法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

Always 4G LTEとau VoLTEで新しいステージへ進む、auの2014年冬モデル

 ライバルの冬春モデル発表会から遅れること約1カ月。auは2014年秋冬商戦向けモデルとして、スマートフォン4機種、タブレット1機種、フィーチャーフォン1機種を発表した。主要3社がiPhoneを扱い、人気モデルも複数の携帯電話事業者から提供されるなど、モバイルサービスの同質化が進む中、どのような戦略を打ち出して差別化を図っていくかが注目されるが、auは今回の発表会において、新機種に加え、新サービス「au VoLTE」「au WALLET クレジットカード」「auおせっかい部」を発表し、新しい時代へ向けた戦略を打ち出してきている。発表内容の詳細については、本誌記事を参照していただきながら、今回の発表の捉え方と各製品及びサービスの印象などについて、解説しよう。

携帯電話サービスの転換点

 今や私たちの生活やビジネスに欠かすことができないケータイ。今から数十年前に登場した自動車電話やショルダーホンから進化した携帯電話は、その進化のプロセスにおいて、いくつもの転換点を迎えてきた。

 たとえば、サービスでは1999年にNTTドコモが発表し、後のモバイルインターネット普及のきっかけとなった「iモード」が挙げられる。通信技術で言えば、2000年以降、各社が相次いでサービスを開始した「FOMA」をはじめとする第三世代携帯電話サービス、料金プランでは2003年にauが実現したパケット定額制の「EZフラット」などが思い出される。端末では2000年にシャープがJ-フォンと共に初のカメラ付き携帯電話「J-SH04」を世に送り出し、2008年に国内ではじめてソフトバンクからApple製スマートフォン「iPhone 3G」が発売され、市場の流れを大きく変えるきっかけとなった。

 現在、国内の携帯電話市場はスマートフォンが市場の約半数を占め、今年は国内の音声通話定額を実現する料金プランが各社から発表される一方、MVNO各社の「格安SIMカード」などが注目を集めている。端末については、ここ数年でスマートフォンは一定の完成の領域に達したとも言われているが、主要3社からiPhoneが発売されたこともあり、「各社横並び」の印象が強くなり、やや新鮮味に欠ける状況になってきたという見方も多い。

 そんな中、今後、携帯電話業界は各社がどのような形で他社との差別化を図り、どういった方向性を目指すのかが注目される状況にあるが、今回のauの2014年秋冬商戦向けモデルの発表会では、携帯電話業界にとって、ひとつの大きな転換点になるサービスが発表された。そのひとつが「au VoLTE」だ。こう書いてしまうと、「VoLTEはすでにNTTドコモが提供済みで、何も目新しいことはない」と言われてしまいそうだが、転換点となるのは「VoLTE」という技術の採用そのものではなく、そのVoLTEを運用するネットワークと利用する端末の仕様がauにとって、大きな転換点になるということを意味する。

大きな転換点を迎えるau VoLTEを発表した

強みのCDMAが弱点に

 au(KDDI)は、その前身であるDDIセルラーが1998年に、日本移動通信(IDO)が1999年に「cdmaOne」というサービスを提供したことをきっかけに結び付きが強まり、KDDと3社が合流する形で、現在のKDDIという会社がスタートしている。cdmaOneはその後、2002年にスタートした本格的な3Gサービスである「CDMA2000 1X(後の「CDMA1X」)」、2003年にパケット定額サービスを実現した「CDMA 1X WIN」へと継承され、新規のエリア展開に苦しむNTTドコモや旧Vodafone(現在のソフトバンク)を尻目に、3Gサービスへの順調な切り替えを実現し、「EZナビウォーク」や「着うた」など、3Gネットワークを活かしたサービスでも大きな成功を収めることになった。

「CDMA 1X WIN」で3Gネットワークと端末・サービスの展開を加速させた(2003年10月)

 ところが、2000年代後半になると、世界的にはW-CDMA/UMTSを採用する陣営が市場を拡大し、CDMA方式は徐々に採用する事業者が減り、端末や設備、通信技術をサポートする企業が少なくなりつつあった。2000年代半ばから後半にかけては、国内でau向けに端末を供給するメーカーに対し、海外の携帯電話事業者がCDMA端末の開発を打診するといったことが起きていたが、その背景には世界的に見てもCDMA端末を開発できるメーカーが限られていたという事情もあったわけだ。

