。自炊したPDFをSD/SDHCカードに入れておけば、いつでもそのPDFをiPadなどで閲覧することもできる。人によっては「ななな何だってぇぇぇ~!!」と驚けちゃうアイテムだと言えよう。
 以降、zoomItの使用感などをレポートしたいが、その前にちょいと。

 zoomItは2010年2月に発表された製品で、国内の目聡いユーザーは去年半ばには既に入手&使用していた。それがようやくサンワサプライから発売されることになったわけだが、現在はもう完売状態。[廃止]マークがあるので、販売を継続しないのかもしれない。

 ともかく、現在入手しようとするとzoomMediaPlus社直販米Amazonなどからとなる。個人輸入となるので、その点をお含み置きいただきたい。

 

iPhoneでSD/SDHCカード上の各種ファイルを扱う

 まず、zoomItはどーやって使うのか? ってコトからだが、前述のように事前にzoomIt本体へ充電する必要がある。付属の充電用USBケーブルを使い、パソコンやUSB-ACアダプタからzoomItへ充電。またiPadやiPhoneなどへzoomItアプリ(無料)をインストールしておく。ちなみに、アプリは2種類あって、iPhone/iPod touch/iPad対応の「zoomIt」と、iPad専用の「zoomIt for iPad」となる。

 準備が済んだら、zoomIt本体に各種ファイルを入れたSD/SDHCカードをセット。ここではiPhone 4にzoomItを挿して使ってみた。なお、zoomItアプリで扱えるファイル形式はココにあるとおり。

iPhone 4でzoomItアプリを起動したところ。iPhone 4にはzoomItは未装着。この状態ではzoomItアプリ内(Local Directory)のファイルのみ扱えるzoomItおよびSD/SDHCカードを装着すると、このような表示となり、SDカードアイコンがアクティブになる。アイコンの上にはzoomItの電池残量がiPhone 4でSDHCカード(名前がDMC-FT2なのは同名のデジカメ用として使っていたから)が扱えるようになった。32GBまでのSDHCカードを使用できる
SD/SDHCカード内はこのように一望できる。ファイルエクスプローラ風にファイルやフォルダを見ていけるんですな。深い階層でも問題なく見られるデジカメが生成した画像が保存されたフォルダ内を見ているところ。このようにサムネイル表示される。サムネイルの生成には少々時間がかかるさらに画像をタップしていくと1枚の写真が大きく表示される。が、画像のファイルサイズに応じてそれなりの時間がかかる。高速な表示ではない
各ファイルはコピーや移動、削除やファイル名変更なども可能だ。ただしSD/SDHCカードからiPhone内メモリへのファイルコピーにはやや時間がかかる扱うファイルによって、コピーできるエリアやストレージが異なる。アプリによっては、iPhone内からSD/SDHCカードへのファイルコピーも可能だ画像をSDHCカード→iPhone 4内メモリへコピーするところ。必要に応じて画像サイズを落とすこともできる。そうするとコピーにかかる時間も減る

 いともカンタンにSD/SDHCカード内のファイルが見えてしまうんでありかつコピーとかまでデキちゃうのは、わりとショック。音楽ファイルやExcel/Wordファイルなども開けちゃって、なかなか実用的かも。

音楽ファイルを一覧したところ。すべて.MP3ファイルっすファイル名にタッチすればそのまま音楽が再生できるIDタグ情報までは表示してくれないようだ
zoomItアプリ内にコピーしないと開けないファイルも多いzoomItアプリ内にコピーしたExcelファイルを開いたところこちらはWordファイルを開いたところ
zoomItアプリ内にコピーした日本語テキストは開けなかったzoomItアプリ内にコピーしたPDFファイルを開いたところ一部表示がヘンだが、zoomItアプリでPDFを開けますな

 ただ、結論から言ってzoomItだけで各種ファイルを快適に扱えるという印象にはならなかった。てのは、各種ファイルを開いてみたところ、開けるもの開けないもの、zoomItアプリ内にコピーすれば開けるもの、そうしても開けないものなど、場合によるようだ。

 静止画や音楽ファイルはSD/SDHCカード上にあってもzoomItアプリで開けるようだが、PDFなどのドキュメントはどーもローカル(zoomItアプリ内)にコピーしないとダメっぽい。また、ローカルにコピーしても開こうとすると[Please Wait]のダイアログが表示されたまま……待っていても一向に開けないということも少なくない。

 加えて、SD/SDHCカード上のファイルを開いたり、SD/SDHCカードからローカルへのファイルコピーするのに、ヤケに時間がかかる。たとえば、SD/SDHCカード上の画像(約5MB)を写真を開くのに22秒かかった。これをローカルにコピーするのには54秒かかった。こんなに時間がかかっては、たとえばApple iPad Camera Connection Kitのように使ってiPhoneやiPadをフォトストレージにするってのは非現実的だと思う。

