全28機種でネクストステージへ進むドコモ

法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows 7」「できるポケット Xperiaをスマートに使いこなす 基本&活用ワザ150」「できるポケット+ GALAXY S」「できるポケット iPhone 4をスマートに使いこなす基本&活用ワザ200」(インプレスジャパン)など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。Impress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。


 11月8日、NTTドコモは2010年冬から2011年春にかけて発売される2010~2011冬春モデルを発表した。主要3社では最後の発表となったが、スマートフォンからiモード端末、LTEなど、非常に多彩なラインアップを取り揃えた全28機種が発売される。

 サービスについても好調のiコンシェルをさらに進化させ、人気のクラウドサービス「EVERNOTE」をAndroid端末に標準搭載させるなど、ユーザーの利用シーンをさらに拡大する方向性を打ち出している。

 発表会の詳細は本誌のレポート記事を参照していただきたいが、ここではタッチ&トライで試用した端末の印象をお伝えするとともに、今回の発表内容の捉え方について考えてみよう。

スマートフォン、iモード機、LTEはネクストステージへ

 今さら言うまでもないが、NTTドコモは国内最大シェアを持つキャリアだ。ケータイ業界の十数年を振り返れば、iモードサービスの開始に始まり、FeliCa搭載のおサイフケータイ、W-CDMA方式によるFOMAの開始、ユーザーにコンテンツを自動配信するiチャネル、ユーザーの方向性に合わせた4つのシリーズ展開、ユーザーの行動支援を実現するiコンシェルなど、端末やサービス、ネットワークというそれぞれの面において、ケータイの新しい可能性を示し、業界をリードしてきた。

 今回発表されたNTTドコモの2010~2011冬春モデルは、同社としては過去最大となる全28機種をラインアップし、スマートフォンのラインアップ拡充、さらなるブラッシュアップをかけたiモード端末、12月にサービスを開始するLTEサービス「Xi(クロッシィ)」の対応端末という3つを軸に、同社の端末ラインアップやサービスを新しい時代へ向けたネクストステージへ進めるとアピールしている。何かとiモードのみに頼るところが大きかった同社の事業構成をスマートフォンやXiによるデータ通信サービスなど、多方面に展開し、今までよりも多面的にユーザーの利用環境にマッチするサービスを提供していきたいという姿勢の表われだろう。

 まず、スマートフォンについては、山田隆持代表取締役社長が今夏の段階で、冬春モデルで7モデルを発表するとしていたが、すでに発売され、品薄が続いているサムスン電子製「GALAXY S」、年内にも発売予定のタブレット端末「GALAXY Tab」に加え、新たに4機種が発表された。残り1機種については「年度内発売予定のタブレット型端末」という情報のみが明らかにされ、詳細は後日、発表するとされた。スマートフォンの新機種4モデルについては、3モデルがAndroid採用端末、1モデルがBlackBerryの廉価モデルという構成だが、端末ラインアップを揃えるだけでなく、人気のクラウドサービス「EVERNOTE」のプレミアムサービスを同社のAndroid端末に1年間、無償で提供することが発表された。

EVERNOTEのアプリ

 EVERNOTEはパソコンを利用しているユーザーにはある程度、おなじみだが、Webページやメモ、写真、オフィス文書、PDFファイルをクリップするように保存しておくクラウドサービスで、今年は日本語サービスが開始されたこともあり、書籍なども発行され、高い人気を得ている。こうしたインターネット上で展開されるサービスの多くは、機能を限定した無料版が提供され、本格的に利用するには有料版を契約するというビジネスモデルが一般的だが、EVERNOTEではNTTドコモのAndroid採用端末向けに1年間限定ではあるものの、有料サービスであるプレミアムを無料で提供するという。しかもすでに有料サービスを利用しているユーザーに対しては、契約済みの期間を1年延長するという念の入れ様だ。

