無限に愉快なiPad用GarageBand

スタパ齋藤
1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコ ンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称 衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。


無限に愉快なiPad用GarageBand

 触るたびに「やっぱり凄いなぁ」「えれぇ楽しいなぁ」と思えるiPad用アプリがある。iPad用GarageBandだ。ココにも書いたが、愉快過ぎて(遊んでハマって時間なくなって仕事が滞って)危険ですらある。

アップルのiPad用GarageBand。iPadとiPad 2に対応した音楽製作アプリで、価格は600円

 iPad用GarageBandは、MacにプリインストールされているMac用GarageBandと、基本的には同系統の音楽製作アプリだ。が、体験として大きく異なる。

 違いを大雑把に言うと、Mac用GarageBandは楽しいしカンタンだけれど、やはり「コンピュータ上に音楽を組み立てていく」というウチコミな使用感になる。一方iPad用GarageBandは、自分の手でカンタンに楽器を弾きつつ、その演奏を録音していくてというイメージだ。上記リンク先のビデオで一目瞭然。iPadを手で演奏できる楽器にしてしまうのがiPad用GarageBand、てな感じ。

 でも結局、楽器を弾けるとか、音楽を作る知識とか、そーゆーのがナイとダメなんでしょ? と思いがちだが、iPad用GarageBandの場合は楽器演奏経験が皆無でもOK。何となく触れば即、ソレっぽいorプロっぽい演奏がデキちゃったりするから凄いし楽しいしハマって危険、なのである。

iPad用GarageBandは画面に表示される鍵盤や弦などに触れれば演奏できる音楽アプリ。楽器が弾ける人は、そのままバーチャル楽器として楽しめる演奏感を伴う自動演奏機能(Smart Instruments)もある。誰でもイキナリ演奏できちゃう感覚。ヘルプ表示も秀逸。直感的に使っていける

 

【動画1】Smart Instrumentsを使えば、このようにテキトーに触れているだけでソレっぽいサウンドになる。演奏してる感が強い自動演奏機能だ

 

 てなわけで今回は、iPad用GarageBandについて。600円のアプリとしては驚くほどその要素が多く濃密なので、楽しいところオイシイところをメインに見ていきたい。

 

基本的な流れ

 iPad用GarageBand(以下、GarageBand)は、基本的にはウチコミ系の音楽製作ソフト。楽器を演奏して、その演奏をトラックに置いて、また別の楽器を演奏して、これまた別のトラックに置いて、てな感じで「重ね録りをしつつ音楽を作っていくアプリ」なのだ。

(1)GarageBandの基本的な使い方としては、まず、楽器を選んで弾いて、それを録音する(ループとしてトラックに記録する)(2)演奏がこんなふうにトラックに記録される。打鍵などのタイミングを強制的に正す機能(クオンタイズ)なども使える(3)さらに別の楽器を演奏して録音していく。重ね録りをしてバンド演奏の各パートを次々と追加していくってわけですな
(4)こんなふうにトラックが増える。トラックは最大8つまで。8種類の楽器(音源)を同時に扱える、と考えちゃっていいだろう(5)Apple Loopsと呼ばれる「既成の演奏音」もある。高音質な歌声だったり演奏だったりイロイロ。これもトラックに置ける(6)作った曲はiTunesに送ったり、メールに添付して送ることができる。iPadだけで演奏~録音~曲の共有を完結できる

 というのが本来(!?)の使い方。なの、だが、そこまでキッチリ使わなくても十二分に楽しめるのがGarageBandのイイところ。楽器として演奏するだけでそーとー楽しめる。

 

画面に触れて自由に演奏

 GarageBandには大きく分けて2系統の楽器群がある。Touch InstrumentsとSmart Instrumentsだ。あ。あと、これらに加えてギター接続時に使えるGuitar Amp、外部の音(歌声など)を録音できるAudio Recorder、それから外部の音を音源として録って高低を付けて演奏できるSamplerもある。

 まず、Touch Instrumentsだが、これは画面をタッチして自分で演奏するための楽器群ですな。モノとしてはKeyboardとDrumsがある。画面に表示された鍵盤などを指で叩いて演奏するわけですな。

Drumsを使っているところ。打面を叩くと音が出るドラムは6種類。リズムマシンタイプも使えるヘルプを表示させたところ。簡潔でわかりやすいガイドだ
Keyboardを使っているところ。鍵盤を叩くと音が出る鍵盤の幅や段数などもわりあい細かく設定できるヘルプもこのようにわかりやすい。説明書要らずですな
Keyboardはバリエーションがヒッジョーに豊富なのだ8楽器種×6カテゴリ=48種類のキーボードがあるシンセサイザー系はパラメータをいじれば音が激変する

 画面にタッチして自由に演奏するためのTouch Instrumentsだが、イケてるのがベロシティ対応であること(後述のSmart Instrumentsも同様)。画面に触れる強さに応じて音の強弱や音色などが変わるのだ。静電容量方式タッチパネルなのに大したモンですな。ちなみに、ベロシティは内蔵の加速度センサを利用して拾っているらしい。