 端末の主流がスマートフォンに移行すると、その流れは一層、顕著になる。auはCDMA方式を採用しているために、グローバル市場向け端末が調達できなかったり、ローカライズに必要以上のコストや時間がかかるといったことが起き、なかなか端末ラインアップを拡充できない状況が見え隠れするようになってきた。ケータイ時代には強みだったauのCDMA方式は、W-CDMA/UMTSが世界の主流になったスマートフォン及びタブレットの時代において、弱点になりつつあったわけだ。

 こうした状況を踏まえ、auではCDMAサービスに頼らない携帯電話サービスの拡充を図ろうとしてきた。たとえば、グループ内のUQコミュニケーションズが展開してきた高速データ通信サービス「WiMAX」などもそのひとつだが、やはり、本命となるのは2012年9月にサービスが開始された「au 4G LTE」だ。

 auの4G LTEサービスはサービス開始当初からの垂直起ち上げを謳い、サービスインからわずか半年で実人口カバー率96%、約1年半後の2014年3月には実人口カバー率99%を達成し、猛烈な勢いでエリアを拡大することに成功した。ちなみに、auに先駆け、NTTドコモは2010年12月からLTE方式によるサービス「Xi」を開始したが、2014年3月の段階で、算出基準がより緩やかな「人口カバー率」で97.5%と達成したのみで、今年9月の記者説明会において、口頭で「実人口カバー率でも99%に達した」とコメントしたのみにとどまっている。つまり、auは2年近く先行してサービス提供が開始されたNTTドコモのXiを、わずか1年半で追い抜いて見せたわけだ。

 こうして作り上げたauの4G LTEのネットワークは、単純にエリアを拡大するだけでなく、継続的にLTEだけで接続できるように、チューニングが進められている。今回の発表会では『LTE維持率』という評価軸が新たに明らかにされたが、これはLTEでデータ通信中、3Gにハンドダウン(信号劣化などによる切り替え動作)することなく、データ通信が完了する割合を表わしたものだが、独自の調査ながら、99.9%超を達成しているという。今年9月に田中孝司 代表取締役社長にインタビューしたときにも東海道新幹線でほぼLTE接続を維持したまま、東京と新大阪の間を移動できるという話題が紹介されたが、かなり実地の検証が進んでいるようだ。

 さらに、2014年夏モデルからは、グループ内のUQコミュニケーションズが展開する「WiMAX 2+」のネットワークにも対応し、モバイルデータ通信環境のさらなる充実を図っている。今回の発表会が行なわれた当日の午前中には、UQコミュニケーションズからWiMAX 2+で利用する帯域を拡大し、20MHz幅を2つ束ねることで、来春には受信時最大220Mbpsを実現することが発表された。

「LTE維持率」は99.9%超とした

3Gなしの仕様を採用したau VoLTE対応モデル

 4G LTEネットワークやWiMAX 2+への対応などにより、高速なモバイルデータ通信環境を実現し、CDMA方式が持つ弱点をカバーしてきたauだが、もうひとつクリアしなければならない課題が残されていた。それが音声通話であり、その解が今回発表された「au VoLTE」ということになる。

 すでにNTTドコモが「VoLTE」の提供を開始しているが、VoLTEは本来、データ通信のみが利用できるLTEネットワーク上において、一定の通信品質を保証するQoSを設定することで、音声データを送受信できるようにする技術だ。これにより、通常の3Gネットワークなどで利用している音声通話よりも高音質での通話が可能だ。

 しかし、NTTドコモのVoLTEでは、ドコモのすべてのエリアでLTEを利用できるわけではないため、通話中にLTEのエリアから外れると、3G(NTTドコモの場合はW-CDMA)にハンドダウンし、その後、通話中はVoLTEに復帰することがない仕様となっている。