 筆者も発表会終了後の夜、GALAXY S(国内版)にEVERNOTEをインストールしたところ、それまで無料版で登録してアカウントがプレミアムにアップグレードされ、GALAXY Sでもパソコンでもフルに機能が利用できるようになっていた。1年後、どれくらいのユーザーが継続利用するのかはわからないが、EVERNOTEに興味のあるユーザーにとっては、非常に魅力的なプランと言えるだろう。先に冬春モデルのラインアップを発表したauは、Android採用端末での「Skype au」の提供をアナウンスしたが、携帯電話事業者がこうしたインターネット上で展開されるサービスを橋渡しをする形で提供するスタイルは、今後も増えてくるかもしれない。

 端末のバリエーションとしては、フルタッチのストレート端末が2機種、QWERTY配列のフルキーボードを引き出すスライド式が1機種、QWERTY配列のフルキーボードを装備したストレート端末が1機種という構成。メーカー別では国内と海外メーカーが各2機種ずつだ。

 シャープ製「LYNX 3D SH-03C」と富士通東芝モバイルコミュニケーションズ製「REGZA Phone T-01C」は、ソフトバンクとauから発表されたモデルと基本的に同じで、共にAndroid 2.1を採用しているが、両機種とも来春にAndroid 2.2へのバージョンアップが予定されている。NECやパナソニック、富士通といったNTTドコモのフィーチャーフォンを支えてきた主要メーカーがスマートフォンを開発できていないのは残念なところだが、おそらく次のシーズン(2011年夏モデル)には何らかの答えを出してくれるのではないかと期待している。

 ちなみに、ソニー・エリクソン製端末「Xperia」は、11月10日にAndroid 2.1へのアップデートがアナウンスされており、GALAXY SとGALAXY Tab、BlackBerry Bold 9700、T-01B、LYNX SH-10B、今回発表された4機種とともに、NTTドコモの冬春商戦のスマートフォンのラインアップは、かなりバリエーションに富んだものになりそうだ。

 一方、フィーチャーフォンはどうだろうか。NTTドコモは2年前、端末ラインアップをユーザーの好みに合わせた「STYLE」「PRIME」「SMART」「PRO」という4つのシリーズに分け、これに「らくらくホン」シリーズを加えた5シリーズを展開してきた。このラインアップ構成の考え方は、今回も継承されているが、この2年間で全体的な様相も大きく変わってきた。

 たとえば、当初はPROシリーズに位置付けられていたスマートフォンは、今年4月のXperiaの発売以来、「ドコモ スマートフォン」シリーズとして独立してしまい、PROシリーズはモデル数が限られてしまった。全体的な売れ筋も当初は『全部入り』を謳うPRIMEシリーズが牽引していたが、実際の販売台数ではSTYLEシリーズがリードするようになり、かつての90Xiシリーズのように、PRIMEシリーズが中心的な存在ではなくなりつつある。

 その結果、昨年来、PRIMEシリーズはモデル数が少しずつ減り、STYLEシリーズが増加する傾向にある。PROシリーズに至っては、スマートフォン独立の煽りをもっとも強く受け、その存在すら危うい状況にあったが、今回はズームレンズ搭載カメラやプロジェクター搭載モデルなど、今までにない個性を追求したモデルが登場している。

 2010年冬2010年夏2009年冬2009年夏2008年冬
STYLE9101066
PRIME44567
SMART22224
PRO31235
スマートフォン4(2)3(1)

 シリーズ別モデル数で見ると、別表の通りだが、販売時の価格帯を考慮すると、もう少し違ったものが見えてくる。たとえば、STYLEシリーズは徐々に普及モデルとハイスペックモデルの2つに分かれ、当初、ターゲットユーザーとしていた「20~30代の女性ユーザー」だけでなく、同世代の男性も持てそうなモデルも登場している。今後、PRIMEシリーズがターゲットとするユーザーがスマートフォンシリーズを選ぶようになるなど、ユーザーの嗜好が変わってくれば、4つのシリーズも再構成をしなければならない時期が来るかもしれない。

 また、STYLEシリーズについては、従来同様、ブランドとのコラボレーションモデルが増えている。フィーチャーフォン全体では5機種7ブランドのコラボレーションモデルが展開されているが、過去の例を見る限り、ブランドとのコラボレーションであれば、どれでも売れるというわけでもないようだ。今回の注目は、昨年、発表直後から絶大な注目を集め、一瞬にして限定数を売り切った「Q-Pot.」とのコラボレーションモデル第2弾「SH-04C」、SHIBUYA 109の3つのブランドとコラボレーションした「F-04C」あたりだろうか。