 ただ、写真を1枚、画像サイズを落とすオプションを付けてiPhoneなどにコピーするとかならアリですな。少ない枚数をiPhoneへコピーし、それをメールに添付するとか共有サイトに上げるとか。それから、zoomItアプリだけでなくほかのアプリも併用するということなら、zoomItの実用性はグッと高まったりもする。

 また細かいコトを言えば、iPhone/iPod touch/iPad対応の「zoomIt」アプリと、iPad専用の「zoomIt for iPad」アプリとでは、開けるファイルなども異なる。大雑把な印象を言えば、後者のiPad専用アプリのほうがより問題なくファイルを開ける(可能性が高い)ように思う。

 

他アプリとの連携で利便倍増のzoomIt

 拙者的結論を言うと、zoomItはほかのアプリと連携させないとその利便を引き出せないと思う。てのは、どーも、zoomItアプリ、日本語(2バイト文字)が鬼門となっているようだからだ。

 たとえば、期待していた日本語テキストファイルはzoomItアプリでは開けなかった──どうやらファイル名に2バイト文字(日本語)が入っていると開けず、そうでない場合でも日本語が文字化けしてしまうようだ。テキストファイル以外でも、ExcelやWordのファイルも同様、ファイル名に日本語が入っていると開けなかった。ただこの場合、ファイル名が英文字(1バイト文字)なら内容が日本語でも問題なく開けた。

 ともあれ、現バージョンのzoomItアプリは日本語で引っ掛かる感じ。快適とは言えない使用感だ。しかしこの問題はほかのアプリとの併用で十分に解決できる。

 たとえば拙者が多用するのはGoodReader for iPhoneGoodReader for iPad。PDFやテキストファイル、MicrosoftOfficeドキュメント、HTMLや画像などを扱えるファイルビューワですな。iPadやiPhoneでPC用ファイルを扱う必要のあるユーザーに人気の一本である。

 ともあれこのGoodReaderをzoomItと組み合わせて使うと、ヒッジョーに多くの問題がサクッと解決されて愉快化するし便利化するしイーヤッハァ化もする。具体的には、zoomItでファイルを開かず、zoomIt上からほかのアプリ(この場合ならGoodReader)を使って開くように操作するだけだ。

iPhone 4上のzoomItアプリ。ローカルにコピーしてもファイル名が日本語だと開けないことがあるファイルサイズ7MBくらいのPDFファイル。zoomItアプリでこのファイルを開こうとすると……このような表示になってずっと待たされる。ときにはアプリが落ちてしまうこともある
そこで、zoomItアプリでファイルを開くのは諦めて、[Open In]でほかのアプリから開くこの場合、GoodReader、Evernote、iBooksが利用できるようだ。では、GoodReaderをGoodReaderならこのように問題なく、しかもサクッと開くことができるのであった
こちらはiPadでzoomIt for iPadアプリを使っているところ。見やすいですなファイル名に日本語が使われているものはzoomIt for iPadアプリでも開けないことがある開こうとするとこんな状態に。PDFのサイズが大きいとアプリが落ちることもある
そこで[Open In]でほかのアプリから開くことにGoodReader、Evernote、iBooks、iBunkoHDから開けそうだ。やはりGoodReaderを選択7MBほどのPDFだが、問題なく開けた。ちなみにこのファイルは「自炊」したもの
今度はテキストファイルを開く。これもやはりGoodReaderを使って開いてみるエラーが出て開けない。が、設定から文字エンコードをShiftJISなどに変えればOKするとこのように問題なく日本語ファイル名の日本語テキストファイルを開けた

 てな感じで、GoodReaderなどと組み合わせて使えば、多くのファイルを快適に利用できるようになる。zoomItアプリをビューワとして使わず、zoomIt本体をiPhoneやiPadなどで使えるようにするためだけにzoomItアプリを使うってわけですな。

 ぶっちゃけ、自力でほかのアプリを揃えたりしないとマトモには使えないフィーリングのzoomIt。単体じゃテキストファイルさえ開けないことがあるなんて……とは思う。のだが、iPhone/iPad/iPod touchでSD/SDHCカードが使えるようになるってのは巨大な魅力である。何しろiPhone/iPad/iPod touchをパソコンとづながずとも各種ファイルを扱えるようになるんだから。

 たとえばGoodReaderの場合でも、基本的にはパソコンとiPadなどを接続して、PDFなどのファイルをGoodReader上にコピーする必要があった。もちろん自分のアカウントでiPadなどを使っているパソコンに接続する必要がある。

