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東京ゲームショウで見たスマホVR、期待とこれから

【Nexus 6】

 9月15日~18日まで開催された「東京ゲームショウ2016」ではVR関連の展示や発表も多く、過去最高の来場者数と好評だったようだ。筆者は取材の関係で、関係者向けのビジネスデイ初日の9月15日に訪れ、スマートフォン関連を中心に取材を行った。記事はすでに掲載しているのでこちらも参照していただきたい。

 筆者が東京ゲームショウを取材するのは2014年以来。昨年の2015年は、SUPERCELLが「クラッシュ・オブ・クラン」、Cygamesが「グランブルーファンタジー」でそれぞれ大きなブースを出展していたが、2016年は両社ともブースはなし。Cygamesは神撃のバハムート、グランブルーファンタジーに続く自社タイトル、「シャドウバース」を夏にリリースしたばかりだが、戦略の変化だろうか、出展してのPRはしなかったようだ。グリーはVR関連でHTC VIVEを利用した体験コンテンツを展示するにとどまり、「モンスターストライク」(XFLAG)や、独自に幕張メッセでイベントを開催する「パズル&ドラゴンズ」(ガンホー)などアプリストアの上位タイトルも大々的な展示はなかった。

 これらに限らず、スマホゲームの巨大なブースというのは今年は少ない印象で、後述するサイバーエージェントの「オルタナティブガールズ」と、アーノルド・シュワルツネッガーが出演するCMで話題のEpic War「モバイルストライク」が目立っていた印象だ。

「オルタナティブガールズ」

 さて、スマホでVR、そしてゲームタイトルというと、まだまだ小規模なものや手探り感のあるもの、需要を測っているようなものが多いのが実情だ。簡易VRゴーグルに代表されるスマホVRという遊び方そのものが、何時間も続けて遊べるようなものではないという性能面の課題や、ゲームプレイに耐える操作方法がほぼないといった点もあるだろう。現在はキャラクターが踊るステージを見るといった鑑賞系が多いのが実情だ。

 レポート記事でも触れた「オルタナティブガールズ」(オルガル)は、そういう意味でかなり積極的にVRを取り込んだタイトルで、ゲーム中のホーム画面でVRのアイコンをタップすると、VRモードで楽しめる「ラウンジ」に移動し、仲良くなっているキャラクターの様子や動きをVRならではの臨場感で楽しめる。

 実際に筆者も「Nexus 6」にダウンロードしてプレイしてみたが、オルガルが特徴的なのは、VRモードを複雑な操作がいらない「ラウンジ」での利用に割り切っている点。通常のゲーム画面は縦向きのスマートフォンを前提としたものだ。ずっとVRゴーグルを付けてプレイするわけではなく、プレイ中の息抜きのような感じで(VRゴーグルを付けて)ラウンジを訪れる形になっている。

「Hop Step Sing!」

 スマホでVR、ゲームじゃないけど本気のタイトル、という点で注目なのは、講談社の「Hop Step Sing!」。東京ゲームショウでもいくつかのブースで展示されていた。いくつかの、というのは、基本的にはスマートフォンアプリとして提供されるが、HTC VIBEやOculus Rift、Gear VRに対応させたものが会場の各所で展示されていたからだ。

 「Hop Step Sing!」は現在のところゲームコンテンツではなく、ストーリー性のあるバーチャルアイドルの楽曲やステージ映像が、VRコンテンツを通じて提供されていく、という展開のようだ。

 まずは第1弾コンテンツとして、アイドルを目指す3人のキャラクターがユニットを組んだデビュー曲「キセキ的Shining!」が(ゲーム性のない)単体アプリとしてリリースされている(360円、キャンペーン中は240円)。この楽曲はショート版をYouTubeで見ることもでき、もちろんこちらもVR対応だ。エントリークラスのスマートフォンではアプリがちゃんと動かない報告もあるようだが、「Nexus 6」ではしっかりと動いた。

 3人のライブを特等席で見られるというこのアプリ。見どころは、冒頭と最後に、カメラ位置に比較的近い場所に三人が立っている場面(それ以外は少し遠い)や、開始直後にフィギュアスケートのような回転ジャンプを見せるところ、途中で宇宙のようなステージに変化するところなどだろうか。確証はないが、キャラクターの動きはモーションキャプチャーと思われ、見応えがある。

 健全な範囲で要求をあげるとするならば、せっかくのVRなので、立ち位置は数か所から自由に選べるようにしてほしかったという点だろうか。ステージの真ん中とか向こう側とか……。

 基本的には鑑賞するだけとはいえ、楽曲や振り付け、3Dモデル、ステージの作り込み、演出はいずれもレベルが高く、“様子見”な印象は受けない。それもそのはず、キービジュアルのイラストレーターはtanu氏、楽曲はやしきん氏とランティス、映像プロデュースはポリゴン・ピクチュアズと実力確かな布陣で、制作の講談社としてもかなり気合が入っている様子だ。一方、起用されている声優は若手が中心で、こちらは声優の固定ファンを引きつけるというより、キャラクター同様に成長や活躍を応援していく形だろう。オーディオ好きとしては楽曲のデジタル配信やハイレゾ版の配信にも期待したいところだ。

 公式サイトでは前述の3人以外のキャラクターも公開されており、今後の展開も気になるところ。Twitterでは活動記録としてキャラクターが奮闘する様子がマンガで公開されるなど、メディアを問わず多方面での展開も期待させる。キャラクターの3Dモデルデータのダウンロードを予定するなど、ユーザー側でさまざまに展開させることもできそうだ。

「Daydream」は特に発表なし

 VRプラットフォームという意味では、Googleが提唱している「Daydream」について、なんらかの発表があってもよかったように思うが、特にアナウンスはなかったようで残念だ。Daydreamは従来からアナウンスされている通り、今年の秋から年末にかけて詳細が明らかになると思われる。必要になるスマートフォンのスペックについては、Daydreamでは「Nexus 6P」よりやや上、つまり現在のハイエンドスマートフォンよりも少し上のスペックが求められるとされ、そうした意味でも2016年後半に登場するスマートフォンから本格対応ということになるだろう。

Daydream

 Daydreamは、上記で触れているような、なし崩し的に広がった“スマホVR”の性能面での課題や操作面(コントローラー)の問題を解決するものとして期待されている。AppleがiPhone 7の発表に際してもVRについてはスルーしたことから、直近では、“スマホVR”の大幅な進展はGoogleのDaydreamにかかっていると考えて間違いない。

 東京ゲームショウ2016ではインディーコーナーも設けられ、VRゴーグルを使ったユニークなアイデアのゲームが展示されていたようだ。詳細は僚誌GAME Watchのレポート記事を参照していただきたいが、制作や公開のハードルが低いのはスマートフォンコンテンツの特徴。Daydreamなどで仕様が統一・底上げされても、こうした自由な展開に期待したい。