 形状別ではフィーチャーフォン18機種中、折りたたみが9機種、スライド式が3機種、ストレートが3機種、二軸回転式が2機種、Wオープンが1機種という構成になっている。ユーザーとしてはひと通りの形状が揃っているので、選べないということはないが、折りたたみ以外の選択肢が以前に比べて、少なくなってきたのは、やや気になるところだ。

 3つめのトピックとして、LTEサービスのXiについて、触れておきたい。2010年12月24日に東京、名古屋、大阪を皮切りにサービスを開始することが発表され、料金プランも最大5GBまでなら定額で利用できることが明らかになった。通信速度は室内での10MHz幅を利用したときに下り方向で最大75Mbps、屋外でも37.5Mbpsにも達し、現在のFOMAハイスピードの数倍のパフォーマンスが得られることになる。

 LTEは元々、「高速」「大容量」「低遅延」を特徴としているが、当初はデータ通信サービスのみが提供され、2011年秋冬の段階では音声通話サービスに対応したモデルがリリースされる計画だ。とりあえずはデータ通信サービスを利用したいユーザーのみが導入を検討することになるが、今回発表されなかったものの、2011年の早い段階で登場することが示唆されたモバイルWi-Fiルーター(HW-01Cとは別物)あたりが幅広い環境で活かせるため、ユーザーとしても導入しやすいかもしれない。

 通信速度についてはあくまでも理論値ということになるが、会場内のデモ環境ではすでに60Mbpsに迫るパフォーマンスを示しており、イー・モバイルやソフトバンクが導入を予定しているDC-HSDPA方式によるデータ通信を上回る結果を出している。ただ、こうしたデータ通信のパフォーマンスは電波状況に左右されるうえ、通信速度が高速化すれば、するほど、端末側のパワーも必要になってくるため、むやみに速度の最高値だけで比較するのは、ハッキリ言って、ムダだろう。より広いエリアで、より低廉な料金で、より安定した通信環境が得られることが大事なわけで、ユーザーとしては目先の数値に惑わされないように選ぶ必要があるし、各キャリアもその点を踏まえたうえで、ユーザーが必要とするエリア情報や課金情報などを提示できるような体制を整えて欲しいところだ。

個性的なスマートフォン&選べるフィーチャーフォンのラインアップ

 さて、ここからはいつものように、発表会後に行なわれたタッチ&トライコーナーで試用した実機の印象や各モデルの捉え方などについて、紹介しよう。今回は例年にも増して、全28機種とモデル数が多く、すべての機種を十分に触ることはできなかったことをお断りしておく。また、基本的にいずれの端末も開発中のモデルであるため、発売された製品とは差異があるかもしれない点もご了承いただきたい。なお、各機種の詳しい仕様などについては、本誌のレポート記事を参照して欲しい。

【スマートフォン】

LYNX 3D SH-03C(シャープ)
 家庭用テレビの3D液晶と違い、裸眼で見られる3.8インチの3D液晶を搭載したスマートフォン。内蔵カメラで撮影した写真やワンセグなどをワンタッチで3D表示に切り替えられる。ワンセグやおサイフケータイ、赤外線通信など、フィーチャーフォンでおなじみの機能を搭載。3D液晶やCCD 960万画素カメラなどはソフトバンクから発表された「GALAPAGOS 003SH」とほぼ同じ仕様だが、ボディは丸みを帯びたデザインにまとめられており、Pure Whiteなどは女性ユーザーにも人気が出そうな印象だ。

BlackBerry Curve 9300(Research In Motion)
 海外ではすでに販売されているBlackBerryシリーズの普及モデル。BlackBerry Bold 9700などに比べ、背面パネルにシンプルな仕上げの樹脂製を採用したり、ディスプレイをQVGA表示、カメラは200万画素にするなど、全体的にコストを抑えた仕様となっている。店頭価格も1万円台後半になる見込みだが、BlackBerry Bold 9700との価格差も意外に大きくないため、どちらかと言えば、法人向けに販売されるケースが多くなりそうとのことだ。また、今回は動作状態を見られなかったが、spモードのしくみを利用し、BlackBerryシリーズでもiモードのメールアドレスを送受信できる環境を整えるとしている。この場合、プロバイダーはBlackBerry Internet Serviceとspモードの両方を契約し、ISPセット割で157.5円ずつ割り引かれるようになる見込みだ。