 これに対し、今回発表されたau VoLTE対応2機種は、auの3G、つまりCDMAに対応していないため、音声通話はすべてVoLTEを利用し、国内での利用ではLTEのみをサポートするシンプルな構成を採用している。ちなみに、モバイルデータ通信としてはau 4G LTEとWiMAX 2+をサポートするが、au VoLTEのデータが流れるのはauの4G LTEのみ。WiMAX 2+はBWA(Broadband Wireless Access)として周波数の割り当てを受けているため、au VoLTEでは利用されない。前述のように、CDMA方式がさまざまな面において、auの弱点になりつつあった状況を鑑みると、いずれ将来的にauがCDMA方式を辞める方向に動き出すことは既定路線だったが、予想以上に早いタイミングで、音声通話をVoLTEのみでサポートする仕様を採用してきたことは、正直なところ、ちょっと驚かされた。

au VoLTEは同時に「Always 4G LTE」となる

 今回、auがこうした仕様を採用してきたことは、auとして、それだけ4G LTEのネットワークに自信があることを裏付けているわけだが、それと同時に「Always 4G LTE」で運用していくんだという、社内外に対する強い意思表示が秘められているとも言えそうだ。ちなみに、au VoLTE対応の2機種は、国内の利用ではauの4G LTEネットワークに接続するが、国際ローミングではGSM/GPRS/UMTS/LTEを使うことになる。iPhone 6/6 Plusについては、準備を進めているようだが、今回は対応時期などについて、具体的な言及はなかった。

 では、実際にLTEのみのサポートで問題がないのかというところがユーザーとしては気になるところだが、auによれば、すでに170万回以上の試験コールで品質を確認し、地球2周半に相当する9万6000kmに及ぶ日本全国の主要道路での走行テストも実施しており、VoLTEを連続的に利用できる環境が整っているとしている。現状、auの4G LTE対応端末を利用していてもアンテナピクトの表示に3Gの文字を見るケースが少なくなってきているが、仮に現時点でそういった表示がされていてもLTEの電波が届いていないわけではなく、信号強度の関係上、3Gで接続されていたり、3GからLTEへの切り替えができていないケースもあるため、LTEのみのサポートでも実用上は問題が起きるケースは少ないだろうとしている。

 ただ、ひとつ注意しなければならないのはSIMカードの仕様で、au VoLTE対応モデルで利用するSIMカード(au ICカード)は接続情報などを記録する関係上、専用のSIMカードになるため、au VoLTE対応の2機種に他のSIMカードを挿してもSIMカードとして認識せず、au VoLTE対応機種で利用するSIMカードを既存のauスマートフォンに挿しても同様にSIMカードとして認識しない仕様となっている。旧機種などを併用したいユーザーは、機種変更時に注意した方がいいだろう。

 また、音声通話を3GからVoLTEに切り替えていくとなると、現時点でLTEに対応していないフィーチャーフォンなどをどうしていくのかも気になるところだが、発表会後の囲み取材で田中社長は、VoLTE対応のフィーチャーフォンの開発を検討していることを明らかにしている。明確な回答は得られていないが、もしかすると、スマートフォンのプラットフォームを活かしたフィーチャーフォンのようなものを検討しているのかもしれない。今後、スマートフォンやフィーチャーフォンも含め、すべての端末がau VoLTE対応になり、3Gをサポートしないと断言されたわけではないが、今回の4G LTEのみをサポートする仕様がauの基本仕様になっていくことになりそうだ。

 こうして順次、音声通話を3Gからau VoLTEに切り替えていくことで、auは将来的に3Gの停波を視野に入れていくことになるが、3Gを利用する通信機器にはカーナビやセコムなど、組み込み用通信モジュールがあるため、かなりの時間がかかることが予想される。ただ、いずれにせよ、一般的な携帯電話サービスとして、auがLTEのみをサポートするネットワークへ動き出したことは、非常に興味深い。

 さらに、auではau VoLTEの特徴を活かしたサービスも提供する。基本機能としては、「高音質通話」や「スピーディーな発着信」のほかに、VoLTEによる音声通話中にWebページや地図の閲覧、メール送受信などのデータ通信が利用できる「コンカレント通信」が可能になる。これまでauスマートフォンではできなかったことが簡単にできるようになるわけだ。

 さらに、au VoLTE端末同士に限られるが、お互いの端末をシンクロさせながら利用する「画面シンク」「手書きシンク」「位置シンク」「カメラシンク」が提供される。これまで携帯電話で提供されるサービスでは、特定の携帯電話事業者でしか利用できないサービスはあまり普及しない傾向があるが、au VoLTEのシンク機能はスマートフォンの利用シーンとしてはなかなか実用的なこともあり、au VoLTE対応端末が増えてくれば、法人利用なども含め、実際に使われることが増えてくるかもしれない。相手が他社携帯電話や固定電話でも最大30人までを相手に同時に通話ができる「ボイスパーティー」も提供される。こちらも学校のサークルなどで、グループ会議のようなことをしたいときに便利そうだが、これを活かした新しいビジネスの登場にも期待したいところだ。