 しかしzoomItなら、SD/SDHCカードにファイルを入れて、zoomItとともにiPadなどに接続するだけでいいのだ。SD/SDHCカードを複数枚持ち歩けば、たとえば膨大な量の自炊PDFをモバイルで自由に閲覧できたりする。やっぱ外部メモリカードを挿せるってステキ♪ てゅーかこういう、ある種アタリマエ的な利便は、アップル社が提供するべきものだと思うが、現在はzoomItくらいしか方法がないってわけですな。

 

iPhone→zoomItへのファイルコピーも

 前述のとおり、zoomItは「iPhone/iPad/iPod touchとSD/SDHCの間でファイルをやり取りできるようにするアダプタ」である。ので、zoomIt本体に挿したSD/SDHCカード内のファイルをiPhoneなどで開いたりできるほか、iPhoneなどのメモリにあるファイルをzoomIt経由でSD/SDHCカードにコピーすることもできる。

 たとえばメールに添付された各種ファイル(zoomItで開けるもの)を、SD/SDHCカードにコピーできる。つまり、ファイルを外部メモリに持ち出せるんですな。具体的には以下のような手順でコピーできる。

(1)テキストファイルが添付されたメールを受け取った(2)ファイルを開き、右上のアイコンにタッチする(3)添付ファイルをほかのアプリで開けるようになる
(4)[zoomItで開く]を選ぶと、添付ファイルがzoomItにコピーされる(5)ファイルがzoomItアプリ内に保存された。次に[Edit]にタッチ(6)ファイルを選び、[Copy]や[Move]にタッチする
(7)ファイルのコピー先を選択。「DMC-FT2」がSDHCカードだ(8)SDHCカード内のディレクトリを選び[Copy here]にタッチ(9)SDHCカードにさきほどのファイルがコピーされた

 てな感じで、メールに添付されて届いた(zoomItで開ける)ファイルなら容易にSD/SDHCカードへとコピーできる。上記の例ではメーラでテキストファイルを開いたら文字化けしたが、コピーしたファイルをPCなど2バイト文字(日本語)を正しく表示できる環境で開けば問題なく表示される。

 ほか、iPhoneなどのカメラ機能で撮った写真を、zoomItに挿したSD/SDHCカードに保存することもできる。zoomItアプリにはiPhoneなどの内蔵カメラを扱う機能があり、これを使用するとzoomItアプリ内やSD/SDHCカード内に画像ファイルを直接保存できるのだ。

(1)zoomItアプリのトップ画面には[Camera]ボタンがあり、写真を撮れる(2)カメラ機能を使うと、画像の保存先を訊いてくる。SD/SDHCカードに保存可能(3)以降はiPhoneのカメラ機能と同様の操作で撮影する
(4)OKショットが撮れたら[Use]にタッチして画像を保存する(5)画像はサイズや圧縮率を設定して保存できる(6)ファイルサイズによっては保存完了まで少々待たされる
(7)保存できた(8)SD/SDHCカード内を見てみると、確かに画像が保存されている(9)以降、画像はほかのアプリで開いたりコピーしたりも自由だ

 iPhoneなどで写真を撮って画像をSD/SDHCカード内に保存して扱う、という行為が必要になるシチュエーションは非常に少ないと思われるが、ナニカのときに役立つかもしれない。

 また、写真絡みで言えば、zoomItアプリでローカルメモリ(Local Directory)内やSD/SDHCカード内を参照しているとき、[Add](ファイルの追加)にタッチすれば、iPhoneなどのアルバム(カメラロールなど)から画像をコピーできる。iPhoneには写真撮影/加工系アプリが多く、それらアプリの多くは撮影/加工した写真をアルバム内に保存する。ので、そういったおもしろい画像をSD/SDHCカードへ即コピーできるという点で、これまた役立ちそうなzoomItである。

 というわけで、iPhone/iPad/iPod touchと、外部のSD/SDHCカードの、架け橋になってくれるzoomIt。iPhone/iPad/iPod touchとその外側とでファイルのやり取りが非常にスムーズになるという点で、なんかこうiPhone/iPad/iPod touchを囲んでいた壁のひとつが取り払われたように感じる。

 前述のように2バイト文字が鬼門だとかカードリーダー/ライターとしてはコピーなどが遅いとか充電式だとかいうビミョーな点が少なくないものの、ある人にとっては「ソレをヤリたかったんだよ!!」叫ばせる超有用な機能を持つzoomIt。部分的に使いにくいところがあり、かつ、国内での入手性も低い(というか個人輸入になりがちな)製品だが、使い方次第でiPhone/iPad/iPod touchの利便を何倍にもしてくれるあたりは非常にイッカシてるゥ~♪ と思う。




2011/4/18 06:00