REGZA Phone T-01C(富士通東芝モバイルコミュニケーションズ)
 東芝の液晶テレビ「REGZA」の名を冠したモデル。REGZAで培われた技術を活かした「モバイルレグザエンジン3.0」により、高画質の映像の視聴環境を実現した防水対応モデル。通信方式などは異なるが、基本的な構成はauのREGZA Phone IS04に近い仕様でまとめられている。ディスプレイサイズが4インチと大きく、おサイフケータイやワンセグ、赤外線通信を搭載し、充電台も同梱するなど、ほぼ全部入りと言えるハイスペックな仕様となっている。auの発表会に展示されていたREGZA Phone IS04はワンセグの視聴しかできなかったが、操作ができる実機が展示されていた。スペック重視のユーザーにおすすめのモデルだ。

Optimus chat L-04C(LGエレクトロニクス)
 LGエレクトロニクスが海外で展開するスマートフォンのシリーズ名「Optimus」の名を冠したモデル。スライド式のQWERTY配列のフルキーボードを搭載するが、左上のマナーキーや右上の検索キー、突起したキーの形状など、キー周りのデザインは全面的に日本オリジナル仕様。NTTドコモのFOMA端末のユーザーインターフェイスを模したオリジナルのUI「ドコモメニュー」を搭載し、スマートフォンがはじめてのユーザーでも使いやすい環境を目指している。ボディサイズも比較的コンパクトで、女性ユーザーにも持ちやすいサイズにまとめられている。おサイフケータイなどの機能はないが、販売価格もかなり廉価になると見込まれており、スマートフォンをはじめて持つエントリーユーザーに注目を集めそうなモデルだ。

【STYLEシリーズ】

P-02C(パナソニック モバイルコミュニケーションズ)
 2009年の夏モデルとして登場した「P-10A」の後継に位置付けられるモデル。PシリーズでおなじみのWオープンデザインを採用しながら、防水を実現したモデル。ただ、コスト的な制約からか、ヒンジ部分はP-01Bのようなスッキリした形状ではなく、P-10A同様の大きな突起のデザインとなっている。トップパネルに装備されたイルミネーションは使用頻度に応じて、光り方が変わるなど、長期間の利用を考慮した機能も盛り込まれている。

N-01C(NECカシオモバイルコミュニケーションズ)
 NシリーズではおなじみのμシリーズのDNAを継承したハイスペックスリムの最新モデル。女性ユーザーのニーズをかなり強く意識したモデルで、インカメラを利用して身だしなみがチェックできるハンドミラー機能をはじめ、ダイヤルボタン部分に装備されたLEDでハンドミラー機能利用時にも明るく照らせるハンドミラーライト、メインカメラで自分撮りをするとき、あらかじめ設定した位置で顔を認識すると音で知らせてくれる機能など、カメラ周りの機能もかなり充実している。カメラは約810万画素のCMOSイメージセンサーを採用する。高速起動と連続撮影が可能なクイックショットも起動で0.5秒、撮影間隔が0.6秒と、一段と高速化されている。N-02Cとの違いは防水やBluetooth、Wi-Fiなどがないことだ。

N-02C(NECカシオモバイルコミュニケーションズ)
 N-01Cのハイスペックスリムを継承しながら、Wi-FiやBluetooth、防水・防じん対応、カメラなどの機能を強化した「もうひとつのハイスペックスリム」のモデル。デザイン的には2010年夏モデルのN-04Bをさらにブラッシュアップした印象で、カラーによっては男性でも持てそうなテイストで仕上げられている。12月からはマイセレクトの受付も開始される。カメラのクイックショットなども強化されているが、N-04Bで指摘されていた文字入力時などのもたつきが大幅に改善されており、かなりサクサクと操作することができる。Wi-Fiを利用し、パソコンとの間で簡単にデータが転送できる「カンタンデータ転送」と呼ばれる機能を用意するなど、今までのSTYLEシリーズにはなかった機能も用意される。ある意味、PRIMEシリーズとしても出ていてもおかしくないほどのモデルだ。