au VoLTEでは新しい使い方も提案する

au VoLTE対応にリニューアルした2機種などを投入

 さて、ここからは今回発表された2機種に加え、秋冬商戦に投入される発表済みの端末について紹介するが、新機種である2機種については、どちらも2014年夏モデルとして発表されたモデルをau VoLTE対応としてリニューアルしたもので、ハードウェア的な差異はほとんどないため、簡単な内容になってしまうことをご理解いただきたい。同時に、各製品の詳細の内容については、本誌の速報レポートをご参照いただきたい。

auの2014年冬モデルのラインナップ

 まず、ラインナップ全体についてだが、9月にすでに発表されているスマートフォン2機種とタブレット1機種があり、これらに今回発表されたスマートフォン2機種とフィーチャーフォン1機種が秋冬商戦向けに投入される。

 9月に発表済みのスマートフォンについては、カラーバリエーションや地域によって、未発売のものがあるが、すでに先週から販売が開始されており、来月半ばには全色がすべての地域で販売が開始される。機種数については、昨年の秋冬商戦向けがスマートフォン6機種だったことを考えると、だいぶ少なくなった印象は否めない。なかでも毎回、新モデルを投入してきたシャープ製端末がラインナップにないのは気になるが、囲み取材では春商戦向けに別のラインアップが投入されることが示唆されており、もしかすると、そちらのタイミングで新製品が投入されるということなのかもしれない。

 また、サービスなどへの対応状況については、ここまでも説明してきたように、au VoLTEに対応するのは2機種のみで、発表済みの2機種はau VoLTEに対応せず、バージョンアップでも対応される予定はない。裏を返せば、LTEオンリーというネットワーク対応が不安であれば、Xperia Z3とGALAXY Note Edgeを選べばいいわけで、その意味ではau VoLTE対応と非対応が2機種ずつという捉え方もできる。実際には夏モデルとして発表された6機種に加え、8月に追加されたHTC J butterflyやiPhone 6/6 Plus、iPadなども店頭に並んでいるため、ユーザーの選択肢は十分にあると言えそうだ。

 ちなみに、以前からauが開発を進めていたFirefox OS搭載端末については、クリスマスにリリースすることを予定しているとのことで、これを狙うユーザーは「待ち」ということになる。さらに、今回発表されたモデルは、UQコミュニケーションズが発表したキャリアアグリゲーションによる受信時最大220Mbps対応サービスにも対応していないため、これを使いたいユーザーも来春まで待った方が良さそうだ。

isai VL LGV31 (LG Electronics)

isai VL LGV31

 au VoLTEに対応したハイスペックスマートフォン。基本仕様は2014年夏モデルとして発売されたisai FL LGL24をベースにしており、WQHD対応ディスプレイやCPU、外装なども含め、ほぼ共通の仕様となっている。au VoLTEに対応しているため、国内外共にCDMA方式は利用できず、国際ローミングではGSM/GPRS/UMTS/LTEを利用することになる。au VoLTE以外の違いとしては、メモリ(RAM)が3GBまで増やされ、isai FLとはまったく異なるカラーバリエーションが用意されたことが挙げられる。機能的にもisai FLで好評を得た「ノックコード」、振って操作できる「isaiモーション」などが継承されている。ディスプレイやボディ形状は基本的に同じであるため、おそらくisai FL向けに販売されているアクセサリー類はそのまま利用できると推測される。au +1 collectionでも新たにカバーやケース類を追加しており、丸い窓のついたフリップカバーなども販売される。

G Watch R (LG Electronics)

G Watch R

 IFA 2014でも展示された、Android Wearを採用した腕時計型ウェアラブル端末「G Watch R」がau +1 collectionで販売される。これまでのAndroid Wear端末は角形文字盤のものが多かったが、G Watch Rは丸型の文字盤を採用し、より腕時計らしいデザインに仕上げられているのが特長。デザインも精悍なイメージで、一般的なスポーツウォッチなどを見比べても遜色のない仕上がりだ。標準で装備されるベルトは幅が22mmのものなので、金属製ベルトなどを組み合わせて、よりハードなイメージで持つのも手だ。

URBANO V01 (京セラ)