 Touch Instrumentsはある程度弾ける/叩ける人のための楽器群だが、Keyboardに関してはちょっとした自動演奏的機能もある。それはスケールとアルペジエータだ。鍵盤全体を統一したスケールに設定できるので、ぶっちゃけ、テキトーに弾いてもマトマリ感のあるメロディになる。また、その状態でアルペジエータをオンにすれば、やや機械的ではあるが統一したスケールでのアルペジオ演奏ができる。

Keyboardはスケールを統一しての演奏もカンタンスケールを指定した状態。鍵盤がこのように変わるアルペジエータにより楽勝でアルペジオ演奏が可能だ

 GarageBandは600円のアプリなんだが(MacOS付属版は無料だが)、Smart Instrumentsが使える時点で既に安いという気がする。とりわけDrums。大きめ打面を指でパシパシ叩いて、リアルな音が出て、しかもベロシティ対応。リズムマシン・アプリとしてはこの時点でiPhone/iPadアプリのなかでも突出したデキだと思う。……のだが、次に説明するSmart Instrumentsまで使えて600円ってぇんだからベランメェこんちくしょ~てな感じでズビッと手鼻かんじゃいそうである。

 

画面に触れるだけでプロ並み演奏♪

 Smart Instrumentsは、テキトーに触ってるだけでプロっぽい演奏ができちゃう、GarageBandならではの楽器群だ。ホントにイイ加減に触れてるだけでもプロっぽく演奏でき、ちょっとマジメに触れるとプロに肉薄する演奏ができる。楽器としては、Smart Drums、Smart Bass、Smart Keyboard、Smart Guitarの4種類がある。

 たとえばSmart Drumsなら、キックやスネアといったインスツルメンツをグリッド(音の大小やパターンの複雑さを指定できる枠)に置いていけば、カッコ良さげなドラミングが自動的に行われる。また、画面左下にあるサイコロに触れれば、グリッドへのインスツルメンツ配置まで自動で行われる。一度のタッチだけでとりあえずソレっぽくてマトモだったりするドラム演奏が始まるのだ。

インスツルメンツをグリッド上に配置すれば自動演奏が行われるドラムのタイプは6種類

 

【動画2】こんな感じで、全体的にGarageBand任せでOK

 

 ほかの楽器も同様、触れたりする程度でプロ並みの演奏となる。Smart Keyboardなら指一本でコード演奏ができる。自動演奏も可能で、これはコードにタッチすればそのコードを使ったソレっぽくて人が弾いてるっぽくてプロっぽい演奏が自動的に行われる。

 こういった動作はSmart BassやSmart Guitarも同様。たとえばSmart Guitarなら、指先一本でコードをジャ~ンとかき鳴らせるし、弦の部分に触れればジャラララ~ンと任意の速さで弾くこともできる。オートプレイにすればコードのアルペジオ演奏ができる。もちろん一般のギターのように各弦/フレットを押さえての演奏もできる。さらに弦/フレットのスケールを統一しての演奏も可能だ。

Smart Guitarの表示例。フツーのギターとして弾くこともできるコードを指先一本で弾くこともできる。弦ごとの演奏も可能ギターは4種類から使える。エレキ系はエフェクターが使用可能
ベースもこのように容易にコードに沿って弾くことができるベースは4種類から使える。個人的にはウッドベースに驚嘆!!

 

【動画3】ヒッジョーに容易に弦楽器を演奏できちゃうのだ。

 

 てな感じで、よかれと思ってイロイロやってくれる系の自動演奏対応楽器がSmart Instrumentsなんですな。また、自動なのになかなか良いメロディだったりリズムだったり。音質自体も良いので気分よく楽しめる。ちなみに、掲載した動画には若干のノイズが混じっているが、あれは拙宅PCなどから出ているノイズで、撮影時に入ってしまったものだ。GarageBandやiPadからは非常にクリアな音が出ている。

 さておき、GarageBandの自動演奏の良さは、ある程度ユーザーが工夫できる余地が残されているトコロだと思う。ベロシティ、グリッサンド、チョーキング、ときには弦や鍵盤を意識的に叩いて音を少し加えるようなことも可能だ。全部GarageBandがやっちゃうんじゃなくて、ユーザーがアレンジできる余地が十分残っているからオリジナリティを加えられて楽しい。基礎~応用あたりまでをスッ飛ばして、ある一定上のレベルで、カッコよく弾いたりしたい、てのはズルいけども誰もが求めることろなんじゃなかろうか?

 あとこのUI(ユーザーインターフェイス)。楽器アプリとしてはそーとー理想に近いし、わかりやすさが抜群。トラックの編集のところは若干機能的に物足りなかったりはするが、それでも指先でトラックの分割やループの引き伸ばしなどを行うとどれだけ快適なのかを思い知らされた気分になる。

 ま、細々した理屈はゴミ箱に入れてゴミ箱を空にして、とりあえず誰でも即演奏できてチョー楽しめて、かな~りハマれるGarageBand。iPad持ってて音遊びに興味があるならゼヒ!! GarageBandのためにiPad買うってのもアリだと思うほど、このアプリを気に入っている拙者である。

 

2011/4/4 06:00