F-02C(富士通)
 本体先端部のフィーリングピースを交換することで、デザインチェンジができるモデル。デザイン的には2009年冬モデルの「F-03B」のように、光沢仕上げとメタリックなパーツを組み合わせ、やや大人っぽいイメージに仕上げられている。人気ファッションブランド「ANTEPRIMA」とのコラボレーションモデルとして、カラーバリエーションの1つ「ANTEPRIMA GOLD」がラインアップされており、フィーリングピースもかなり華やかなイメージになる。防水・防じんにも対応し、13.2mmのスリムボディにまとめられているが、1220万画素カメラを搭載し、フルハイビジョンムービーの撮影ができるなど、機能的にはかなりハイスペックにまとめられている。全体的に見て、STYLEシリーズの中でもやや大人っぽいイメージに仕上げられた端末だ。

SH-02C(シャープ)
 コンパクトなボディにハイスペックを凝縮した防水・防じん対応モデル。ボディカラーはブラックとホワイトの2種類を基調としているが、ボディやサブディスプレイの周囲にアクセントとなるカラーを配することで、新鮮なイメージを演出している。トップパネルに内蔵されたLEDは、2010年夏モデルに登場した「SH-07B」にも採用されたスイングトークにも利用できる。スペック的にはPRIMEシリーズのSH-01Cと同等で、Bluetoothに対応していないことを除けば、STYLEシリーズとしてはかなりハイスペックにまとめられている。使い勝手も進化を遂げ、ワンタッチでデコメールに変換できる「かんたんデコメ」を搭載し、公式サイトから変換パターンの追加データも入手できる。

SH-04C(シャープ)
 2009年冬モデルとして発表され、一瞬にして限定の予約数を売り切った「SH-04B」に続く「Q-pot.」とのコラボレーションモデル第2弾。SH-04Bでは板チョコが溶ける様を再現したが、今回はビスケットをモチーフにしたデザインを採用している。仕上がりもたいへん良く、見事に美味しそうなのだが、なかでもビスケットの部分は今までにない独特の質感で、つい触っていたくなる印象すらある。ベースモデルはSH-02Cで、こうしたデザインを採用しながら、防水・防じん対応を実現している。前回は1万5000台の限定だったが、今回は各色1万5000台の限定となっている。予約開始は別途、アナウンスがある見込みだが、売り切れ必至の端末と言えそうだ。

L-01C(LGエレクトロニクス)
 STYLEシリーズには珍しく、若干、上の年齢層の利用も意識し、使いやすさを考えたシンプルな防水モデル。ワンセグや防水といった基本機能のみに絞り込んでいるが、シニア層のユーザーが海外旅行などで利用することを考慮し、英語、日本語、韓国語の会話集を搭載しており、実際に例文を読み上げる機能も備える。本体のメニューの表記も英語、日本語、韓国語に切り替えることができる。

F-04C(富士通)
 SHIBUYA 109の3ブランドとのコラボレーションによるモデル。カラーごとに、別のブランドとコラボレーションしており、カラーバリエーションならぬ、ブランドバリエーションを実現している。それぞれにかなり個性の強いデザインでまとめられているが、スライド式ボディのディスプレイ裏に「プリティミラー」と呼ばれる鏡が装着されているなど、細かい部分の演出(機能)も凝っている。ベースとなっているのは、ハイスペックなスライド式端末のF-05C。

F-05C(富士通)
 スライド式ボディを採用し、回転式の「クルクルキー」を装備したハイスペックモデル。クルクルキーはかつての三菱電機製端末のDシリーズに採用されていたスピードセレクターを彷彿させる。スピードセレクターとスライド式ボディという組み合わせはP-02Bなどでパナソニックが継承していたが、PシリーズがLinuxベースのプラットフォームを採用しているのに対し、F-05CはDシリーズと同じSymbianプラットフォームを採用しており、その意味ではDシリーズの流れを受け継いだとも言えるモデル。機能的にはインカメラに130万画素カメラを搭載し、付属のタッチペンで写真などにデコレーションができるなど、若い女性ユーザーの利用を意識した機能が数多く搭載される。