URBANO V01

 落ち着いたデザインが幅広いユーザー層に支持されているURBANOシリーズのau VoLTE対応モデル。基本的な仕様は2014年夏モデルの「URBANO L03」をベースにしており、防水防じん、耐衝撃など、従来モデルで評価された仕様はそのまま継承されている。外装も基本的には同じで、ガラスはAGC製Dragon Trail Xが採用される。従来モデルとの違いでは前面のホームキーなどのハードキー、側面の音量キーや電源キー、背面のカメラリングなどのメタルパーツを使うことで、全体的な質感を一段と向上させている。京セラ製のURBANOシリーズでは従来からディスプレイ面を振動させてレシーバーとして利用するスマートソニックレシーバーが採用されているが、今回のモデルではau VoLTEの高音質通話でも利用できるように強化が図られ、より幅広い音域を再生できるようにしている。実際に、au VoLTEによる通話も試したが、相手の声がしっかりと聞こえる印象で、実用性はかなり高い印象を得た。卓上ホルダを利用した急速充電にも対応しており、スマートフォンをかなり酷使するユーザーのニーズにも応えることができそうだ。URBANOシリーズというと、どちらかと言えば、シニア向けのイメージが強かったが、上質なデザインと質感の良い仕上がりは若い世代や女性ユーザーも含め、幅広いユーザー層が利用しやすいモデルに進化しつつあるという印象だ。

MARVERA2(京セラ)

MARVERA2

 2013年冬モデルとして発売されたフィーチャーフォン「MARVERA」の後継モデル。ディスプレイやカメラ、CPUなどの基本仕様はそのまま継承されており、レシーバーが京セラ製端末でおなじみのスマートソニックレシーバーに変更されており、ディスプレイ面がフラットに仕上げられている。その他の従来モデルの違いとしては、アドレス帳が1000件から2000件に増やされ、新たに省電力機能による「長持ちモード」を搭載することにより、ロングライフを実現している。基本的なデザインも継承されているが、周囲にフレームのようなパーツでアクセントをつけるなど、従来モデルよりも少し上質なイメージが強調された印象だ。スマートフォン全盛の中、限られたペースながら、フィーチャーフォンを継続していることは既存のユーザーにとっても安心できるところだ。

GALAXY Note Edge SCL24(サムスン電子)

GALAXY Note Edge SCL24

 IFA 2014で発表されたGALAXY Noteシリーズの新機軸のモデル。au向けの製品もいち早く9月に発表され、すでに一部の地域で販売が開始されている。NTTドコモ向けにも同じモデルが供給されている。特徴的なのは右側面に備えられた「エッジスクリーン」と呼ばれる曲面を利用したスクリーンで、2560×1440表示が可能なQHD対応メインディスプレイに続く形で、160ドット分のエリアにさまざまな情報を表示する。GALAXY NoteシリーズのSペンもそのまま受け継がれているが、Sペンの検出も1024段階から2048段階に強化されており、手書き入力の操作感が一段と向上している。エッジスクリーンやSペンなどに注目が集まりがちだが、CPUやグラフィックの処理能力も従来モデルよりワンランク向上しており、現時点での事実上のフラグシップモデルに仕上げられている。既存のGALAXY Noteシリーズのユーザーの乗り換えだけでなく、新たにGALAXY Noteシリーズの楽しさを体験したいユーザーにもおすすめのモデルだ。

Xperia Z3 SOL26(ソニーモバイル)

Xperia Z3 SOL26

 ソニーモバイルのフラッグシップ「Xperia Z」シリーズの最新モデル。GALAXY Note Edge同様、IFA 2014で発表されたモデルだが、au向けは今回の発表よりもひと足早く9月に発表され、すでに一部で販売が開始されている。NTTドコモ向けにも同じモデルが供給されている。2014年夏モデルのXperia Z2に比べ、側面や角の仕上がりに丸みを持たせることで、メタルフレームの質感を手当たりのいい印象に仕上げている。ボディカラーも従来モデルから続いてきたパープルを外し、CopperやSilver Greenといった新しいカラーバリエーションを採用している。ISO12800の高感度撮影をはじめ、電子式手ブレ補正の「インテリジェントアクティブモード」など、カメラ機能が強化される一方、ハイレゾ音源対応やデジタルノイズキャンセリング機能など、Audio&Visualも一段と楽しめるように仕上げられている。機能的にも完成度が高く、ソツなく仕上げられている印象だが、カラーとボディ周囲のデザインこそ変更されたものの、基本的な機能の追求以外にあまり斬新な機能の追加がなく、今ひとつ新鮮味が感じられない印象も残った。