【PRIMEシリーズ】

F-01C(富士通)
 二軸回転式ボディに1320万画素カメラを搭載したハイスペックモデル。ポジション的には2009年冬モデルの「F-01B」の後継モデルに位置付けられる。タッチパネルのレスポンスを追求し、従来モデルの約1.5倍の高速化を実現している。デザイン的には角が落とされていたF-01Bに比べ、かなり角張ったデザインを採用し、トップパネル周囲のクリアやカメラ周りのボディ形状などは、どことなく、2009年冬モデルのSH-01Bのテイストに影響を受けたような印象を受ける。タッチ操作でほとんどの操作をサポートし、文字入力ではフリック入力もサポートするなど、フルタッチのモデルを強く意識した仕上がりとなっている。逆に、ディスプレイを反転して、そこまでタッチ操作をさせなくてもいいような印象も受けた。

AQUOS SHOT SH-01C(シャープ)
 2009年冬モデルの「SH-01B」、2010年夏モデルの「SH-07B」の流れをくんだAQUOS SHOTの最新モデル。今回は新たに開発したCCD 1410万画素カメラを搭載し、防水・防じん対応、Wi-Fi対応など、PRIMEシリーズに相応しいハイスペックでまとめあげている。基本的な機能は従来モデルを継承するが、カメラの撮影時の機能として、ペット検出やエフェクトカメラなどが搭載される。連続撮影後におすすめの1枚を選び出すオススメフォトなどのユニークな機能も用意される。DLNAのサーバー/クライアントに両対応し、撮影した写真をWi-Fi経由でDLNA対応テレビなどに映し出せる。デザイン的にはトップパネルのグラデーションが独特の雰囲気を演出している。

LUMIX Phone P-03C(パナソニック モバイルコミュニケーションズ)
 デジタルカメラブランド「LUMIX」の名を冠したモデル。CEATEC JAPAN 2010を前に開発が発表され、参考出品されていたが、11月4日に発表されたソフトバンク向けに続き、NTTドコモ向けにも発表された。背面をデジタルカメラのLUMIXのテイストで仕上げたデザインで、ボディそのものは2009年冬モデルの「P-02B」の流れをくむスライド式を採用する。LUMIXで培われた高画質技術を活かした「Mobile Venus Engine」を搭載するほか、撮影時に指やストラップが掛からないようにレンズ位置を調整したり、大きく押しやすいシャッターボタンを側面に装備するなど、LUMIXのDNAが活かされた設計となっている。Wi-Fiにも対応し、アクセスポイント接続中、同一ネットワークのパソコンに写真をリサイズなしに転送できる機能なども備える。スライド式ボディのスライド量はそれほど大きくなく、上下筐体の段差も最近のモデルではやや大きい印象も残る。

N-03C(NECカシオモバイルコミュニケーションズ)
 耐衝撃構造を採用し、防水・防じんにも対応したタフネスモデル。今年、NECとカシオ計算機の携帯電話事業が統合されたことにより、カシオ計算機のタフネスのDNAがNECのケータイに活かされたモデルとも言える。ボディ周囲に弾性材料をレイアウトすることで耐衝撃性能を確保し、米国防総省のMIL規格(MILスペック)の規格準拠の試験をクリアしている。カメラなどのスペックはN-01Cなどと同等で、0.5秒で起動し、0.6秒間隔で連続撮影が可能。スノーボードで知られる「BURTON」とのコラボレーションモデルもラインアップされる。今まで、NTTドコモのラインアップにはなかったキャラクターだけに、機能と個性を求めるユーザーにとって、かなり注目度の高いモデルと言えそうだ。

【SMARTシリーズ】

F-03C(富士通)
 トップパネルに2.0インチのサブディスプレイ、触って操作ができるタッチセンサーを搭載した防水・防じん対応モデル。富士通製端末ではF902iSがトップパネルにタッチセンサーを内蔵していたが、今回は音楽再生だけでなく、サブディスプレイを使ったメールの確認やサイト閲覧、ワンセグの視聴など、さまざまな機能を端末を閉じたまま、利用できるようにしている。操作のレスポンスも良好で、操作体系も左上に[クリア]キーに相当するタッチポイントを用意するなど、比較的わかりやすい印象だ。ただ、ヒンジ部左側面にはワンプッシュでオープンするボタンも備えており、端末が開きやすくなっていることを考えると、どこまで閉じた状態での操作が必要とされているのかはやや疑問が残る。全体的に落ち着いた大人向けのデザインにまとめられている。

P-01C(パナソニック モバイルコミュニケーションズ)
 Pシリーズの十八番とも言える薄型ボディを採用したμシリーズのDNAを継承するモデル。ボードモールド工法により、スリムなボディながらも十分な強度を確保している。スリムなボディながら、ボタン類は各キートップを独立させた形状を採用し、キーの大きさや間隔なども押しやすさ重視の設計となっている。ヘアライン加工されたステンレスパネルが美しく仕上げられているが、ある程度の強度が保たれているものの、突起物による衝撃でえくぼのような凹みができてしまう不安が残る。

【PROシリーズ】

L-03C(LGエレクトロニクス)
 沈胴式の光学3倍ズームレンズを採用したユニークなモデル。カメラ付きケータイというより、デジタルカメラに携帯電話の機能を追加したようなデジタルカメラらしいデザインに仕上げられている。レンズはPENTAX製、センサーは高感度の12.1MピクセルのCCD、フラッシュは本格的なキセノンフラッシュを採用するなど、カメラとしての性能もかなり本格的。シャッターボタンやズームホイールなどもコンパクトデジタルカメラと同様で、デジタルカメラとして考えれば、非常に操作しやすい。携帯電話としての使い勝手はやや制約されることになるが、メニューアイコンによる操作感は比較的良好で、多くを求めなければ、十分、実用になるという印象だ。

SH-05C(シャープ)
 プリズム式の光学3倍ズームを搭載したフルタッチ対応のAQUOS SHOTの最高峰モデル。ボディはストレートタイプのスマートフォンなどと変わらないサイズで、デスクトップのアイコンを自由にレイアウトできるなど、操作体系も非常に似通っている。カメラ機能は基本的にSH-01Cと同等で、1410万画素のCCDセンサーを採用し、フルハイビジョンのムービー撮影にも対応する。撮影した動画は本体側面に装備されたHDMI端子に接続することで、テレビなどでも楽しむことができる。

SH-06C(シャープ)
 SH-05Cとほぼ同じデザインのボディを採用しながら、DLP方式によるプロジェクターを内蔵したモデル。CEATEC JAPAN 2008に参考出品された「プロジェクターケータイ」をベースに開発を進めてきたもので、本体右側面のキーを長押しするだけで、ディスプレイに表示されている内容をプロジェクターで投影できる。今回展示されたモデルには実装されていなかったが、プロジェクター投影時に端末を裏返すだけで、すぐにプロジェクターをOFFにする機能も搭載される。内部のソフトウェアの仕様はSH-05Cと同等で、カメラなどを除けば、サイズなども基本的には変わらない。外出先で映像を楽しんだり、プレゼンテーションに利用できるなど、かなり応用範囲の広い端末と言えそうだ。

『ネクストステージ』に進むために足りないもの

 今回発表されたNTTドコモの新ラインアップは、プレスリリースで『ドコモ史上最多となる「28機種72色」の携帯電話を開発~』と謳われているように、今までにない充実したラインアップが揃うことになった。今回は紹介しなかったが、この他にもモバイルWi-Fiルーターやデータ通信アダプタ、フォトフレーム、TOUCH WOODなど、フィーチャーフォンとスマートフォン以外にも注目される製品をラインアップしており、ユーザーのさまざまな利用シーンやニーズに応えられるようにしている。

 なかでもスマートフォンについては、発表会のプレゼンテーションの冒頭から取り上げるなど、NTTドコモとしてもかなり力を入れているように見える。端末については、現行モデルの「Xperia」「GALAXY S」を筆頭に、「BlackBerry Bold 9700」「dynapocket T-01B」「LYNX SH-10B」が続き、発売予定の「GALAXY Tab」、今回発表された4機種と未発表のタブレット端末を加えた10機種前後が店頭に並ぶことになるが、前述のように、NTTドコモの主要ラインアップを展開してきたNECやパナソニック、富士通といったメーカーからはスマートフォンが出てきていない。これは過去のNTTドコモの歴史から見れば、かなり不自然な状態にあると言っても過言ではない。