GALAXY Tab S SCT21(サムスン電子)

GALAXY Tab S SCT21

 今年6月に米国で発表されたサムスンのタブレットのフラッグシップモデル。今回の発表に先駆け、9月にau向けモデルに発表されていた。タブレットのフラッグシップモデルらしく、スペックはかなり充実しており、2560×1440ドット表示が可能な約10.5インチのスーパー有機ELディスプレイを採用し、2.5GHzのクアッドコアCPUに、3GBのRAMと32GBのROMを搭載する。通信機能はauの4G LTE及びWiMAX 2+に対応し、Wi-FiはIEEE802.11a/b/g/n/acに対応する。音声通話の機能はサポートされない。ボディは6.6mmと非常にスリムで、重量も467gと軽く仕上げられている。ディスプレイの表示は液晶ディスプレイと明らかに違う美しさで、鮮やかな画像や映像を楽しむことができる。10インチクラスのタブレットはどちらかと言えば、ホームユースの印象が強いが、この軽さと薄さであれば、日常的に持ち歩いてもストレスなく使うことができそうだ。

auのネットワークの強みをどこまで活かせるか

 今年は携帯電話業界にとって、ひとつの転換期になるタイミングだと言われる。例えば、新料金プランもそのひとつであり、ここに来て、急速に盛り上がりを見せているMVNOの動向も気になるところだ。

 しかし、もうひとつ見逃せないのは、3GからLTEへ移行してきたモバイルネットワークがある程度、市場に定着し、これをどう活かすか、次の時代へはどう進むのかというフェーズに移ってきたことが挙げられる。国内の主要3グループ5社が若干の違いこそあれ、揃ってLTEネットワークを運用し、100Mbps超の高速データ通信サービスを提供するようになってきたが、ユーザーの目から見れば、理論値の速度競争よりもそこで何ができるのか、どんな使い方ができるのかという方が重要になってきたというわけだ。

 auはそのひとつの解として、今回発表された「au VoLTE」という手を出してきた。auは国内の携帯電話事業者として、はじめてパケット定額サービス「EZフラット」を発表したとき、そこへ向けてネットワークを着々と準備を進め、関係各社への情報提供も最小限に抑えながら発表することで、ライバルたちを慌てさせたことがあった。今回はさすがに「慌てさせた」というほどの話題ではないが、CDMAという現在の弱点を克服すべく、着々とLTEネットワークを拡げ、グループ会社のUQコミュニケーションズのWiMAX 2+もいち早く拡充してきた。そして、そのネットワークで単にスマートフォンやタブレットを使うだけでなく、au VoLTEという新しいサービスを提供し、LTEのみをサポートする端末で利用させようとしている。正直なところ、ややチャレンジングな印象はあるが、コンカレント通信やシンク機能など、これまでのauスマートフォンで楽しめなかった使い方も提案している。自らが持つネットワークを強みを最大限に活かそうという構えだ。

 ただ、こうした新しい取り組みをする関係上、今回の端末ラインアップはモデル数も少ないうえ、目玉となるau VoLTE対応端末も夏モデルをベースにしたリニューアルモデルの印象が強く、LTEのみで運用するという技術的な仕様以外に、ユーザーにアピールできる要素が少なく、今ひとつ物足りない印象も残った。もちろん、この先にはFirefox OS搭載端末や春モデルが控えているのだろうが、ウェアラブル端末なども含め、もう少しユーザーを驚かせ、ワクワクさせるような製品も期待したいところだ。

 今回発表されたモデルはすでに一部のモデルが発売され、その他のモデルも各地のau直営店や東京・原宿のKDDIデザイニングスタジオ(11月16日で閉館)などで展示が開始されている。本誌では今後、各機種の開発者インタビューやレビュー記事などを掲載する予定なので、こちらもご覧いただきつつ、自分のとっておきの一台を見つけていただきたい。

法林岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows 8.1」「できるポケット docomo AQUOS PHONE ZETA SH-06E スマートに使いこなす基本&活用ワザ 150」「できるポケット+ GALAXY Note 3 SC-01F」「できるポケット docomo iPhone 5s/5c 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるポケット au iPhone 5s/5c 基本&活用ワザ 完全ガイド」「できるポケット+ G2 L-01F」(インプレスジャパン)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。