 これに対し、フィーチャーフォンに目を転じると、従来モデルを一段とブラッシュアップしながら、個性と完成度を高めたモデルがズラリと並ぶ。Q-pot.とのコラボレーションモデルの「SH-04C」、SHIBUYA 109とのブランドコラボレーションの「F-04C」、NTTドコモのラインアップには珍しい耐衝撃性能を持つ「N-03C」、プロジェクターを内蔵した「SH-06C」、デジタルカメラブランドを冠した「LUMIX Phone P-03C」、沈胴式ズームを搭載した「L-03C」、プリズム式の光学ズームを搭載した「AQUOS SHOT SH-05C」といった具合いに、デザインからブランド、ハードウェアのスペックに至るまで、実に多彩で面白そうなモデルが揃っている。

 正直なところを書いてしまうと、NTTドコモの2010~2011冬春モデルが発表されるまで、他社の発表内容を見て、筆者は「NTTドコモもスマートフォンに舵を切ってくるだろう」と予想していたのだが、いざフタを開けてみれば、思いの外(と言っては関係者に失礼だが……)、フィーチャーフォンのラインアップが充実したことに驚かされた。

 他社の発表の原稿にも書いたが、今冬から来春にかけては、おそらく多くのユーザーが「スマートフォン、どうしようかなぁ」と勘案しているだろう。各キャリアごとに、ユーザーの構成も違うため、当然、反応に違いが出てくるが、NTTドコモに限って言えば、spモードの開始やドコモマーケットの拡充などで、スマートフォンに移行する準備が整っているものの、まだまだフィーチャーフォンにも数多くの楽しみが用意されており、自分自身が必要としないのであれば、無理にスマートフォンに移行しなくてもいいような印象を受けた。

 auのISデビュー割のように、料金的なサポートがあれば、楽しいフィーチャーフォンを活用しながら、2台目としてスマートフォンを持ち、それぞれの良さを認識しながら、使い分けていったり、いずれ1台に統合する方向を模索するようなスタイルもアリなのかもしれない。

 こう考える理由のひとつに、NTTドコモのスマートフォンの環境に、まだまだ課題が多く残されていることが挙げられる。たとえば、他キャリアのスマートフォンがある一定の方向性やセグメントの分け方を打ち出しているのに対し、どうもNTTドコモのスマートフォンのラインアップは「いろいろなニーズに応えられるように、たくさん揃えました」という全方位的な印象が少なからず残ってしまっている。確かに、選択肢は多いのだが、「NTTドコモのスマートフォンなら、こんなことができる」といった明確な方向性が見えてこないのだ。

 スマートフォン対応のサービスについても同じことが言える。auが人気サービスの「EZナビウォーク」「EZ助手席ナビ」「Smart Sports Run&Walk」などを続々とAndroidの環境に移植しているのに対し、NTTドコモは今のところ、iモードの公式メニュー内のサイトを徐々にドコモマーケットのコンテンツ一覧に移行しているくらいで、iコンシェルやiチャネル、iBodymoといったNTTドコモならではのサービスは、まだ何も手つかずの状態だ。できることなら、Android採用端末のEVERNOTE対応のように、プラットフォームに大きな影響を与えない範囲で、NTTドコモならではのスマートフォンの何かを見つけ出して欲しいところだ。

 発表会後の囲み取材で、山田隆持社長は「我々としては、iコンシェルのようなものもスマートフォンのプラットフォームに持っていきたい」と話しており、そう遠くない時期にこれらのサービスもスマートフォン上で利用できるようになるのだろうが、ある意味、そのときが本当の意味のスマートフォンへの「ネクストステージ」が整う時期と言えるのかもしれない。

 今回発表されたモデルは、11月中にも順次、販売が開始される予定だ。今後、本誌に掲載される開発者インタビューやレビュー記事を参考にしながら、読者のみなさんもネクストステージに進むための1台をぜひとも見つけていただきたい。



(法林岳之)

2010/11/10 12:12